『海へ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
海を見下ろしていた。
その虚ろな瞳には、何の感情も浮かばず。表情もなく、ただ海を見下ろし打ち寄せては砕ける白い波の音を聞いている。
一歩足が進む。不安定な足場であるにも関わらず、その足が竦む事も恐怖で顔が歪む様子もない。視線は海へと注がれたまま、足だけが前へと進んだ。
落ちてしまう。暫くすれば進む足が宙をかき、逆らう事も出来ないままに体は海へと沈む。沈んだ体は波に打たれて肉を削ぎ、瞬く間に骨をさらすのだろう。そして削がれた肉は海へと還り、新たな命の糧となるのか。
ひょう、と音がした。うねり響く風の音がどこからか聞こえている。
近くの海蝕洞が鳴いているのか。岩壁を打つ波とは異なる、反響した波の音が微かに鼓膜を揺らした。
動きが止まる。海まであと数歩。
虚ろな瞳が瞬き、僅かに光が灯る。己の置かれている状況を認識しようと視線が彷徨い、眼下に広がる海の碧と波の白を認め。
その表情が恐怖に彩られる。
打ち寄せる波に混じり、無数の腕が手を伸ばしていた。おいでおいでと手招いて、岩壁の上から墜ちる命を待っている。
呼んでいる。遍く命を海へと還すために。あるいは生を羨む亡者が道連れを求めて呼び続けているのか。
ひょう、と再び風が鳴く。
波の音を含むうねりが鼓膜を揺らし、脳を揺さぶる。僅かに灯る光はそのままに、体の自由だけを奪い去っていく。
気づけば音は風や波の音ではなく、呪詛を吐く亡者の声へ成り代わっていた。
恨み辛みを吐く声に導かれ、足が海へと進み。逆らえぬ恐怖に、迫り来る絶望にただ涙を流し続けた。
また一歩。海が近くなり。
「あぁ、そのまま海へと墜ちるのね。可哀想に」
耳元に直接囁きかけられた女の声に、劈く絶叫が辺りを震わせた。
泣きまろび去って行くその背を見送りながら、磯の香りのする女は途方に暮れる。
声をかけただけだった。海蝕洞に溜まった澱みに誘われ海へと向かう人の子に、墜ちてしまうと声をかけた。
それだけであったのに、他の何よりも怯え逃げていくなんて。
はぁ、と息を漏らし、踵を返した。
人の子もいなくなってしまった事であるし、これ以上ここにいても仕方がない。
ひょう、と鳴く海蝕洞の声が聞こえ、振り返る。
邪魔をするなと言いたげな、ざらりと粘つき澱んだ風が頬や首を撫ぜていく。五月蠅い雑音に顔を顰め、文句の一つでも言ってやろうかと口を開く。
だが女の唇から言葉が溢れ出すより早く、鳴く声は断末魔の絶叫へと変わる。
逃げ惑い、許しを請う声。恨み憎む声。悲鳴。
無音。
はて、と首を傾げて海へと近づく。
見下ろせば先ほどまで無数に手招いていた腕は一つも見えず。ただ繰り返す波の音だけが聞こえていた。
少し考え、あぁ、と声が漏れる。
そういえば今は、常世のモノが来ていたはずだった。
ここらにある、いくつかの海蝕洞に溜まったものでも回収に来たのだろう。
暫く前から洞内に入り込む波に乗り、海から来たものや海へといくものが混じり合って、大層な澱みを形成していたようであった。そこに混じり出れなくなった魂魄でもあったのだろう。ただでさえ人の子を惑わすほどの澱みだ。先ほどの人の子は本当に運が良かった。
もう一度、海を見下ろす。
亡者の腕はない。呪詛を吐く声もない。
そもそもあれは本当に亡者のものであったのか、それとも人の子の恐れ畏怖する想いが生み出したものか、女には判断が出来ないが。
ほぅ、と息を吐く。
何だかすごく疲れてしまった。気まぐれで人の子に声をかけては怯えられ、澱む声には恨まれて。
あげくに耳障りな断末魔を聞かされるなんて。
思い出して、すべてが面倒になってしまった。
帰るために元来た道を歩くのも億劫だ。幸いもう海には腕も声もいない。
海へと足を進める。迷う事なく、臆する事もなく。
進んだ足が、宙をかき。
女はそのまま、抗う様子もなく海へと落ちた。
20240824 『海へ』
『海へ』
あの日の後、私は何回か朝日さんのところに通った。
