『夢が醒める前に』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
薄暗い部屋でこのベッドで何度貴方のタバコを吸う後ろ姿を見ただろうか。
お金でしかあなたを振り向かせられない私はなんて嫌な女なんだろうとシーツを強く握った。きっと、あなたは後数時間したら別の人のものになる。これ以上あなたを思い続けてもあなたは私のものにならない。なら、これで最後。
最後だからあなたの姿を目に焼き付けたい。本当に神様がいるのなら夢が醒める前に彼に触れたい。
夢を見ていました。あのお方がおれをあたたかく見下ろしては「きみが特別だよ」と微笑む夢を。
とんだ絵空事です。現実では叶うはずのないばかげた事象です。
でもあのお方が夢から醒める直前……「きみにだけ、とくべつ、あげるね」とおれの手のひらにそっとのせた小さなあめだま。
拳を開くとそのあめだまが夢の中のままひっそりとそこにあるのです。
ばかげているとお思いですか。ですがたしかに、夢から醒めてもおれの手のひらの中にあめだまはあるのです。あのお方がくれた特別なあめだまが。
お題「夢が醒める前に」 おまねむ
夢が醒める前に
少女が笑っていた。白い肌は光を反射して日陰にいるはずの俺さえも照らす。
俺はあの子を知っている。あの子が呼んでいる。
俺は走った。電車に長い時間揺られた。また走った。夏の暑さのせいで汗が吹き出ていた。ピーンポーン。軽快な音が俺の指先を通り抜けて、古い民家に届く。
「あら、たくちゃんじゃない。どうしたの?急に。」
聞き慣れた声。
「ばあちゃん、ちょっと入ってもいい?」
「もちろんいいけど……。」
「お邪魔します。」
「急じゃけ、なんにも用意しとらんわ。ごめんね。」
祖母は困ったような顔をしてスリッパを置いた。家は相変わらず古いけれど綺麗に整頓されていた。
「ばあちゃん、今日、ばあちゃんの夢を見たよ。」
「私の夢?そりゃあまたどんな夢ね。」
「ばあちゃん、今よりずーっと若くて髪がとても長かったんだ。」
「へえ。不思議な夢ねぇ。」
「……ばあちゃんさ、誰を見てるの?」
「何ゆうとるん?」
「ばあちゃんはいつも俺を見てないよ。俺を通して誰かを見てるんだ。俺、いや、その誰かを見てる時だけ夢の少女みたいな目をするんだ。」
「そんなこと……。」
「わかるんだよ。ずっと両親の代わりに俺を育ててくれたろ?すごく感謝してるよ。だけど、俺を見てほしかったよ。」
「そうかぁ、ごめんね。気づかんで。」
それからばあちゃんは青い思い出を語った。
「不思議なことがあるもんだねぇ。じいちゃんと出会う前に恋をした人がいたんよ。その人は先生で、私は教え子で。私が大人になったら告白しよう思っとった。」
黙って頷いた。ばあちゃんの声と風鈴と蝉が混ざって不協和音を奏でていた。
「でもね、その人は私が大人になる前に死にんさった。」
頷くことができなかった。
「原爆症、ゆうんよ。」
ばあちゃんはやっぱり俺を見なかった。
「たくちゃん、その人に似とるんよなぁ。初めて見たとき生まれ変わりだなんて思うてしまったんよ。ごめんね。」
「現実突きつけるようなことしてごめん。でも、ばあちゃんに伝えなきゃいけない気がしたから。」
「ありがとうね。たくちゃんは、やっぱり優しい子やね。」
帰り道、なぜだか喉元に刺さった骨がとれたような心地がした。ばあちゃんが死ぬ前に夢から醒めて良かったと思う。原爆症で死んだその人の顔も名前もわからないけど、そこにいるような気がした。
夢が醒める前に
最近、高嶋の夢を見ることが多くなった。
彼奴とまだ戦場にいた頃の夢。
夢の中で笑う高嶋は、いつもどこか哀しそうな面を見せる。
それは、まるで俺のあの日の愚かさを表しているようだった。
────────────────
時には、あの日、俺が高嶋と話した最期の夢を見る。
『これは命令だ───西浦』
あの言葉が今も耳から離れない。
いつも、泥だらけで俺を見る眼を見る度に、いつも、
やり直せたならと、そう思う。
夢の中で、現実の自分の思い通りにいかないのは。
己の無力さか、それとも罪を自覚しているからか。
自分の願いではなく、記憶を映し出した鏡なのか。
それでも、どうか、この夢が醒める前に、
