『小さな命』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
雨が上がった夜明けの草原には、人間には見えない命が満ち溢れている。
キャストペリンは尖った革靴の爪先で、葉先に揺れる丸っこい朝露を跳ね上げた。
りん、りん、と透き通った鈴の音を鳴らして、空中に散った透明な雫達から、くるん、ぽんと小さな小さな妖精達が生まれる。
りん、りん、
りん、
と、いくつもいくつも。
夜明けの眩い光線を浴びて、彼ら彼女たちは背中の虹色の羽根をぶるりと震わせ、涼やかな空気に鈴の音の笑い声を響かせて輪を描くように飛び立っていく。
キャストペリン、雪解けの精霊はにこりと笑って手を振る彼らの旅立ちを見送った。
小さな命
僕はクレイ、錬金術師見習いである。
いつか王宮付きの錬金術師を夢見て頑張っているが、道は遠く険しい。
憧れの錬金術士を目指して、毎日部屋で勉強している。
今日も日が暮れ夜が更けても勉強していたが、ある場所で躓く。
どれだけ考えても分からないので、一旦区切りつけつけることにした。
背伸びをしていると、後ろから声をかけられた。
「クレイ、勉強終わったか?」
「まだだよ。ちょっと休憩さ」
僕は振り返らずに答える。
「そんなに根を詰めても効率悪いだろ。少し話そうぜ」
「時間は少しも無駄にできない」
「でも行き詰ってるだろ。気分転換も大切さ」
お見通しか。
そう思いながら、椅子を反対に向けて声の主に正対する。
「お、その気になったか」
そう言って声の主は嬉しそうに、『フラスコ』の中で笑う。
彼はホムンクルス、錬金術で作られた小人である。
そしてフラスコから出たら死んでしまう、儚い存在。
ホムンクルスは文献でしか確認されていない伝説の存在。
だれもが試すが成功したことがないので、不可能だと思われていた。
だがある日、錬金術の練習をしていたところ、たまたま出来てしまった。
フラスコの中に生まれた小さな命、それがコイツ。
しかし、このホムンクルスはなぜかお喋りであり、こうして勉強の邪魔をされることもしばしばである。
「フラスコからは出られないからな。暇で暇でしょうがない」
「やっぱり君の暇つぶしか」
「そう言うなって。暇すぎて国を滅ぼそうかと思っていたくらいだ」
相変わらずホムンクルスは適当なことを言う。
まあいつもの事なので、スルーすることにした。
「で、何話すの?」
「コイバナしようぜ。お前、花屋のアリスの事好きだろ」
「ぶはっ」
ホムンクルスの言葉に思わず咳き込む。
「何で知ってる!?」
「暇なときに調べた」
「嘘つけ。フラスコから出られないくせに」
「俺、やろうと思えば幽体離脱できるんだよね」
「出来るわけないだろ」
するとホムンクルスは、急に吹けもしない口笛を吹き始めた。
明らかに自分で遊んでいるのが分かって腹が立つ。
「で、いつ告白するの?」
「しない」
「宮廷錬金術師になってからってか? でも、ツバ付けとかないと他のやつにとられるぜ」
「しない」
「じゃあ、こうしよう。俺がお前とアリス以外の人間全部殺して二人きりにしてやるから、そこで告白しろ。な?」
「しない!ていうか、そんな状況になったら告白どころじゃないから!」
「これも駄目か。じゃあ――」
「話を続けるな!逆にお前の好きな奴は誰だよ」
「えー、言わなきゃダメ?」
「うるせえ。俺ばっか言われるのは不公平だ」
俺が言い返すと、ホムンクルスは少し考えて俺の顔をまじまじみた。
「俺が好きなのは、クレイ、お前だ」
「は?」
何言ってんのコイツ。
「もちろん、恋愛感情じゃねえぞ。友人として、だ」
「……勘違いするわけないだろ」
ちょっと勘違いしたのは内緒。
「俺は子孫を残すっていう欲求が無いからな。恋愛感情自体がない」
なるほど、言われてみればそうだった。
こいつは普通の生き物とは違う方法で生まれた。
だからなのかも知れない。
「お前なら、宮廷錬金術師になれるさ」
ぼんやり考えていると、ホムンクルスが急に話を変えてきた。
「急になんだよ。また嘘か?」
「本当さ」
