『月に願いを』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
夜の荒野を駆けていく。宵闇に紛れている彼の姿は全身が黒一色。誰にも悟られるこのなく任務をこなす影の使者。毎夜血に塗れてなおこうして心を保っていられるのか。
それはありふれた日常を享受するということだった。
ある日、彼はいつもの如く雇い主の命じたとおりに指定された相手を殺そうとしていた。そこで見たありふれた日常が彼に心を取り戻させた。
いつか自分のお役目が終わる日が来る。その時こそあの光輝く日常を享受できるとそう勘違いしていた。
その出来事から数十年が経ち彼に引退の時期が訪れた。まだ彼は夢を忘れてなく遂に終わると意気揚々と最後の任務へと繰り出した。
いつもの通り指定された土地へ行くとただの空き地だった。不思議に思って地図をかくにんしていると不意に風切り音が聞こえて来た。
咄嗟に自分のクナイで弾いた。そこでようやく飛んできたものが分かった。それは自分が幼少の頃から見慣れて来た里のクナイだった。彼は理解した。
なぜ里に老いた忍びがいなかったのか。
それはこうして里のものたちで処分しているからだったのだ。
だが理解したところで手遅れだった。
彼の老いた体では2回目の攻撃はかわせなかった。
クナイが心臓に突き刺さる。
大量に口から血を流し彼は血の海に沈む。
結局は自分の業からは逃れられなかったのだ。
彼は最後に霞む視界で夜空を仰ぎ見て一つのことを願った。彼を今まで照らし続けていた月は月蝕によって影もなかった。
お題月に願いを込めて
ここまで読んでいただきありがとうございます。
更新が遅れてすみません。
「クロノは。何か、叶えてほしい願いとか、ある?」
「…は?」
思わず、彼女の額に手を当てる。
熱はない。
「っバカ!」
いつもと変わらないその様子に、少しだけ安堵する。
「シロが急に変な事を言うから。つい」
はたき落とされた手を伸ばし、機嫌を損ねてしまった彼女の頭を撫でるが、それすらも振り払われて背を向けられた。
繋いでいたはずの手さえも離れてしまう。
「もう、知らない!」
これは完全に臍を曲げてしまったようだ。
さて、どうするか。
悩みはするも、何も思い浮かばず。仕方なしに背中を合わせて座り込む。
「急にどうした?誰かになんか言われた?」
「別に…」
ぽつり、と小さく返される声。
やはり普段とは何かが違う。
何かに影響を受けたのか。それとも、ないとは思うがこちらを気にかけているのか。
「俺が好きでシロの我儘を聞いてるんだ。それを負担に感じた事なんてないよ」
「っ!ワガママ、って。言い方!」
「じゃあ、好奇心が人の形をしてる、とか?」
「ばかっ!」
間違った事は言っていない。
繋いでいる手がいつの間にか引かれ始め、あちこちに連れ回されるのはいつもの事だ。
それでもその答えは気に入らなかったのだろう。合わせていた背中の温もりが離れ、代わりに背中を叩かれる。痛みを感じない、その優しさに思わず笑みが漏れた。
「こら、笑うなっ!バカ、人が、せっかく、っ!」
「だから、気にしてないって」
「私が!気にする!」
思いがけない言葉に、思わず息を呑む。
後ろを振り返らず、手を引く少女が。目に付くもの全てに興味を惹かれ、きらきら輝くその瞳が。繋いだ手の先を見る事などないと思っていた。
「嬉しかったの!外を見れて。いろんな事、知れて。名前、呼んでくれて。だから!何か返すって、決めたのっ!」
紡がれる言葉に、上がりそうになる口角を必死で抑えながら。
振り返り、背を叩いている手を優しく掴む。そのままさっきまでしていたように繋ぎ直せば、幾分か調子を戻した赤朽葉色の瞳が驚いたように瞬いた。
「ツキシロ」
