『泣かないで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「どうして」
「ごめんね」
問いかければ、眉を下げ困ったように微笑みながら謝られる。
謝ってほしいわけではなかった。逆に謝らなければいけないのは自分の方だったのに。
恐る恐る触れる指先は、氷のように冷たくて。
泣きたいのは彼なのに、どうしても泣く事を止められなかった。
「泣けよ。泣いてくれよ」
しゃくり上げながら願っても、彼は微笑んだままだ。
「泣きたいのはお前だろ!なんで」
「ごめんね」
謝る声に、違う、と唇を噛みしめる。
彼は泣かないんじゃない。泣けないのだ。
自分が、そうした。
昔、泣き虫だった彼に、泣くなと何度も言い聞かせた。
彼を庇って事故にあった時だって、目の前で泣き続ける彼に対して泣くなと言って。
自分のせいだ。
あの時から彼が泣いた所を見た事はなかった。
「俺が悪かったから。なあ、だから泣いてくれよ」
ごめん、と彼がまた繰り返しそうになるのを、手を強く握る事で止める。
「こんな時くらい泣けよ。泣かないんだったら、諦めないでくれ。生きる事を、そんな簡単に笑って諦めるな」
無茶を言っている自覚はある。
呆れるくらい我が儘なのも分かっている。
泣くなと言い続けてきたのに、今更泣けなどなんて酷い事を言っているのか。
それでも願わずにはいられなかった。彼が怒らない事に甘えて、ひたすらに泣いてくれ、と繰り返した。
「泣かないで」
静かな声に、肩が跳ねる。
恐る恐る見上げる彼の表情はとても穏やかだ。それがとても悲しくて、また涙がこみ上げる。
「ごめんね。でも泣きたいとは思わないんだ」
「それ、は。俺がっ」
「ううん。今ね、本当に穏やかなんだ。僕のためにこうして泣いてくれる親友がいて、最期まで一人じゃないのがすごく幸せで」
だから泣けないのだと。
幸せそうな笑顔に、何も言葉が出てこない。
「でも何だかすごく不思議。泣いてくれるのがとても嬉しいって思うのに、それと同じくらい泣いてほしくないって思ってる。あの時、泣くなって言われたのはこんな気持ちだったからなのかな」
笑顔のまま彼は首を傾げる。
違うのだと、言ってしまえればよかった。あの時のはただの八つ当たりだったのだから。
二度と会えなくなるかも知れない事に、不安で、怖くて。
だから今のその、優しい気持ちでは決してないのだと。
けれど伝えようとしても、口から溢れるのは泣く声ばかりで。違う、の一言すら出てはこない。
「泣かないで」
柔らかな声が繰り返す。
冷たい指先が、涙を拭っていく。
「もう僕の事は忘れていいよ。今の涙だけで十分なんだ。これ以上はもっと、って夢を見たくなっちゃう」
「いいじゃん。夢、見ろよ。諦めないでくれよ」
諦めないでほしい。
そのために出来る事があるならば、どんな事だって協力するのに。
そう思いを込めて見上げれば、彼はやはり困った顔をしながら笑った。
「俺。頑張ったんだ。もう二度と歩けなくなるかもしれないって言われて、すごく怖かった。でも、もう一度お前の隣に立ちたかったから、頑張ったんだよ」
「うん、知ってる。僕のせいなのに何も出来なくてごめん」
「謝ってほしいわけじゃない。でも俺に悪いって思うんなら、諦めるなよ」
酷い言い方だ。これでは脅しと変わらない。
けれど仕方がない、と。笑って諦めてしまう彼を繋ぎ止めるのなら、手段を選ぶつもりはなかった。
睨むようにして彼を見る。
冷たい手を、強く握った。
「諦めなくても、元通りにはならないんだ。たぶん一生このまま。もう隣に立つ事は出来ないんだよ」
「じゃあ、会いに来るよ。元通りでなくてもいい。足りないなら、その部分を俺が補うから」
息を呑む音がした。
笑顔が崩れて、ようやくくしゃり、と泣くように顔が歪む。
「駄目だよ。それじゃあ、僕に縛りつける事になる。それは嫌だ」
「一緒にいたいんだよ。嫌なんて言わないでくれ」
泣きそうな顔をしながら、彼は首を振る。
嫌だ、と繰り返す彼に、どうして、と縋り付いた。
「だって諦めない限り、不安になるよ。明日が怖くなる。もう会いに来てくれないかもしれない、って考えるだけで、苦しくて。離れられなくなる」
「そんな事ない!絶対に会いに来る。誓ってもいい」
彼の小指に、小指を絡める。
指切り。こんな子供だまし、約束にもならないのかもしれないけれど、これしか伝える方法を知らなかった。
「なんでそこまでしてくれるの?僕、奪ってばっかなのに」
ぽつり、と。呟いた彼の言葉に、目を瞬く。
彼は自分から何か奪っていっただろうか。思い返しても、記憶にはない。
「なんでって…俺ら親友だし。ライバルだし。奪われた事もないし」
「足。奪いそうになったよ。それから、時間」
確かに。理解はしたが、納得は出来ず。
奪われたつもりはない。戻るために諦めなかった時間も、そしてこれからの時間も、自分で決めて選んだ結果だ。
「馬鹿。そんな変な事考えているなら、いっそ泣いちゃえよ」
泣きそうな顔をしながらも涙を見せない彼に、笑って告げる。
