わたあめ

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 水鳥の群れの大きな羽音に驚きミンミンは目覚めた。周りを見回してもお母さんも群れの仲間もいない。
「そうだ、昨日みんなとはぐれてしまったんだ」
一晩寝て疲れはとれたが、一晩寝ても不安や心細さは全く変わらない。これからどうすればいいかも全くわからない。ただ昨日何も食べていないのでひどく空腹ではあった。幸いこの湖の周りには豊かな草地が広がっている。ミンミンは食べ物を探すことにした。
空腹が満たされると、これからの事を思って心配で押しつぶされそうになる。お母さんとはもう会えないのかしら。群れの仲間はどこに行ったのかしら。不安になる度に大きな声で呼んでみる。他の水鳥たちが驚いたようにミンミンを見る。空を見上げ鳥の群れを見つけると飛び立つ。それが自分の群れでないとわかるとまた湖に戻る。何度も何度も空と湖を行ったり来たりした。
 あたりが暗くなるにつれてミンミンの心の中の不安はどんどん大きくなる。
 次の日もその次の日も同じように過ごした。もう群れのみんなは別のところへ行ってしまったに違いない。ここで冬を越すことはできるのだろうか。ここで冬を越して春になったら元いた場所に戻ればまたお母さんたちに会えるだろうか。ここまでの旅路を一生懸命に思い出そうとした。どんなに考えてもあの嵐からここまできた道はわからなかった。
 この湖に来てから何度空を見上げたことだろう。ミンミンが空を見上げた時、遠くに大きな鳥の群れが見えた。近づいてくる。先端だけ黒い大きな灰色の翼、黄色い嘴に頭にある2本のスジ。インドガンがこの湖に向かってくる。ミンミンは嬉しくてたまらなくなった。みんなが迎えに来てくれたんだ。ミンミンは群れの方へ向かってまっすぐに飛んでいく。
 だがどこにも知った顔はいなかった。違う群れだったのだ。
 ミンミンは湖へ戻る。またとても悲しくなった。

 

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お題:泣かないで

12/1/2024, 11:34:02 AM