名前を呼ぶ。
「…なあに?」
戸惑いながらも返る言葉に、静かに微笑んで。
「明日も、その次も、こうして手を繋ぎたい。それが俺の願い」
月の名を冠する少女が、空や月に色を溶かしてしまわないように。
大地に繋ぎ止めていられるように願う。
「それだけ?」
「あとは、そうだな…一緒に朝日を見るのを諦めないでほしいな」
それは太陽に嫌われた少女には叶わない願い。
それでも最初から無理だと、諦めてほしくはなかった。
「俺、これからたくさん勉強して、シロが青空の下でも笑える方法を見つけるから。どんなに時間がかかっても諦めないからさ。だから、シロも諦めないで」
「なに、それ…ずるい」
視線を逸らされる。
けれど、手は繋いだまま。
「それが俺の願い。叶えてくれるんだろ?」
月の訪れを乞い願って、白む夜空のように。
白の少女《ツキシロ》に向けて、願った。
20240527 『月に願いを』
一生忘れられない1日から月日が流れた。
オレは今1人でアパートの冷たい床の上で寝転びカーテンの無い窓から夜空を見上げている。
今でも常にあの日が思い出される。
上司を切りつけた時の限界だった自分の感情、思っていたより力が入り深く傷付けた時の手の感触。
鮮明に頭に焼き付いている。
それからオレは殺人未遂で捕まったが、初犯である事と他の社員の上司の発言内容、オレが鬱の初期症状があったという証言、何より強かったのは上司の息子さんの父親がいつも高圧的な態度で接していた事と成績が悪いと酷い言葉で罵倒されていて我慢の限界だった事、上司の奥様も上司に注意をしたが聞いてくれず、次は奥様を罵倒した事の証言で切りつけた事は重大な犯罪だが、同情の余地ありと判断され執行猶予が付いた。
その後の上司は重傷で入院したが、奥様とは離婚して息子さんも奥様の実家で暮らしていると聞いた。
あの日からオレは自分のした事で誰一人として幸せにならなかった事への懺悔の日々を過ごしている。
あの人と離れて暮らすようになって何日が過ぎただろうか。
あの日に至るまでに私にできる事はたくさんあったように思っている。
もう少しお互いに話ができていれば良かった。
あの人の様子から察する事もあったのに言いたくないこともあるだろうと聞かなかった後悔。
自分も辛い思いをした事があるからこそ分かることも あったのに行動に移せなかった。
今までの後悔とこの先の事を考えるとまだ答えは出せずにいる。
たくさんの方から色んな話を聞いてあの人の事を悪く言う人は少なかった。
会社の人も関わりたくないと思う気持ちがあることはわかる。私が同じ立場にいたら何もできず見て見ぬふりをするだろう。
相手の弁護士の方から伝えられた上司の奥様の言葉も分かる。
家の旦那があなたの旦那さんにした事で旦那さんは本当に辛い思いをされたと思います。だけど、人を傷つけてしまった行為は許せないでいます。こちらの思いで執行猶予を長くさせていただきました。この間に鬱病の治療と反省をして、二度と同じ事が無いようにして頂きたいと思います。
あの人のことだから今は1人で毎日懺悔の日々を過ごしているのだろう。
ちゃんと食事はできているだろうか。
今日は少しでも眠れただろうか。
毎日あの人を思っている。
窓の外の夜空を見つめる。
あぁ今日は私の好きなキレイな三日月。3回目のデートでまだお互いに話したくて、私のアパートの近くの公園でもう少しだけと言いながら長く色んな話をしたあの日の夜の月と同じだ。
あの人も今日の月を見てるだろうか。
オレは窓の外の月を見つめて3回目のデートを思い出した。
今頃妻はどうしているだろうか。
あの時は妻に会うのが楽しみだった。いつもの日常の他愛のない話をするのが楽しかった。