ホムンクルスの真面目な声のトーンに驚く
「なんせ、俺を作ったくらいだ。お前は天才だよ」
「偶然だよ」
「偶然でも他のやつには出来ないことが出来たんだ。お前には才能がある」
ホムンクルスの言葉がどこか真に迫っていて、返答に詰まる。
「そして俺に丈夫な体を作ってくれ」
「丈夫な体?」
「言っただろ、暇なんだよ。自由に外を歩ける体が欲しい。そのためなら豚だっておだてて見せるさ」
「おい最後」
するとホムンクルスは、また急に吹けもしない口笛を吹き始めた。
こいつ都合が悪くなるとすぐ誤魔化す。
「まあいい。喋って気が晴れただろ。話を切り上げるぞ」
「おう、こっちもお前を揶揄《からか》えて満足した」
聞捨てならないことが聞こえたが、突っ込むと話が長くなりそうなので、聞かなかったことにした。
まあ馬鹿な話をして、いくらか気分は楽になった。
そういう意味ではこいつに感謝である。
勉強を再開しよう。
そしてコイツの言う通り、丈夫な体を作ってやるのも面白い。
いつも揶揄われているが、たまには驚かせてみるのも悪くない。
そう思うと、自分でも驚くほどやる気が出てきた。
勉強が捗りそうだ。
「最後に一つ、いいか?」
「何?」
「俺、兄弟も欲しいんだよね。だからアリスと夫婦になって――」
「下ネタ禁止!」
そうして俺たちの一日は過ぎていくのだった。
ガシャンコ ガシャンコ
あーあ どれも小せえ小せえ
オレに及ぶやつなんかいやしねえ
ガシャンコ ガシャンコ
オレの相手はこの中で1番小せえじゃねえか
張り合いねえなあ
ガシャンコ、
次のふたりそれぞれお皿に乗ってください
極端に重量差がある場合もございますので急な衝撃にご注意ください
相手が片側に乗るのを見てオレも乗った。
途端、体がふわっと浮いて強くケツを打ちつけた。
ガシャンコ
わあと黄色い歓声が上がる。
あなた小さいのに高密度なのね!!素晴らしいわ
こんなに偏ったのは何百年ぶりかしら
オレよりも小さいヤツは他のヤツらに囲まれてペコペコ頭を下げている。見向きもされないオレは腹の底からぐわっと煮えたぎるものを感じた。
ふざけんな ふざけんな ふざけんじゃねえ!!!
オレの方が図体はでかいんだよ!この機械壊れてんだろ!やり直せ!
ざっと視線がオレに集まる。
あら、あなた中身空っぽなのね
見た目だけでなあんの価値もないんだわ あっはは
蔑む笑いが波紋のように広がった。オレはそれを何も言えず見上げていた。ヤツらの隙間から小さいヤツが少し焦っているのが見えた。
.小さな命
ある日、小さな種子が土の中に埋まって眠っていました。その種子はまだ小さくて弱々しいですが、内側では根を伸ばし、力強く成長するための準備をしています。そして、ある日、太陽の光が種子に届き、土の中から芽が出てきました。小さな芽はまだ弱々しいですが、生命の力に満ちています。
芽は少しずつ成長し、根は地中にしっかりと張り巡らせます。雨が降るたびに水を吸い上げ、太陽の光を浴びることで、芽はますます大きくなっていきます。周りの環境にも恵まれ、芽は元気に成長していきます。
しかし、成長の道のりは必ずしも平坦ではありません。時には強い風や大雨が襲ってくることもあります。しかし、小さな命はそれに立ち向かい、逆境を乗り越えて成長していきます。根はより深く地中に張り巡らせ、茎や葉はしなやかに風に揺れながらも、自分を守りながら成長します。
そして、ある日、小さな芽は立派な樹木に成長します。その樹木はたくさんの葉を茂らせ、美しい花を咲かせます。周りの人々や生物たちにも喜びと癒しを与える存在となります。小さな命の成長は、一つの種子から始まり、自然の摂理に従って進んでいくのです。
小さな命の成長は、希望と奇跡の物語です。それは私たちに、どんなに小さな存在でも、環境や困難に立ち向かいながら成長する力を与えてくれます。私たちも、小さな命の成長を見習って、自分自身を成長させることができるのかもしれませんね。
数十年前 私のお腹に小さな命が2つ宿った
医師が何度もモニターを確認し
慌てていたのをしっかり覚えている
