『海へ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
彼女の呪い
「海に溶けてしまいたいな。だって、海って私たちが思うよりすごく大きいでしょう?自由って感じがするじゃない。」
彼女の突拍子もない話が好きだった。けれど彼女のいない今となっては海を見る度に思い出してしまう、呪いとなった。
「空と海の境目ってさあ、ない方が良くね?」
馬鹿なあいつが、窓の外、遠い海を眺めながら言った。
「なんで?」
「空と海も地球も宇宙も。全部ごちゃ混ぜになったらさあ、明日のテストもなくなるよ、多分」
「はは、そうかもね」
次の日のことだった。あいつが、坂を下ったとこでガードレールに突っ込んで、空と海と一緒になったのは。海も空も群青色に染まり、境目なんてない。ガキの頃、ふざけてぐちゃぐちゃに混ぜた絵の具みたいな色。
その日から、長い間雨は降り続いた。
「おや、マスター。どうしたのかな?」
部屋に戻る途中、バーソロミューに声をかけられた。
「バーソロミューか。モリアーティ教授のところで飲もうとしたけど、あいにく閉まってたみたいでね。部屋で飲もうかなと」
「なるほど、ふむ……」
こちらの事情を話すと、彼は何かを考えだした。気になって立ち止まっていると、何か思いついたらしい。
「マスター、君さえ良ければ、私の海賊船で飲まないか?」
教授のバーで飲むとき、結構な頻度で視線を感じていた。彼で間違いないだろう。
別に咎めるつもりはない。至福のひとときを邪魔されたわけでもないからだ。
それに、いつもと違う場所で飲むのも悪くない気がした。
「なら、お邪魔させてもらおうかな」
月明かりの下で、密かに飲むのも悪くない。
お題
「海へ」
※未完
「きっと私が帰る場所は海だ」
心の片隅にある漠然とした自分の存在価値とともに
そんなことを考える
生涯をまっとうし、息絶えた私のその後は
大地を担う海となり再スタートをするのだ
次の私が待っている
さぁ、海へ行こうか
「海へ」
私は「海へ」というタイトルに対してこう思った。
「「海へ」とはどゆこと?」って思った。
もしかしたらみなさんの中にもも思った人、いたんじゃないですか?
「海へ」とは今はよく分からないですがもしかしたらこれから生きていく中で分かるかもしれないですね。
「海へ」
走れ走れ海へ向かって
急いで海へ泳ぎ出せ
そうして月夜の晩に戻っておいで
それまではこの砂浜を必ず守ると約束しよう
君たちの子が、砂から顔を出すその日まで
彼女は嫌われている。
人とは違う考えを口にするから。
「人は死んだら海へ還るのよ」
残念ながらそれは、僕たちの知識とは相容れなかったから。
―人は死ぬと土に還る
それが正しく僕たちの常識で、
それが正しく僕たちの現実で、
それが正しく僕たちの希望だ。
土に還り、地に還り、世界の命を生むための糧となる。
そして、世界のために全てを使い果たした生物は、新たな命として生み落とされる。
循環する世界の一部として、僕たちは存在している。
「生命は海から始まったのよ?海へ還らなくてどうするの」
キレイな海色の瞳を瞬かせて、彼女は笑う。
地球の歴史を思えば、彼女は正しい。
けれど、人は受け入れられなかった。
海は恐ろしくて、広くて、帰り方も忘れてしまいそうだ。
けれど彼女は笑うから。
真っ直ぐ見つめて願うから。
「こんなところに、あの子を埋めないで」
立派な墓石の下から、彼女を救い出す。
君の話を信じてあげられない。
君の知識を認めてあげられない。
けれど、だけど。
君は土へ還らなくていい。
「行こう、海へ」
僕は行けないけどね。
君を海へ連れて行くよ。
だってそれが、君のたった一つの希望なのだから。
お題「海へ」
夕暮れ時
私は決まって、海へ出かける。
いつか、あの人に出会えると信じて───。
「進路希望かぁ……
なぁ『将来の夢』的なやつ、考えたことある?」
「ん〜、そうだな。海へ行きたいんだ。静かな海へ」
「ふ〜ん? 海? 将来の夢なのそれ?
