saiki.k

Open App

「そうだ、海へ行こう」
唐突に君は言った。思いつきは彼のお箱。呆れながらも僕は答える。
「そうだね、海へ行こう」
どこがいいかな。青い海がいいな。白い雲と青い空と。
君はにこにこ笑いながらそう言って、大きく伸びをした。
「海に行ったら俺は真っ先にドブンと飛び込むんだ。君はそれをケタケタ笑うだろう。そうしたら俺は怒ったふりをして海の水を君にかけてやるんだ。その水はとても冷たかろうよ」
「そうだね、きっと冷たい。僕もきっと怒ったふりをするだろう。そしてケタケタ笑うだろう。いつだって君の、思う通りに」
その幸福な光景を思い浮かべて、そして僕らはケラケラと笑った。
決して行けない海を思って、ケラケラと笑ったのだった。

海へ行こう

8/24/2023, 5:12:38 AM