それからの十ヶ月
必死で命を育み
超未熟児と未熟児の双子を出産した
今度は必死で育児をし
気がつけば反抗期
必死で反抗に向き合い
正直毎月ヘトヘト
あんなに小さく産まれた我が子が
必死に反抗
これも笑って振り返る日が訪れるのかな
#小さな命
みんな元は小さな命だよ
それを大きくするまで絶っちゃだめだよ
【小さな命】kogi
アリンコの巣に指ぐりぐりしてた子供の頃。
アリさんから見た僕はきっと進撃の巨人
嗚呼、今日は人生で1番ついてない日だ。
そう思った日がこれまでに何度あったことか。
別に、あとから考えればそこまで大したことないんだけど。でもその時はもう、オレって史上最低な奴だくらいに落ち込んで凹んで、絶望する。感情の起伏が激しいのも理由の1つかもしんない。
で。
そんな今日も、今まで生きてきてもう何度目かの“最低最悪の日”だと認定せざるをえない日だった。こんな落ち込んどいてきっと明日になればけろっとしているだろうに、今はどうしようもないほど落ち込んでいる自分がいた。もう次の授業はサボるしかない。屋上に出て地べたに座り込む。ふと、体育座りした足元に目をやると、コンクリートの僅かな割れ目から草が伸びていた。しかも小さくて白い花をつけている。多分、雑草の類いなんだと思うけど、こんなところでよくもまあ生きてられるもんだな。まさしく雑草魂ってやつだよな。でも、その姿はオレには格好良く映った。なんか、図太さというか執念深さというか。そんな、言葉にするとあんまり良くないイメージなんだけどこれがぴったりとはまるから良いな、って思ったんだ。こんな場所でも生きてる小さな命。すげえなあって素直に思える。思ってるうちにもう、さっきまで自分が何に絶望してたかなんて忘れてしまった。そういうもんなんだよな、オレの悩みって。こんな、ちっぽけな雑草に救われるなんて。いや、悩みに大小関係ないように、命にも大きい小さいの順列は不要か。
よし。
次の授業はちゃんと出よ。
題:小さな命
もしも足より大きな蟻がいたら
それを小さいと言えるだろうか
いやいや、きっと大きいと言う
たとえ自分の背丈より小さくても
それは確かに小さな命
蟻の背丈は人よりも
うんとうんと低いのだから
けれども大きなものがある
命の価値は大きなものである
どんなに小さな命でも
なくてはならぬ存在で
消えて構わぬ命など
一つたりともありはせぬ
虫はちょっぴり苦手だけれど
私の命と同じだけ
虫にも命の価値がある
身を守りたい時以外
潰さずそっと見守ろう
***
小5クイズで「足より大きな蟻」という妙に恐ろしい選択肢が出てきた。
こんなのに遭遇したら人生終わる存在として、他の選択肢よりもめちゃくちゃインパクトがあった。
もう一つの選択肢も良かったけど……恐ろしさだけ見たら、今回の小5クイズで最も強いインパクトを放つ存在だろう。
不思議なものだよね。
爪のサイズより大きな蟻すら、そんなに多くは見かけないってのに、恐ろしい存在という認識をしてしまう。
そんなに小さいんだから、指先でもプチッと出来てしまうのに。
その小さくて脆い命を前にして、怖いとか恐ろしいとか言っている。
でも命というものが持つ価値が人間一人と蟻一匹で等しいのなら、そりゃ恐ろしいと思って当然だ。
私が蟻を見かける時は、大抵一人でいる時だ。
そして蟻は複数匹歩いている。
命の価値をそれぞれ100とした場合、私は100で、蟻は合計すると軽く500を上回る。
そりゃあ、怖いと思うのも当たり前だ。
小さな命と言うけれど、価値に対して小さいと言っているのではなく、ただ単に生まれてからの日が浅い事を指しているのか、身体面が全体を見た時に平均より小さい事を指しているのかのどちらかだろう。
そう想定して書いた。
小さな命は心の中にある。
そして、それを育てて日々成長ゆく。
アイスの当たり棒でそっと小さな虫を殺めた
小さな命は普遍的な残酷だ
宇宙規模で考えた時
人間もまた小さな命だった
小さな命
小さな命
小さな器
私のそのなか特になにもない
ない? なにが? 中身!