結婚していつからそんな他愛のない話をしなくなったんだろうか。オレに余裕がなくなったからか。
そういえばあの公園で話していた時に三日月が好きだって言っていたな。
妻も今日の月を見ているだろうか。
いつかあの公園で見た妻のあたたかい笑顔が見れる日が来るだろか。
いつかあの公園でみたあの人のぎこちないけど何故かこちらも笑顔になってしまう笑顔が見れる日が来るだろうか。
そんな思いを「月に願いを」込めて。
月に願いを
「ねぇ、月が綺麗ですね」
「あぁ。其方と一緒に見るからだろうな」
あなたと寄り添い合うこの夜がいつまでも
続きますように…。美しい月に願いを込めて。
【月に願いを】
[5/19 恋物語
[5/26 降り止まない雨
続編
登場人物
鬼龍院 加寿磨
(きりゅういん かずま)
金城 小夜子
(きんじょう さよこ)
「お母さん、お願いがあります」
加寿磨は大声で叫んでいた。
母はビックリして、急いで2階に上がってきた。
「どうしたの、かず.....ま、貴方立ってる。立てたのね」
「母さん、事故を起こした人の名前を教えて下さい」
「今更聞いてどうするの?もう済んだことよ」
「ボクは間違っていました。傷付いたのはボクだけじゃなかったんです」
「小夜子さんの事かい?」
「ボクは彼女に合わなければいけない」
「記憶が戻ったのですか?」
「残念ながら、記憶は戻っていません」
「なら、なぜ?」
「ボク以上に彼女が傷付いている事が分かったからです」
「分かったわ。彼女の名前は金城小夜子さんよ」
「彼女が引っ越した住所も分かりますか?」
「引っ越したの?それは分からないわ」
「そうですか、残念です。でもなんとかして調べなければ」
「それより、立てたんだね。歩けるのですか?」
ボクは一歩踏み出してみた。
体重を支えることが出来ず、そのまま崩れ落ちた。
「無理をしないで、少しずつでいいのよ。お医者の先生に連絡しておきますね」
ボクは心に誓った。
必ず、歩いてあの子に会いに行く。
それから、リハビリが始まった。何年も車椅子だったのだ、想像以上の辛く苦しい日々が続いた。
加寿磨は ‘あの子に会う’ その一心で耐えた。これぐらい彼女の苦しみに比べれば何でもない。
一月程が経ち、松葉杖を使って歩ける様になったが、まだ長くは歩けない。もっと頑張らないと。
あの子の住所はまだ分からない。
ボクは何度も何度も手紙を読み返し、ついに糸口を見つけた。
消印だ!
これで大体の場所が絞り込める。
歩行も松葉杖1本で、歩けるようになった。
いよいよ明日、1泊2日の予定で出発する。
ひとりで行くつもりだったが、母がどうしても付いて行くと言うのでふたり旅となった。
ボクは月に願いを込めた。
〈どうかあの子に会えます様に〉月は無言で微笑んでいる様に見えた。〈大丈夫大丈夫〉
だが、そう甘くは行かなかった。
役所、郵便局、中学校、どこも〈個人情報は答えられない〉と言われてしまった。
中学校の校門で探すにしても、ボクはあの子の顔を知らない。
最後は生徒に聞いてみたが〈金城なんて子はいない〉と言われた。
もはやお手上げ万事休すである。
自宅に戻り、抜け殻になった。
あれだけ頑張っていたリハビリも休んで3日になる。
途方に暮れ、気が付くとあの子の通っていた中学校に来ていた。
雨が降っている事にも気づかずにいた。
「初めてあの子をみたのも、こんな雨だったな」
「もしかしてカズ君?」
女の子の声がしたので、振り返ってみた。
「カズ君だよね、鬼龍院加寿磨君でしょ?」
「ボクの事知ってるの?」
「やっぱり、カズ君なのね、歩けるようになったんだね。よかったきっと小夜子も喜ぶよ」
「き、君は金城小夜子さんの友達なのかい?」
「カズ君、記憶はまだ戻ってないの?私と小夜子とカズ君は同じ幼稚園だったんだよ」
