流れ着いたメッセージボトル

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「!っ、痛…」

不意に片目に何か異物感を感じ立ち止まる。
何かが目に入ったらしい、チクチクと瞳を刺すような痛みに思わず目を擦った。


なんだろう、なかなか取れない……。


ごしごしと少し強めに擦ってみると、更に角膜を傷つけてしまった。
瞬きする度にチクチクとした痛みが訪れ、じわりと涙が溢れてくる。


ちょうどいい、もしかしたら異物も一緒に流してくれるかも。


ぽろりと流れた涙をそっと指先で拭ってみる。
するとそこには涙と共に一本の睫毛が浮かんでいた。

「なぁんだ、睫毛だったの。」

異物感はなくなったけど、目は擦ってしまったせいで少し痛みが残ってるなぁ…なんて、目を気にしながら再び歩みを進めた時だった。


「チェル、どうしたの?どうして泣いているの?」


目の前に心配そうな顔をしたお姉さまが立っていた。


「あっ…お姉さま大丈夫。泣いてないよ。あのね睫毛が入っちゃって……」

慌てて説明するが、お姉さまは私の顔を覗き込んで何やらぶつぶつと考え事をしているようだった。

「お姉さま、聞いてる…?」
「チェル、私の部屋に来て。冷やして薬を塗りましょ?
それからお話を聞かせて?私が一緒に居て...」


…あぁ、お姉さまったら。


「待って、お姉さま!違うの、睫毛が入っただけなの…!!」
「………まつげ?」

きょとんとしたようにそう言って、私の顔を再び覗き込んでくるお姉さま。
まじまじと目を見つめられ、少しくすぐったい気持ちになる。

「………かわいそうに、睫毛に泣かされたのね?やっぱり私の部屋に行きましょ?手をきれいにしてから取ってあげなきゃ。午後の授業は休みましょう。たくさん擦ってしまったから目も休ませてあげて、それから…」
「………お姉さまってば過保護…」

わざとちょっぴり呆れたように言ってみる。
だけどお姉さまに心配されているのがひしひしと伝わってきて、心がじんわりと温かくなった私は、お姉さまにバレないようにふふ、と微笑んで後ろについていくのだった。


とある昼下がりの廊下にて。



#涙の理由 HPMA side.C

9/28/2025, 9:19:14 AM