『喪失感』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
喪失感
単なる選ばなかったものが失ったものに擬態化していく
手放したものがもう無縁なのに私の首を絞める
ほしいものが手に入ったのに昼さえ形もないからもがく
蓋を閉めてなくなさいようにしても自分で会えなくて苦しい思いをする
【喪失感】
正直今日はやりたくないなとか、めんどくさい
なって思う日いっぱいあったけど、
いざなくなると、寂しさが襲う。
3年間続けた日々の練習とかみんなで合わせた
ときの楽しさがもう味わえない。
今、変な気持ちでいっぱいになってる。
これが『喪失感』?
#27「喪失感」
喪失感は本当に苦しい。
何もしたくないし、何も考えなくない。
早く忘れたいのに、忘れることすらできなくて憎い。
嫌いなのに嫌いになれないし、愛したいのに愛せない。
どんなに望んでも何も手にはいらない。
本当に傷が深い。
ましてそれが大好きな人ならなおのこと。
居なくなった時の衝撃は思い出しただけで胸がつぶれる。
今は私も少し強くなったし、過去の事だと言える。
別れて1年くらいは時々思い出しては、声を出して泣いた。
自分の我慢のなさに何度後悔して、何度絶望したか。
辛くて辛くて早く忘れたくて、色んな人と関わって。
なのに全然忘れられなくて、いつもあいつと比べて。
で、結局なにも変わらなくて後悔を繰り返す。
私ってこんなに恋愛音痴だったっけって?
で、どうしても淋しくて…
別れた人の面影のある、似た人を選んでみるけど。
同じ魅力なんてもってるわけもなく。
結局は途中で気づいて、コイツは違うなって苦しくて。
これが「喪失感」なんだと感じた最初で最後の恋。
そんな恋から数十年…
私には旦那が居て子供も居る。
今は本当に幸せだけど、元彼を越える胸の痛みはない。
正直、あの時の胸の痛みを今の旦那にはないけど。
逆の穏やかな気持を旦那からはもらってる。
あの人とは全く違う別のもの。
私はもう過去には絶対戻らない。
旦那と出逢い、喜びと幸せをもらったから。
正直、貴方のことがこんなに思い出になるなんて。
あの時はもう一生忘れられないって思ってたのに。
記憶ってこんなにも薄れていくんだなって。
20年前の、過去の私に捧ぐwww
※「鳥のように」「時を告げる」はシリーズ物です。
※ 今作もそのシリーズに当たりますが、読んでいなくても楽しめるように努めております。
生きていて欲しかった。
只、普通に生きて、寿命を迎えて、死んで欲しかった。
それだけだったのに。世界は、それすらも許してくれない。
崖に連なる墓を見つめて、涙を堪えて、前を向く。
後戻り出来ないのは知っている。させてはくれないのも知っている。だから、前を向くしかない。
虚無に包まれても笑顔を絶やさない我等がヒーロー。それを貴方が、貴方達が望むのなら、幾らでも成ろう。それで救われるのなら、前を向いてくれるのなら。
…一緒に、前を向こう。それが一番良い方法なのだから。
だから捜し求めた。一緒に前を向いてくれる人を。
そして見つけた。ぶっきらぼうだけど優しい少年。
彼に好かれる事は如何やら難しかったらしいけど、寧ろその方が良いと思う時もあったから、不満なんて無い。
不満なんて無いのに。ねぇ、神様。
ある日起きた事件で昏睡状態に陥った彼。
何年もの歳月が経ち、漸く目を覚まし、一日たりとも看病を欠かさなかった自分を見て一言。
「…誰だ、手前」
がつんと、衝撃。
また、独りで前を向く。
後ろを見れば墓。山積みの墓。
___喪失感に溺れる。
俺は、何かケチをつけてやろうと、目の前の男をじっと観察するように見ていた。
ケチをつけてやりたかったんだ。仕方ないだろう。こんなに面白くない事はない。
俺たちの一人娘が連れてきた男だ。
幼い頃は「お父さんみたいな人と結婚する」と言っていた。……別に、そんな言葉を真に受けちゃいない。
だが、目の前の男は、何処となく俺に似た雰囲気を持っている。
歳の割に額が広かったり、押しの弱そうな人の好さそうな笑顔だったり、決して「イケメン」と呼ばれる部類ではない面構えだったり……。
妻と娘が席を立った隙に、そいつに尋ねてみた。「娘のどこが好きなのか」と。
男はしきりに照れながら、それでも迷う事なくきっぱりと言い切った。
「好きなところは色々ありますけど、一番は『ありがとう』と『ごめんなさい』がきちんと言えるところです」
ああ、くそっ! なんなんだこいつは!
