『海へ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「君が天草四郎の生まれ変わりって本当?」
風が運んできた噂で知った、私の友人の事。何となく、聞いてみた。本当はどうでもよかったけれど。無言の時間が苦痛じゃなければ相性がいいと思う私にしては珍しく、無言の時間を埋めようと出した話題だった。
彼と私は、結構相性がいいと思う。だって無言でも、落ち着けるから。だけど、今日は本当になんとなく埋めてみたくなっただけ。
だから、彼が笑ってそんなの有り得ないよって言うのだと思ってた。けれど彼の口から溢れ出た言葉は、
「じゃあ、確かめに海へ行こうか。」だった。
ざぶんざぶん、ごぅごぅ。
海と風の音。潮の匂いが私の鼻の奥をくすぐる。海へ来たのなんて何時ぶりだろうか。
「何故、私を海へ連れてきたの?」
「君は、僕が天草四郎の生まれ変わりって本当か聞いたね。」
「それはまぁ、風が運んできたからさ、」
「やれやれ、耳が良いのは感心するが受け付ける噂は選んだ方がいいよ。」
「そんなこと言ったってさぁ。仕方がないじゃないか。」
私は、目が見えないのだから。
「嗚呼、理解しているさ。君は目が見えない。だから耳と鼻が他の人よりも良いってことは。だからこそだよ。」
「だからこそ?」
彼が私の手を引きながら、海へと近付く。
どんどんと、近付いていく。此処はもう、海の上じゃないか。
あれ、だけど、
「ひとつ。天草四郎は、海の上を歩けた。」
体も。服も。どこもかしこも濡れては居なかった。
彼がどんどんと奥へと歩く。足元は不安定だった。必死に彼の手を掴みながら着いていく。
「ひとつ。天草四郎は、盲目の少女の目を治した。」
彼の手が私の顔を覆う。
それが何だか恐ろしくて、だけど拒めなかった。
「目を開けてご覧。」
「さぁ。噂は本物だったかい?」
初めて見た夕焼けという景色を背に、美しい顔をした少年は笑っていた。
水の中にはどんな魚がいるのだろう。僕は生きてる魚を見たことがない。ずっと見てみたかった。魚を。学校の友達は水族館にいけば、魚が見えると言われた。でも僕にはそんなお金はない。なぜみんなは簡単に水族館にいけばいいと言われる。不思議だ。僕のお母さんは僕を支えることばかり、必死に働いてご飯を食べれてる。僕のクラスにはお金持ちのこもいる。だからいつもうらやましい。でもお母さんが育ててくれたから我慢している。だから僕が高校生になったら、バイトして給料もらって水族館をお母さんと僕でいく。だから海いつか泳ごうね。 千冬
お題:海へ
海へ行きたいのです。ベッドから引っ張り起こし、引きずって、連れて行ってください。身綺麗にしなくていいですから、部屋着のままでいいですから、体をどこにぶつけてもいいですから、足でも何でも抉れていいですから、どうか連れて行ってください。ひと目、海を見てみたいのです。風呂も入れず、食事も摂れず、排泄のため起き上がることも困難な、寝たきりの、中途半端、死ぬことすらままならない。わがままを言わせてください。身綺麗にしなくていいですから、食事も必要ありません、あなたの手を一度貸していただけませんか。そのまま海へ放ってもらって構いません。海へ行きたいのです。
テーマ“海へ”
こうも暑い日が続くと
どうしても涼しい場所へと行きたくなる。
海風で涼もうと、海へと向かった。
それなのに、思った以上に海風が強く
飛ばされそうなくらいだ。
これでは涼むより、飛ばされない事で体力を使う。
海へ来たは良いけれど
とても、複雑な心境になってしまっている。
海に背を向け、海から離れる。
後ろから漂う潮の香り。
やっぱりある程度の距離をとったほうが
心地よいのかもしれない。
海へ行った
吹く風、少し乱暴に当たる水、僕を輝かせる一つとなっている飛沫
全てが僕の体にそっと馴染んだ。
【海へ】
遠い地平線の先、遥か南に君の故郷は沈んでいる。
元より水害の多い場所ではあった。
でも、だからこそ自然と生きる術を心得ていた。
その知恵も技術も、一緒に沈んでいったけど。
故郷を愛している君は、最終便の船で街を出たと言う。
標高の低い場所だから水位の上昇にはすぐに気づいた。
有効な対策は見つからず、その街は捨てるしかない。