もう一度名前を呼ばせてくれないか。
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自創作 硝煙は笑う より
いなくなった人 高嶋
夢を見る人 西浦
過去を彷徨う夢だ。
名前のわからない彼を私はよく知っている。
黙って直ぐ側にいる、安心する感覚。
姿は知っている、でも名前を呼ぶことが出来ない。
声も顔もぼやけて、はっきりとは理解出来なかった。
でもよく知っている。
ずっと前から側にいたと断言出来る。
目が醒めるまで、ぼんやりと温かな夢の中で。
季節の花々が四季に関係なく咲き誇る場所で
花畑の真ん中にいる。現実のしがらみなど一切ない。
だた自分自身を包み込む、温かな世界がそこには広がる。
「ここは、どこですか」
「…」
彼は小さな声で何かを喋ったが、全く聞こえなかった。
「もう疲れた、ここにいたいです」
「…め」
また何かを喋ったが聞こえない。だが
彼は首を何度も横に振った。
「ダメだということですか、もう頑張れないです」
「…め」
また彼は首を何度も振る、ぼやけていても悲しげな表情をしているとわかった。
「人生の半分は辛いことしかないっていうのに、これから良いことがある保証はないのに。どう頑張れと」
皮肉のような言葉を言った、悲しむ彼に言うような言葉じゃないとわかっていても。止められなかった。
その時、初めて彼の声がはっきり聞こえた。
「保証はないですけど、もうすぐ会えます。だからその時までは待っていて」
彼はそう言った。
光が降り注ぎ、目が醒める。
どうやら日差しが温かかったものだから、眠ってしまったようだ。
ぼんやりまだ最後の言葉は確かに覚えていた。
夢の中で
がいこつ達と
さくらんぼ狩り
めっちゃ食べたわ
るんるん気分
前を向いたら
にじ出てた
※『夢が醒める前に』で言葉遊びしました
う〜ん、難しい……
誰にも理解してもらえない、否、してもらえなくていい、自分と相手だけがいればいい。
誰も自分たちを知る人はいない、どこか遠いところに行ってそこで死ぬまで2人だけで暮らしたい。
それがある意味、俺の夢だった。
そう伝えると「そんなことは考えてない」と返され、茫然自失になったも束の間、相手は俺が知らないうちに、俺よりもずっと多くの、ずっと先の未来を見据えて行動していたことを知らされる。
2人だけで最期に向かって生きていく夢を見ていたけれど、その夢が醒める前に、自分たちの人生には多くの理解者がいる、そんな温かくて優しい未来を、新たに夢見てもいいのだと、そう知らされた。
【お題:夢が醒める前に】
夢から醒めたら
私は、消えよう
さようならを伝えて
悪縁で身を滅ぼして
ボロボロになった
私はやっと、
目が醒めた
夢が醒める前に。(六日目)
嗚呼……何回目だ?
いつもの様に耳に入り込んでくるその音。
カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカ
暑い夏を表すかのように鳴くその音。
ミーンミーンミーンミーンミーンミーンミーンミーンミーンミーンミーンミーンミーンミーンミーン
嫌でも思い出してしまう。
き▷はと○だ□
嗚呼……どうして早く相談してくれなかったんだ。
嫌…別に相談した所で僕の願望通りには行かなかったけどね。
貴方は夏に入る前に○んだ。
踏切で自○だ。僕の目の前で。
普通は「可哀想…」とか思うだろうか?
でも僕は何故彼女が○んだか知っている。
……九月の事だ。僕は…その…彼女のことをいつも目で追っていた…あぁ!もう!もういいや!単刀直入に言う!僕は、僕は
『彼女が好きだったんだ。』
その…それからどう繋がる?と思っているだろう?
それは簡単だ。○んだ理由はイジメだ。そう
僕のイジメでだ
僕が皆にイジメるように仕向けた
そのせいで彼女は○んだ。
ほら!気になるとか!信頼している友達ならば!普通イジメ等受けていたら相談するだろう…??ただ…確かめようとしただけなんだ…。
そこから僕に相談して…そのイジメが解決して…鞄に
お揃いのキーホルダーをつけて、楽しく分からって世間に批判されながらも恋人となり…生涯を終えるつもりだったのに……!!どうして!君は○んだ?
