泡沫花火

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暖かい涙でふいに目が覚めた。
白い枕に顔をうずめて、あなたの温もりを追いかけて、焦がれた夢の続きは何処にあるの。

君のいない世界でどれほど時が経っただろう。

忘れたい記憶ばかりがあなたとの思い出になって、わたしの心の柔らかい所に居座って離れない。
あなたに合わせて買ったキングサイズのベッドも、寒いからと隙間なくくっついて座った三人がけのソファも、身体の大きなあなたがよく頭をぶつけていたキッチンも、ほんと、どこにでもいる。
どこにでもいるくせに、あなたの匂いは朝が来る度に薄れてもうちっとも思い出せない。

あなたを忘れて、忘れられなくても大切な思い出として左胸の奥深くへしまって、こんなこともあったね、なんて、モノクロの記憶となる日は来るの。もしそんなことが起こるなら、あなたの愛を知る前のわたしに、傷の痛みなんて知らないわたしのところまで、今すぐに連れていってほしい。

夢の続きを願えば願うほど、わたしが息をしている世界に、あなたはもういないんだと、思い知らされる。

冷たい海のような、澄んだ瞳で、呪われた世界を抱きしめたあなたは何処に帰ったの。

あなたと最後に行った海へ、砂を踏みしめても、そこに君はいないのに。果てしのない引力に、引き寄せられたまま。わたしだけがずっと。

8/24/2024, 10:33:50 AM