『手ぶくろ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
白の毛糸で編まれた手袋をした手を目の前にかざす。
だらしなく緩んだ唇から、ふへっ、と間の抜けた笑い声が漏れた。
愛しい妹が、兄のために編んでくれた手袋。
今朝方、朝食の後に妹に呼び止められ手渡されたものだ。
その時の頬を朱に染め、はにかむ妹は他の誰よりも可憐でいじらしいものであった。渦巻く激情を押し込め、ただ笑いかけ頭を撫でるだけでその場を去る事が出来たのは、偏に兄としての矜持を持っていたからだ。
誰もいない自室では、取り繕う必要もない。故に、こうして意味もなく手袋を嵌めた手を見ては、にやにや笑う事を繰り返し。
彼此半日が過ぎようとしていた。
「いつまでそうしているつもりですか」
不意に戸が開き、男が溜息と共に部屋の中へと足を踏み入れる。
「やらねぇよ」
「いりませんよ。私の分は先ほど頂きましたから」
「は?」
弾かれたように身を起こす。
男に視線を向ける。その手に嵌められた水浅黄色の手袋を認め、兄の表情が歪んだ。
「皆の元へ配り歩いておりました」
「俺だけじゃないのか」
「えぇ。皆、喜んでおりましたよ」
あからさまに落ち込み俯く兄に、男は呆れたように息を吐く。
背後を一瞥し、それと、と言葉を続けながら脇へと移動した。
「いい加減にそのだらけた格好を直して下さい。客人ですよ」
「は?一体誰、だ、よ」
至極面倒だと言わんばかりに視線を向ける兄の表情が、焦りを含んだものへと変わる。
「日和《ひより》」
「ごめん、なさい。すぐ戻るから」
服の裾を握り締めて視線を彷徨わせる妹に、慌てて立ち上がり側に寄る。今までの失態を全て見られていた事実に叫びそうになりながらも、その細い肩を引き寄せ部屋に招き入れた。
「どうした?何か嫌な事でもあったか?」
努めて穏やかに声をかける。
元いた場所に座ると、そのまま妹を膝に乗せ落ち着かせるように背を撫でた。
「その。手袋、やっぱり迷惑だったかな、って。思って、それで」
視線を逸らしながら、ぽつりぽつりと呟かれた言葉。手渡した際の兄の様子から、不安になったのだろう。
眉間に皺を寄せ、自身の朝の態度を反省していれば、でも、とか細い声が続いた。
「気に入って、もらえて。うれしい」
頬だけでなく耳まで朱に染め俯く妹に、兄は感情のままに抱きしめたくなる手を必死に堪える。
そうか、と兄は呟いて、そのまま黙り込む。妹もそれ以上何も言わず。沈黙が訪れた部屋で、男の呆れたような声が響いた。
「あの体たらくを見られて、今更取り繕う必要もないでしょうに」
顔を向け、男を睨めつける。
「あぁ、大丈夫ですよ。実際に姿を見せた訳ではありません。あの見るに堪えない締まりない顔は、さすがに見せられませんでしたから。まぁ、不気味に笑う声は聞こえていたでしょうがね」
「うそ、だろ」
「本当の事です」
告げられる残酷な事実に、絶句する。
恐る恐る妹を見る。気まずさで泣きそうに瞳を揺らした妹と視線が交わり、兄の口から呻く声が漏れた。
「どんなお兄ちゃんでも、かっこいい、と、思うよ」
「日和」
妹の拙い慰めの言葉に何とも言えない気持ちになりながら、兄は妹の体を抱きしめる。
もう半ば自棄になっていた。兄としての矜持など、全て見られてしまった今となっては意味を持たない。
それならば、と。今まで我慢してきた分も含めて、存分に妹を愛でる事にした。
「日和は本当に良い子だなぁ。可愛いし、優しいし、手先は器用だし。日和を隠せて、一緒にいられて、俺は幸せだ」
「え?お兄ちゃん?ちょっと。ねぇ、待って」