今日も、あの人の元に行こう。そう決めて、私はいつもの道を駆け下りた。ここに来るといつも胸が踊る。
でも、朝日さんの様子がおかしい。いつもピアノを弾いているのに、今日は私がいつも座る席に座っている。
[こんちは…]
「お!きた!まってたよ。おれ。」
入ってきた瞬間に畳み掛けられたので私は驚きを隠せなかった。
[え、あ…はい。]
「今日さ、ピアノ教室はお休みにして出かけない?」
「校外学習!あ、教室だから…室外学習か。行くよね?」
そう言いながら私にキラキラした瞳を向けてきた。
[あの、、行きたい、です。室外学習。]
「やった。決まり。おれ、こう見えてバイク乗れるんだ。乗って乗って!」
そう言って、彼はバイクを持ってきた。スクーターだった。
ヘルメットをつけ、後ろに座る。オドオドしていると、彼に手首を掴まれた。
「、ちゃんと掴まっててね。ケガしちゃうから。」
[は、はい。]朝日さんの背中は暖かかった。
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
着いた先は、海だった。何年ぶりになるだろう。
[わぁっ。]
パシャ。朝日さんの方をむくとカメラを向けられていた。
[え、ちょ、消して、]
「あー。ごめん、これフィルム。現像したら見してあげる。」
悪戯気味に笑った彼に、そう言われた。
[じゃあ、それまで通います。これからもたくさん教えてください。]
「喜んで。」
そんな会話をしたあとは水掛けをしたり、砂浜でお絵描きをしたり、朝日さんとずっと笑っていた。
―帰りたくないと、思ってしまった。
現像した写真を見るのがちょっと楽しみな自分がいた。
《朝からの使者》EP.5 シャッターとあなた
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〇執筆日記
こんにちは。読んでくださり、ありがとうございます。
今、皆さんに読んでいただいた《朝からの使者》ですが私的にはまだ2人の物語を書きたいなと思っております。どうぞお付き合い下さい。
合間合間に短編も挟みますが、この作品を楽しんでいただけると嬉しいです。
このあとも、素晴らしい体験をお楽しみください。
「海へ」
この夏、母が死んだ。
美しく快活で、器用な母が死んだ。
何年もの間病気だったから、覚悟していた。つもりだった。
覚悟もしていたし、準備も整えてきたつもりだったけど、何もかもうまくいかない。手続きやら何やらに追われて悲しみに暮れる暇もない。
ボーっとしていたのか、それともセカセカ動いていたのかも分からないまま、ぼくは母の遺骨を受け取り終わっていた。
あまりにもあっけなかった。
その帰り道、母が生前言っていたことをふと思い出した。
『私が死んだら、お骨を海に流してちょうだい?』
なぜそんなことを頼むんだと思い聞くと、もっと広い世界を見て回りたいからだと母は答えた。それから、海に行けば、またみんなに会えると付け加えた。
次の休みの日、ぼくは暖かい海へ向かった。
きっと母は北の海よりも、こういう珊瑚礁のあるような海の方が好きだろうと思ったからだ。
散骨をサポートするサービスの人たちがぼくを出迎え、労ってくれる。意外とカッチリしすぎていない雰囲気だったから、ぼくは少しほっとした。
説明を受けたあと、小さなボートに乗って海の真ん中まで来た。
ぼくはこの海と、スタッフの人たちと、それから母に挨拶した。
こんにちは。よろしく。ありがとう。そして、さようなら。
だんだんと、母だったものが海に溶けていく。
だんだんと、母がいなくなっていく。
だんだんと、母を忘れてしまう。
でも、これは母の望んだことだから。
ぼくにしか叶えられない願いだから。
そう言い聞かせて、散骨を終わらせた。
なんとか用事は終わったはずなのに、気が抜けてしまって何もできない。ぼくは島を少し見て回ったあと、最後に海を見た。
母を溶かした海は、透き通っていて眩しかった。
ここを離れるのが名残惜しくてできない。