イジメが行き過ぎたのが原因か…??しょうがないじゃないか!彼女が可愛かったんだ……机に花瓶を置かれたその瞬間笑みが消えた。絶望したその顔!最高に可愛かったよ…??不揃いになったスカートを爪で握る。その時に相談してくれたらよかったのに、しんどくないから相談しなかったんじゃないかって?それは無いさだって
彼女が教室で一人で泣いてたからさ
泣くくらいならば相談して僕の手を握れば良かったじゃないか?彼女がいなけりゃ僕の居場所はないんだよ…
戻ってきてよ……
嗚呼……最後の彼女の遺言はびっくりしたなぁ……
まさか「きみはともだち」だなんて……笑
嗚呼…白い肌の彼女に僕は失恋したようだ。
━透明な女の子は一人の少女の後ろを指さした。
テレビアナウンサー
「昨日一人の少女が踏切で自○をはかったそうです。
自○は未遂に終わりました。ですが少女は精神的ダメージをおっているのか『そこに!そこに!僕のトモダチがいた!!僕の自○を止めようとしてくれたんだ!そう!僕の後ろの電車を指さして!』と幻覚を見ている状態てです。警察は精神病棟に引き渡そうとしましたが調べてみると去年の日にも同じ事が起こっています。その少女とは別に別の少女が踏切自○をしました。警察はこの件と関連性があると試みて捜査を続けています。次のコーナーはイギリスの地震についです。」
━「君のせいで私は○んだ。」
(最後の言葉)
ボカロ曲の「少女レイ」という曲を線にして書いています!途中でわかった人おるんかな…?まぁ別にええわ。
完全にこれは俺の考察やから!正解とかないからね!
まとめたりすると
僕は私が好き→僕はとある計画を立てた→それは虐めをし私に相談して貰うことだった→ある日何故か僕が虐めをしろという命令をしていることがバレた→私はしんどくなり踏切で自殺をはかった→僕が手を伸ばしたが間に合わず→私は死んだ→最後の遺言は「君はトモダチ」というハッキリとした「私と貴方は友達」という関係付けた→自分のせいで自殺した僕はずっとフラッシュバックする→永遠にその日の出来事を思い出してしまう…
という感じにまとめて書いていました!ここまで読んだ方凄いですね!ここまで読んでくださった方々本当にありがとうございました!
夢が醒める前に
たまに同じ夢を見る
私が車で事故を起こしそうになる夢だ
夢の中では私が1人で車を運転している
道は少し長い下り坂になっており
降りたところに直進と左折の丁字路がある
シチュエーションは何の変哲もないのだが
唯一の変な点を挙げると
私の背が幼稚園くらいに低いことだ
普通に座るとアクセルに足が届かない
ハンドルの足下に潜り込むような形で
無理な体勢でないとアクセルは踏めない
もちろん前方を見ることはできない
アクセルを踏み下り坂で少し速度が出たところで
アクセルから足を外して体勢を戻して前方を見ると
丁字路でトラックと乗用車が立ち往生している
ブレーキはもちろんアクセル同様に足が届かない
「まずい」と思ってハンドルを切るが…
いつもここで目が醒める
だから実際に事故ったかどうかは分からない
しかし難を逃れることは難しく思える
夢が醒める前にハンドルを切りながら
「またか」と思っている自分がいる
いつかは別の世界線に行くことは出来るのだろうか
最終話 その妃、落花妃也
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「……〜〜〜〜っ‼︎」
突如、真っ赤に顔を染めた馬鹿は、両手で顔面を覆いながら声にならない叫び声を上げた。
「……ジュファ様。一体何したんですか」
しれっと帰ってきたロンには肩を竦めながら、勝手に壊れたとだけ伝えておいた。
「それはそうと、何の話をしていたの?」
「主には今後のことですかね。一先ずは、この“花洛”と呼ばれる国の保護を」
「……その心は?」
「残された人々が、自力で社会に復帰することを望むと」
「また帝みたいなのが現れたらどうするのよ」
「その時は捻り潰すまでですよ」
「あんたもなかなかの悪よねえ」
「あなたほどでは。……ですので、その時はどうぞ、お力をお貸しください」
「その前に嫁と娘ちゃんに会わせなさいよね。あと、飼ってる白いカラスにも」
「ははっ。……ええ勿論」
さて、取り敢えずの方針と自分たちの成すべきことが見えてきたところで。
「それで? 勿論本名くらいは聞いたんだよね?」
「……容量超えてるから、それどころじゃない」
「じゃあ僕が聞く」
「みっちゃん⁉︎ それはズルい――ぐへッ!」
