NoName

Open App

放課後の教室、憧れの君とふたりきり。
いつもは緊張して話せないのに今日は自然に会話ができている。
心地よい時間、ふと言葉が途切れる。重なった視線に胸が高鳴る。
今だ。
硬直した身体が言葉を紡ごうとしているのに、喉を塞がれたように声が出なくなる。さっきまでの会話が嘘のように辺りが静まり返る。
強張った唇をこじ開けると金属音のような声が絞りでた。その瞬間に目が覚める。
まただ。
幾度となく見る夢。恋心を伝えられなかったあの瞬間を、僕は夢の中で繰り返す。
あの時想いを伝えていれば何かが変わったのだろうか。
答えの出ない問にサウダージを感じながら冷たい水で顔を洗う。
夢が醒める前に、今度は君に伝えたい。

3/20/2024, 2:31:57 PM