でも、ぼくも進まないと。母が一歩進んだように。
ぼくは海風を背中に受けながら、砂浜を離れた。
どこかで母が、手を振っていたような気がした。
いやぁ、今年の夏も終わってしまったなぁ。
これといって、夏っぽいことはしてないが。
最近は旅行にも行ってない。
色々と忙しくて、行く気力が無いからな。
まぁ、唯一夏っぽいことしたなぁと思うのは海に行ったことかな。
ゆうて夏以外もいくけどな。
海までの散歩はとても楽しい。
自然の空気は心のモヤモヤを取り払ってくれる。
目に映る田舎の風景は心身を軽くしてくれる。
特に一人での散歩は格別だ。
誰にも邪魔されない。
そんな時間は私の至福である。
そんなに人のいない海はなんかワクワクする。
自分が独り占めしているようで優越感がある。
人がいない海で大きな声で叫ぶとスッキリする。
歌を歌うのもいい。
人がいない田舎だからこそできることだと思う。
来年も海に散歩できるといいなぁ。
end 『海へ』
#33 海へ
[海の中]
深い深い水の中へ
どこまでも深く潜ってゆく。
だんだん研ぎ澄まされていく水の音。
静かで冷んやり落ち着いた空間。
想像するだけで涼しくなる。
お題:「海へ」
夜になると、深く沈める。
月明かりで、泡が見える。
身体の動きは鈍いが、心地良い。
ひんやりとして、自分の呼吸だけが聞こえる。
底の知れない海溝へ。
。
。
。
。
。
。
目覚めるとそこは、少し茶色っぽい天井だった。
暖かい涙でふいに目が覚めた。
白い枕に顔をうずめて、あなたの温もりを追いかけて、焦がれた夢の続きは何処にあるの。
君のいない世界でどれほど時が経っただろう。
忘れたい記憶ばかりがあなたとの思い出になって、わたしの心の柔らかい所に居座って離れない。
あなたに合わせて買ったキングサイズのベッドも、寒いからと隙間なくくっついて座った三人がけのソファも、身体の大きなあなたがよく頭をぶつけていたキッチンも、ほんと、どこにでもいる。
どこにでもいるくせに、あなたの匂いは朝が来る度に薄れてもうちっとも思い出せない。
あなたを忘れて、忘れられなくても大切な思い出として左胸の奥深くへしまって、こんなこともあったね、なんて、モノクロの記憶となる日は来るの。もしそんなことが起こるなら、あなたの愛を知る前のわたしに、傷の痛みなんて知らないわたしのところまで、今すぐに連れていってほしい。
夢の続きを願えば願うほど、わたしが息をしている世界に、あなたはもういないんだと、思い知らされる。
冷たい海のような、澄んだ瞳で、呪われた世界を抱きしめたあなたは何処に帰ったの。
あなたと最後に行った海へ、砂を踏みしめても、そこに君はいないのに。果てしのない引力に、引き寄せられたまま。わたしだけがずっと。
【海へ】海へ連れて行ってください!見たいんです!
と君が、うみのちかくの舞台で歌うのがわかってから
そうお願いしたら、君は、わたしの海へ行きたい
気持ちを察して、一緒に海に行ってくれた。
晴れて、空と海との青は、ホントに美しくて、そして、
そこに溶け込む君も美しくて、内緒か公なのか
分からないけど隠し撮りをした。
もっと海を近くでみたいので、小石の浜辺へいって
ほしいですとおねがいしたら、そこまでいってくれて
一緒に波の音を聞いたね。海の話もしたね。
心残りだったのは、ちょっとデコボコだったのを
あるきにくいふり?をして、手をさしだせなかったこと
多分君も手を差し出してくれたと思うのだけど・・・
大事な時間を使ってくれてありかとう。このときの
海と君は宝になったよ。
また私と一緒に【海へ】いってくれますようにー
この想い、届け!!なーんてね(笑)(笑)
3年後のpure
朝目が覚めた時 最初に思った事は「海に行きたい」だった
ちょうど休日だし、さっさとベッドから起きた私は朝のルーティンを済ませる
「いただきます」
急いで作った朝食を前に手を合わせてから食べる
テレビから天気予報士の注意喚起の声が聞こえる
『今日も昨日まで同様、天気の急変があると思われます』
