色褪せた虚空に価値を見出せず目を閉じた
聞き飽きた音楽を脳に流し込んで
ノイズ混じりの日常と無理矢理紛らせた気は
忘れてくれるなと今日も責め立ててくる
楽しいと寂しい、嬉しいと悲しいは紙一重
彼の止まった時間は動かない
ひらり、はらりと舞う蝶々を追いかけて
ひらり、はらりと落ちた花弁を見つめて
大人にも子供にもなれないまま
一体どんな顔をすれば良いのだろうか
#ひらり
終電が過ぎて静寂に包まれた駅のホーム
見上げれば満点の星空が広がっていた
届かないと分かっていながら
目に入った一筋の光に思わず手を伸ばす
それはあまりにも一瞬で
それはあまりにも遠すぎて
願いを口にする間もなく
ただ見ていることしか出来ない
子どもの頃必死に唱えた願いだって
結局叶っちゃいないけれど
あの日夜空を一緒に見上げた思い出は
今も鮮明に残っている
“さよなら、またいつか”
叶わない願いを口にすると
また一つ星が流れて消えた
あぁ、あれはきっと君に違いない
#夜空を駆ける
「 」
ふと呼ばれた気がして振り返った
そこには誰も居なかった
何も、残っていなかった
#君の声がする
一般的に“好きだ”と伝えるのが難しいと言われているけれど、私はそうは思わない。
「好きだよ」
「ほんと?えへへ私も好き」
ほらね、好きだって伝えるのは簡単だけど、私の本当の気持ちまでは伝わらない。
どこまでも友達の延長線で、私の“好き”と彼女の“好き”が交差することはないのだから。
「あーあ、こんなに好きなのになぁ…」
「何、どうしたの?」
「ううん、このままだと“好き”がカンストしそうだなーって」
「ふふ、私への?」
くすくすと微笑む彼女はさながら天使のように愛らしい。
「そう、可愛くて好き、努力してて好き、優しくて好き、ちょっと天然な所も好き、笑顔が好き、全部好き、私が男だったら迷いなく彼女にしたい子ナンバーワンだからね。」
半ば自暴自棄に冗談と本音を交えてそう捲し立てると彼女はパチパチと目を瞬かせてこちらを見つめた。
「なーんて…
冗談だ、とはぐらかそうとした。
そこまで言ったところでトンっと胸を押されて視界が反転する。
「それは光栄だね。だけど、」
ふわりと彼女の香りが近づき、気づけば私の視界は彼女でいっぱいになっていた。
「!?…へ、」
「…私は今のままの貴方を彼女にしたいかな、なんて。」
先程までの天使のような愛らしさはどこへやら。
まっすぐ瞳を射抜かれて、もはや声にならない声しか出てこない。
「ふふ可愛い、…好きだよ」
そう言ってふわりと笑った彼女にクラクラと目眩がした。
拝啓
どうやら私の本当の気持ちはずっと伝わっていたようです。あとくれぐれも彼女が可愛いからと油断してはいけません、沼です沼。
敬具
今はただ、過去の自分にそっと伝えたい
#そっと伝えたい
貴方を傷つけないためなら
針でも毒でもなんでも飲んでやろう
嘘をつくなら墓場まで
#やさしい嘘