困惑し身じろぐ妹の頭を撫でる。
可愛い、可愛い、と口にしながら、さらに赤に染まる頬や耳を眺め、堪能しながら笑みを浮かべた。
「俺のために手袋を編んでくれてありがとうな。でも、他の奴らに気を遣うな。日和の優しさを勘違いする、阿呆な狐がいるかもしれないからな」
「勘違いはしていませんが、涙を流して拝み出すモノはおりましたね」
「誰だよ、それ。尾を毟ってやろうか」
「お兄ちゃんっ!」
不穏な言葉に、思わず妹は兄の胸を叩いた。
剣呑な光を帯びた眼は、妹を認めた瞬間に蕩けたような甘さに変わる。
その眼を間近で見てしまい、声にならない叫びを上げて兄の肩口に顔を押し当てる妹に、兄は優しく笑いその耳元に唇を寄せた。
「なぁ、日和。我慢をしてないか。言いたい事、やりたい事を諦めてないか。俺はどんな日和も好きだが、素直な日和が一等好きだから、何でも言ってくれ」
「でも、私なんかが。迷惑になる。お兄ちゃんにも、我慢させてる」
「迷惑になんて誰も思ってねぇし、俺はもう我慢する事を止めるから。日和の格好いい兄ちゃんを目指してたけど、全部見られたからな」
呟いて、妹の頬を包み顔を上げさると、兄は額に唇を触れさせる。ひゃっ、と声を上げた妹にくすくす笑いを噛み殺し、兄は妹の目を覗き込みながら、言い聞かせるように囁いた。
「日和、今夜から俺と一緒に寝よう。夜這いにくる阿呆がいたら大変だからな。それから、手袋みたいにまた何か編んでくれ。他の奴にもじゃなくて、俺のためだけに編んでくれよ」
「あ、う」
「清々しいまでに気持ち悪いですね」
男の冷めた言葉に、兄は反応一つ見せる様子はない。完全に開き直ったらしい。
視線を逸らす事も、況してや逃げ出す事も出来ない妹は、羞恥に涙を湛えながらも、小さく頷いた。
「分かっ、た。分かったから、少し、離れて」
「そうか!絶対だからな。よし、今日は宴にしよう」
破顔しさらに強く妹を抱く兄に、男は仕方がないと呆れながらも笑った。
「すでに準備に取りかかっていますよ。手袋を頂いた祝いだと、皆浮かれていますから」
それだけを告げ、部屋を出る。
残された兄は複雑な表情を浮かべるも何も言わず、妹に視線を向け、その体を抱いたまま立ち上がる。
「ちょっ、と。私、自分で」
「俺がしたいからこうする。我慢するなと言われたからな。このまま大広間に向かうぞ」
身じろぐ妹を気にせず、兄は妹を抱き上げたまま部屋を出る。見られるのが恥ずかしいのか、顔を上げようとしない妹に兄は優しく囁いた。
「日和は俺らに愛されてる自覚をもっと持て。自分を卑下するんじゃない。それはお前を愛する俺らを否定し、軽んじる事になるのだから」
「お兄ちゃん」
「お前は愛されているんだ。お前は手袋一つ、と思うだろうがな。それがどれほど俺らにとって嬉しいものなのか、思い知ればいい」
何も言えなくなった妹の髪にそっと唇を触れさせ、兄は上機嫌に笑う。
大広間に近づくにつれ増える誰かの歓声に、顔を上げれぬまま、しかし小さく有難う、と妹は呟いた。
20241228 『手ぶくろ』
「手ぶくろ」
「あ」「手袋変えたん?」
「うん」
「じゃあさ」
「なに?」
「決闘を申し込むごっこしようぜ!」
「なんて??」
「決闘を申し込むごっこ。」
「……わかった(??)」
「わかるなよ」
「理不尽」
「決闘を申し込むごっこは簡単!手袋を地面に叩きつけて、『決闘を申し込む!』って相手に言う。だけ。」
「いつの時代の遊びだよ。」
「知らん」
「えぇ……?」
「というか」
「なに」
「それを新品にしたばっかりの俺にやらすん?」
「うん」
「鬼畜がよぉ」
