『海へ』
あの日の後、私は何回か朝日さんのところに通った。
今日も、あの人の元に行こう。そう決めて、私はいつもの道を駆け下りた。ここに来るといつも胸が踊る。
でも、朝日さんの様子がおかしい。いつもピアノを弾いているのに、今日は私がいつも座る席に座っている。
[こんちは…]
「お!きた!まってたよ。おれ。」
入ってきた瞬間に畳み掛けられたので私は驚きを隠せなかった。
[え、あ…はい。]
「今日さ、ピアノ教室はお休みにして出かけない?」
「校外学習!あ、教室だから…室外学習か。行くよね?」
そう言いながら私にキラキラした瞳を向けてきた。
[あの、、行きたい、です。室外学習。]
「やった。決まり。おれ、こう見えてバイク乗れるんだ。乗って乗って!」
そう言って、彼はバイクを持ってきた。スクーターだった。
ヘルメットをつけ、後ろに座る。オドオドしていると、彼に手首を掴まれた。
「、ちゃんと掴まっててね。ケガしちゃうから。」
[は、はい。]朝日さんの背中は暖かかった。
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
着いた先は、海だった。何年ぶりになるだろう。
[わぁっ。]
パシャ。朝日さんの方をむくとカメラを向けられていた。
[え、ちょ、消して、]
「あー。ごめん、これフィルム。現像したら見してあげる。」
悪戯気味に笑った彼に、そう言われた。
[じゃあ、それまで通います。これからもたくさん教えてください。]
「喜んで。」
そんな会話をしたあとは水掛けをしたり、砂浜でお絵描きをしたり、朝日さんとずっと笑っていた。
―帰りたくないと、思ってしまった。
現像した写真を見るのがちょっと楽しみな自分がいた。
《朝からの使者》EP.5 シャッターとあなた
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〇執筆日記
こんにちは。読んでくださり、ありがとうございます。
今、皆さんに読んでいただいた《朝からの使者》ですが私的にはまだ2人の物語を書きたいなと思っております。どうぞお付き合い下さい。
合間合間に短編も挟みますが、この作品を楽しんでいただけると嬉しいです。
このあとも、素晴らしい体験をお楽しみください。
8/24/2024, 2:38:20 PM