それじゃ他の奴も誘って、今週の土曜に行こうぜ」
友人はそうじゃないんだと苦笑したが、
週末はみんなで海を満喫した。
あれから十数年。
友人は今度の宇宙飛行士の試験へ挑戦するそうだ。
『将来の夢』を叶えるため月を目指すそうな。
今度の海も満喫できると良いな。
// 海へ
死んでしまった後、身体は土に還るだろう?なら、魂はどこに還るんだろうね。
地球で最初の生命は海で生まれたと言う。
だったら、魂は母なる海に還るのではないかと俺は思う。
だから、あいつの命日には、俺は花束を2つ買う。
ひとつは身体が眠る墓へ備え、もうひとつは魂が眠る海へ放る。
死後の人間の本質が身体にあるのか魂にあるのかわからない。
だから、両方に花を備える。
真っ白なユリの花束が波に呑まれて浮き沈みしていたが、やがて波間に消えていく。
それを見届けると、俺は手を合わせた。
どうかこの波が、花束に込めた想いをあいつの魂に届けてくれますように。
お題
『 海へ 』
「もう、疲れた」
ここ最近私は不運だ。
8年付き合った彼氏に振られ、あいにく
親友と浮気をしていた。
それも8年のうち6年だって…
笑っちゃうよね、(笑)
気づかなかった私もすごいでしょ……
それに、会社でも
上手くいっていた私の企画が潰された。
仲が良いと思っていた後輩ちゃんに
「あーもーぅ、はぁ……」
海辺はやっぱり気持ちいいなぁ…
海風にふかれて飛んで行ければいいのにな……
サーフィンをしてみたくて海に行った。
楽しくてもう一回やりたくて時が経って、
秋と夏の間になってしまった。
ずっとモヤモヤしてる。
したいことを我慢してなんで生きているのだろう。
そんなに我が儘なのだろうか。
君は無邪気な笑顔を纏って
裸足のまま、一人で駆けていく。
夕陽の綺麗な、海へ。
なぜか君を失ってしまいそうな気がして、
手を伸ばしたけれど、
君には届かなかった。
手が宙を切って、
寂しく自分の方に戻ってきた時、
君は変わらない無邪気な笑顔でこちらをみていた。
「どうしたの?」とでも言う様に。
途中の砂浜で足を止めていた。
君の方に小走りで近付く。
今度こそ、しっかりと君の手をとる。
君の手は、少し肌寒い風とは違って暖かかった。
今度こそ、歩き出した。
二人で。
海へ
海へ
海に行きたいなってふと思う時があるよね。
夏だけでなく。
眺めてるだけで気持ちがスッキリする。
海へ
晴れた日に、遠くで眺めるのがいい
照りつける日射しに、水面に揺らぎ続ける光
ザー、という音
海鳥の声、ベタつく風と、あのにおい
裸足を、波打ち際に差し出すのもいい
服を膝上まで捲し上げて、湿った砂に、足を踏み出す
途端に白い波がサーと砂浜を滑ってきて
25℃で、膝下を撫でてく
そしてすぐに砂を巻き込んで去っていった
またすぐにサーと這いつくばってきては、
サーと砂を巻き込んで、這って去ってく
砂に置いてきたサンダルが無いのに気がついて、
慌てて浮かんでいるサンダルを掴んだ
どこまでも続いている海
世界の国とつながり
地球を一つのまとまりの中で
流れを繰り返す
いつもは安全だが
台風がくると高波や津波が
押し寄せる
海の豹変した時の
恐ろしさはとてもむごい
だがいつもは穏やかなので
海の時は気にかけよう
子供の頃、親戚家族に連れられて海へ行ったことがあった。
親戚の子達が奇声を上げてワイワイ楽しんでるなかに
なんか馴染めず一人で波打ち際をふらふら歩いていたら
やはり一人で何やら作業に耽っている子を見かけた。
ちょっと気になり見てると、手で何かに砂をかけている。
乾いた砂を両手にすくいに行っては
波打ち際まで戻るとまた何かに砂をかけていた。
何に砂をかけてるのかと覗いてみると半透明のブヨブヨした物体。
…?意図は掴めなかったが、何か必死さが伝わってきたので
自分も砂を両手にすくい、その何かにかけるのを手伝った。
半透明の物体が砂山に完全に隠れると、コッソリ小さな声で
「ありがとう、助かったよ」
と言って走って行ってしまった。
よく分からないが、いいことをしたような気になった。
あれ、クラゲだったのかな?何かの卵だったのかな?