そんな状況になってから住人は避難を始めた。
原因はわからずとも、水位は急激に上がったりしない。
緩やかに街を飲み込み、帰る場所を奪っていく。
およそ六年前、君の故郷で最も高い時計台が沈んだ。
今でも懐かしんで見に潜る人がいるほど親しまれている。
水位は去年より十二センチも上がったらしい。
水路の有名なこの街は、ついに歩ける場所がなくなった。
扉を開けると水が入るから、みんな窓から出入りする。
近い将来、この街も沈んでしまうのだろう。
一昨年、体の不自由な人や病人は避難を勧告された。
健常者も状況を見て避難するよう注意喚起があった。
僕はまだ残るつもりだが、君は逃げる気すらないらしい。
「疲れるからもういいよ」遠い目をして、諦めている。
君は故郷にたくさんの思い出を置いてきた。
この街が沈むとき、僕と君の生活も沈んでいく。
そんなのはもうたくさんだ、と君は泣きそうな顔をする。
「じゃあ、ここで終わりにしよう」僕は提案した。
いつか街が沈むより、僕らの人生の終わりが先だ。
溺れて苦しむのは嫌なので、自分たちで終わりを選ぶ。
そしたら、この街に残される僕らを参る人はいない。
「二人で静かな場所に行こう」顔を合わせて笑った。
くすくすと笑いながら耳打ち合う姿を見かけた。
いつもならすぐ交ざりにいくところだけど、日直の仕事のせいでそんな暇もない。大量の課題ノートを大して話したこともないクラスメイトと運びながら教室を出た。
無言のまま早足で歩きながら考える。さっき聞こえた会話の内容がどうにも気になってしかたない。
「…夜に海にいってなにするんだろ」
その日の晩。結局聞き出せなかった会話の内容に悶々として全く寝つけなかった。暗い部屋の中、クーラーの風で揺れるカーテンの隙間から月明かりが差し込んでなんだか水底にでもいるかのような心地になる。
自宅から海まではそう遠くない。川沿いの一本道を通れば自転車で20分程度だ。自転車通学している私の脚ならもっとはやく着く。
もう真夜中だというのに海に行きたくて堪らなくなった。行ったところできれいな砂浜なんてない磯臭い狭い浜辺があるだけなのに、そのときはなぜかとても魅力的に感じた。
街頭なんて1本もない道を自転車で走り抜ける。
昼間とはちがうじっとりとした夏の空気を川上から吹く風と共に切り裂きながら進む。それだけでもう最高だった。
遠くにチラついていた明かりが近づいてきて、目を瞠った。
「遅いよ、待ちくたびれたわ」
大量の花火を手にした友人たちがケラケラと大声で笑っている。すでに何袋か空けたあとなのか、燃え殻の入ったバケツが2つもあった。
約束なんてしてないのに、私のためにとっておいたのだといって束になった花火を手渡される。燃え殻の中にあった種類と同じものがいくつも混ざっていて本当に私を待っていてくれたのがわかった。
「だったらちゃんと誘ってよ」
にやけた顔までは誤魔化せなくて、また笑われる。
ギャーギャーと騒ぎながらやる花火は楽しくてしかたない。またやろうねって口約束だけで嬉しくなる。
―海にきてよかった
【題:海へ】
還そう、全て星の海へ還そう。
記憶、魂、泪も聲も。
#海へ
─海へ─
『今さ、海に居るんだ。』
深夜一時。
たった一人の親友から来た、一件のLINE。
それだけで僕は、察してしまった。
今、親友は死んでしまおうとしていることを。
親友は死にたかった。
いじめられて、痛くて、辛くて、泣いて。
消えてしまいそうな、震えている、悲しい声で。
『辛いよ。消えてしまいたいよ。』と話す。
でも僕は、それを静かに聞いているだけ。止めたりしない。
何故なら、親友の辛さが、全てではないがわかるから。
『死なないで』や『生きろ』が辛いことを、知っているから。
本心では止めたかった。消えないでほしいって。
でも止めたら、君が苦しいだけだから。
せめて別れだけでも、言わせてほしいから。
僕は、君が居る海へと走る。
部屋に残るスマホ。そこにはLINEの画面。
僕からの『待って』と言う言葉。
そして、今送られてきた『ごめんね。』の文字。
#119 夕日を迎えるエメラルドグリーン
海へいこう
都会に疲れた足を引きずり
あの海へいこう
まだあるだろうか?