(雨晴兼用の折り畳み傘を持って行こうかな)
もぐもぐと咀嚼をしながら持ち物を頭の中に浮かべて行く
「ご馳走様でした」
手を合わせてから食器をシンクに持って行く
食器を水に漬る
一人暮らしだ、多少 家事をサボっても誰も咎めない
それをいい事に帰宅後の自分に洗い物を託す
さっさと身支度を済ませると鞄の準備をする
「お財布、スマホ、ハンカチ、ウエットティッシュにポケットティッシュ
あとは…」
必要であろう物を鞄に詰める
鞄を肩から掛け、玄関に移動する
今日は綺麗めな格好だけど、歩くしスニーカーにする
「行ってきます」
誰もいない部屋に声をかけて折り畳み傘を持って外に出る
これから行きたかった海へ向かう
ドキドキとワクワクで足取りがいつもより軽い気がする
夏休みと言うと、幼少の頃から海に行くことが多く、旅行に行く前日は、興奮して眠れなかった。長野県は、海に面していないため、移動には3時間はかかる。向う間は、寝て行くこともあり、道中は、退屈な時間を歌を歌って過ごした事を覚えている。やっと海に到着した時、眼下に広がる海に感動し、歓喜の声をあげる。今も変わらない感動の一瞬である。
海へ
海は広い。
世界が広がるかんじがする。
やっぱり、日本は広い。
海へ
夏の終わりの海へ行こう。
サザンを聴きながら。
きっと分かる人がいると思うんだ。
人生にほんのひと匙のロマンティック。
「もう朝か。」
見知らぬ家に来て気付けば長い時間が経過していた。窓から見える太陽も今となっては見慣れた。眩しい光に纏わりつかれながら、布団から抜け出す。相も変わらず真ん中に一つ置かれた机には、彼が作ってくれたご飯がラップに包まれている。白くなっているラップを見て、部屋の扉を忙しく開ける。彼がいるかもしれない。作ったばかりの温かいご飯は、彼の存在を証明するのに十分だった。でも、もう既に彼は出かけてしまっていたようで、姿は見えなかった。
彼との出会いはほんの一か月前。
私は学校でいじめを受けていた。最初は陰口から始まり、直接的ないじめに変わっていった。物は無くなり、制服や髪の毛はあられもない姿になった。終いには暴力になり、毎日傷が増え続けていった。それに加えてDV気質な父親と、その父親のせいで変わってしまったネグレクトの母親。家に帰ったところで、心配されるわけなどなくて、唯一味方だと思っていた先生は、私を大切にするという名目で身体を触られるようになった。私の辞書に味方の文字は見当たらなかった。
そんな時、私は河川敷で彼に出会った。パーカーを深く被り、肌という肌をこれでもかと隠すような服装、足元には虫が集まっているようにも見える。何分、何時間ここにこの人は留まっていたのだろう。興味本位で私は彼に声をかけた。最初は無愛想な返事ばかりだった。つまらなくなって自分の話を始めた。彼はつまらなさそうな顔をしながらも、相槌だけはずっと打ってくれていた。最後に私は深呼吸をして言った。
「ねぇ、私のこと誘拐してよ。」
あの時の彼の顔を私は忘れたことは無い。複雑な顔。この世にある五十音を絡めただけでは表しきれない顔。沈黙の後に静かに彼はまた相槌を打った。
それから私たちの誰にも知られない生活が始まった。彼は誘拐犯、私は被害者。世間には誤った情報しか流れない。私の身体を、私の家庭事情を知られたくない親は、今までに見た事ない形相でテレビの前にいるであろう視聴者に、私の無事を訴えかけていた。
「犯人め、うちの子を早く返せ!」
「お願いだから、私の大事な娘を返して…。」
怒号を飛ばす父親は、きっと私につけた暴力の痕を消すのに必死。涙ぐみながら話す母親は、きっと自分が記憶から消したはずの私を、バレないように片付けるので必死。テレビという電子機器に誤った情報を流されているのは、私と彼のことだけではなかった。私と親と名付けられた二人の男女間の関係もだった。そんな誤った情報に踊らされているニュースのアナウンサーは、私の捜索を進めることを告げた。