「俺はこれまでも、これからもお前を一人にしない。絶対にだ。だからお前も諦めるな」
涙のない彼の目を見て、はっきりと言葉にする。
泣くように笑う彼は、やはり涙を流さなかった。
「酷いな。でもそこまで言われたら仕方ないや。もう少し、頑張ってみるよ」
「おう。頑張れ。それで泣いてしまえ」
「泣かないよ。目の前でずっと泣かれると泣けないものだからね」
くすくすと笑う声。
涙を拭う指が、自分がまだ泣いていた事を教えていた。
「泣かないで。会いに来てくれる限りは頑張るから」
「分かってる。泣き止むから、そしたらちゃんと泣けよ」
目をこする。それでも止まる事のない涙に。
彼が声を上げて、楽しそうに笑った。
20241201 『泣かないで』
どうか、泣かないで。
僕はキミに泣かれると、抱きしめたくなるから。
『泣かないで』 -終わらせないで-関連作品
小児科医である僕は、外科の看護師である宮島さんに恋をしている。僕の片想い。彼女は外科医の浅尾先生に恋をしていて、浅尾先生は既婚者。彼女も知っている。
小児科医の僕が外科ナースである彼女と一緒に働いたのには理由がある。小児科病棟の改装工事に伴い、患児を外科病棟で受け入れてもらったからだった。小児看護の経験がない外科ナースたちは未知の経験で大変だっただろうによく頑張ってくれた。中でも宮島さんは最初から自閉症児と相性が良く、僕や小児科スタッフは今後の成長が楽しみな人として彼女に注目した。
そのうち僕は彼女の素直さに惹かれ、笑顔で感謝された日にはこの恋を諦められないことを知った。そしてどうしようかと悩んだ。1年後、僕は地元に帰り、小児科のクリニックを開業する。ここのナースは優秀な人が多いけれど、転居させてまで連れて行くつもりはなかった。でも僕は宮島さんと離れたくない。僕の都合で転居させても良いのだろうか。
しかしその答えは案外早く出た。浅尾先生もまた、宮島さんが好きなことに気がついたから。浅尾先生と宮島さんは両想い。でも浅尾先生は宮島さんに医師と看護師の立場で接している。そう思っていたのに、誰もいない廊下で宮島さんの頭にポンッと優しく触れ、笑っている姿を見た。僕はどういうつもりかと浅尾先生と2人きりになってから問いかける。
「俺だってわかってるんですけどね…」
愛しいから触れたい。ただそれだけなのだと同じ人を好きだからこそ浅尾先生の気持ちがわかってしまった。
「浅尾先生も開業されるんですよね?彼女を引き抜いたんですか?」
「いいえ。彼女には相応しい場所がありますから」
小児科ナース。先生は口にしなかったけれど、宮島さんの小児看護は小児、家族、スタッフに至るまで期待されている。ナースステーションでも宮島さんの看護は度々話題になっていた。浅尾先生が知らないはずがない。浅尾先生は彼女の将来を見据えている。自分が既婚者である線引きでもあった。
「わかりました。僕が育てます」
宮島さんを僕のクリニックへ連れて行き育てよう。覚悟は決まった。
冬が終わる頃、小児科病棟の改装工事が終了して小児科はスタッフを含めて元の病棟へ。症状が比較的軽度だった外科患者やそれに伴い移動していた外科ナースが戻ってきて外科病棟は以前の状態に戻った。
病棟の引越しなどが落ち着いた頃、小児科と外科の合同の飲み会が開催された。僕は外科ナースに掴まり、宮島さんは小児科ナースに掴まり、浅尾先生も似たようなものだった。宮島さんと話せない飲み会がようやく終わって化粧室から出てきた彼女に声をかける。自宅の方向が一緒の僕は彼女を送って行くことになり、他の人は2次会へ流れていった。
声を顰めて雑談をしながら電車で隣に座る夢見心地な時間。飲み会ではあまり食べていないことがわかっていたから、〆にラーメンでも、と誘ってみたら了承してくれた。案内したのはラーメン店と標榜しつつも料理好きな店主が様々な創作料理を提供する小洒落た店。個室に通され、創作料理に舌鼓を打ち、〆のラーメンを食べて腹は満たされた。彼女もこの店を気に入ってくれたようだ。
僕は宮島さんへ小児看護を頑張ってくれたことへの労いと感謝を述べ、僕のクリニックで働いてもらえないかと誘い、理由も述べていく。宮島さんは自閉症児と相性が良い。それは小児に携わる者全てが欲しい能力だけど、簡単に持てるものではないこと。宮島さんは経験を積んでいけばより素敵な小児科ナースになれること。僕は小児科医目線で、宮島さんを小児科ナースとして育ててみたい。一緒に働きたい。僕の熱弁に彼女は瞳を丸くして驚いている。僕は彼女の表情に思わず笑ってしまって、彼女は不思議がった。わかりやすい。思っていることが全部表情に出る。だから子どもが安心するのかな。宮島さんはすぐに答えが出せないようだった。僕は「考えておいてね」と返事を保留にした。
ただ、彼女が僕しか知り合いのいない土地で、絶対に辛いこともある看護の仕事を続けられるか不安があるのはわかったから、一言付け加えた。
「僕はキミのことを絶対に守るし、力になるよ」
「…どうして…どうして佐々木先生は私にそんなに良くしてくださるんですか?」
「わからない?」
「はい」
コクンと頷く。可愛いな。ずっと可愛い。