引き留めようとするあんぽんたんを、これでもかと言うほど術で弾き飛ばした陰陽師のロンは、目の前まで来て小さく会釈した。
「不慣れなもので。簡単で申し訳ありません」
「構わないわ。それに……せっかくこうして巡り会えたんだもの。また会う約束も兼ねましょう」
袖の中で両手を合わせたロンは、感謝の意を表すように一度深くお辞儀をした後、片手をそっと差し出した。表情や態度からは、一切の堅苦しさはなくなっていた。
「賀茂 栄光《かも よしみつ》。星の里の長だ」
「改めて、この度は力になってくれてありがとう。あなたがいてくれて本当に助かったわ」
差し出された手を躊躇いなく握ると、彼は少しだけ驚いたような顔をした後、「此方こそ」と年相応の笑顔を返してくれた。
「因みにあいつは、藤原 良隆《ふじわら よしたか》。一応あれでも未来の藤原当主です。改める必要はないでしょうけど」
「ちょっとみっちゃん! 僕からちゃんと言いたかったのに!」
「隅っこで茸育ててるからだよ」
「ジメジメはしてないから!」
「ふふっ。そうね、ジメジメもしてはいないし、よく知ってるから改める必要もないわ」
くすくすと、堪えきれない笑いが治ってから、ふうと一つ、小さく息を吐く。
じっと、此方を見つめてくれている彼等に、最上級の敬意と賞賛、そして感謝を込めて。
「改めまして。私の名前は、橘 葵生《たちばな きき》。橘の末の娘で、幼い頃に罹った結核で死んだことになるまではこの愛すべき馬鹿の許嫁だったけど、こいつの命を守る任務に就いたがために、こうして一つの国を滅ぼす羽目になりました」
「なんか、アレですね。せっかく大仕事を成したんですから、通り名くらい欲しいですよね」
「ちょっと待って⁉︎ 今それよりもすごい大事なこと言ってたよね⁉︎」
「そうだ。“落花妃”なんてどうですか? そのままですけど、わかりやすくて割と衝撃的だし」
「ついでに恐怖心も煽ろうって?」
「流石。よくわかっていらっしゃる」
棒読みでパチパチと手を叩く栄光は、取り敢えずどついておいた。
「互いの真名を教え合ったんだもの。裏切ったら呪い殺すわよ」
「あなたが言ったら洒落になりません!」
「わーこわーい」
「いやそれ、全然思ってないでしょ」
「だって裏切る予定ないし? 今の所はだけど」
「僕だってないわい!」
これがたとえ夢でも……ほんの一瞬でも、何だっていい。
こんなにも幸せな時間を噛み締めることができて、よかった。
……生きていて、本当によかった。
「あの。きっ、……葵生、さん」
「何?」
「一回でいいんで、……抱き締めてもいいですか」
「……なんて?」
「こっ、この、幸せな夢が醒める前に。一瞬でいいんで」
「一体何を言い出すのかと思えば……」
巡り合わせとは不思議なものだ。
まさか、こうして再び関わることになろうとは。
未来というものは、誰にもわからない。
決め付けなければ、無限の可能性があるのだ。
「駄目。というか無理」
「無理⁉︎」
「だから……まあ、後から気が済むまでしたらいいんじゃない?」
「――! ……っ。僕を弄んで、楽しいですか」
「ふはっ。……ええ。とっても?」
これからの未来は不確かだ。
けれど、確かなことが一つだけある。
たとえ、悲しい運命の歯車が回り出したとしても。
たとえ、この先どんな困難が待ち受けていようとも。
「そこで止めるなよ。押せる時に押さなくてどうすんだよ」
「ちょっとみっちゃん! 僕の恋路に文句言わないで⁉︎」
「ふっ。……ほんと、あんたたち仲がいいわねえ」
この絆は、……一生物だということ。
ー完ー
#夢が醒める前に/和風ファンタジー/気まぐれ更新
別れたのにチケット取っちゃってたから
あなたの好きなバンドのライブに行ったよね
今、大きな隕石がこのライブ会場に衝突しないかな
今、大きな地震が起きてずっとあなたと居られたらな
夢が醒めなかったら、終わらなかったら、いいのにな
あなたの隣に私がいてあなたが私の隣にいて
私じゃない女の子が隣にいる想像したくなくて
夢が醒める前に、手を繋いだんだ
やっとわたしのこと見てくれたね
私は直ぐに気づいた。
ここは夢の中だと言うことを。
目の前には大好きな君が居る。夢の中なんだから、何したって許される。
あぁでも、もうすぐ起きなきゃ行けないんだろうな。そんな気がする。
最後に。夢から覚めてしまう前に。
私は君に、そっとキスをした。
お題:夢が醒める前に
最近僕は大好きなモノがやたらと夢に出てくる
"今日こそは絶対推しに会うんだ!"
