崩壊するまで設定足し算

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▶57.「手ぶくろ」
56.「変わらないものはない」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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フランタ国 東の辺境 とある山中にて。

人形の‪✕‬‪✕‬‪✕‬と虫型メカのナナホシは、地面と上空の二手に分かれて昔の鉱山もしくは軍事施設を探していた。
遭難が問題にならないので、ずんずん進んでいたのだが。

「寒イ」
そう言ってナナホシが‪✕‬‪✕‬‪✕‬の所に降りてきた。
人形は手を差しのべて迎えた。
「どうした?」
「僕、動クノニ熱ガ必要」
「ナナホシの動力は光ではなかったのだな。それは確認不足だった」

「‪✕‬‪✕‬‪✕‬モ冷タイ…」

ナナホシは人形の手の上で丸まってしまった。
普段の人形は人間の体温を再現するために意図的に放熱を起こしているにすぎず、そして周りに人間がいない今は放熱を停止している。
ひとまず両手でナナホシを覆い隠し、手だけ温度を上げながら思案する。
今まで熱供給なしに動いていたのだから、常に温める必要はないはずだ。
少しすると、ナナホシが動き出した。
「暖カイ。モット欲シイ」
「少し待て」
‪✕‬‪✕‬‪✕‬はナナホシを一旦頭に乗せてから、
背負袋から手ぶくろを出して片手にはめた。
ただし、手首部分を締めるボタンを外したまま。
「応急処置だが、ここに入れ」
「ウン」
ナナホシがそろそろと歩き、手ぶくろと手の隙間に収まった。
潰さぬよう、そっと保持する。
辺境に来る前に新調した手ぶくろが厚手でちょうど良かった。
「鉱山が見つかれば、温石に使えるものもあるだろう」

温めるのを止めたもう片方の手は、あっという間に冷えていった。

12/28/2024, 8:51:40 AM