「宮島さんが、僕のことをもっともっと知りたいと思ってくれたら、教えてあげるよ」
宮島さんの頬に手を伸ばし、驚いている瞳を見ながら頬から顎までするりと撫でる。暖かくて柔らかく滑らかな頬。触れてしまった。ずっと我慢できていたのに。
「本当は早く教えたいんだよ。宮島さんに」
宮島さんがゴクリと唾を飲み込む音がした。
「それから、考えてね。僕のクリニックのことも」
「…はい」
僕がクリニックへ勧誘して数週間後、彼女からNoと返事をされた。外科看護の経験を積んでいきたいからと伝えられた。本当は、僕の気持ちを知って、慮って断ったのだろう。自分のことを好きな人の元へ着いて行く。僕に期待を抱かせる行為を彼女は避けたのだ。彼女の優しさで。
そんなことを考えながら医局へ入ると、室内には浅尾先生1人だった。パソコンを開いて文献で調べものをしているようだったが顔を上げて僕を見た。そしてまた調べものに戻ろうとした先生に声をかけた。
「宮島さん、外科看護の経験を積んでいくそうですよ」
「………」
「残念です。一緒に働いて、宮島さんの成長を見たかったんですけどね」
浅尾先生の表情は変わらない。ポーカーフェイス。宮島さんの前ではあんなに笑顔になる人なのに。
「彼女は優しい人ですね。僕を傷つけない方法を選んだ。益々好きになってしまいました」
「…わかりますよ。俺も同じですから」
浅尾先生が微かに微笑んでパソコンを閉じる。浅尾先生は医局を後にした。僕は目を閉じて呟く。でも諦めきれないよ、と。
翌日から僕は2泊3日で研修に出かけた。帰京した夕方、土産品を持って病院へ行く。外科病棟のスタッフにも銘菓を買った。宮島さんに会えたら良いな。彼女の勤務を知らないまま、明日でも良い土産品を持っていそいそと外科病棟を歩く。
浅尾先生がエレベーターを使わずに足早に階段へ向かうのを見かけた。額を押さえ、表情が辛そうだ。体調不良ならエレベーターを使うはず。
---何かがあった。宮島さんと?僕は誰もいないナースステーションの奥にある休憩室の小窓をそっと覗き、彼女がひとり肩を震わせて泣いているのを見てしまった。胸が押し潰されるように痛い。どうすれば良い?そんなことを考える間もなく僕の身体は宮島さんへ向かう。
「ささき、せんせ…」
「出ようか。宮島さんは此処から離れた方が良い」
僕は宮島さんの腕を取って室内を見渡し、宮島さんのバッグを見つける。猫のチャームが付いたバッグはあの飲み会と同じ物。休憩室を出ると、看護師とぶつかりそうになる。研修土産を持って来たことを伝えて、ついでに紙袋2つのうちの1つを小児科病棟へ届けてほしいと依頼して、ナースステーションを後にする。宮島さんの手首を握ったまま。僕が宮島さんを好きなことは、あの飲み会で僕を取り囲んだ外科ナースの前で認めさせられた。だから周知の事実。
僕の車へ宮島さんを乗せ漸く手を離す。ナース服のまま連れて来てしまった。僕は自分のスプリングコートを宮島さんに羽織らせた。目の前には浅尾先生のセダン。僕は車を発進させる。宮島さんはハンカチを口に当て嗚咽を漏らさないように泣いている。益々胸が痛くなって、僕は運転しながら彼女の手を握った。
「ひとりで泣かないで。キミが泣くときは僕を呼んで。ずっと傍にいるから」
「ささきせんせい…」
「キミはいつも頑張っているよ。でも泣くのを我慢するほど頑張らなくても良いんだよ」
堪えきれない嗚咽が漏れる。
以前、浅尾先生に処置の見学をさせてもらったことがある。小児科でも成人でも行う処置の見学をして、小児科で何か取り入れられるものがあればと思っての行動だった。結果、処置自体は大した違いはなかったけれど、介助者に大きな違いがあった。常に浅尾先生が処置しやすいように手順以上に細やかな気配りで先読みして動く宮島さん。宮島さんが浅尾先生のために頑張っているのをヒシヒシと感じた。そうやってキミはいつも浅尾先生のために頑張ってきたのだろう。
コインパーキングを見つけた僕は駐車場の奥へ停車した。シートベルトを外し、彼女のベルトも外す。泣き続ける彼女を胸に導き、背中を摩る。処置が終わった子どもなら、看護師に預けるか母親に引き渡してよく頑張ったと頭を撫でれば良い。あとは母親が引き受けてくれるから。でも、宮島さんの涙は母親が慰められる涙じゃない。誰かがその役割を担わないと。今は僕が。否、この先もずっと。
「先生…優しすぎます…」
泣きながら彼女が小声で言う。
「うん。僕はキミが好きだからね。どうしようもなく優しくしたくなる」
僕の言葉をきっかけに言葉を発することもできなくなり、涙は後からあとから溢れて彼女自身で止められない。
僕は背中を摩り続ける。なけなしの理性の中で、抱きしめたいのを踏み止まる。
「宮島さんには負けたよ。僕は宮島さんが僕のことを好きになってくれてから、どうして僕が宮島さんに良くするのかっていう質問に答えるつもりだったのに」
小さく身体が揺れる。
「カラオケにでも行こうか。コインパーキングでずっとエンジン掛けっぱなしも迷惑だからさ。わかってると思うけど、帰りたいは無しだよ。キミはまた泣くだろうから」
