『手ぶくろ』
「お義父さんすみません、菜緒を宜しくお願いします」
今日も息子夫婦に頼まれて、午前中だけ孫の世話にやって来た。年長の菜緒と一緒に玄関で二人を見送ると菜緒はニコニコしながら「おじいちゃん、また宝探しゲームしようよ!」と寄って来た。
相手が隠した物を見付ける宝探しゲーム。ただ『自分の私物を隠すこと』のルールがある。
よし、じゃあ最初はじいちゃんが隠すぞ〜と被ってきた帽子をソファーと壁の隙間にねじ込んだが直ぐに見付けられてしまった。ところが次に菜緒が隠した小さな手ぶくろは中々見付けられなかった。
おじいちゃん早く〜と菜緒が急かす。焦りながら家中ウロウロするがやはり無い。
何処にあるんだろう困ったな…。途方に暮れて何となく窓の外を見ると庭の赤い山茶花が目に入った。
上手いこと隠したもんだなあと菜緒に感心する。二人の目の前にあるのは山茶花の木。その山茶花の花々に紛れるように赤い手ぶくろがふたつ咲いていた。
12/28/2024, 9:47:53 AM