彼は毎日名も無き場所へ出かけていく。行き先に関して私に何かを告げることは一度も無かったけれど、ご飯だけは毎日用意されていた。起きるとまずは食卓と思われる簡素な机に、一人分だけ差し出された食事を胃の中へ流し込む。昼ご飯は、冷蔵庫の中に作り置きされており、一緒に置かれたメモを見て電子レンジで加熱する。夜は彼が帰ってくるのを待ち、彼が作った出来たてのご飯をまた胃に流し込む。彼のおかげで私はいつも温かいご飯が食べられている。今まで食べたことない口に広がる食材の味と、熱を感じる彼の料理が私は大好きだった。
ある日起きると私の布団のすぐ側に、彼が座り込んでいた。何かあったのかと顔を覗き込むと、
「今日この家を出よう。」
彼は小さな声で、けれどはっきりと一言放った。つまり彼が言いたいのは、きっと駆け落ちのことだろう。もう警察に居場所がバレたのかもしれない。もうじきここに警察か何者かが来ることを、彼は察知しているように見えた。
大事なものだけを鞄に詰めて家を出る。彼から貰った帽子を深く被り、彼の服に身を包ませる。気付けば私の周りには彼のものが満ち溢れていた。もぬけの殻になった部屋や、ゴミ袋いっぱいに収容された机や椅子たちを見て、何だか全てが終わってしまうように感じた。誘拐された時から、もう後にも先にも引けなかったのかもしれない。
二人手を繋ぎ、誰もいない細道を通る。数多の家の換気扇から漏れる排気ガス。誰にも回収されない収集所に積み上げられたゴミ袋。お腹を空かせた野良猫。嘘にまみれた関係性の私たちの最後には、ぴったりな道かもしれなかった。汚いはずなのに、臭いはずなのに、何だか居心地がよくて、ここから離れたくなかった。私は薄々勘づいていた。これから向かう先で、私たちの身に何が起こるのか。その何かの正体。もうこの世界には戻って来れないだろう。
何時間も歩いた末、辿り着いたのは崖の上で、そこから見えたのは綺麗な海だった。生き物を住まわせ、太陽からの言葉を反復する。何にも染まっていないはずなのに、この世界に馴染んでいるように見えた。海から見える私たちは、きっと異質な何かでしかないんだろう。
急に彼の手が震え始める。耳を澄ませると誰かの足音が聞こえた。後ろを振り向くと、そこには警察官が立っていた。
「ようやくここまで追い詰められた…!」
応援を呼んでいたのか、その警察官の一言で後ろからぞろぞろと仲間達が私たちを囲った。
恐怖で足がすくむ。もう終わってしまう。彼との二人だけの世界が壊され、また味気のない世界に引き戻されてしまう。震えながら彼の顔を見る。彼の瞳は私を捉えていた。
「一緒にあっちに行こう。」
初めて耳にすんなり入った彼の声は、私を突き動かすのに十分なほど、響いて聞こえた。私たちは手を握り直し、二人で笑って、
飛んだ。
-ある日のニュース速報による情報-
20xx年某日に起きた少女誘拐事件の犯人と、その少女の遺体が、○○県の△△市の□□海沖で発見された。二人の遺体はお互いの手を握りながら、速いスピードで頭部から落下したと推定された。顔の原型は留めてなかったのだとか。現場にいた警察官の証言によると、犯人の男は飛び降りる直前、少女に対し「あっちに行こう」と発していたそう。このことに対し、警察側は「あっちとは、海のことなのか天国のことなのか、どちらを指していたのかは分からない」との見解を示していた。
-少女の日記より-
〇月△日 私と彼は、明日この世界から旅立つらしい。彼はきっと何かを感じてる。それが私にとっていい事なのか、悪い事なのかは分からない。考えたくない。私は彼が行く場所へ着いていくだけ。
あーあ。死ぬ前に海に行ってみたかったな。汚い私が綺麗な海で洗われたら、きっと私も綺麗になれるよね。貴方を信じてる。最後は一緒に飛び込もう。
「海へ」
海へ行きたい
という私に、
髪、ばさばさになるよ?
と現実的な指摘をする彼
確かに。まあ、言ってみただけ
別に海が好きなわけでもないけど、
何かを求めて海に行きたくなる
ロマンチック?
青春?
鑑賞?
海に惹き付けられる衝動はなに?