頷いてくれたのを感じ取って身体を離す。目元が腫れている。親指でそっと両眼の涙を拭う。車から降り、僕のコートをボタンまで閉めてもらって、そして手を繋ぐ。宮島さんはおとなしく手を繋がれている。
「今日は日勤だった?明日は?」
「きょ…はにっきんで、あした、から2連休、です」
「良いなあ。僕は研修に出た分、仕事が溜まっちゃった。でも、僕は宮島さんを優先するよ」
遠慮しそうな宮島さんの先回りをしてひとりきりになることを潰していく。
「ささき先生…は、何もきかないんですね」
「訊かなくてもなんとなくはね」
「…先生に、何があっても佐々木先生が助けてくれるよって言われました…」
「そう…キミは外科を頑張る気でいるのにね。浅尾先生はキミのことが大切だから…浅尾先生の気持ちはわかるよ」
「…佐々木先生は絶対に誰のことも責めないですね。あたしは既婚者を好きになったのに」
「責められないよ。誰のことも。だってキミはただ好きで居るだけなんだから。敢えて言うなら、出会いが早ければ良かったのにねって言うことしかできないよ」
「ささき先生、やっぱり優しすぎます。泣ける」
「泣きなさい。幾らでも胸を貸すから」
カラオケルームで泣く彼女を抱きしめて、よしよしと後頭部を撫でる。
ひとりでは、泣かないで。
泣くのなら、僕の胸で。
泣かないで 2024/11/28-29 終わらせないで 関連作品
「泣かないで」
下のあらすじの物語のifストーリー的なものを書いてみました。
「If I were you... もしウイルスに感染したのが兄ではなくボクだったとしたら……?」
このストーリー(正史)の経緯としては、兄がウイルス感染→アーカイブ後、あっという間に無力化する方法を見つけたので、何度も何度もアーカイブ管理室に掛け合ってみたものの、そこでトラブルになってしまったため、兄を直接治癒させることが出来なくなってしまった。だから再会までに時間が掛かった、というイメージです。
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにした!そうしたらなんと!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚したうえ、アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかった!そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!
……ひとまずなんとか兄を落ち着かせたが、色々と大ダメージを喰らったよ!ボクの右腕は吹き飛んだし、ニンゲンくんにも怪我を負わせてしまった!きょうだいについても、「倫理」を忘れてしまうくらいのデータ削除に苦しめられていたことがわかった。
その時、ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。「機械だから」って気味悪がられたけれど、ボクがキミを……キミ達宇宙を大切に思っているのは本当だよ?
それからボクは弁護人として、裁判で兄と旧型管理士の命を守ることができた。だが、きょうだいが公認宇宙管理士の資格を再取得できるようになるまであと50年。その間の兄の居場所は宇宙管理機構にはない。だから、ニンゲンくんに、もう一度一緒に暮らそうと伝えた。そして、優しいキミに受け入れてもらえた。
小さな兄を迎えて、改めて日常を送ることになったボク達。しばらくのほほんと暮らしていたが、そんなある日、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?なんでも、父の声を聞いて目覚めたらしい。だが父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、彼岸へと進む。
そしてついにボク達の父なる元公認宇宙管理士と再会できたんだ!
……やっぱり家族みんなが揃うと、すごく幸せだね。
そして、構造色の少年の名前と正体が分かったよ。なんと彼は、父が考えた「理想の宇宙管理士」の概念だった。概念を作った本人が亡くなったことと、ボク以外の生きた存在に知られていないことで、彼の性質が不安定だった原因も分かった。
ボクが概念を立派なものに書き換えることで、おそらく彼は長生きするだろうということだ。というわけで、ボクも立派に成長を続けるぞ!
─────────────────────────────
「ねぇ、おとーしゃん。⬛︎⬛︎ちゃん、もうあえないの?」
「……大丈夫。きっと私が助けるからまた会えるよ。」
「ん……。」
おとうさんもボクもとってもかなしかったの。
だからね、ボク、いっぱいないちゃった。
いっぱいないて、ボクはわかった。
かなしいの、もういやだった。
だから、ボク、いっぱいがんばった。
おとうさんがたすけるっていってたけどね、ボクだっておとうとをたすけたいの。ボクだってちゃんとおおきくなるもん。いっぱいないちゃったけど、がんばれるもん!