もし今度海へ行って半透明の物体を見つけたら、砂かけてみるか。
いや、面倒くさいから濡れた砂をかけよう。
※死ネタ、BL(風味)
【UNDER_TAKER 小噺】
███主任研究員の部屋より見つかった手記より抜粋。
「8/24(D) L:77°F H:87.8°F
実験最終日。対象を海へと放流してきた。
水槽から海へと移してやると、暫く立ち泳ぎのようなものをしてから陸へ上がろうとした。
「もうお家に帰っていいのよ」とディクルム研究員が声を掛けると、抗議の声のようなものを上げて陸へ上がろうとした。
彼■本■に戻っ■■大■■な■■と■安に■■■。(雑に消された痕跡がある)
そのままでは埒が明かないと思い、僕が ̶彼̶対象の頭部を撫でると落ち着きを取り戻した。
またここで宥めすかしても暫くすれば陸へ上がろうとする可能性があるので、計画を変更して沖合まで連れて行くこととなった。
移動には地元の漁師、ガプタ=エカ(72)(男性)さんの小型船舶を貸して頂けた。
沖合へ移動していると、最初は不思議そうに着いてきたがやはり慣れ親しんだ場所であろう。
その身を存分に動かして海を楽しんでいた。
淡い黄色の鱗が反射し□、目に痛□□どだった。
(滲んでおり判読が難しい箇所がある)
本当に、今□で見た□□な□景より□□麗だった□
彼を勝■に■えた挙■研究■■にし■癖に、愚か■も帰■■■ない■■て思っ■い■。
人としても、研究者としても愚か者だ。
沖合まで移動して間もなく、かつての仲間と思しき黄色い鱗の個体が複数現れた。
そのまま帰るかと思いきや(結局解明はほとんど出来なかった)彼らの言語で二言三言話した後、こちらへと向かってきた。
彼がしきりに手を伸ばすので少し身を乗り出すと、頬に口付け(と仮称する)をされた。
研究員をつついてちょっかいを出したり、腕を掴んで気を引くなどの行動はこれまでにも見られた。しかしこのように口付けをするという行動は見られたことがなかった。人魚にも様々なスキンシップの概念はやはりあるようだ。
その後私たちが呆然としていると、確かに聞き間違いでなければ
「またね」
と対象は発話し、群れの元へと戻って行った。
こちらの言語を喋るという、これもまた初めての観測だった。
最初は帰りたくなさそうな素振りを見せたが、やはり群れの中がいちばん居心地が良いのだろうか。
仲間が来てからは呆気ないほど颯爽と去っていった。
でも、もし聞き間違いでなければ。
彼はこちらに戻ってくる心積りがあるから、あんなに早く去ったのだろうか。
そうなのだろうか。
いや、これは僕の個人□な記録なの□□□何も臆する□□は無い□ずだ。
そうで□って欲し□□確か□□は思っ□□□。」
この手記は8/27以降を境に何も記されていない。
「───やはりあの人魚に入れ込んでいたんですね」
ユーミス=ディクルムは少しくたびれた手帳をぱたんと閉じる。
「だから警告したのに……」
対象に入れ込む事、研究の投資を投げ出すような判断、そして彼自身の精神への影響。
若くして研究の指揮を取るほどに評価される彼を狂わせたのは、やはり……
手元にあるもうひとつの書物。
昨日の朝刊を痛ましい顔で見る。
「《120年振りの快挙!金色種人魚の捕獲に成功》