あの海は__
親友とおしゃべりばかりで仕上がらなかった写生大会
居残りでふたりで描くことにしたあの船着場で
青春のおしゃべりはさらに続いた。
気がついたら夕方で、青かった海はエメラルドグリーンのグラデーションに変わり夕日を迎えていた。
ショッピングモールどころか映画館もない
日が暮れると街灯が妖しく照らすアーケードを
はだけそうな浴衣を着た酒臭い観光客が
歩き煙草をふかしながらぞろっと歩いている__
そんな時代の冴えない温泉街に私たちの青春はあった。
だけど、その時は、
「今更だけど綺麗だね〜」
と少しだけ故郷を誇らしく笑い合った
結局、絵は仕上がらなかったけれど
何とかなるさ〜
もう帰ろう
バスがなくなっちゃうよー
ふたりとも迎えの為に
気軽に親を呼べる家庭じゃなかったから
常に帰りのバスの時間は大切で
スマホはこの時代のドラえもんさえも持っていない
ずっと先の未来のマシンだったから
この海を忘れないように
心のカメラで写して慌てて帰った。
.....
あの時の海は今も心のアルバムに残っている。
けれど、あの海を見た場所はもうないだろう
でも、あの海は
きっと今日も美しいエメラルドグリーンに染まり、夕日を迎えていると思う。
お題「海へ」
他人の心情を理解しようとして
でも分からなくて
やっぱり私たちは他人だから分からないんだと
なぜか叫びたくなって
嗤いたくなって
言い訳したくなって
泣きたくなった
生きることが下手で不器用で自分勝手な私と
誰かの涙雨が過ぎた後を眺めて
それでもこの世界を渡っていく
海へ
(ワールドトリガー夢創作)
「海に行きたい」
そう君がぽつりと呟くので、手を引いて電車に乗り、海が見える駅まで来た。何故私を選んだのか、私でよかったのかは、分からない。特に会話のない逃避行。君相手に不安になるのはやめた。きっとこれでいい。
「潮風の匂いがするねぇ」
海からの風が強く、髪に細かい砂がへばりつく。太陽は水平線の向こうへ沈みかけているところ。雲が多くて、ちょっぴりどんよりしてる。
「視たかったもの、視れた?」
「……視えた通りのものだけど」
潮風の匂いとか、ベタつきとか。波の音とか砂を踏んだ感触とか。期待通りだっただろうか。視えるだけじゃ、知り得ないこと。
「次はもうちょっと早く来ようよ」
「うん」
元気のない迅の、背中を叩く。裸足になって、波打ち際に足を入れる。
「ーーーー」
背中で迅の声が聞こえて、振り返る。切なげに笑って佇むので、なんて言ったのか聞き返せなくなる。
「危ないよ」
迅が私の腕を引いて、海から引き離す。一番星が、輝き出していた。
海へ
「ねえみんな、夏休み海行く?」
「おれ行きたーい」
「僕も行きたいなー」
「俺……は行かないかも、です」
「あれ、野上くん泳ぐの苦手?」
「まああの、そもそも外に出たくないっていうか……」
「そっかー……仁くんが行かないなら僕も行かなくていい?コーギー」
「幻灯も行かないの?というかコーギーはやめて」
「仁くんがいなくて悲しいのはもちろん、姉も着いてきそうだしさー……厄介なんだよねー」
「いいと思うけどなあ。僕も弟連れて行こうと思ってるから。あと二人は蛍のこの顔を見ても行かないと言える?」
「ふたりは来ないのか、さみしい」
「うっ……ごめん……」
