愛を注いで』の作文集

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愛を注いで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

12/15/2024, 2:33:57 PM

愛を注いで


それは偶々だった
けれど愛していた
偶然が苦痛をずらした
積もった砂と埃を払うように
生き埋めのような心地から岩を退かすように

こんな時に限って
なんでも話を渡しに来るなんて。

人間が持てる言葉で一番大きな
ありがたみは何で表したらいいだろうか

愛を注いで
「もらって」
いるのだ。

12/15/2024, 7:23:02 AM

「なんだ。此処は客人に茶の一つも出さんのか」
「ババアなんぞ呼んでねぇよ。さっさと帰れ」

目の前で繰り広げられるやり取りに、どうするべきかと内心で頭を抱える。
表面上は穏やかではあるものの、紡がれる言葉は平穏とはほど遠い。 このままいつ争いが始まったとしても可笑しくはない状況に、止める術を求めて視線を彷徨わせた。

「大体なんだ。後ろの奴らは」
「妾の子だ。可愛らしいだろう」

ふふん、と笑う女性の背後。姿勢良く座る少年と少女に視線を向ける。
静かに座っていながらも、手を繋ぎ。繋いだ手を、相手を見て、ふわふわと笑い合う二人の姿はとても微笑ましい。

「何が子だよ。片方は人間じゃねぇか」
「ひ孫だ。前に会った事があるだろうに、忘れたのか」
「はぁ?嘘だろ。あの時の人形擬きが、後ろにいるガキだってのかよ」

信じられない、とでも言いたげな彼の大きな声に、思わず肩が揺れる。
同じように肩を跳ねさせ、慌てて前を見る二人に申し訳なくなった。

「あ、ごめんなさい」
「申し訳ありませんでした」
「気にしないで。うちの馬鹿が大声を上げて、ごめん」

しゅんとする二人に、慌てて声をかける。
いい加減にしろ、と彼を睨めば、何故か顔を赤くして目を逸らされた。
ぶつぶつと何かを言っているが、上手く聞き取れない。
どうするか、と暫し悩み。だがおとなしくなったのだから、と取りあえずは放っておく事にした。

「その。すみません、煩くて」
「気にするな。そこな小僧が騒々しいのは昔からの事だ。寧ろ静かな小僧は落ち着かぬ」

気分を害している様子はなく、逆にこの状況を愉しんでいる女性に、何とも言えない気持ちになる。
そうですか、と相づちを打てば、彼女の視線が少し柔らかくなった気がした。

「此方方の祝言に参らず、すまなんだ。満たすのに、時間を要してしまってな」
「満たす?」
「ひ孫の事だ」

そう言って背後の二人を見る女性に倣い、同じく視線を向ける。
頬を染めて軽く俯いた少女と優しく寄り添う少年は見ていて微笑ましいが、満たす事の意味は分からないままだった。

「言葉だけが素直でなかったからな。満たすのは容易だと思っていたが、存外乾いていたらしい」

さらに頬を染める少女に女性は柔らかく笑いかけ、おいで、と手招いた。躊躇しながらも側に寄る少女を膝に抱き上げて、優しく頭をなで始める。

「言葉を、想いを注ぎ、漸く素直になってな。此方方を祝いに来たのだ」
「ありがとう、ございます?」
「礼なんぞ、必要ねぇ。どうせガキ共を自慢しに来たついでだ」

不意に腰に手が回り、引き寄せられる。
振り返れば、不機嫌そうに顔を顰めた彼と視線が交わり、その子供染みた様子に溜息が溢れ落ちた。
面倒だな。そうは思うが客人の前だ。
先ほどのやり取りをされるよりは良いかと、彼の頬に触れた。

「先輩」
「それは飽きた」
「…旦那様」

本当に、面倒だ。
だが効果はあったらしい。途端に黙り込む彼を一瞥して、三人の元へ向き直った。

「贄を娶ると聞いて心配ではあったが、仲睦まじいようで何よりだな」
「いえ、そんな事は」

気まずさに、視線を逸らす。
彼と契る事に了承はしたが、彼を好いているかはまた別の話だ。
飽きられ捨てられる事がないと言われたのだから、受け入れるしかない。そこに好意は関係ない。
元が贄でしかない自分には、必要のないものだ。


