『泣かないで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
木枯らしが辺りに強く吹きつける晩のことだった。借りていた本に夢中になりすぎて、トルデニーニャが眠気を感じて、本を閉じた頃にはすっかり真夜中に近い時間になってしまっていた。この時間なら寝床の中には既にリヴァルシュタインが就寝しているだろう。そろそろ寝ようと思ったトルデニーニャは物音を立てないように寝床に向かった。
「……トーマ?」
寝床では眠っているはずのリヴァルシュタインが起きていた。彼は近づいてくる彼女の気配を感じて、確かめるように声に出した。彼の呼びかけはとても頼りなげで胡乱としている。
「リヴァ、どうかしたの?」
返事をしながらトルデニーニャは彼の傍に近寄った。その顔を覗き込んで、彼女はぎょっと目を大きく見開いた。彼は熟睡しているときに叩き起こされたときと同じようなぼーっとした表情をして、両目から大粒の涙をこぼしていた。よくわからないけれど、夢見が悪かったのだろうか。
「どうしたの? 眠れないの?」
彼は胡乱な表情を彼女に向けるだけで、何も言わなかった。本当に起きているのか、実のところ眠っているのか判別がつかない。トルデニーニャは彼の腕を掴んだ。ぐいぐいと自分の方へと引っ張りながら、彼女は彼の顔を覗き込んだ。自分の姿が瞳に彼の映っているけれど、彼の瞳には違うものが映っているのだろう。
「ねえったら」
彼女はもう一度声をかけたが、返事が返ってくる気配がなかった。このままだと埒が明かない。仕方がないので、掴んでいた彼の腕を離すと、彼女は自分の寝床にもぐり込む。
「……君がいなくなる夢を見た……」
足音もなくいつの間にかトルデニーニャの側に立っていた彼が、ぽつりとこぼした。彼女はごろりと寝返りを打つと、体を起こした。
もう一度、リヴァルシュタインの腕を掴むと、自分の方へと引き寄せた。引っ張られてバランスを崩した彼が、片膝を彼女の寝台についた。自分とほぼ同じくらいの目線になった彼を、トルデニーニャはしっかりと抱きしめた。
「大丈夫。わたしはここにいるよ」
彼から息苦しくなるほど強く抱きしめ返された。彼女の腕の中で彼が小刻みに震え始める。その背中をゆっくりとさすりながら、彼女は言った。
「だから、泣かないで」
月明かりが二人を優しく照らしていた。
泣かないで
(お題更新のため本稿を下書きとして保管)
2023.12.1 藍
『全ての泣き虫のために』
600とんで47人箱の中 壁に囲まれて仲良しこよし
後ろの正面誰もいない うまくやれなくて壁の外
壁の外もまた箱の中 こんなループが続くならさすがに気が滅入ってしまいそう 全ての泣き虫のために過剰なほど馬鹿笑いできたら いっそのこと叫びながら一緒になって泣けたらいいのに
2人は きっと
長く居すぎたのかな。
僕は君の
君は僕の
知らないこと
何もないみたい…
そう思っていた
あの日の君が
僕の知らない顔して
涙を流すから
呼吸を忘れて
深い海に沈んでく
台所に残ったシミも
2人掛けソファの右側も
こんな日がくるなんて
知らずに笑っている2人の写真が…
泣かないで…
そう言って
思い出の中に
僕だけを取り残してくみたいだ…
- Be left behind... -
あなたを見つけられないで、冬が来てしまいました。
前までは木々が紅葉で色付いていたのに。
もう外は真っ白。
ねぇ、また前みたく私とお話してよ。
眩しい笑顔で、私を励ましてよ。
ねぇ、ねぇ、ねぇ。
「泣かないで」
そう言って抱きしめに来て。
活き活きしているあなたが。
〜冬のはじまり〜
〜泣かないで〜
#泣かないで
付き合って3年目のある日。
私が初めて愛した人は突然、この世を去った。
交通事故だった。
「ねえ、あの子の分まで幸せになってね」
彼のお母さんに葬式で言われた。
幼馴染だったから、彼の両親にも公認の仲だった。
頷く事もできなかった私に、
彼のお母さんは慰めるように抱きしめてくれた。
自分も息子を亡くして悲しいはずなのに
私の事を気遣ってくれる優しさは、彼に良く似ていた。
あれから1年。
少しずつ前を向けるようになった私は、荒れ果てた
部屋の整理を始めた。
彼の物を見るたびに涙が止まらなくて、
仕事も休んでいた。
こんなんだと、彼に笑われてしまう。
彼のお母さんにも合わせる顔がない。
悲しくはなるけれど、あの頃よりも思い出を
振り返られるようになったから。
「あ、これ初めてもらったネックレスだ」
「沖縄、楽しかったな」
「…っ!」
引き出しの奥から出てきた1枚の紙と私宛の手紙に
涙が止まらなくなった。
紙は、婚姻届だった。
手紙は、
誕生日のお祝いとこれからも一緒に生きていきたいと
いうメッセージだった。
事故から2週間後は私の誕生日だった。
ねえ、やっと泣かないで
前を向けるようになってきたのに…。
「私も一緒に生きたかったよ…。
置いていかないでよ…!」
彼のお母さん、ごめんなさい。
私、約束を守れそうにないです。
だって、彼と一緒に幸せになりたかった。
エリオット、ぼくは、たのしいゆめをみている。
だから泣かないで、エリオット。
そのあおいひとみを、どうかゆらさないで。
ねえ、エリオット。
もうずいぶん、遠くにきてしまったね。
別哭了
「別哭了哦。」是誰對我這麼說?