きみとうみへ
きみと会うのは決まって夜
都合いい関係であるからかな
きみは私と 付き合いたい っていってくれた
でも冗談なの、彼の言うことは全部。
唯一ほんとなのは やろうよ
その言葉だけ
私は好きなのに、付き合いたいのに
この思いが伝わることはないし
叶うこともない
彼は女癖が悪い
女の子がたくさんいる
たくさんいるから私なんていなくたっていい
私のかわりはたくさんいる
そんなことわかってる
でも関わりたい
でもきみのことが好きなの
もう少しで手がつなげそうな距離
彼の手に触れたい
きみはどう思うのかな
普段なにもしない私が手を触れたら
嫌うのかな
冷たすぎないけどその届かない感じが好き
って最初にいってくれたの私覚えてるんだ
届かない私が好きなら
届く私は好きじゃないのだろうか
もうやってる時点で届いてるか
そう思いながら
じっときみの横顔と手とそして揺れる海を
見ながら私は口にした
海がきれいですね。
意味:あなたに溺れています
海へ
私が目を覚ましたら、見知らぬ光景が広がっていた
宇宙のような、宇宙じゃない
ココは何処なんだろう?
暗闇が広がり、私と共に、倒れていたのは
銀魂の神楽、キングダムのキョウカイ、ヒロアカの
死柄木弔、轟焦凍、進撃の巨人のエレンイェーガーだ。
そして、私は、キョウカイと同じ服を着ていた。
グラグラ…
エレン『…!?』
死柄木『何が起こっているんだ?』
神楽『ココは、バイオハザード……あるね……(*_*)』
神楽以外の全員『:(;゙゚'ω゚'):』
バイオハザードの音楽が流れ始めた
ダカッ………
焦凍『おい!動いているぞ!』
ダカッダカッ………
死柄木『階段の取っ手を持て!』
神楽『取っ手、持てれないアル!!!!!』
死柄木『クソッ!!!!!』
焦凍とエレン『神楽!?』
キョウカイ『危ないよ〇〇』
神楽『ワー!』
神楽が、空中で浮いている道路から滑り落ちたのだ
焦凍とエレンは、半冷半熱と巨大化できる
2人は、空中にいる神楽を助けにジャンプしたのだ
轟焦凍は、半冷半熱を神楽に向けて
エレンは、手を噛み、巨人化したが
どれだけ落下するんだろう?
ジャボーーーーン!!!!!と、海に叩きつけられて
3人は、溺れて海の中へ………
まだ空中に浮かんでいる道路でしがみつく、私と
キョウカイ、死柄木弔は、取っ手を持って限界まで
きているが、死柄木が持つ個性[崩壊]で、
道路自体を崩壊しようと考えていた。だが、
崩壊個性が叶わず、道路が崩れ落ち、3人たちは
暗い空中へと投げ込んだ。
キョウカイは、私の手を握りしめて、死柄木も、私の片手を握りしめて、海へと3人でジャボーーンと、
海に叩きつけられて暗い海の中へ
深海6000mへと、6人は辿り着き、
そこには、デクも微笑みながら寝ていた。
海底の砂に触ったら、なんと、砂と海が虹色に輝き、
ハープ音楽が流れた
不思議な夢だった
2024年8月17日(土)の夢のことだった
「お前、ちょっと顔貸せよ」
中学生活3日目、3年の先輩に呼び出された。どうやら目をつけられたらしい。
なぜ……?
何もマズイことしてないと思うんだけど。
唯一目立ったことをしたのはシャツ裏返し事件くらいだけれど、特段先輩方の怒りを買うような出来事とは思えない。
私がおっかなびっくり先輩についていくと、先輩は校舎の裏手にある海辺まで歩いていった。
ああ、これ沈められるやつだ。
いざとなったらどうやって逃げよう、襲ってきた先輩にカウンターをくらわせて逆に突き落として……
なんてことを考えていたら、先輩がふいに立ち止まった。振り返って言う。
「お前、名前は」
「えと、岡野煌時です」
「煌時。得意科目は」
「へ? えっと、国語ですかね」
「ふ〜ん……運動は苦手か?」
「いえ、わりと好きなほうです」
何これ、自己紹介?
「じゃあ泳ぎは。速いか?」
「いえ、特に速くは……平均くらいかと」
「よし」
よしって何? やっぱり落とされる??