「誤魔化し続けると、それが本当になる」

静かな声に、視線を向ける。
女性の膝の上。愛でられながら、真っ直ぐな少女の目と視線が交わった。

「本当になってしまえば、自分が分からなくなる。分からなくなれば、ただ苦しいだけ」
「それは」
「もっとたくさん声を聞けば良い。必要かそうでないかは、その後考えても遅くない」
「言うじゃねぇか。何事にも興味を示さなかったくせに」

彼の腕の力が、強まる。
無理矢理向きを変えさせられて、そのまま包み込むように抱き込まれ、僅かに息苦しさを覚えて眉が寄った。
離してほしいと彼の胸を叩き訴えても、腕の力は一向に弱まる気配がない。

「余計な世話だが、オマエらの真似事も悪くはなさそうだな」
「最初は逃げ出すが、それを追うのも悪くはなかったぞ」
「悪趣味なババアだ」

彼が鼻で笑う気配に、同族嫌悪の文字が浮かぶ。
声に険がないため急に争い出す事はないのだろうが、会話の内容が不穏でしかなく、叶うならば今すぐにでも逃げ出してしまいたかった。

「顔を赤らめて、恥ずかしいと涙目で縋られるのは、大層愛らしいものだった。小僧も好きだろうに」
「ひいばあちゃんっ!」
「まぁ、確かにな」

段々に不穏が増す会話に、焦ったような少女の声が混じる。
可哀想に、と思うものの、続く彼の同意の言葉がそれすら気にする余裕をなくしていく。

「ひとつひとつ。想いを紡いで、たくさん注いでいくと、応えてくれます。人間も妖も変わらない。満たされて、手を取って笑ってくれる小夜《さよ》はとても綺麗で、愛しい」

甘く優しく。それでいて愛しさに溢れた少年の声に、少女が声にならない呻きを上げる。
それにつられて、自分の事ではないはずなのに、何故か恥ずかしくて頬が熱を持つのを感じた。

「此処で惚気るな。帰れ」
「そうだな。伝えるべき事は伝えた事であるし、戻るとするか」
「ガキ共の祝言の時には呼べ。冷やかしに行ってやる」
「小僧も大概素直ではないな」

ふっ、と笑う声と共に、柔らかで澄んだ風が吹き抜けた。
見送りぐらいはすべきだろうと身を捩るものの、それでも彼の腕の力が緩む事はない。
はぁ、と溜息をひとつ。
風が止んで静かになった部屋に、疲れと共に吐き出した。


「まぁ、なんだ。そういうわけだ」

呟く彼の声と共に、漸く抱き竦めている腕の力が弱くなる。
もぞもぞと身じろいで、顔を上げて彼を見る。
いつものように笑う彼の耳が赤い事が不思議で、可笑しかった。

「狼や雀の真似は少し癪だが、満たしてやろう」
「何それ」

満たす意味を知って、それでも知らない振りをする。
恥ずかしさと、不安と、一抹の期待に、彼の服を掴んだ。

「愛を注ぐって事だ。覚悟しろよ、オマエさん?」

耳が赤いままでは、かっこよくはないな。と。
現実逃避染みた事を考えながら、額に触れる彼の唇を受け入れ、目を閉じた。



20241214 『愛を注いで』

12/14/2024, 7:38:17 PM

「パーマかけたんだね。すごく似合ってるよ」
という茉莉奈の問いかけに
「ありがとう」
と笑顔を見せる彩を見て茉莉奈はほっとした。

 昼過ぎに茉莉奈が訪れた時、彩は目の下に隈をつくり部屋着姿で佇んでいた。部屋はカーテンも締め切ったまま雑然としていた。唯一ベビーベッドの周りだけはきれいに保たれていた。
 茉莉奈が口を開くと「今寝たばかりなの」と怒ったように一言放った。
 それで茉莉奈は自分の口に人差し指をあてたまま、彩に言った。「わかった。私が見ているから彩は着替えて出かける準備して」何を着ればいいかわからないという彩とクローゼットに行き、白いセーターと茶色のサテンのスカートを選ぶ。去年会った時に彩が着ていてとてもかわいらしいと思った組合せだ。

 支度を整えた彩に「これ秋紀から。自由が丘の喫茶店に行ってほしいって」と言って茉莉奈は白い封筒を渡す。秋紀は彩の夫で今、単身赴任をしている。茉莉奈と彩と秋紀は皆同じ大学のサークルだった。
 今日はどうしても彩に頼みがあるというので、茉莉奈に子どもを預けて出かける事になった。
 