空っぽ異議なし
命に大小ナイ? ソンナワケナイ
価値アル? 価値ナイ?
その議論中身ナシ
早めに棺桶探しとかなきゃ
足は切らない 切れるほど長さナイ
実績ナシ、成績ナシ、正社員ジャナイ
雇用保険ナシ、ナイナイナイづくしの私
その小ささダケハ測り知れナイ!
命の大きさは違えど価値は変わらない
【小さい命】
四、小さな命
ミアの勤め先であるこの屋敷には、屋敷の主人であるアルバートと、ハウスメイドとして住み込みで働くミアのたった二人しかいない。とは言ったものの、年中二人きりというわけでもなく、稀に客が訪れることもしばしばあるのだ。
「そんなところでしゃがみ込んで何してるんだ」
不意に頭上からアルバートの声が降ってきて、ミアはぱっと視線を上げた。
「花壇に水をやりにいくと出て行ってからいつまで経っても戻ってこないから探しにきた」
「あ……すみません。珍しいお客様がいらしていたので、どうしたものかと」
ミアはそう言うと再び視線を落とす。
客?と首を傾げたアルバートも同じようにミアの視線を辿れば、その先にいた正体に目を丸くした。
「……猫?」
まだ仔猫のようだった。毛並みに艶はなく、土汚れも酷い。それでいて目も当てられないほどにやせ細っている。
「花に水をあげようとしたら、花壇から鳴き声が聞こえてきて。探してみたら、この子を見つけました」
ミアはそっと仔猫を持ち上げて腕に抱える。羽根のような軽さにミアはただただ驚いた。
「親猫とはぐれてうちの屋敷に迷い込んだか」
「もうずっと鳴き止まなくて……」
ミアの言葉通り、仔猫はか細い声で必死にみゃあみゃあと鳴いている。
「腹を空かせているんじゃないか」
「お腹を……」
空腹でも何も口にすることができないあの過酷さを、ミアは誰よりもよく知っていた。湧き上がるのは名も知らぬ感情。ミアは僅かな力で仔猫を抱きしめると、意を決してアルバートを見上げる。
「あの、ご主人様」
何を感じ取ったのか、アルバートは己に注がれる真っ直ぐな視線から逃れるように思わず目を逸らした。
「……分かったから。そんな目で俺を見るなよ」
アルバートはたまらず息を吐く。
「いきなり固形物を与えるのはコイツの胃の負担を考えればあまり良くないだろ。ミルクでもあげてみたらいいんじゃないか」
「! そ、そうします……!」
アルバートの提案にミアはぱあっと表情を輝かせると、こくこくと頷く。仔猫を抱えて小走りで屋敷の中へ戻って行くミアの背を目で追いながら、アルバートは自分の頭を乱暴にかいた。
「……なんだあの顔。初めて見たぞ」
アルバートはひとりごちる。もちろんそれを聞く者など、誰一人としてここにいるはずもない。
屋敷の庭で仔猫を拾ってから早十日。
ミアは時間さえあれば仔猫の世話を焼いていた。餌を与え、体を洗い、丁寧にブラッシングを施し、玩具で構い、夜は寝床を共にした。そんなミアは今日も新しく仕入れた猫じゃらしを元の白さと柔らかな肉付きを取り戻した仔猫の前に楽しげにチラつかせている。
「……まるで猫同士の戯れだな」
そんなミアの様子を肘をつきながら傍目で眺めていたアルバートはぽつりと呟いた。
「ご主人様、今なにか仰いましたか?」
「別に何も。……というかお前、近頃そいつにばかり構いすぎじゃないか? お前の主人は誰だ?」
どこか刺々しく尋ねてくるアルバートに、ミアはぱちくりと目を瞬かせる。
「アルバート様です」
分かりきったミアの返答にもなお、アルバートは不満げに口をむっと尖らせる。
「分かっているなら、もっと……」
そこまで言いかけて口を噤んだ主人と、じゃれる仔猫を交互に見比べたミアは、立ち上がりアルバートの前まで歩くと、手に持っていた猫じゃらしを主人の顔の前でユラユラと揺らし始めた。