剛剛的那個人是誰?
我好像被推開了。
他還說了什麼?
為什麼我怎麼都想不起來?
頭好痛好痛,我卻仍強迫其運轉。
要是現在不好好回想起來的話……
我做了那件事,
不知是睡著了還是暈了過去,
然後,然後,
我見到了那個人。
啊啊……
他是誰?
我想不起來。
然後,我像往昔的無數次一樣被他推開。
我坐起身,眼淚啪搭的滴在棉被上。
右手抓起身旁已經空了的藥罐,用力地摔了出去。
#3 泣かないで
きみの瞳から、ほろほろと涙がこぼれていく。
すくい上げるように指をすべらせても、留まることなく溢れていく。
透き通るような瞳が涙でぼやけて、白い頬の上を、次から次へと雫が伝って落ちていく。声もあげずに、ただただ静かに泣くきみは壊れそうなほど綺麗だったけれど、自分のことのように心が傷んだ。
泣いているきみより、笑っているきみを見ていたい。傷ついて悲しむきみなんて見たくない。
(――泣かないで)
喉元まで迫り上がった本音を、すんでのところで飲み込んだ。
声もなく泣くきみに寄り添って、ひたすらその涙を拭う。差し出したハンカチが湿って意味をなさなくなっても、泣
き続けるきみのそばに居る。
泣いているきみを見続けるのは辛い。笑っていて欲しい。泣かないで欲しい。それは紛うことのない本音だった。泣かないで、と、言いたくてたまらない。
でも、だけど。
そうやって泣きやんだきみは、いつ泣くというのだろう。
笑ってと言われたきみはきっと、誰もいないところで泣くのだろう。
誰に知られることもなく、独りきりで。
そんなのは、きみが泣くことよりもっと嫌だから。
だからぼくは、泣かないでという本音を、ずっと胸の奥にしまっておく。永遠に、ずっと。
なぜ空は青いんだろう。科学的な理由は分からないけど、僕的な答えを言うならば、向こうへ逝く時に安心する色だからなんだと思う。真っ青でもなく、淡いブルーから紺碧へグラデーションのように広がってゆく。どこを切り取って眺めてもすごく澄み渡っている。
今日は特に綺麗な青空だ。
最期に見る空がこんなに青くて良かったよ。
嬉しいんだ、こんなふうに穏やかに眠れることが。
だからどうか泣かないでね。
今度はあの空の1部になって、きみのことを見守るから。
「今度は泣かないでと来たか。人間は、勝手だねぇ」
声がしたので振り向くとそこにはホトトギスがいた。
その物憂げな雰囲気に思わず声をかける。
「何かあったのか?」
我ながら馬鹿な質問をしたと思う。
鳥が喋るはずなんて無いのに。
だが、その鳥は事もなげに返事をする。
「ああ、聞いてくれるか。昔な、人間が来て、泣かないなら殺すって、言われたことあるんだ」
「それは大変だな」
流暢に話すホトトギスを見て、これは夢だと気づく
「その後には、泣かせてみせようって、逆さ吊りにさせられて、無理矢理泣かされたことがある」
「それはまた災難であったな」
「その後のやつも変なやつだったよ。泣かないならって泣くまで待つって言うんだ」
「ほう」
「で、何もせずじーっと見てるだけなの。俺、いたたまれなくって、泣く振りしたんだ」
ホトトギスの言葉に思わず吹き出す。
夢とはいえ、話のうまいホトトギスだ。
「それで、今回は泣くなって言われたのか?」
「そうなんだよ。人間って勝手だよな」
「そうか。でもお前は泣いているようには見えないな。泣くなとはどういう意味だ」
「いや、あんたが泣くなよって意味だよ」
「何言ってるんだ。意味分からん」
「そりゃそうだ。これは夢だぞ」
「そうだったな。それで、なんで泣くんだ?」
「ああ、これからあんたの大切な人が死ぬんだ」
大切な人と言われて考えてみるが、思考がまとまらない。
夢だからだろう。
「いいか、泣くなよ」
「はあ」
自分を呼んでいる声が聞こえる。
自分の意識が浮上してきて、目が覚めるのを自覚する。
「忘れるな。泣くなよ。己の為すべきことを為すために…」
――――――――
「起きてください。殿」
「どうした。仮眠中だぞ」
「緊急の連絡です。これを」
部下から渡された文を寝ぼけた頭で読むが、その衝撃的な内容に一気に頭が冴える。
「ば、馬鹿な。信長様が…」
信長様と過ごした日々を思い出し、涙が零れそうにになる。
―泣くなよ
その言葉が頭を過ぎる。
そうだ泣いてはいけない。
自分には、やるべきことがあるのだ
「官兵衛を呼べ。相談がしたい」
「はっ」
走っていく伝令を見ながら、これからのことを考える。
―泣くなよ
あれは信長様だったのかもしれない
頬を叩き、自分に活を入れる
泣いてはいけない
為すために為すために。
為したあとに泣けばいいのだ。
袖絞る暇はないから痛みも砂と蹴り出して乾風へ向かう
日の出も見飽きた時間帯。地下迷宮入り口の目と鼻の先で待ちぼうける。
先日冬を知らせた初雪は、整備された石畳に溶け見る影もなくなっていた。
すぐ近くに立っている銅像は、この迷宮を踏破したパーティのもので皆見慣れた顔だ。1つ、2つ、3つ。
4人を基本とするパーティとしては不自然な数に少し遠い目をする。
逃げたのは私だ。私には彼らほどの才能も無ければ、彼女程の努力も出来なかった。
耐えられなくなったのだ。彼らとの実力差に。
しかし、彼らが特別私を咎めることはなかった。そうして、卒業後自然と疎遠になっていった。
ーー泣かないで、ほら一緒に行こう?