「そうだったの、... もしかして君は金城さんの引っ越し先を知っているかい?」
「知っていのわよ」
その時、雨が止み日が差してきた。
つづく
#月に願いを…
寂しいなんて感情
なければいいのに…
あなたに愛たいと
願うこともなくなるのに…
「月に代わって…なんて台詞もあるけれど、
今思うと不思議よね」
黒く柔らかな長い毛を梳く
不満気な唸り声が言葉を促すように小さくなる
「月にいるのは兎とか蟹とか女性とか、
あとは嫉妬深い女神様だったかしら。
どれも直接に裁く謂れは無かった気がするのよ」
結ばれた口元は何も語らず
それでも淀んだ黒い瞳は、確かな知性を持って
視線を上げた
「だからね、別に貴方だって、月を想う必要なんて
どこにも無いのよ」
黒く柔らかな長い毛を梳く
しなだれる様に拘束した大きな身体を
月の下に覆う暴虐を
いつかその真円に、貴方が狂うのを忘れるまで
‹月に願いを›
__月に願いを__
「星よりもさ、月に願い事をしたら叶いそうだよね。」
考えもしなかった、突然の疑問に思わず吹き出す。
俺は付き合って間もない彼女と6月の夜中道を歩いていた。
空には丁度満月が飾ってある。
その光景が、多分彼女にその発想を作ったのだろう。
「急に何言ってんだよwまぁ、分からなくもないけど…」
「だよね!良く皆んなは『星に願う』とか、なんとか言うじゃない?でも、今日の満月を見て思ったの。月ってこんなに大きいんだなぁって。」
「おぉ。で、それがどうやってあんなアホな発想にたどり着くんだ?」
「アホ言うなし。ほら、お月様って凄く大きいし、とっても綺麗だよね。だから星よりも何倍も願いを叶える力があるんじゃないかなぁってね。」
少しふざけたような口調で言う。でも、そんな彼女の瞳にはキラキラと光る、希望に満ちた目をしていた。なんだか愛らしいな…。
でも、月がデカいって、そりゃあそこら辺に散らばってる星と比べたら、こんな近くから見てんだし月が大きく見えるに違いない。
俺は良く、彼女の考えに驚かせられる。天然か。って思う時だってあるし、たまーに、は?。って思う時だってある。笑
でも、そこが可愛いんだよ。
「なるほどねぇ。…でも、そんな大胆な考えが思いつくって事だから、何か叶えたい願いとかあったりする?」
「えっ…い、いや別に願い事ってわけでもないんだけど…」
戸惑い出す彼女。さっきからどうした。笑
「えっとねっ……アッ…!。あ、貴方なら『I love you』を何と表す〜、??」
「なんだよ急に。話が変わりすぎだろ。」
「い、良いから良いから〜」
絶対誤魔化された。まぁ良いや。
「アイラブユーを俺なりに例えろってこと?」
「そゆことそゆこと。」
「んー…"死んでも一生離さない"…?」
「え……フフッ、アハハ!w」
「なんだよっ!お前が表せって言ったじゃないか!笑///」
俺の愛の表し方に爆笑する彼女。
まったく、人がせっかく一生懸命考えてやったと言うのに、失礼だな。
「フフッ…ごめんごめん。それが貴方の表し方だもんね。」
「笑う要素どこにもなかった気がする。」
…よし話を戻すか。
「話が脱線したな。で、君の願い事ってのはなんだよ。」
彼女に聞く。でも、どうせ彼女の事だし、たいした願い事でも無さそうだな。そう思っていたが、考えもしなかった言葉がよぎる。
小さく、優しい静かな声で伝えてきた。周りが異様に静かすぎるせいで小さな音でもエコーがかかったかのように響き渡る。
「"月が綺麗ですね。"」
初めは冗談かと思った。けれども彼女の紅色に染められた頬を見て、少なからず冗談ではないと思えた。
咄嗟に下を向く彼女。
そんな彼女を見てると、また笑いそうになる。
「…何よ…」
「いや、今になってそんな言葉で赤くなんなくてもって思っただけ、。」