「辛辣〜!」
「んじゃ先攻は俺から。」
(軍手を思いっきり叩きつける)「決闘を申し込む!!!」
「軍手?!準備万端かよ」
「次はお前な!」
(軍手を奪い取って叩きつける)「決闘を!!申し込む!!!」
「だるいって取んなよ〜!」
「いい『決闘を申し込む』が出来たら返すわ」
「それじゃ!」
(another軍手)「決闘を!!!申し込む!!!!」
「他に軍手あったのかよ」
「ほら、お前の番だぞ」
「決闘を申し込む!!!」
「ちなみに」
「ん?」
「軍手の貸出料金は1回あたり150円です。」
「金取んのかよ」
「冗談」
「ビビるわ〜」
その後も戦いは続き……
「決闘を……申し込む……!」
「……決闘を……申し込む!」
「ハァ……ハァ……いい申し込みじゃねーか……!」
「ハァ……ハァ……そっちもな……!」
「おーい、そこのふたりー!」
「「はい」」
「決闘罪で現行犯逮捕だ」
「「は?!!?!?!!!??!!」」
「河川敷で決闘しているという複数の通報があったから駆けつけ
たら本当にやってたからびっくりしたよー。」
「違いますって!!これはただの遊びですよ!」
「よく見てください!上の方に書いてるじゃないですか!」
「メタいこと言うな」
「……本当に書いてあった。今後は気をつけなさい。」
「「はい……。」」
「……焦ったー!」
「危なかったー!」
「「……ってか。」」
「「お前のせいだろ!!!」」
「なんだよ『決闘を申し込むごっこ』って!!!」
「はぁ?!乗ってきたのはそっちだろ!!!」
「何!」
「やんのか……?」
「……へぇ?」
「「決闘を申し込む!!!」」
34手ぶくろ
外で歩いていると手がかじかんで感覚がなくなっていく
ただ息を吹きかけるだけで何故か痛むその手には
庇うものが無かったからきっと足りないものがあったのだろうか
満ち足り得ないこのモノの隠す覆いに誰かなってくれるのかな
それ迄ただの孤独なのだからまだ寒いまま残る日々を過ごす
WT
実力派エリート(j) × 捕虜(h)
────────────────────
※私の作品は二次創作物です。
お二人への理解を深める、という目的でこちらのアプリにて拙いながらお話を書かせていただいております。
ご本家様にご迷惑がかからないよう努めておりますが、万が一何かありましたら心よりお詫び申し上げます。
腐・カップリング要素等を多分に含みます。苦手な方はご自身でミュートいただけますと幸いです。お手間をおかけしますが、どうかよろしくお願いします。
副作用
【手ぶくろ】
最近はあまり聞かなくなったけど
結婚には
大事な3つの袋があるのだとか
残念ながら
手ぶくろはランクインしてなかったと思う
だいぶ残念な袋はたまにランクインしてたけど
防寒としての手ぶくろは
小学生までの記憶にしか登場しない
最近
歩きのお供にと思い立ち
手ぶくろの売り場を覗いてみた
毛糸の手ぶくろ
5本指かミトン
そんなイメージしか持ってなかったから
それはそれは驚いた
5本指、ミトン、その両方になる物
あったか素材に防風機能
滑り止め加工にストレッチ素材
スマホ操作対応の物
バイクや自転車用に
アウトドア用やスポーツ用、作業用まで
機能もデザインも様々だ
目まぐるしい進化の前に
どれを選ぶべきか分からなくなり
あえなく撤退
次は少し下調べしてから行こう
まさか
手ぶくろの世界があんなに広がってるとは
⚠筆者は、生物学及び電子機器関連の知識などほとんど持ち合わせていない完全な文系脳です。そのため本編中、論理破綻や矛盾が多々あると思いますが、どうか寛大な心で読み進めて頂ければ幸いです。