「俺は水泳部だ」
「はぁ、そうですか」
「お前も入れ」
「はい???」
「俺がバッチリしごいてやるよ」
「い、いえ私は弓道部に入ろうかと」
「お前、先輩の言うことが聞けないのか」
「え、でも……」
「とにかく入れ。逃げたら許さん」
本当に何だこれ?
部活の勧誘?
でもなぜ私を? もっと泳ぎが得意な新入生はたくさんいるだろうし、そういう子に入ってもらったほうが都合がいいのではないか。
(ワケがわからない……)
先輩は途方に暮れる私を置いて去って行った。
教室に戻ると、心配したクラスメイトたちに囲まれ質問攻めにあった。
「どうしたらいいかな……」
「そりゃあ水泳部入るしかないっしょ」
「えぇ〜」
「そうだよ。でないとボコボコにされる」
「ボコボコにされるの!?」
ボコボコは困る。でも弓道部に入るって先生に言っちゃったしなぁ。
『……ということがありました』
『そっか。君の中学生活は波乱万丈ですね』
帰宅して速攻で先生に相談した私。やっぱり先生もクラスのみんなと同じ意見だろうか。
『何も悪いことしてないのに、なぜこんなことに🥲』
『君にはやりたい部に入部してほしいですが、そばにいて守ってあげられるわけじゃないですからね……』
『いっそ掛け持ちしては?』
『そうですね、体力がもつかは賭けですが』
『きっとやれますよ💪』
『それより、その先輩の意図が気になりますね。なぜ元水泳部でもない君を個人的に勧誘したのか』
『ですよね!』
『名前も知らなかったみたいだし、なぜ私に目をつけたんでしょうか』
『君のことをどこかで見て、顔だけ知っていたんでしょうね』
『問題は気に入ったから誘ったのか、気に食わないからいじめてやろうと誘ったのかです』
『前者であることを祈りましょう。後者であれば、すぐに連絡してください。君のお父さんに相談して、学校側と話し合います』
『頼もしいです(*´˘`*)』
『ちなみに先生』
『もし私が気に入られてたら、妬いてくれますか?』
『……妬いてほしいんですね』
『はい🥰』
『ちなみに、その先輩の名前は?』
『あ、話逸らした😡』
『そういえば聞いてませんね。名乗らずに行ってしまいました』
『そうですか……ますます謎ですね』
『まぁ、何とかやってみます。まずは体験入部』
『応援しています😊』
謎の先輩の件は不安だが、体験入部自体は楽しみだ。先生の教え通り、自分らしく楽しもう。
私は先輩の後ろに見えた海が意外に綺麗だったことを思い出しながら眠りについた。
テーマ「海へ」
【海へ】
僕の住む町は海は近い。ただし、海水浴が出来る海辺へ行くのには電車で約二時間はかかる。海水浴をするならの話だ。
海を見るだけなら最寄駅から数駅乗れば行ける。海っぽい名前の駅を降り、改札を抜ければすぐ港が見える。港へ続く道の両端には南国っぽい木が立ち並び、一気に海っぽい光景になる。海風が吹くのを感じながら、ゆっくり歩道を歩く。夏も終盤に差し掛かってはいるものの、まだまだ暑い。滝のように汗が額や腰から流れている。
数分後、港へ到着した。展望デッキの広場の目の前はもう海である。デッキの手すりに上半身を預けた。数メートル下は穏やかに波打っている。近くには工場が立ち並び、工場の反対側は観光用の小船がぷかぷかと桟橋で揺られている。海水浴が出来ないのは貿易港だからである。水平線の先には小さく貿易船や工場などが見えた。
僕はすう、と息を吸う。潮の香りがする。夕方だからか、海の底は紺色で見えそうにない。昼間でも見えないかもしれない。流石に水深は浅いとは思うが、それでも底が見えないだけでも得体の知れない恐怖はある。しかし不思議だ。海を眺めていると心なしか落ち着いた気分になる。僕は空を見た。夕日は空と海と工場を照らす。忙しない一日なんてまるでなかったみたいだ。
僕はしばし時間を忘れ、日が沈むまで、眺めていたのであった。
海へむかって、車を走らせて
遊助のひまわりをきいて
夏だなーって思う
No.99『海へ』
海へ行こう。
水平線を君と眺めたい。