「何さぁ…」
どこかいたずらそうに笑う君。
「…だって綺麗な満月が目の前にあるんだよ?なんだか言いたくなっちゃって…。ほら、今日は絶好の月だよ」
「はぁ…。」
返事を待っているのか、俺の方をチラチラと見てくる。
いつも見ている横顔なのに。
月明かりに照らされる彼女はどこか綺麗で…。
「…そうだねぇ…。」
「えっ、?」
別に"星が綺麗ですね"でも良かったんじゃないかって辺なことを考える。
でも、今は、『月が綺麗ですね』が、あってる。と思えた。
彼女が俺を真っ直ぐに見る。俺は満月を真っ直ぐ見た。
ここで初めて、自分も頬を赤くしている事に気がついた。
「…ずっと前から月は綺麗だよ。」
__月に願いを__
「月に願いを」
ああ、今日も一日がすぎてしまった。
そう考えるようになったのは私が社会のネジとして機能し始めてからだろうか。彩りがあった学生時代は瞬きをするように終え、今では透明な世界だけが私の世界に広がっている。今日は何回人に頭を下げたのだろう。
私はコップに透明な液体を注ぎ、いつの日か買った四角い箱を手に取った。ベランダに出て、中から紙の筒を取り出し火をつける。ジリジリと燃える火は、汚れていく肺と似ている。自分の身体を汚しているのはわかっているのに、私はこの行為が辞められなかった。
やはり、夜は澄み切っていて心地がいい。私はそう思った。すると急に匂いが変わった。煙の匂いだが、私のものとは違う。ふと隣を見ると、同じ行為をしている人間が見て取れた。横顔を見るに、私よりも若い。
『タバコ好きなんですか?』
急にそう話しかけてきた。その姿は美しく、月明かりにはスポットライトになった。
「は、はい。」
『じゃあ、一緒に吸いましょ。』
「いいですね…。」
もう少し話したくなってしまったのは、きっと月が綺麗なせいだ。
『月に願い込めたら、願いって叶うんですかね?』
「叶ったら素敵ですね。」
そんなことを言うから私も願いを込めた―。
「月に願いを」
ここはおそらく彼岸の世界。何もない、誰もいないこの世界。
自分のことさえ何も分からない。
それでも、こんなところに来てしまったからには何かしないと。
そう思って歩き回ったが、いくら進んでも疲れないし
空腹も感じない。
そんなある時に見つけたのが壊れた機械と一本の木だった。
機械をなんとか修理して何かの数値を観測する。
何の数値なのか見当もつかなかったが、増減を繰り返していることだけはなんとなくわかった。
あれは太陽と月が降りた夜の事。
孤独だったぼくの前に彼女が現れた。
あまりにも驚いたせいで少ししか話せなかったが、「また会えるまで、待ってて」というひとことは伝えられた。
彼女との出会いから少し経った時にふと気づいた。
それまで増減していた機械の数値が、負の値ばかりを表示するようになった。
そんなある時、空を見上げて初めてわかった。
負の値が表示されるごとに星々が減っていることが。
この数値が宇宙にある物質の増減を示していることが。
おそらく、あの時出会った彼女が原因なのだろう。
彼女は何者なんだ?どんな目的で宇宙をなくそうと思っているんだ?
……もしかして再会を待てずに、宇宙ごとぼくを自分のものにするつもりなのか?
いや、そんな荒唐無稽な……でも、こんな場所にぼく自身がいる以上、こんなことすらありえないと言うことができない。
どうしたものか。
もう見えない月に願いを、祈りを捧げるか。
いや、もっといい方法があるはずだ。
おそらくもうこれ以上減らせるものがなくなったことを現す「0」の表示、そして「Xjlro」という謎のメッセージ。
……メッセージ?
そうだ!メッセージだ!
もしかしたらこちらからも何処かに連絡を取ることが出来るのかもしれない!