⬛︎⬛︎ちゃん。キミを助けるために、ボクもお父さんも頑張ったよ。いちまんねんもかかっちゃったけれど、キミを確実に助ける方法が見つかったんだ。
だからボクはアーカイブ管理室に行ったの。
何回も、何回も。
何かあった時に備えられるように、アーカイブ管理士の資格も取ったよ。この部屋がダメになっても大丈夫なように。
そんなある日、いつものようにキミがいるあの部屋に向かった。
アーカイブになったキミが眠る箱の前に立っていると、担当者のひとが来ちゃった。
「何やってるの君!ほら、あっち行って。仕事のジャマだよ!」
「あの……このアーカイブを譲ってください。」
「何言ってるのさ!そんなこと出来るわけないでしょ!」
「どうしても!どうしても必要なんです!お願いします!」
「無理なものは無理だって!何せこれはウイルスに感染した危険物だ!だから持ち出し厳禁なの!」
「なんでですか……?」「なんでって、さっき言ったとこじゃない!危険物だからって!」「ウイルスを無力化する方法は確立されています!それでも駄目なんですか……?!」
「あのね!特別扱いはできないの!もし君に悪気がなかったとしても、ウイルスをどう使われるか分からない以上、そんな簡単にアーカイブを渡せません!」
「それからね!もし君に持ち出し許可が下りたら、他のアーカイブはどうなるか分かる?あれもこれも持ち出させて!ってあちこちから要請がくることになるでしょ?!」
「そしたら、危険物の紛失やら想定外の事故やらにも繋がるかもしれない!だから原則として許可はできないの!分かった?!」
「……分かりました……。」
「それじゃあ、ここにあるウイルスに感染したもの全てを無力化してみせます!それではいけませんか……?」
「そんなこと、できるわけないでしょ?!」「やります!」
「絶対にやりますから!」
「えー、でもウイルス一種類あたり一つずつはアーカイブを残すよう決められているから、どっちみちその機械も標本にしておかないと───「この子は標本じゃない!!!」
「この子は標本じゃなくて、ボクの弟です。家族なんです……。」
「だから、どうかお願いします。助けたいんです……。」
「あーもう!泣くな!泣かないでって!ちょっと掛け合ってみるから!」「本当ですか?!ありがとうございます!」
「どうなっても知らないからね?!全く。」
〇〇年後───
「ついにこの日が来た。やっとキミを救える。」
「⬛︎⬛︎、起きて。」「……ん。おにーさん、だれー?」
「ボクのこと、忘れちゃった?」
「ボクはキミを助けにきたんだ。」
「ボクは⬜︎⬜︎。キミのお兄ちゃんだよ。覚えていてね?」
この後、しっかりウイルスを無力化して無事ハッピーエンドを迎えることが出来……ます!
「⬜︎⬜︎ちゃん、なかないでー!」
「な、泣いてないよ……。よかった、よかった……!」
「ぎゅー!」「かわいい……!」
「これからもずっとよろしくねー!」
「よろしく!」
安っぽいホテルのベランダでタバコを吸ってる女の子。
ノースリーブから見える華奢な体は今にも壊れてしまいそうだ。
「一応、生きてそうだね。目死んでるけど。」
「日の出、綺麗。写真撮りたいくらい。」
「前会った時より痩せたね。ちゃんと食べてる?」
「ホストとか、行っとるん?前よりメイク濃くなってない?」
『…ふぅ〜。』
「最近、忙しい?」
「仕事、順調?」
「稼いだお金で、何するね、?」
「…質問しかないや、ははっ。」
女の子は、何も表情を変えず、タバコを吸っている。
『…』
「無視せんでよぉ〜。」
女の子を見ると、泣いていた。私と、2人で撮った写真を見て。
『どーして、、、死んじゃったの。』
『ずっと一緒におるって言っとったのに。』
あ、そうだ。あたし、もうあの子から見えないんだ。
聞こえないし。
「やめてよ、もぉ…なんで泣いちゃうん。」
「笑って生きてよ。たのしいこといっぱいしてよ。」
「そんな、やつれた顔しないでよ。」
「…泣かないでよ。」
そういった時、電話がかかってきた。
[レナさぁん。呼ばれてまぁーす。]
『はぁーぃ。』
涙を拭って、あの子は笑って出てった。
「…友達、早く作ってね。」
そう言って私は、あの子の背中を見ていた。気づいたら私もないていたみたいだ。
【泣かないで】
水鳥の群れの大きな羽音に驚きミンミンは目覚めた。周りを見回してもお母さんも群れの仲間もいない。
「そうだ、昨日みんなとはぐれてしまったんだ」
一晩寝て疲れはとれたが、一晩寝ても不安や心細さは全く変わらない。これからどうすればいいかも全くわからない。ただ昨日何も食べていないのでひどく空腹ではあった。幸いこの湖の周りには豊かな草地が広がっている。ミンミンは食べ物を探すことにした。
空腹が満たされると、これからの事を思って心配で押しつぶされそうになる。お母さんとはもう会えないのかしら。群れの仲間はどこに行ったのかしら。不安になる度に大きな声で呼んでみる。他の水鳥たちが驚いたようにミンミンを見る。空を見上げ鳥の群れを見つけると飛び立つ。それが自分の群れでないとわかるとまた湖に戻る。何度も何度も空と湖を行ったり来たりした。
あたりが暗くなるにつれてミンミンの心の中の不安はどんどん大きくなる。
次の日もその次の日も同じように過ごした。もう群れのみんなは別のところへ行ってしまったに違いない。ここで冬を越すことはできるのだろうか。ここで冬を越して春になったら元いた場所に戻ればまたお母さんたちに会えるだろうか。ここまでの旅路を一生懸命に思い出そうとした。どんなに考えてもあの嵐からここまできた道はわからなかった。
この湖に来てから何度空を見上げたことだろう。ミンミンが空を見上げた時、遠くに大きな鳥の群れが見えた。近づいてくる。先端だけ黒い大きな灰色の翼、黄色い嘴に頭にある2本のスジ。インドガンがこの湖に向かってくる。ミンミンは嬉しくてたまらなくなった。みんなが迎えに来てくれたんだ。ミンミンは群れの方へ向かってまっすぐに飛んでいく。