僕は寝る前推しのことだけを考えて眠りに落ちる
( よく考えたら怖いですね )
"あっ、推し様だー!!"
いっつも会えないで夢が醒めてしまうだから今度こそ
"夢が醒める前に必ず会うんだ!"
っと思って寝る、なんか幸せだな〜 。
「ずっと聞きたかったこと」
初めて会ったはずなのに、そんな気がしない。
自分と似ていると感じるその男性に手を伸ばすが、触れることは出来ない。
聞きたいことも、知りたいことも、ありすぎる。
なぜ母さんを置いていったのか。
本当に母さんを愛していたのか。
そして、俺のことは……
いつか会える時が来たら、聞きたかったことが溢れ、頰に伝う。
何も言わずただ微笑む男性の姿が、薄くなっていく。
ずっと見守ってくれていたと、思ってもいいのだろうか。
────夢が醒める前に
「夢が醒める前に」
明晰夢。見た事があるでしょうか。
夢から目醒める前に、これは夢だと気付けたならば。
夢をコントロールする事が出来たならば。
幸せな夢から目醒めてしまうと暫くの間、切なくなるのです。
午後3時
駅前
あなたの後ろを
うつむきながら歩く
私をあなたのものにしてほしい
手首を纏めて括ったり
爪を皮膚に立てたり
首を絞めたりして
あなたの跡を残してほしい
今日しかないから
頑張って綺麗にしてきたの
私の精一杯を
あなたにとってはありきたりな女の私を
もらってほしい
【夢が醒める前に】
キラキラ。
ピンク。
おもちゃ箱。
ー孤独。
マイク。
煙。
スポットライト。
ー孤独。
腕の中。
心音。
呼吸。
夢が醒める前にー。
「どうしてアンタはいつもそうなの!?」
ヒステリックな言葉に、何も思わないわけじゃない。
私を殺したいわけじゃないだろうに、私の心を殺す言葉をどうして平気で吐けるのだろうか。
布団を頭まで被って、深呼吸をする。
暫くすれば、ほら、夢の中だ。
「どうしてアンタはいつもそうなの!?」
夢の中でさえ吠えるこの女。
私は思い切り平手打ちする。
1発、2発、3発…無我夢中で殴った。
「私の言うことさえ聞いてればいいのよ!!」
まだ吠える口を黙らせようと今度は手を握りしめた。
1発、2発、3発…後どれだけ殴ればこの女は黙るのだろうか。
ピピピピ…と遠くで音がする。
あぁ、そろそろ目を覚まさなくちゃいけない…
「私はアンタのためを思って…っ!」
あぁ、夢が醒める前に、
「うるさいなぁ」
いつの間にか握られた金属バットを女に向かって振り下ろす。
1発、2発、3発…
あぁ、夢が醒める前に、しっかりと殺しておかないと。
放課後の教室、憧れの君とふたりきり。
いつもは緊張して話せないのに今日は自然に会話ができている。
心地よい時間、ふと言葉が途切れる。重なった視線に胸が高鳴る。
今だ。
硬直した身体が言葉を紡ごうとしているのに、喉を塞がれたように声が出なくなる。さっきまでの会話が嘘のように辺りが静まり返る。
強張った唇をこじ開けると金属音のような声が絞りでた。その瞬間に目が覚める。
まただ。
幾度となく見る夢。恋心を伝えられなかったあの瞬間を、僕は夢の中で繰り返す。
あの時想いを伝えていれば何かが変わったのだろうか。
答えの出ない問にサウダージを感じながら冷たい水で顔を洗う。
夢が醒める前に、今度は君に伝えたい。