#119 夕日を迎えるエメラルドグリーン
海へいこう
都会に疲れた足を引きずり
あの海へいこう
まだあるだろうか?
あの海は__
親友とおしゃべりばかりで仕上がらなかった写生大会
居残りでふたりで描くことにしたあの船着場で
青春のおしゃべりはさらに続いた。
気がついたら夕方で、青かった海はエメラルドグリーンのグラデーションに変わり夕日を迎えていた。
ショッピングモールどころか映画館もない
日が暮れると街灯が妖しく照らすアーケードを
はだけそうな浴衣を着た酒臭い観光客が
歩き煙草をふかしながらぞろっと歩いている__
そんな時代の冴えない温泉街に私たちの青春はあった。
だけど、その時は、
「今更だけど綺麗だね〜」
と少しだけ故郷を誇らしく笑い合った
結局、絵は仕上がらなかったけれど
何とかなるさ〜
もう帰ろう
バスがなくなっちゃうよー
ふたりとも迎えの為に
気軽に親を呼べる家庭じゃなかったから
常に帰りのバスの時間は大切で
スマホはこの時代のドラえもんさえも持っていない
ずっと先の未来のマシンだったから
この海を忘れないように
心のカメラで写して慌てて帰った。
.....
あの時の海は今も心のアルバムに残っている。
けれど、あの海を見た場所はもうないだろう
でも、あの海は
きっと今日も美しいエメラルドグリーンに染まり、夕日を迎えていると思う。
お題「海へ」
8/24/2023, 7:24:17 AM