だがどこにも知った顔はいなかった。違う群れだったのだ。
ミンミンは湖へ戻る。またとても悲しくなった。
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お題:泣かないで
『泣かないで』
妻が飲酒運転の車にはねられた。
電話口で警察官にそう告げられた俺は、急ぎの仕事を投げ出し、すぐに彼女が運ばれた病院へと向かった。
「——残念ですが」
だが駆けつける間もなく、彼女は死んだ。医師が言うには、おそらく即死だったという。
その瞬間、目の前が真っ暗になった。
「ねぇパパ、ママどこ?」
クローゼットの奥から引っ張りだして着てきた喪服の裾を、息子の小さな手が引っ張る。
無邪気に尋ねる息子のハルキを見て、葬儀に参列した人々からいたたまれないというような視線が飛んでくる。
「ハルくん、パパは今忙しいからばぁばとお外で遊ぼうか」
俺と、隣に座る義母に気を遣ったのだろう。訃報を聞いて遠方から駆けつけた母が息子の手を引いて外に向かう。
その姿を俺は虚ろな目で捉えた。
あれは……春に入園式で来た服か。
今さらながら息子の格好に気がつく。そして、その時の記憶が蘇った。
「ねぇ何してるの! 早くして!」
「うん、あとちょっと。もうすぐカメラの充電終わるから……」
「え!? まだ充電なんかしてるの!? 式、遅刻しちゃうよ!」
入園初日の朝からそんなやり取りで妻に怒られながらも、どうにか式には間に合った。
ついこの前まで赤ん坊だった息子が、照れながらも大人の顔負けの小さなスーツ姿で歩く様子を見て、感動の涙が止まらなかったのは妻ではなく俺の方だった。
「ちょっと、しっかりしてよ」と小声で呟く妻に、「ごめん」と鼻水まじりの声で返す。
そんな俺を見て、妻は半分呆れながらも綺麗にアイロンのかかった淡い水色のハンカチを俺に差し出した。
「ありがど」
そのハンカチで涙を拭きながら撮った息子のビデオは、ピントも中心もめちゃくちゃで、後で見返した時に妻からこっぴどく叱られることになった。
その日の帰り道、彼女が言った。
「——ほんと、よかった」
「うん、最高の入園式だった。こんなふうにあっという間に大きくなっていくんだな」
「それはもちろんそうだけど、それだけじゃなくてさ」
「あ、朝ギリギリだったから? その件は本当に……」
「もう、そうじゃなくて! 保育園のこと、あらためてここに入れて本当に良かったなって」
「あぁうん、だね」
家計のために共働きをすると決めていた俺達にとって、息子の通う保育園がなかなか決まらないことは、とても深刻な問題だった。
このまま預け先が決まらなければ、どちらかが仕事をセーブしなければならないと話し始めた矢先、少し遠くの保育園に空きが出た。
正直、本当はもっと家やお互いの職場に近いところが良かった。だが、贅沢は言っていられない。
話し合った末、きっと大変なことも多いだろうけど、2人でどうにか協力してそこに通わせようと決めた。
曜日ごとに保育園にお迎えに行く決まりを作ったはいいものの、それを実現するのはなかなかに大変だった。
上司や同僚に頭を下げて早く帰らせてもらう代わりに、持ち帰ることの出来る仕事は持ち帰って、家で仕事をした。
だが夜がどんなに遅かったとしても、朝も早く起きなければ仕事に間に合わない。
仕事復帰直後にも関わらず同じく忙しそうな妻も同様に、心も身体もギリギリの日々がずっと続いていた。
『今日どうしても仕事で抜けられなくて、お迎え間に合いそうにないです。申し訳ないけど、代わりに頼めませんか』
妻が亡くなった当日、俺は彼女にメッセージを送った。
『そんなこと急に言われても、私だって困るんだけど』
そう言いながらも、彼女が俺の代わりにハルキを迎えに行ってくれることになった。
そして、その道中で彼女は事故に合った。
どうして妻が——
何度そう問いかけても、妻は帰ってこない。
加害者への深い憎しみと同時に、俺は自分自身も許せなかった。
自分が迎えに行けば彼女は死なずに済んだ。まだ小さな息子から母親を奪ったのは俺自身なのだ。
あの瞬間から、世界はずっと暗闇の中にある。
隣ですすり泣く義母に掛ける言葉もなく、自分は泣くことも許されない。
悲しみと憤りに包まれた葬儀場で、手を引かれ遠ざかる息子の背中に視線を送る。
これからもっと大きくなるだろうあの背中を、妻はもう見られない。誰よりも見たかったはずなのに。
そう思うともう息子の方を見ることも出来なかった。俯いて感情を押し殺すように唇を噛みしめる。
音も、光も、何もかも届かない。
いっそこのままそんな場所に閉じこもってしまいたい。
そう思った瞬間、目の前に一筋の光が現れた。
驚いて顔を上げると、そこには心配そうに顔を歪めた息子の姿があった。
「パパ、泣かないで」
自分の方こそ泣きそうな顔をした息子がこっちを見て言う。
「ほら、泣かないで」
もう一度そう言った息子の手には、水色のハンカチが握りしめられていた。入園式で妻が貸してくれたあの淡い水色のハンカチ。
ハンカチを差し出す息子に、妻の面影が重なる。
必死に堪えた涙も、もう止めることが出来なかった。
「ありがとう」
そう言ってせきを切ったように泣き出した俺を見て、息子も声を上げて泣き始めた。
俺はその泣きじゃくる小さな体をきつく抱きしめた。それは情けない父親に出来る精一杯のことだった。
「ハルキ、ごめんな。ママとはもう会えないんだ。でもね」
息子の頬を伝う涙を妻のハンカチで拭う。
「でも、もうパパ、泣かないから」
真っ暗な闇の中を照らすこの大切な光を守れるのは、もう俺しかいない。妻が残したこの優しさを、俺が守るのだ。
2024/12/01
お願い。
もうやめて。
なにがそんなに不満なの?