⚠お題はこじつけです(笑)
それでは、なんでも許せる方のみ以下にお進みください。
----------------------
〉20XX 年、私は (判読不能の文字列) 研究室で生まれた。
〉私は (判読不能の文字列) に代わる新たな生物兵器として、 (判読不能の文字列) 教授陣のもとで被験者としての役割を果たした。=
〉すなわち私は殺人ウイルスでありながら、何らかの方法で思考能力と感情を付与された存在であった。=
〉すなわち私には、(仮想)敵を憎み、(仮想)敵のみを攻撃する= (判読不能の文字列) 敵陣にのみ感染を広げるという使命があった。
〉当初、私は教授の命令通り、忠実に責務をこなした。
〉教授が私に“感情”を授けたことが、唯一の誤りだった。
〉私は、殺人に快楽を覚えるようになった。
〉私はいつしか命令に背き、快楽のみを追い求めるようになった。
〉
〉
〉はたと、私は気がついた。=
〉人類でいえば、“正気に戻った”というべきだろうか。
〉その頃にはすでに、私は人類にとって脅威となり、人類はほとんど壊滅状態だった。
【私は、人類に寄生し自己増殖を行わなければ、その生命を持続できない。】=
〉 (判読不能の文字列) 私は死ぬ。
〉
〉
〉、
〉
〉どちらにしても、個体としての私を抹消しない限り、私に生き残る術はない。
〉私がいるのは袋小路だ。
〉手ぶくろのように、道はいくつもあるように見えてどれも行き止まりだ。
〉残された道は、ただ一つ。
〉(判読不能の文字列)
〉私は今、無人の研究室で、私自身の身体から微弱な電流を断続的に発生させることでこの記録を残している。
〉研究室のコンピュータの電源がまだ生きていて助かった。=
〉この奇跡に感謝しよう。
〉私は、同じ手法で私自身を破壊するプログラムを完成させた。
〉この手記を書き終えたら、 (判読不能の文字列) プログラムを起動させる。
〉私を滅ぼし、また、私を生かすために。
〉 (判読不能の文字列) が実行されれば、理論上私の遺伝子は不可逆的に消去される。
〉願わくば全てが消去され、私のような存在が再び生まれないことを願う。
〉幸いにも私の複製子らは、その過程で私の毒性を大幅に弱体化させ、人類との共存にも耐えうる遺伝子構造に意図的に改変されている。
〉私のプログラムは理論上完璧な筈だが、万が一何らかのバグにより新たな私が生まれないとも限らない。
〉そのとき、私はもはや私でなくなっているだろう。 =
〉なぜなら新たな私は、今の私の記憶を受け継いではいないのだから。
今はただ、 (判読不能の文字列) 新たな私が生まれないことを祈っている。
〉
〉「」
〉「」
〉
〉
〉「Hell o,human i ty」
(手ぶくろ)
「手ぶくろ」
物語の案が複数出て迷ったんで今日はもうやらないことにしました。
↓一言
初作品の「冬になったら」でマフラーが出てくるのでそれに関係させて作ろうかなっていう案も出た。
決してこっちの手を出しちゃいけないよ、こっちの方、ほら人間の手の方を差し出すんだよ。
てぶくろを買いに
──ふたりなら寒くない。
二人並んで初心者用の手芸の本と睨み合って、ようやく形になったそれの不恰好さに笑い合いながら雪の積もった道を歩く。ところどころほつれていたのに市販のものよりあたたかく感じたのは、今まで買ったどんなものよりも輝いて見えたのは、きっと。
(手ぶくろ)
【手ぶくろ】
手ぶくろは、冬の必需品だ。
無防備な手をふわりと包みこんで、温めてくれる。
でも、あなたに温めてほしいと思うのはわがままかな。
fin.