「……おい、何をしている」
「ご主人様も猫じゃらしで遊びたいのかな、と」
屈辱にも似た感情に顔を赤くしたアルバートは、ふざけるなと声を上げようとした次の瞬間、来客を知らせるベルの音が屋敷中に響いた。ミアとアルバートは目を見合わせる。
「私が出ます」
「頼む。応接間に通してくれ」
屋敷に訪れたのは五十代半ばのふくよかな女性だった。彼女は玄関先でミアの後をついて回る仔猫を目にするなり、その場でいきなり感嘆の声を上げた。
「まあ! やっぱりここにいたのね!」
その言葉を聞いて、ミアは仔猫との別れがいきなりやってきたことをすぐさま悟った。動揺していることがバレぬように、ひとまずアルバートが待つ応接間まで女性をお連れする。その間、ミアの心臓はいつも以上に大きく脈を打っていた。
「ああ、良かった……! 仔猫が居なくなってから親猫であるこの子を連れて連日外を探し回っていたんです。そうしたら今日、ここのお屋敷を前に一歩も動かなくなってしまって。もしかしてと思って訪ねてみたら、大当たりでしたわ」
夫人の足元には毛艶の良い真っ白で美しい猫がいた。屋敷の庭で拾った仔猫をそのまま大きくしたような、そんな猫だ。女性の話を聞くに、どうやら仔猫は彼女の飼い猫だったらしい。まるで再会を喜ぶように、親猫は仔猫の顔を執拗に何度も舐め、仔猫はそれに応えるように親猫に擦り寄っている。
「ごめんなさいね、迷惑をかけてしまって……。仔猫を保護してくれて本当にありがとう」
「いいえ、見つかって良かったです。保護のことなら当たり前のことをしただけですから、どうかお気になさらず」
深くお辞儀をする夫人を前に、アルバートはさらりと微笑む。
一介の使用人に過ぎないミアが、己の主人とその客のやり取りに口を挟むことなど到底許されるはずもなく、彼女に出来ることと言えば、アルバートの後ろでただ静かに控えていることくらいだった。
「帰り道、お気をつけて」
「ええ、ありがとう。このお礼は必ず」
夫人はそれだけ言い残すと、親猫と仔猫を連れ立って屋敷を後にした。
まともにお別れの挨拶をすることもままならず、仔猫はミアの元から去って行った。訪れる静寂。心にぽっかり穴が空いたような、何とも言えぬ喪失感に、ミアはどうしようもなく泣きたくなった。
「ミア」
ソファーから立ち上がったアルバートが、ミアの名を呼ぶ。
「おいで」
命令口調とは違う、あやすようなその声に、ミアは逆らうことなくゆっくりとアルバートに近付く。
次いで、アルバートの大きな手のひらが、ミアの前髪をまるで宝物を扱うかのように優しく撫でた。
「お前は確かに、消えかけていたひとつの小さな命を救ったんだ。それを誇れ。……お前はよく頑張ったよ」
アルバートの言葉に、ついぞミアの頬を一粒の涙が伝う。
「それに、だ」
アルバートの指がミアの涙を拭う。
「お前には仔猫じゃなく、俺の世話をするという本来の仕事があるだろ。俺はここ数日、お前がいつ俺の世話役を降りて仔猫を主人にすると言い出すのかと気が気じゃなかったぞ」
アルバートにじっとりと睨まれたミアは、ぽかんと口を開ける。
「……私のご主人様は、アルバート様だけです」
「言ったな。なら、ここ数日の穴を埋めるようにしばらくは充分に俺を構えよ。きちんと行動で示せ」
揶揄うような主人の口ぶりに、ミアは心が軽くなるのを確かに感じて、小さく頷いた。
「分かりました。すぐにでも新しい猫じゃらしを買って参ります」
「それは買うな」
今 光る この 切れ端は
長い 眠りを 破る
炎とは 違うもので できた
温かい 徴だ
長い 眠りを 破って
あなたへ 会いに来る
隔たりが なくなる 音階が 聞こえなくなって
絶え間なく 心臓に 流れていた
温かい 眠りを 突き破って