01001000 01000101 01001100 01010000
「……ふぅん、なるほど!こうしてキミはボクらに助けを求めたわけだね!!!」
「ついでに、不安定なキミの存在をなんとか『容れ物』の内部に保つこともできた!!!」
「しかし、よりにもよって彼女に目をつけられてしまったのは運が悪かったね……。彼女も悪気があったわけではないが、まさか自分の欲望に従って宇宙を吸収してしまうとは……。」
「だが、ひとつ訂正しておきたいことがある!!!キミがいたあの空間は黄泉の国ではなく、時間の流れが非常に遅くなる特殊空間だ!!!」
「宇宙規模のトラブルがあった時、対応に時間をかけても『時間のかからない』状態にできた方がいいだろう?!!迅速に対応すべく、ボクが考えて作ったのさ!!!」
「だからどれだけ待っても時間はほとんど進まないよ!!!残念だったね……。」
「……だが、少々というか相当疑問なのは、どうやってキミがこの空間に入り込んだのか、だ。」
「キミはかつていた場所のことはおろか、キミ自身のことさえ覚えていない。そのうえ、キミの存在は相当不安定だ。手掛かりを見つけるのは困難を極めるだろうね。」
「キミには、キミのいるべき場所が、帰るべき場所があるとボクは思っている。今はちょーっと立て込んでいるから、もう少し先にはなるが、必ずキミの故郷を見つけて見せよう!!!」
「……ありがとう。ただ、ひとついいか?」
「うん???」
「お前、本当によく喋るな……。」
「褒め言葉かい?!!喜んで受け取るよ!!!どうもありがとう!!!あと二日ほど話に付き合ってくれたまえよ!!!」
「遠慮するよ。」
「それじゃあ、またの機会にね!!!」
帰るべき場所。ぼくにもあるのだろうか。
ちゃんと見つかればいいな。
そう思って見えないままの月に願いを込めた。
職場と家との往復で追われる毎日に、
願い事をする余裕も無ければ、やりたい事も浮かばない。
カーテンの隙間から注ぐ月明かりで浄化をする様に
疲弊仕切った身体を寝台に沈めた。
--今はただ眠らせてください…
#月に願いを
「月に願いを」
銀色の平原で二匹の兎が餅をつく
飢えた者たちの糧となる
青い星を見下ろせば
あの清らかな煙は我が同胞
もうすぐ我々の里へ昇り来る
身は軽く心も軽く
さあ、我々の故郷へ迎えよう
「お月様、助けてください!」
「嫌よ、私は所詮太陽の反射鏡でしかないもの。」
「どうかそんなことを仰らないでください、民衆は貴方様のことをとても愛しております。」
「そうかしらね、それなら少しは願いを聞いてあげるわ。」
「有難うございます!今年の月見団子は多めに献上致します!」
「あら、それなら数を増やさずきび団子にしてちょうだい。」
月に願いを
どうせダメだとか、
思っちゃうんだよにゃあ。
夕方くらいに来てくれてボクと遊んでくれるあの子。
けど、いつも夕方のメロディが鳴ると帰っちゃう。
ほんとはもっとずっと遊んでたいのに、
“ママがおこるからいくね”って、ポケットからパンのミミ出しておいてく。
そんなのいいから遊んでよ、って思いをこめて鳴くんだけどぜんぜん伝わらにゃい。
もうすこし一緒にいてくれたらお月さまも見れるのに。
いつかあの子と夜の空をながめられる日がくるといいにゃあ。
お月さま、どうかよろしくおねがいします。
あの子がもっとたくさん、遊びにきてくれますように。
お月様にはうさぎがいるって?
嘘に決まってるだろ、そんな話。ただの作り話だよ。
……月に願い事すると叶う?