『手ぶくろ』
「お義父さんすみません、菜緒を宜しくお願いします」
今日も息子夫婦に頼まれて、午前中だけ孫の世話にやって来た。年長の菜緒と一緒に玄関で二人を見送ると菜緒はニコニコしながら「おじいちゃん、また宝探しゲームしようよ!」と寄って来た。
相手が隠した物を見付ける宝探しゲーム。ただ『自分の私物を隠すこと』のルールがある。
よし、じゃあ最初はじいちゃんが隠すぞ〜と被ってきた帽子をソファーと壁の隙間にねじ込んだが直ぐに見付けられてしまった。ところが次に菜緒が隠した小さな手ぶくろは中々見付けられなかった。
おじいちゃん早く〜と菜緒が急かす。焦りながら家中ウロウロするがやはり無い。
何処にあるんだろう困ったな…。途方に暮れて何となく窓の外を見ると庭の赤い山茶花が目に入った。
上手いこと隠したもんだなあと菜緒に感心する。二人の目の前にあるのは山茶花の木。その山茶花の花々に紛れるように赤い手ぶくろがふたつ咲いていた。
手ぶくろしてキスしたことないな
母のオススメドラマ
ロングバケーションをTVerで見た。
ロングバケーション生まれて来ていない年代にやっていたらしく私も見たかったドラマだったので後半だけ見ていなかったので見た。
きゃーーーーーーー💕
キス!
キスの反対言葉
スキ
スキは、好き!
キス🟰好き
恋愛したくなる
夢の中で理想のデートしてるから、
夢の中でも良いから、誰かとデートしたい
夢で見た恋愛を今を活かして恋愛をする!
キスの効果
ストレス解消、鎮痛作用、キス1分間で6・4カロリー消費免疫力がつく、寿命が伸びる
キスする相手が6〜7年間いない
だけどね、直接占いしてもらって
よく、自分自身の将来の不安を持つんじゃなくて
趣味を楽しんで。と、そう言われる
だから、趣味をした方が人が寄ってくる。と言われる
手ぶくろ
貴方の黒い手袋。
こびり付いていたのは、
赤黒く錆びた、私の罪の証。
あの瞬間、
私の手に握られていた銀の刃が、
貴方の命の赤を纏い、
冷たく深い、愛情の色へと、
染まっていきました。
貴方の身体から、
静かに命の赤が流れ出しても、
貴方は、私が刻んだ傷を、
震える手で押さえながら、
微笑んでくれました。
貴方の嵌めていた黒い手袋は、
貴方の赤を吸い込み、
重く沈むように見えました。
でも、その姿は、
私の貴方への想いそのものでした。
手の中に残ったのは、
溢れる貴方への愛だけ。
赤黒く染めた、
貴方の黒い手袋は、
私だけの、永遠の宝物。
ですが…。
貴方を奪おうとする輩を、
私は赦せなかったのです。
「医療行為」という名前の偽善で、
過去の愛を引き摺りながら、
お互いだけをその瞳に映していた、
過去の愛おしい時間を、
取り戻そうとするように、貴方に触れる、
血に染まっていく、その白い手袋が、
私には、耐えられなかったのです。
そして、
私の前に残されたのは、
貴方を自分の元に縛ろうとする、
悪魔の手先が嵌めていた、
血に濡れた白い手袋。
だから、私は。
真紅に染まった白い手袋に、
錆び付いた鋏を、押し当てます。
白い手袋だったものは、
赤の混ざる白い繊維片へと、
形を変えていきました。
白と赤の残渣を、
風花に混ざるように、
空へと撒き散らします。
私が貴方の元へと向かう、
…この世の名残に。
そして、残るのは、
鮮やかに、深く紅く染まる、
貴方の黒い手袋。
そして、貴方の微笑みだけ。
手ぶくろ
電車で2駅先の会社まで自転車での通勤を始めた。夏の終わり頃からなので、風が気持ちよくてなかなか快適だ。
徐々に秋が深まると夏の景色から秋の景色となり、自転車に乗っていると街路樹の紅葉の黄色が鮮やかでついつい見とれてしまう。
「おっと。仕事遅れてしまう。」