あなたの 顔を あなたの 両腕を
噛み切れない ほどの 言葉を
何度となく 静寂を 破った
雨の音も 今は
やがて あなたに 会えるなら
千年の 時を 超えてくる 今は 羽のように
空気を 舞うように
闇の中 あなたに 私は 何を
話し 繰り返し 帳の中で
やがては 形を 生むものの 造形を
音もなく 編んで 影を あたり一面に
放り投げて
それでも 月日は 巡り
あなたは 光を 見つけ
やがては 名前を 変えて
再び そこへ そこへ
水面の 鏡に 映る 正体を
知ることを 辞めないで
遠くへ 伸びる影を 背にしては
小さな鼓動 生まれる
小さな 命の 誕生に
光の 差した 午後に 光る
太陽を 浴びながら 素足を 浸す
キラキラ 光る 夜明けを 信じてる
朝一の重めの会議 上司の顔色
交通渋滞 降るかも分からぬ雨のための傘
世界じゃ誰もが仮面をつけて 踊ってる
そんなこと気にせず 10分の休み時間で
ボールを蹴飛ばしていた ぼくら
明日に何があろうと コントローラを手にし
家族と ただ目の前のレースを 楽しんでいた
もうそんなことは そんな安心は 存在しない
きっと
僕らがもらった小さな命
か細いけれども なんとか紡いできたわけで
効くかも分からない安めのドリンク飲み干して
朝日がまた来やがったと 思いながら
寝癖を整え 仮面をつけて 玄関をしめる
履き慣れてしまった革靴の踵は すり減っていた
私から見ればなんとも小さな命か
十にも満たない幼子は
小さいながらに必死に追いかけてきて
お世話をするのだと声を上げる
棚の上のものを代わりに取ってやれば
頭巾で窺い知れないその顔は不機嫌そうだ
火で火傷をしないか
包丁で手を切りやしないかと
その小さな背を時折盗み見る
風呂を沸かしたから入れと言う
その声が眠気を孕んでいた
しかしこの子は意地っ張りな性格のようで
言われた通りに先に風呂に入る
湯から出れば案の定その子は船を漕いでいた
起こさないようにそっと抱き上げ
布団へと運ぶ
起きたらきっと文句を言うのだろうか
それとも拗ねるのだろうか
どちらにしても
この子との明日が楽しみだ
腕の中の小さな命
2024/02/25_小さな命
〜小さな命〜
小さな命はそこらじゅうにある
植物や昆虫、動物など
手で叩けばなくなってしまうような命もある
そんななかそれぞれの人生を一生懸命生きている
自分の命の価値を誰かと比べ
自分の方が小さな命だそんなこと
思わないでほしい
だって命の価値に大も小もない
それぞれの存在に意味があるから
【小さな命】
俺は小学生の時に授業でモンシロチョウを
卵から育てたことがある。
友人のモンシロチョウは、幼虫の段階で
死んでしまっていた。幼虫は正直言って、
綺麗ではないし、見るのも苦手だ。
でも、そんな幼虫でも、1つの生き物で、
命がある。
俺はモンシロチョウを最後まで育てることができたが、自然にはなすとき、少し泣きそうになった。
最後までしっかり育てることができて
嬉しくて、喜んだが、友人の死んでしまった
モンシロチョウのことの方が何倍も記憶に
残っていたし、今でも残っている。
小さな命でも、大切にしなければならない
ことをその時に知ることができたような、
そんな、気がした。
Syuka
私は地獄に堕ちるらしい
何故?なんで私が地獄なんかに落ちなきゃいけないの?!
確かに私は、虫やら、ネズミやら、猫やら、沢山殺めたかもしれない!
けど、たかだか数センチ、数十センチの小さなことじゃない!
なんでそんな事で地獄に落ちなきゃいけないのよ!!
あんな小さな命の為に、私の大きな命を地獄に落とすなんて信じられない!?
なんで私が地獄に落ちなきゃいけないのよ!!