いっその事教えてよ。
ご飯は拒否るし、
おしめは綺麗だし、
お着替えもしたし、
抱っこであやしてもみたのに
他にどうしろっていうの……。
お願いだから、これ以上…泣かないで……。
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まま?どっかいたいの?
いたいのいたいのまーくんにとんでけーっ!
いててててっ!
どう?とんでった?
……。
まま、なんでないてるの?
だいじょうぶだよ。
まーくんがいるからだいじょうぶだよ。
……。
まま、なかないで。
【泣かないで】
12泣かないで
今日、それまでの日々へのサヨナラを言いに来た
だからさ、泣かないでおくれよ
そんな顔をさせたい訳じゃないんだ
ただ飽きただけなんだよ
だから
またねって言いに来たんだよ
君は苦しい道を通ってきた
そして、木陰にひざまずいて倒れ込んだ。
その道で浴びた毒や、刺さったトゲで
もう歩きたくないと体をどんどん小さくしてる。
時が経って、
見える傷が治っても、君はまだ治ってないと
不幸の草むらにしがみついている。
強く暖かな日の光になって
その背中を温めてあげられたら
どんなにいいだろうか
君がやっと立ち上がったら、
今度はその背中をそっと押してあげよう。
#泣かないで
【泣かないで】
僕が悪い?
お母さん、泣かないでよ。
罪悪感で息が詰まるから。
あなたの声はいつでもすぐわかる。
どんなに遠くても、見つけられる自信がある。
どんなに人混みにいても、手を伸ばせる。
泣いていたら、すぐに駆けつける。
それでもどうか、どうか泣くのは私が近くにいる時にして欲しい。
1人で悲しんでいる時間が長くないように。
泣かないでなんて言わない。
けれど、わがままだけど、泣く時は1人で泣かないで。
泣かないで、下唇をぐっと噛み締めて、ずっと作り笑いをしている40歳になる人間。
数え年で40歳を「不惑」と呼ぶ。
2500年前の中国の思想家である孔子が、晩年に述べた言葉に由来する。
孔子は、15歳で学問を志し、30でその道で独り立ちし、40歳で進む道に迷いがなくなったとされている。
そんなこと、この複雑怪奇な現代であり得るのかと思うと、そんなわけがないと思えてしまう。
40の倍、80歳になったとしても、迷いっぱなしの人生なのではないか。
悲嘆の壁の前。
脳内に聳える硬く高い壁の前。
その前でウロウロと行ったり来たりをしている毎日。
角度により、この壁の色が変わる。
ある時は清廉を与える白、ある時は影の色。
陽の光で褪せた色。くたびれた色。
その様々な色合いに、これでも良いのだと思ったりする。
壁に向き合い、または逃げ。
自分の生き方の指針として、この壁の周りを蛇行運転することにしている。
人生は結果ではない。
この色が好きだ、という単純なものじゃない。
(日記)
最近無性に泣きたくなるときがある。
今日は気分じゃないからってドタキャンされたとか、きつい言い方されたとか、課題がむずすぎて終わらないとか、どうしようもなくて悔しくて泣きたくなる。
自分がどうしたいかとかどうなりたいかとか、わからなくて、目の前のことに精一杯だったり、他の人のことを考える余裕なんてなくて、無意識に自分もそんななのかなって思ったり。
そういうとき、親身に話を聞いてくれて、泣かないでって言わないで、それも一種のストレス発散とか、私の代わりに怒ってくれて、感謝しかない。
…疲れてるのかな、私。
私が寝ている間に、夢の中で泣いてしまった
今年8月29日、夢のこと
死柄木弔が幕末4大人斬りの1人
[岡田以蔵]みたいに………
とても切ない夢のストーリーだった
龍馬伝bgmが流れたし、
まるで夢の中で、私が大河ドラマ龍馬伝を
見ているようだった
私は、死柄木弔の彼女役だった
その他に、相澤消太、口田甲司、物間ネイト、ステイン
緋村剣心も出てきた
時代は、江戸時代の幕末期
夢の中で、本当の彼の名前は志村転孤だと伝えてきてくれたし、
死柄木と、口田甲司は、罪を犯した人役で
相澤、物間、緋村、ステインは幕府で働く人役だった
死柄木は、オールフォーワンに拾われて………
オールフォーワンは、武市半平太みたいな行動をしていた
オールフォーワンに裏切られて幕府の相澤に捕まって
死柄木弔が、まるで岡田以蔵を演じた佐藤健のようにも見えて