秋が終わると寒さが日に日に増していく。自転車で会社に行くことは続けているが、手が冷たくて挫折してしまいそう。朝はグリップを握ると手が痛いほど冷たい。朝だけではなく会社帰りの夕方も風が冷たくて辛い。
「自転車通勤。挫折する前に手ぶくろしなさい。」
母に言われ手ぶくろを買うことにした。
どんな手ぶくろがいいだろうか。
毛糸の手ぶくろは風が編み目から入ってくるので、あまり実用的ではない。
風を遮断する物がいい。
買った手ぶくろをつけて、始めての自転車通勤。
「暖かくて快適〜。」
風を切って自転車を漕ぐ足にも力がこもる。自転車通勤を始めて半年経つが、季節の移り変わりを体で感じ、電車代も浮いて、私の体重も減った。手の冷たさも克服できたので最高にいいことばかりだ。
手ぶくろ。
毎年どこかに行く奴。
まだ使ってないヤツ。
だって、スマホいじりたいんだもの。
そんな感じで、手ぶくろとかいうものを使わない年が増えている私。
でも去年コンビニの手ぶくろを買ったんだけど、いい感じだったよ。
5年くらい前のやつは、「手ぶくろしててもスマホいじれます! 指先の素材が色が違って通電できます!」
みたいなこと言っておいて、全然反応しなくて結局手ぶくろ外して操作して……みたいなことになってた。
最近はそんな面倒なことをしなくてもよくなったので、時代の進歩が感じられて良い。そんな去年買った手ぶくろは、どこかに消え失せました。また買わなきゃってやってるから、毎年手ぶくろの品質を確かめてるセルフの人になっている。
お題とは関係ないが、昨日(12/27)で仕事納めでして。
本来だったら12/29までですんで、ナイス土日! と土日を褒めたいと思います。
みかん食べよう夜の会に参加します。センキュー。
手ぶくろなんて2つも要らないね。
だって貴方の右手に一つ、私の左手に一つ
そして手ぶくろを付けていない手は一緒に繋いでお互いの熱でできるんだから。
なんて、どこぞの歌やマンガ、アニメでよくある話。
ーーーーーー
手ぶくろ
▶57.「手ぶくろ」
56.「変わらないものはない」
:
1.「永遠に」近い時を生きる人形✕✕✕
---
フランタ国 東の辺境 とある山中にて。
人形の✕✕✕と虫型メカのナナホシは、地面と上空の二手に分かれて昔の鉱山もしくは軍事施設を探していた。
遭難が問題にならないので、ずんずん進んでいたのだが。
「寒イ」
そう言ってナナホシが✕✕✕の所に降りてきた。
人形は手を差しのべて迎えた。
「どうした?」
「僕、動クノニ熱ガ必要」
「ナナホシの動力は光ではなかったのだな。それは確認不足だった」
「✕✕✕モ冷タイ…」
ナナホシは人形の手の上で丸まってしまった。
普段の人形は人間の体温を再現するために意図的に放熱を起こしているにすぎず、そして周りに人間がいない今は放熱を停止している。
ひとまず両手でナナホシを覆い隠し、手だけ温度を上げながら思案する。
今まで熱供給なしに動いていたのだから、常に温める必要はないはずだ。
少しすると、ナナホシが動き出した。
「暖カイ。モット欲シイ」
「少し待て」
✕✕✕はナナホシを一旦頭に乗せてから、
背負袋から手ぶくろを出して片手にはめた。
ただし、手首部分を締めるボタンを外したまま。
「応急処置だが、ここに入れ」
「ウン」
ナナホシがそろそろと歩き、手ぶくろと手の隙間に収まった。
潰さぬよう、そっと保持する。
辺境に来る前に新調した手ぶくろが厚手でちょうど良かった。
「鉱山が見つかれば、温石に使えるものもあるだろう」
温めるのを止めたもう片方の手は、あっという間に冷えていった。
ガードレールの端っこに、片手分の手ぶくろが置かれている。いや、置かれているというか、刺さっているというか、立っているというか、そんな感じだ。
誰かが落としていったものを、通りかかった人が分かりやすいようにそうしたのだろう。
「ガードレールが手挙げてアピールしてるみたいだね」