………………まあそれは……嘘だとは言いきれないな。
不思議だった。うさぎはいないって言い切るのに、願い事は叶うって言うから……でも、それがどうしてなのか、今ようやくわかった。
ずっと忘れていた記憶。片隅に、断片的に残ってた謎の記憶。思い出したらすっきりするだろうと、満月の夜に記憶が知りたいと願った。
……窓に舞い降りてきたのは、いつかのあの子だった。
ああ、この子が……みんなの願い事を、叶えてくれていた「うさぎ」さんだったんだね。
ありがとう。
━━━━━━━━━━━━月に願いを。
【月に願いを】
月でも星でも虫でもなんでもいいぞ。願いをかけて叶うんなら。今回のテーマが月なら月に願いをかけるぞ。
「大切な人とこれからもずっと一緒にいられますように」
これからも自分に不安や嫉妬や寂しさという感情が襲ってくると思う。だから月よ、頼む。この願いを叶えてください。
flamme jumelle
毎晩空を見上げては、
姿の違う月を見る。
欠けては満ち、欠けては満ち、
月は優しく微笑みかける。
だからだろうか、
私の心はとても穏やかで、愛に満ちている。
月が私を包み込んでくれてるから、
そう、思っている。
あぁ、どうか、私がそちらへ向かうその時まで、
私と共に静かな夜を過ごしてほしい。
こんなに寂しくて悲しくて泣きたくて仕方がないこんな夜ほど、私は夜空で一番光り輝く月を眺める。
だからと言って、別に月が好きな訳じゃない。
どちらかと言うと、嫌いだ。
なんでそんなにあなたは眩しいの。
私と真逆だ。
こんなに頑張ってるのに私は輝くことはできない。
それなのにあなたは何もしなくてもずっと輝いていられる。
羨ましい。
憎いよ…
願うならあなたがこの世界から消えてしまえばいいのに。
私は、今も輝きを失わない月にそう言った。
タイトル:月に願いを
「月に願いを」
「あの人が戻って来ますように」
私の大好きなあの人がこないだ居なくなった
いつものように隣にいたのに、今はいない
最後約束した桜の木の下、
桜の木の下に立つとかすかな声がした、
「大好きだよ、また会おうね」
私の大好きなあの人の声、
誰も居ないはずの野原から声がした、
あの人は心の中にいる、
私は泣きながら川に行った、
綺麗な虹が川に反射されていた、
私は空に向かって
「ありがとう」
と言いあの人の事を考えながら家に帰った
私の願い、月に届いたかな
「あーもう、今日で残業10日目ですよ! やってられないです!!」
オフィスビルを出るなり。
彼女は膨らませた頬の空気を一気に吐き出すように口火を切って、疲れきっていたはずの私は吹き出してしまった。
「今、うちの部署は一番忙しい時期だからねぇ」
どちらかといえば事務的で、縁の下の力持ちたる地味な部署だ。
一年後輩な彼女は当初うちの部署に配属されたものの。
三ヶ月目にして花形な営業部署に異動となったものだから、うちの部署に繁忙期があることすら知らないのも無理はなかった。
「もう疲れすぎました——こんな日は、もう!」
先輩、行くしかないですよ! とガッシリ腕を掴まれる。
「えぇ? もしかして、あのお店……?」
「そうです! 先輩、行ってみたいって言ってましたよね!
むしろ今日行かずして、いつ行くんだ!? ——です!」
「わからなくもないような……。でも疲れているから自信ないよ、食べきれないかも」
「心配ご無用です! その時は私がフォローしますから!」
言い放って。
彼女は早速、鞄から髪留めを取り出して長い髪を一つにまとめている。
「フォローって。あなた、ダイエットしてるんじゃなかったの?」
「してますよ! でもこんなに疲れていますから、ちゃんとカロリー摂らないと逆に不健康です——それに!」
彼女は、ビル横にうっすら光る三日月を指差した。
「欠ける月にお願いすれば、大丈夫です!」
疲れすぎてテンションがおかしくなっているのか、彼女は両手を胸の前で組んで。
……ニンニクマシマシ・ヤサイマシ・アブラ・カラメを食べても太りませんように、と真顔で呟いた。
「そんなお祈り、初めて聞いたわ」
「そうですか? 私はよくやりますよ」
彼女オリジナルなのだろうか。
よくやる——ということは、彼女なりに効果を実感しているのだろう。
「ちなみに、月が満ちる時は、どうしているの?」
「少量でも満腹感が得られますように、ですね!」
にっこり笑う彼女に、私も自然と笑みが浮かんでくる。
「いいね、それ。私もマネしようかな」
「ぜひぜひ! 効きますよ〜!」
さあ行きましょう、と彼女に促され。
点滅する信号に負けないよう、駆け足で交差点を走り抜けた。