「汚いぞコーギー!?」
「やめろって言ったよね」
「仁、おれと海行きたくない?」
「そ、そんなことないけど……」
「じゃあ行こう。いっぱい遊びたいし」
「…分かった……行くから、泣かないでほしい……」
「やったー。仁も行くって」
「よしよし、ナイスだよ蛍」
「じゃあ僕も行くかあー」
「やったー幻灯も来てくれるー」
「うん、そろそろ日焼けしたいと思ってきたところだからねー!焼くぞーー」
「それ以上焼いたら魚の皮みたいになるねー食べ頃かな」
「コーギー?それ他の人に言っちゃだめだかんね。絶対」
〜海へ〜
ひろ〜い海
ずっと眺めていると癒されるな〜
海へ行こう
複雑に気持ちが入り交じっている心を
海に託して
心も広げて
腕も広げて
ひろ〜い海へ身を任せよ
海へ
海へ、行った。
友人と二人で連れ立って、嵐の後の、ぽっかりと月の浮かんだ、静かな海へ行った。
埠頭。
潮の香り。
灯台の灯り。
何か云いたかった。
何か云いたげだった。
けれどもずっと、黙っていた。
惟々二人で、海を眺めていた。
放射線治療も終わりいまわ暇や…何とかせい!
まあこれから始まる化学治療に備えて静養を取るか?
「先週15日あたりのお題が『夜の海』だった」
前回のお題もお題だったが、今回のお題も相変わらず、手強いわな。某所在住物書きは己の記憶を辿りながら、困り果てて頭をガリガリ掻いた。
これといって海の思い出が無いのである。
「『海へ行ってボーッとする』、『海へ行くより俺はインドア派』、『ゴミ拾いと環境整備で海へ恩返し』、『台風接近中は海へ行くな』、『ソシャゲの夏イベは大抵海へ行って水着』。他は……?」
そういや、海での海難事故より、川での水難事故の発生数が云々って聞いた気がするが、デマだったかな。
物書きはふと気になり、ネット検索を始めた。
――――――
まさかの前回投稿分からの続き物。最近最近の都内某所、対岸に高層ビルのLED照明溢れる海浜公園で、
エキノコックスも狂犬病もしっかり駆虫予防済みの子狐1匹にリードとハーネスをつけた若者、人間嫌いと寂しがり屋を併発した捻くれ者が、
親友ひとりと一緒に、夜の散歩をしておりました。
「こぎつね?!子狐って、おまえ、何がどうした」
「こいつが『黒歴史をこれ以上暴露されたくなければ海へ連れて行け』と」
「は?」
「信じる信じないは任せる」
「はぁ」
捻くれ者は名前を藤森といい、親友は宇曽野といいました。同じ職場の隣部署同士、時に笑い合い、時に語り合い、たまに冷蔵庫の中のプリンひとつでドッタンバッタン喧嘩したりして、
それはそれは、仲良くしておったのでした。
「ところで藤森」
くっくぅーくぅー、くっくぅーくぅーくぅ。
夜の海へ来て、散歩して、コンコン子狐はご機嫌。
鼻歌かわいらしく、尻尾もびたんびたん。前のめりになってトテトテ、ちてちて。
元気な子犬のそれと、ちっとも変わりません。
時折ピッタリ止まっては、砂浜スレスレに鼻を近づけ、何か匂いをかいでいます。
「先日無断欠勤した例の中途採用、進展があったぞ」
「『例の中途採用』、」
「突然『辞める』とダイレクトメッセージよこして、既読無視に通話不通のだんまりだった、例の」
「覚えている。何かの未遂でもしたか」
「総務課の尾壺根が動いた。持ち前のオツボネスキルで、根気強く『手続きだけはしに来い』と」
