『静かな終わり』
「今日は、未来の私のためにこれを撮ろうと思います。」
「わたしは、病気で、色んな人のことを忘れちゃいます。」
「まだ忘れてないけど、、多分、もうすぐ忘れる。」
「忘れて欲しくないけど、忘れたことを忘れることの方がやだから。」
「未来のわたしに申し送りしておこうと思う。」
「4人家族です。」
「友達が沢山居ます。」
「部活にも、クラスにも、います。」
「高校は、毎日すごく楽しいです。」
「勉強は難しいけど、今は何とかやれてる。」
「弟、、なずなとも仲良くやれてるはず。」
「好きな食べ物はグミ。嫌いなものは、、トマト。」
「あとは、あとは、映画を見るのが好き。」
「部屋にいっぱい映画のフライヤーあると思う。
ゴミじゃないからね。」
「映画、色んな人と見に行ったんだよ。」
「色んなとこ行ったんだよ。」
「色んな人にあって、色んな人とさよならしたよ。」
「写真は絶対消さないで。動画も絶対消さないで。」
「沢山写真撮って、未来のわたしに教えてあげてほしい。」
「辛いことがあっても、大丈夫。」
「どうせ、、、忘れちゃうんだから。」
「、、、、なんもわすれたくないなぁ。」
「ごめんなさい、勝手にネガティブになっちゃった。」
「、、、、幸せに生きることを、諦めないで。」
「じゃ、また未来で会おう。」
「、、、さよなら、わたし。」
“遠い金の音”
もうすぐ、年が変わる。
そんな中でも、私は清掃員の姿でホテルの中を歩いていた。
短期バイトのためだ。用意されたキャリーケースに大きめの箱を置いて、ブルーシートをかけ前に進む。
605号室の扉を開ける。立っているのは中年の男。
「ニコニコサービスの袴田です。荷物の受け取りに参りました。」
『あ、あぁ、これ全部です、。』
「わかりました。では、受け取りのサインお願いします」
テーブルの上にあったのは、たくさんのお菓子、、安っぽい袋に入った。カラフルなフエラムネみたいなやつもあるし、グミっぽい形のやつもある。
サインを受け取って、これを軽トラで倉庫まで運べば、業務終了。何も危なくないし、免許がある分には簡単な仕事である。やっぱり、この名前の自分なんなキモイな。
このお菓子たちは誰の元に届いて、どんな風に人を狂わせるんだろう。
トラックの中で、考えた。
バイト後はいつもこうだ。考えても、答えは出ないのに。
帽子を深く被り直して、私は倉庫に向かう。
いつもより明かりが無駄にキラキラして見える。
今頃は、紅白飽きてくる時間だな。
気づくと除夜の鐘の音が聞こえ始めていた。
遠い鐘の音に憂鬱の痛みを感じた。
あいつに騙されて売られた名前を取り戻すまで、あと200万。
お金を稼ぐためには、手を真っ黒に染めるしか無かった。
私は、名前の無い犯罪者なのだ。
【またね】
やっと帰ってこれたよ、。
ずっとあなたのことを見てたけど、
最近呼んでくれる回数が少なくなったね。
前は、たくさん読んでくれて色々話してくれたよね。
だんだん笑わなくなってたからさ、心配だったんだよ。
ちゃんと寝れてないよね?
前好きだったTV番組も録画やめちゃったよね?
あれめっちゃ好きだったじゃん。
辛そうな目でこっち見ないでよ、、
もし私のせいで辛いんなら、私消えるよ。
寂しいけど、怖くないよ。
だから、、、だからまだ、しなないで
、あーあ。もう煙消えちゃうね
じゃあ、、またね。
いつでも行くから、呼んでよ。
しょうもない話も、愚痴も、世間話も、聞かせてね。
、、、お願いだからこっちには来ないでね。
散らかった部屋、一人の男がつけた線香が煙になって消えた。
男はまた、光の消えた瞳を閉じた。
今日も変わらず蝉が泣いていた。
【ただいま、夏。】
私にとって夏は呪いだ。
暑さと同じように、活動的になっていく人、
多すぎる課題、無駄に長い1日、
そんなことを考えてたら、昼になってて、ニュースが流れた。
何にもない部屋にニュースの音が、大きすぎる位に響く。
涼しい部屋が寒いくらいに感じて、息が苦しくなる、
頭に衝動的に浮かぶのは、
さよならをした、あの子のこと、あの街のこと、
いつまでも、いつまでも、あの夏に取り残されている自分にまた、出会ってしまった。
【タイミング】
出会って、別れて、
出会って、別れて
そんななかで出会うあなたに、
近づきたいけど、
君にはもっと大事な人がいて、
勝手に離れてしまった、
だから私は願い続ける。
出会うタイミングが遅かった、
もっと早く出逢いたかった、
あなたに、幸あらんことを。
あいたい、あいたいよ。