彼の夢の最後は市中引き回し刑されては
私の首の前で岡田以蔵の絶世の句
[君が為尽くす心は水の泡消えにし後は澄み渡る空]
を読んで斬首された夢だった
とても切なかった
最後の最後に暗闇の中、処刑で斬首された
死柄木が光り輝いて
『俺の心を支えてくれたのは奈々だけだった』
夢から起きても涙が止まらなかった
毎夜寂しくて一人涙していた時
泣かないでいられたら
そう思った事もあったけれど
この涙はあの人を好きな証だから
辛くとも受け入れよう
そう決めてここまで来れたんだ
泣顔が記憶にこびりついてる
かりの絆だと割り切ったはずなのに
なみだがつたう頬をただ見ていた
いつかは消えるはずの記憶だと
でも いつまでも消えない
あの時抱きしめていたら
もしかしたら
この手に君の温もりがあったのかな
#泣かないで
『泣かないで』
電話で告白したあの日、
流れる無音の中、
君の泣き声が聴こえる。
なんで今言うの、友達でいようって言ったのに
それと同時に切れる電話
それが君の最期の言葉だった。
泣かないで、
大丈夫よ、
何も悪くないからね
❧
久々のデートの帰り道、いつもより口数の少なかったあなたは、「もう少し話したいな、寄ってかない?」と言って、駅の近くの人気のない小さな公園を指さした。私は、そんなあなたの様子に小さく違和感を覚えながらも、頷いて、公園に入った。
入り口近くの自販機で飲み物を買って、ベンチに座った。
「あなたの方からもう少し話したいって言ってくれるなんて、珍しいね」
私は笑って言った。あなたは目を伏せて、小さく「うん」と言った。
「今日、すごく楽しかったよ。ありがとう。あなた、いつも忙しくしてるから、こんなにあなたといられるの、本当に久々で、私、ほんとに――」「あのさ」
あなたが私の声を遮るように切り出した。私は「嬉しくて」と続けようとした言葉を引っ込めて、あなたの顔を見る。その顔は、何かいつもと違っていた。
「僕ら、別れよう」
あなたは言った。私は、信じられなくて、何の冗談かと思った。でも、こちらを見るあなたの目は真剣で、本気なのだとわかった。
「私のこと、嫌いになっちゃったの?」
私が訊くと、あなたは首を横に振った。
「違う。君が好きだよ。だからこそ、もう一緒にいられない。
僕には、夢がある。そのために、君を一番に優先して動くことができない。これまで、君とそのことで、何回も話し合ってきたね。でも、なかなか着地点を見つけられないでここまできた。そのことで、たくさん君を傷つけてきた。これからも、それは変わらないと思う。だから、別れよう」
あなたは淡々と冷静に理由を語った。確かに、あなたは忙しい人で、私を構う時間が少ないと、文句を言ったことはあった。私以外の人と会うことを優先されて、悲しかったこともあった。自分を一番にしてくれないことには、不満を持っていた。最近、そういうことでよく喧嘩していた。でも、その度に少しずつ歩み寄って、いつか理想の形になれると思ってた。今日みたいに、楽しく一緒に過ごせる日だってある。それなのに、別れるなんて。
「私、あなたが好きなの。好き同士だけじゃ、ダメなの?もっと時間をかければ、きっともっといい2人になれるって、思うんだけど」
「……僕はこれ以上君の望む形にはなれないよ。また君を苦しめる。それは、ダメだ」
きっとこの人は、今日別れを告げることを決意して、私の隣に立って、今日一日過ごしたのだ。それがわかった。
視界が揺らいで、涙が溢れた。
「泣かないで」
あなたの手が伸びてきて、私の涙を指先で掬う。その指先からは、未だ尽きぬ愛情が確かに感じられて。私を好きだと言うあなたの言葉に偽りはないことも、それでも別れを選んだあなたの決意は揺らがないことも、わかってしまった。
初恋だった。夢を語るあなたの横顔が好きだった。最初はただ一緒にいられるだけで幸せで、あなたにも共にいて幸せを感じてもらえるような私であろうと、そう思っていた。それなのに、私はそれを忘れて、あなたの一番になりたいと、あなたにたくさん無理をさせて、縛って、苦しめていたのだ。
私は自分の愚かさに、ただ泣くことしかできなかった。
あなたの下げられた眉の下、子どものように泣きじゃくる私を見つめる目は、苦しいほどに優しかった。
泣かないで なんて言わないで
ただ今は 私の全てを抱きしめていて