 彩は産まれたばかりの拓馬と離れるのが怖かった。自分がいない間にないか起こるんじゃないかと。ただ、「彩にしかたのめない」と言われ、「茉莉奈に子どもの面倒は頼んだから」と言われてしまうと何も言い返せなかった。
 自由が丘の喫茶店で席に座り、封筒を開ける。そこには秋紀の几帳面な字が並んでいる。

 ひとりで拓馬の面倒を見させて申し訳ないだとか、いつもありがとうだとか、よくある文章なのに泣けてきた。そして、美容院の予約時間が書いてある。封筒にはお金も入っていて、今日は自分の為に時間とお金を使って欲しい、そう書いてあった。

 
 彩は茉莉奈がお湯を注ぐティーポットを見ながら呟いた。
 「なんでうまくできないんだろう」
 窓から差し込む柔らかい西陽がティーポットに反射している。ティーポットの中では赤い茶葉がゆらゆらと心地よさそうに揺れている。茶葉につられるように身体を揺らすと腕の中の拓馬も心地良さそうにしている。
 茉莉奈はティーポットのお茶をカップに注ぎながら言った。
「彩がこのティーポットで拓馬がカップ。ティーポットが空っぽなのに一生懸命カップを満たそうとしていたんだね。本当はティーポットにお湯を入れないといけないのにね。
 でもね、拓馬を見て。彩が帰ってきて本当に安心してるし、彩に抱かれてとても幸せそう。拓馬のカップは愛で満たされてると思うよ。だから、うまく言ってるよ」
 部屋中にローズヒップのやさしい香りが漂う。

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お題:愛を注いで

12/14/2024, 2:01:14 PM

愛を注いで


たくさん喜ばせたいと思っちゃう
私があなたに何かを贈ることで、あなたが嬉しそうなのが私も嬉しい
あなたが幸せそうな姿を見ると私も幸せ

尽くしてしまう
たくさんたくさん

あなたを喜ばせたいから
幸せにしてあげたいから
見返りを求めているわけではないの
ただ私が幸せだから

12/14/2024, 1:08:38 PM

愛情は1つじゃないから難しいよね。
愛情って注ぐ側はエゴだもん。もし相手にとって素直に受け取れない愛情の時は辛いだけだし、逆にお互いの需要と供給が合ってたとしてもお互いの性格によって愛情表現の仕方も変わるからなんとも言えない。

でも、だからこそ、自分を愛してくれて味方になってくれる幸せな家庭にいさせてくれる家族には感謝と尊敬しかない。
無償の愛なんてものはまやかしかもしれないのもある中で
行動で、言葉で、伝えてくれるから。

- 愛を注いで -

12/14/2024, 1:02:14 PM

「愛を注いで」


「おーきくなーれ」

「またお水をあげているの?」

「うん!きれいなおはなさかせるの!」

「でも、あげすぎるのも良くないよ」

「え,そうなの?」

「うん、根っこが腐っちゃうの。」

「そっか……」

「でも、そうやって声をかけてあげることにやりすぎはないからね。いっぱい声をかけてあげて」

「ほんとう?」

「本当だよ。だって」

あなたに愛情を注ぎすぎて、後悔なんてしたことないから

12/14/2024, 11:45:31 AM

愛を注いで
器。
コップのような、はたまたお椀のような。
人によって大きさも形も異なる、千差万別のそれ。
それに注がれる形の無いものが、心を満たしていく。

でも、私のものは、きっと、とても大きいか、ヒビが入っている。
だから、永遠にそこは満ちることがない。
母親も、父親も、祖父も祖母も友達も先生も彼も彼女も小鳥もパンダもなにもかも。
誰も私を満たせない。

それに気づいてしまってから、ますます私の心は深く暗く底が見えないものを造り出した。

それが満たされないのは、私が大きくなっても、誰かと抱き合ってみても変わらなかった。
むしろそれをしていく度に、ただでさえたまらない何かが減っていくような気がした。

街で幸せそうな家族やカップルを見ると自分でも呆れるほどの羨ましさと忌々しさを抱くようになったのは、その頃から。

そんなふうな感情を抱いてしまうくらいなら、無理してでも自分も「大切な人」とやらをつくってしまおうかと血迷ったのがそれから二年半ほど経った頃。

この思いが行き過ぎて、いつか自分が何かしでかすんじゃないか、人様に迷惑をかけるなら、それならいっそ、、、などと私らしくない考えを持ち始めたのが、それからさらに一年だった頃。