28日未明、地元漁船団エカ組合がルベノ漁の途中、漁船へと向かってくる不振な影を発見。
ライトを向けると近海では絶滅したとされる金色種の人魚である事が判明した。
人魚の中でも金色種は特に貴重とされており、漁船団は直ぐに捕獲へと乗り出したという。
組合長のガプタ=エカ(72)さんは
「あれは本当に夢かと思ったよ、人魚さんは逃げるどころかこっちに顔を出してきたのさ。だからそのまま簡単に捕獲出来たって訳よ」と信じられないという顔で語った。
しかし捕獲後しばらくしてから暴れだしたため、生け捕りには出来なかったようである。」
「ディクルムさ……主任研究員!」
ついこの間までただの後輩だった研究員に呼ばれる。突然のことだからまだ皆慣れていないのだ。
なにもかも。
「ああ、ごめんなさい。すぐ行きますから」
そう言ってかつての師の、そして今は自分の研究室を後にする。
私は微かに香る秋の気配から逃げるように歩き出した。
今日は知り合いの命日だ。
俺は墓なんて行きたくないから海から花を流してる。
今日は彼岸花とサネカズラでも流そうか。
「彼岸花の花言葉は「あなたに会いたい」 「別れ」 「悲しい」の意味を持つ…
そしてサネカズラは「再開」 「また会いましょう」の意味を持つ」
「現に今の俺はお前に会いたいしお前を失って悲しい…」
「また来世で会えたら会おう」
「それまで俺は気長に何十年、何百年、何千年と待とう。もう俺は不老不死の身だからな」
【海へ】
「週末は晴れるかなぁ」
昼間なのに薄暗い窓の外を眺めながら、ひとり言のように呟やいた声は、意外にも響いて、答えが返ってくる。
「多分、晴れる」
「ふうーん。じゃ週末、海、行かない?」
「海……ね」
含みのある声に気づき、すかさず尋ねる。
「なに。海キライ?」
「あんまいい思い出がないんだよ」
「例えば?」
「毎年強制参加型家族行事」
早口言葉のようにコンパクトに答え、眉を顰める。
「は? も、一回言って?」
「毎年強制参加型家族行事」
「ね、ワザと言ってない? マイトシ? サンカ? ギョージ?」
「毎年、海の別荘に、一週間くらい、缶詰に、されるんだ」
吐き捨てるように言ったら負けな気がして、言葉を区切りながらゆっくりと発音する。
「別荘! すごいね!」
「すごくない。いやすごいのか。すごいのは親だ。でも多分想像するような快適さはない」
「ナニソレ。外、出られないの?」
「いや、気持ちが缶詰になるんだよ」
言った声の暗さは誤魔化しようもなかった。
「気持ちが缶詰……」
何やら呟かれたから、短く答える。
「そう」
話すと愚痴めいて長くなりそうで、どうまとめようか考えていると、予想もしていなかった言葉が返ってくる。
「えー、何缶になるの?」
「は? ナニカンって何」
「だって、缶詰になるんでしょ? 中身、気にならない? ツナとか、サバとか、桃缶もいいよね」
「は? うん? いや……例えだから缶詰」
「分かってるよ〜ん。でも気になるから、ツナ缶ね」
ゆるっと言われ、気が抜けた。でも、「イヤな思い出のために、海へ行くのがイヤだ」と駄々をこねるほどでもないと思った。
(普通はイヤなものだったら、大事に取っておくことはないんだろうなぁ)
「分かった。ツナ缶で一週間だ」
「ツナ缶、いいよね。おいしいよね」
今なら、上書きできるかもしれない。