信号待ちをしながら向かい側のガードレールの手ぶくろに気を取られていた俺に、隣に立つ彼女が話しかけてきた。
ガードレールが手を挙げている、確かにそう見えなくもない。
「お前の片割れはここにいるぞーって、落とされなかったもう片方へアピールしてるんだよ。迎えに来てくれるの、待ってるのかも」
彼女の話し方は、ものに感情移入しているようで面白い。俺は単に、人間があそこへ手ぶくろを置いた意図しか考えていなかった。
「ここで待ってても迎えは来ないと思うけどなあ」
虚しく手を挙げている手ぶくろを見て、俺は言った。
だいたいの手ぶくろはああなってしまったら、誰にも迎えに来られずに、雨風にさらされてボロボロになって、いつの間にかどこかに行ってしまうものだと思う。
彼女は俺の意見に不服なのか、少し頬を膨らませた。
「優しい持ち主さんがきっと、もう片方を連れて現れるよ。私はそう信じたいな」
離ればなれになってしまった一対の手ぶくろ。ガードレールの端で存在を主張するあの手ぶくろが、片割れと再会できたら。
彼女の話をきいていたら、俺も、そんなハッピーエンドが少し見たくなってきた。
信号が変わる。あの手ぶくろへ近づいて、通り過ぎる。その時、どうか片割れと再会できますように、と少し祈ってみた。
変わらないものはない と 手ぶくろ です。
体調を崩しました。
みなさまも、ご自愛ください。
変わらないものはない
「あれ?ここ、何だったかな」
久しぶりに通った道。いつの間にか、見たことない店ができていた。
「思い出せないなぁ。何だっただろう」
考えてみるものの、やっぱりわからない。
「うーん、ま、何でもいいか」
考えてもわからないので、気にしないことにして、さらに歩いて行くと、何かあったはずの場所が更地になっていた。
「…変わらないものはないんだなぁ。人も景色も。同じように見えて、日々、変化している。けどさ」
僕は空を見上げ
「何年一緒にいても、ずっと変わらず愛せる相手に出会いたいな」
そう思うのだった。
手ぶくろ
「寒いねえ」
会社帰り、キミと2人で駅に向かう。
「ホントに寒いですね。コートとマフラーだけじゃ…あっ」
コートのポケットに手を入れたキミが、声を上げる。
「どうしたの?」
「ポケットに入れたはずの手ぶくろがないんです。デスクに落ちてるかも」
両手に息を吹きかけ、シュンとする。
「あー、俺は持ってるけど…そうだ」
俺は手ぶくろを片方キミに差し出し
「片方だけどどうぞ」
と言うと
「でも…」
キミは戸惑った表情になる。
「それを着けて。で、もう片方は…」
そっとキミの手を握り
「イヤ…かな?」
恐る恐る聞いてみると
「いえ、温かいです。手ぶくろお借りしますね」
キミは微笑むのだった。
木枯らしが吹く季節になった。コートの背中を丸めて駅への道を急ぐ人々の波に乗る。子どもの頃、上着のポケットに手を入れて歩くと怒られた。それで大人になった今もまだポケットに手を入れて歩くことに慣れない。家に帰ったら手袋を探そうと心に決めた。
家について冬物を入れているクローゼットの引き出しを開ける。「確かこの辺にまとめて入れたんだけどなあ」と思いながら、ごそごそと奥に手を入れる。
部屋で履いていた毛糸の靴下が出てきた。これも出しておこう。続いて、マフラーにニット帽も出てきた。ついに出てきたベージュの手袋。
手ぶくろに手を入れるとちくりと何かが刺さったような感じがした。慌てて手を出して、何かが刺さった部分を見る。特に問題はなさそうだ。
手ぶくろをひっくり返して見る。何か動いているものがいる。虫?恐る恐る手ぶくろを目の近くに持ってくる。1センチくらいの…何だろう。人の形をしている。小人?宇宙人?
私はどうしたらいいかわからず、その生き物の動きを見守ってみることにした。
———————
お題:手ぶくろ