「それで?」
「終業時刻丁度に来て、離職のために必要な書類を尾壺根とふたりで整えて、課長の机に提出して帰った」
「オツボネの言うことは素直に聞くのか」
「なんだかんだ言って、中途に話しかけていたのはオツボネひとりだったからな。『こいつは味方だ』とでも思ったんだろうう」
あとは中途の部署で処理して、やることやって、中途が正式に辞めてそれで終わり。
何も特別なことは無い。いつも通り、ブラックに限りなく近いグレー企業の通常営業だ。
宇曽野はため息ひとつ吐き、ちょっと笑って、散歩を楽しむ子狐を見ました。
コンコン子狐はブラックだの、離職だのは全然知らない風に、浜辺で見つけたカニにちょっかいを出し、海へ帰ろうとする進路を塞いで鼻をくっつけ、
ぎゃぎゃぎゃっ!きゃんきゃん!
案の定鼻をハサミでバッチン。はさまれて十数秒、ドッタンバッタン暴れまわっておりました。
海へ行った人間ふたりと子狐1匹が、お散歩するだけのおはなしでした。
その後子狐は藤森に抱かれてヨシヨシされ、カニは無事、奇跡的に無傷で海に帰っていきましたとさ。
おしまい、おしまい。
海へ向かってみた。
夜空と溶けた海が美しかった。
いつまでも見ていたかった。
星が海に溢れているようだった。
車を止め、靴を脱いだ。
砂浜を走る。
潮風が心地よい。
午前零時になったころ。
足を海に沈める。
冷たさに身体は竦むが、私は止まらない。
奥へ奥へ奥へ奥へ奥へ奥へ奥へ。
顔が隠れるくらいまで。
身体の力を抜いて…
意識が途絶えるのを待っている。
私が海に来た理由。
…それは…
#海へ
海へ。
僕の実体験を少し話しますね。
僕は水がすごく苦手だったので
水泳を習って克服しようとしていたんです。
いつの日か水が大好きになっていまして
周りの大人みんなが手を叩いて喜んでくれました。
ある時、親が海に連れて行ってくれました。
僕は大はしゃぎで初めての海を楽しんでいました。
両親は、バカップルがよくやっている
「ちょ、まてよ〜笑」「きゃっきゃ♡」状態で
僕なんかそっちのけで楽しんでいました。
すると僕は目の前に大きな波がやってきた事に気づきます。
波を認識したと同時に、飲まれてしまいました。
両親が僕のことを思い出し、焦っていたそうです。
あの子は一体どこに行ったんだと。
母親は泣き始め、父親も僕の死を実感したのだとか。
すると、波がだんだん引いてきました。
僕は砂に捕まり大笑いしていたのです。
その後無事に助かり、僕は今でも元気に生きています。
「そうだ、海へ行こう」
唐突に君は言った。思いつきは彼のお箱。呆れながらも僕は答える。
「そうだね、海へ行こう」
どこがいいかな。青い海がいいな。白い雲と青い空と。
君はにこにこ笑いながらそう言って、大きく伸びをした。
「海に行ったら俺は真っ先にドブンと飛び込むんだ。君はそれをケタケタ笑うだろう。そうしたら俺は怒ったふりをして海の水を君にかけてやるんだ。その水はとても冷たかろうよ」
「そうだね、きっと冷たい。僕もきっと怒ったふりをするだろう。そしてケタケタ笑うだろう。いつだって君の、思う通りに」
その幸福な光景を思い浮かべて、そして僕らはケラケラと笑った。
決して行けない海を思って、ケラケラと笑ったのだった。
海へ行こう