私らしくなく思い悩み、本当に当てはまる時があるのだと、いつかにならった「焦心苦慮」やら「艱難辛苦」やらを思い出したのがそれから半年たった頃。

最後にあなたと、なんていつか見たカップルの片方みたいな顔をしながら考えたのがそこから一ヶ月経った頃。

そんな無価値なことを考えたのは、椅子の上。

もっと早く出会えていたらなどとまた無価値なことを考えたのも、椅子の上。

妙に近い照明と天井に、ほこりやしみを見つけながら、少しだけ立ち止まったのが、そこから数十秒間。

自分のうつわが、今まで知らなかったあたたかなもので満たされていると。
それはあの人のおかげだと。
気づいたのは、一歩を踏み出したとき。



ずっと欲しかったのものがなんなのか。
わかっていたのは、きっと、ずっとずっと昔。

12/14/2024, 10:37:47 AM

──もう十分なのに。


 まだ私に愛を注ごうとなさるんですね、あなたは。

 私に返せるものなんてほとんどないのに、等価交換にはならないのに。

 この世界の常識をご存知でしょう?
 与えられた分は返さねばならないのです。

 

 もうやめてください。

 そんなにうつくしい愛をいただいてしまっては、私が世間から後ろ指を指されてしまいます。
 あのひとはあんなに貰ってるのに返していないと。

 
 あなたにはもっと他に相応しい方がいるでしょう?

 私のことなど忘れて、早く新しい愛を見つけてくださいませ。あなたの記憶の隅を陣取ることすら烏滸がましい。早く記憶から消してくださいませ。


 それが。それだけが。
 私が唯一差し出せる、愛とやらなのですから。



(愛を注いで)

12/14/2024, 10:36:56 AM

「愛を注いで」

「ニンゲンしゃー!おはよ!」「……おはよう。今日は普通の時間に起きてきたんだね。」「えらいー?」「うん。えらいぞ。」「にへへー。」

かわいいと思ったついでに、ふわふわの髪の毛ともちもちのほっぺたを触ってみる。相変わらず柔らかい。

「ニンゲンしゃん、ボクのことだいしゅきだねー!」「あ、うん。大好きだよー。」「ボク、かわいいもんね!」「かわいいね。」「やっぱりしょーなの!えへー!」

……きっとこの子が自分を愛されてると信じて疑わないのは、この子を造ったあの科学者が、小さな機械たちに愛を注いで育てたからに違いない。この子とその弟が、愛されていてよかった。

「じゃ、ニンゲンしゃんにあまえんぼしゅるー!」

……これからもいっぱい甘えてくれたらいいよ。

「いいねえ!ボクも混ぜてよ!」
……あんたは仕事中だろ。「そんなことを言わずに!」
冗談だよ。こっちにおいで。「へへっ!」

今日も相変わらず平和だ。
こんな日が続きますように。

12/14/2024, 10:16:01 AM

「かすみさん、少しだけ構って。」

そう言って、彼は少しだけ微笑んだ。

その姿はわが夫ながら、あまりに可愛く、愛おしい。

「いいですよ。」

ソファに座ると、彼はわたしの太ももに頭を乗せる。

「珍しいこともあるものですね。」

「たまには、自分の奥さんに甘えたくなった。」

彼には、よそに多くの女性がいる。

それを了承した上で、わたしは彼とお見合いで結婚したから、

わたしに甘えるなんて思いもしなかった。

普段は、多分よその女性に甘えているはず。

だから、わたしに甘えるなんて初めてだった。

「まるで、源氏の君と大殿の君の夫婦円満な描写みたいですね。」

「うーん、確かに似てるかもね。

 でも、ちょっとその例えは哀しいかな。」

「あら、どうしてですか。」

「だって、そのあと大殿の君は亡くなるから。

 かすみさんが亡くなる、フラグみたい。」

「まあ、そんな風にわたしのことを想って下さっていたのですね。」

「僕は多くの女性と恋するけど、僕の妻はかすみさん唯一人だよ。」

「ふふ、嬉しいことを言って下さいますね。」

わたしは、彼の黒く美しい短髪を撫でた。

12/14/2024, 10:07:23 AM

2年前に夫が亡くなって、3人家族だった私達は、娘と私の2人きりの家族になった。
はじめは私も娘も泣いてばかりだった。心の中で、夫の存在が大きすぎて、喪ってできた大きな穴を埋められずに、ただ泣いていた。だけど、しばらくしたら、この穴を無理に埋める必要はないのだと私は気づいた。ぽっかり空いた穴も抱えて、進んでもいいのだと思った。だけど、まだ7歳だった娘は、なかなかそれを受け入れられなかったようで、穴を抱えたまま日常に戻ろうとする私に、激しく反発した。何度も泣き叫んで、抵抗していた。私には娘の心を無理に変える力も権利もないから、ただ受け止めて、抱きしめて、背中を撫でることしかできなかった。
やがて娘は夫の死を受け入れて、その傷を抱えて立ち上がることができるようになった。