幼い頃迷宮内で迷子になった私に、そう言って優しく手を差し伸べてくれたのは彼だった。結局、その恩すら返せた気がしない。私に実力があれば。
「おはようございまーす」
何度目かのため息を吐ききった頃。少し遠くから声がした。
藍色のブレザーを着た二人組。今日の待ち人、アルト君とマルク君だ。
干渉に浸るのはここまでにしよう。地下迷宮は遊びじゃない。
「泣かないで」
【 泣かないで 】
これは仕方のないことなんだ。
だからもう、ボクのために涙を流すのは終わりにして?
体中がボロボロになって、直しようもない状態。
まぁ、原因はキミなんだけどさ…。
今までずっと一緒だったもんね。
成長記録でもあるアルバムには、大体並んで写ってるし。
キミの色んな感情を見てきて、ボクも同じ気持ちになる。
だから今のキミの気持ちも分かるよ。
でも大丈夫。
キミはボクのことを忘れるべきなんだ。
薄情なんかじゃないよ、これこそが大人になるってこと。
ほら、最後にキミの手でボクを捨てておくれ。
バイバイって、それだけでいいんだ。
ぬいぐるみの役目は、これで終わりだよ。
「泣かないで」
すんごく嬉しいときには、思いっきり泣いて喜んでいいんだよ。
とてつもなく悲しいときには、思いっきり声をあげて泣いていいんだよ。
めちゃくちゃ悔しいときには、人前で思いっきり泣いていいんだよ。
とっても痛いときには、痛いって言って思いっきり泣いていいんだよ。
そんな時、私は絶対「泣かないで」なんて言わないから。
愛してるよ
だからもう、泣かないで
『泣かないで』
君が泣いている姿を最後に見たのは何時だろうか。
そんなふうに思うほど君は涙を流すという行為をしてこなかった。
でも今、この時、君が泣いている。
黒曜石のような瞳から大粒の涙が零れている。
泣かないでとは言えないな。
そんなことを私が言う資格はない。
でも傍に居ることはこんな私でもできる。
だから、君の傍にいる。
泣き疲れるまで。
私の思いを殺して。
あなたの笑顔が好きだから笑っていて、
私のために泣かないで
「泣かないで」
泣かないで なんて言わないで。
いまは、思いっきり泣かせて。
じゃないと、この先も
どこにゆけば 良いのか
分からなくなるから。
【お題:泣かないで】
【泣かないで】
「泣かないで」
考える間もなく声に出してしまって、直後に後悔する。
もっと気の利いた言葉があったんじゃないか。
限界まで頑張っている人に頑張れと言うような、善意の皮を被った追い詰める言葉になっていないか。
そんな事をいくら考えたところで、言葉はすでに彼女の聴覚から脳までとっくに伝達済みだろうからどうしようもない。
「なんでもないよ」
そう言って彼女は、薄く小さい唇の端を重そうに持ち上げる。
可愛いなと思う。
彼女はいつだって可愛い。
でも、違う。今見せてくれた笑顔だって、本当に誰よりも可愛いんだけれど。
そうだ、わたしが言いたかったのは
「笑って!」
そう言って、私にできる精一杯の面白い顔をしてみる。
プリクラでみんなで変顔した時に私だけあまりにも酷い顔をするものだから、だれも気を使ってインスタに載せられなかった渾身の変顔。
君には絶対見せたくなかった顔。
君は目を見開いて、驚いた顔をする。
大きく開いた目を少し細めて、長いまつ毛に絡んだ涙が零れる。
君は笑う。
涙が全部乾いたらいつものカフェに誘おうと思う。