そこからが、本当の戦いだった。私の手1つで娘を育て、ひとり立ちさせなければいけない。なるべく娘と過ごせるように、がむしゃらに働いて定時で帰って、晩ご飯を作って、一緒に食べて、その日学校で起こったことを聞いて。お風呂を沸かして、次の日のお弁当を用意して。翌朝は朝ご飯を用意して、先に出かけた。娘のためにできることは何でもやった。周りには、全部抱え過ぎだと言われた。そんなに頑張らなくてもいい、他を頼れと言われた。でも、私は妥協したくなかった。娘に寂しい思いはさせたくなかったし、娘のことで少しでも手を抜いて、娘自身にそれを気づかれたらと思うと怖かった。私は娘に愛を注ぐ方法は、これしか思いつかなかった。
娘が中学生になった頃に「晩ご飯作るの、当番制にしない?私もやりたい」と言ってきたときは、すごく驚いた。試しに作ってもらったら、意外としっかりした手つきで普通に美味しいご飯を作ってくれて、それにも驚いた。
私が「すごいね」と言ったら、娘は「いつもお母さんが作るの見てたから。お母さんのおかげだよ」と言った。私はすこし泣きそうになった。私の背中を見てくれていたことが嬉しかった。
晩ご飯の分担をきっかけに、娘は家事の中で自分の力でできそうなものは「やりたい」と言ってくれるようになった。そのうち全て「やりたい」と言いかねない様子だったので、話し合って、きちんと分担することになった。任せた家事はどれも普通以上にできていて、娘の成長を感じた。

時は経ち、娘はもうすぐ社会人になる。就職祝いに何が欲しいか訊けば、「お母さんの時間、1日ちょうだい」と言われて、休日に1日一緒に過ごすことになった。
約束の日、娘はレンタカーを借りてきて、私をドライブに連れ出した。大学に入ったころに免許を取っていたのは知っていたが、思っていたより安定感のある運転だった。運転する横顔はすっかり大人になっているように見えた。
そうして連れて行ってくれたのは、私が密かに行きたかったカフェだった。テレビを見ながら私が呟いた言葉を覚えていたらしい。他にも、最近できて気になっていたショッピングモールにも連れて行ってくれた。

「何だか私ばっかりいい思いしてる気がするけど。あなたの就職祝いのはずだったのに」

私が言うと、娘は微笑んで、こう答えた。

「お母さんいつも、私が欲しいとかやりたいとか言ったこと、全部覚えてて、できる限り叶えてくれたじゃない。そういうの、嬉しかったから、お母さんにも返したいなって思ってたの。ちょっとした親孝行、やってみたかったんだよ。それが今叶ってるから、充分就職祝いになってるのよ」

今まで、娘に精いっぱいの愛を注いできた。返ってくるものになど期待しない、私がただ注ぐだけでいいと思ってやってきた。
でも、娘は私の注いだ愛をちゃんと受け止めてくれていて、同じように私に愛を注いで返してくれている。
その循環に、胸が熱くなった。愛を注がせてくれて、愛を返してくれる娘の存在は、奇跡的だと思った。

「ありがとう、大好きよ」

自然と言葉が溢れていた。

12/14/2024, 9:45:55 AM

愛情をたくさん注いで育てた
育成ゲームもの。
愛情イコール時間である。

(愛を注いで)

12/14/2024, 9:44:42 AM

愛を注いで



あるところに一人の女がいました。

女は祈りました。

「可愛い女の子が欲しい」

女は毎日毎日祈り続けました。

ある日、祈る女の前に女神が現れ、一つの球根を女に授けました。

「この球根を大切に育てれば願いが叶うでしょう」

女は球根を植木鉢に植えて大切に育てました。

「あなたのためよ」

毎日たっぷりの水と肥料を与えながら女は言いました。

「全部あなたのためにやってあげているのよ」

悪い虫が付かないように植木鉢を窓から遠ざけて女は言いました。

「あなたは私の可愛い子、ずっとお母さんが守ってあげる、だからずっと可愛い良い子でいてね」

女は毎日植木鉢に囁き続けました。

そうして長い月日が経ちました。

しかしいくら待っても植木鉢から芽は出ません。

とうとう女は我慢ができず土を掘り起こしました。

土の中から出てきたのは腐ってドロドロに溶けた球根でした。

12/14/2024, 9:41:22 AM

▶43.「愛を注いで」
42.「心と心」
:
1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
---
あの山、と示された山についたのは日暮れだったが、
‪その特性から夜目がきくため、山歩きも月明かりで充分だ。

なので人形は物陰で夜を待ってから入山した。
見える範囲に灯りはつかなかった。


村の祭りで出会った青年は入山規制があるように話していたが、
そこそこ枝が払われている。
山に入る人間を成人に限定しているのかもしれない。
‪✕‬‪✕‬‪✕‬は、ひとまず山の中腹を目指し歩き始めた。

夜の山は妙な静けさに包まれていて、
人形の歩く音が周囲に容易く響いてしまう。
それでも‪✕‬‪✕‬‪✕‬は一定の速さで黙々と足を運んでいく。

木々の間を抜け、岩をよじ登り。
中腹に差し掛かり勾配がきつくなってきたところで、これ以上の登山は消耗が激しいと人形は判断した。夜明けまで身を隠せるような場所を探す。

すると、岩のくぼみに紛れるような小さい岩穴を見つけた。
サイズこそ小さいが切り口が滑らかで明らかに人工物だ。
身をかがめて入ると、中は立てるほど広い。

(もしやここが噂の施設なのだろうか)

奥まで行くと、今では見られない機器の数々が収められた部屋についた。
何に使うかは分からない。
ただ青年の話では武器づくりの材料になる金属を掘っていたというから、
それに関係したものかもしれない。

部屋の中央には、腰の高さほどで柱状の機械。
天面には手の形にくぼみがあり、なにか書いてある。
この国で使っている字体と少し違う。古いものだろう。

『愛を注いでください』

(手形があるのだから、ここには手を置くのだ。だが愛とは…そういえば、赤子を育てる時は親の温度を感じさせることが重要だと聞いたことが)

試しに手だけ放熱して温め、手形にあてがってみる。

しばらくそのままでいると、
機器に電源が入り、電子音声が流れた。

「承認されました」

12/14/2024, 9:41:22 AM

【愛を注いで】

可視化されればいいのに

コップに水が注がれるように

いっぱいに溢れるのが

分かればいいのに

12/14/2024, 9:28:16 AM

『愛を注いで』

#1)
あなたにとっての。
私にとっての。
温かいもの。
あたたかくて、
でも
どこか寂しくて

貴方がいなくては
私の人生は、
空のガラスの器。

貴方がいなくては
私の器は空っぽのままで、
そのうちきっと割れてしまう。

だから、
貴方が
愛を注いで

12/14/2024, 9:24:39 AM

街路樹を見るのが好きだ。樹にも様々な種類があり、街中でも自然に触れられるし、季節も感じられる。時々、剪定を行っている人達を見かける。きっと、愛情を持って育てているのだろうな。

12/14/2024, 9:21:34 AM

あの人を、あの人を忘れられるくらいの愛を私に注いで。

私も貴方が忘れられないあの子の事を忘れられるくらいの愛を注いであげるから。

表向きは仲良し恋人。

裏では激しく愛を求める2匹の獣。

ーーーーーー

愛を注いで

12/14/2024, 9:16:59 AM

視線がそうであるように
手指がそうであるように
爪先がそうであるように
いつだってあなたに行き着く

うつわの大小に関わらず
それは注がれる

だから、ねぇ
あなたの小さな重力を
信じてもいいんだよ
どんなに悲しい時も
心の底で揺れているから


『愛を注いで』

12/14/2024, 9:08:24 AM

【愛を注いでください】


冬の夜の冷たいにわか雨
ぐっしょりとした濡れ落ち葉を踏みしめながらゆく傘のない帰り道

惨めさを引きずって帰宅

シャワーを浴びて少しだけ人心地がついたら
グラスにワインを注ぐ

だけど、

注いでも注いでもなんだか満たされなくて…

そんな風に自分を持て余していると
雨上がりの雲越しにぼんやりと光る今夜の月と目が合った

お月さま、私のグラスに愛を注いでくれませんか?

夜空に向かって絡みながらもう一本ワインの栓を抜くと
月は困ったように雲に隠れてしまっていた_


お題;愛を注いで

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