それは俺たち夫婦が、娘が幼い頃から言い続けていた事だ。
誰かに何かしてもらったら「ありがとう」、自分が悪いと思ったら「ごめんなさい」。その二つは、聞こえるように大きな声で言いなさい。
俺と妻が、日常で大切にしている事だ。
それをこいつは『好き』と言った。
ああ畜生! 認めるよ! こいつは俺に似てる。
おかしなヤツなら反対も出来たんだが、反対する理由が見当たらない。
娘が外見ではなくきちんと中身を見て相手を選んだ事。その相手も娘の中身を見て好きになってくれた事。それらを心から嬉しく、そして誇らしく思うと同時に、「本当に娘は嫁に行ってしまうんだな……」という実感に、少なくない寂寥と喪失感を覚えるのだった。
お題『喪失感』
ツバメの暮らしは田んぼと連動しているみたい。
稲刈りが終わる頃、たくさんのツバメたちが電線に一列に並ぶ姿を見るようになる。
ピチクリピチピチ
会議でもしているのか。
そして第一陣、第二陣と過ぎていくごとに
あれだけビュンビュンにぎやかだった空からツバメの姿が消えていく。
電線に一列に並ぶ姿は学習発表会の終わりでのあいさつのよう。
そして空は静かな冬を迎える準備をする。
「喪失感」
何かを失って喪失感を得る
何かを手に入れて喪失感を失う
喪失感を失った喪失感を抱えて人は生きていくんだなあ多分知らんけど絶対
他の誰でもない
あなたと幸せになりたかったのに
ねぇ、どこへいったの、
_喪失感
知らない人間と手を繋ぐ君の笑顔が、
僕の網膜に焼き付いた。
怒りとも、悲しみとも違う。
空洞。僕の心に穴が空いた。
何かが出ていった気がした。
僕の事をなんとも思っていない視線が、
他人を見る目と何ら変わりない視線が、
僕の心を射止めて、深く抉るんだ。
君は僕の手の中に体温だけを残して去った。
君に貰った香水を未だに付けて虚しくなる。
君の手料理は今でも味を鮮明に思い出せる。
君が放った愛言葉は一言一句忘れていない。
目を開くと、言い知れぬ喪失感が襲いかかる。
君が僕の隣に居ないと思い知らされる。
君が僕以外に笑顔を向けているのを見せつけられる。
僕にとって君の存在は、
思っていたよりずっと大きなものだったらしい。
そして、君にとっての僕は、
替えの利く都合のいい人間だったみたいだ。
ーー今日、私の習い事のライバルが大会に行ったことを知った。(+_+)なんとなく、ショックだった。😵💨焦りでいっぱいになった。私も先生から、お便りもらっていたけど、スルーした。ライバルは、ちゃんと参加していた。(+_+)💧この操焦感を蒼さんに、打ちあけたかった〰️(>_<)💧でも、蒼さんは、蒼さんのこの間の歌枠のお話をリスナーさとされていた。夢中✨😍✨と、憧れ👀〰️💕と、いう声色をされていた✨いいなぁ〰️とか、よく言われていた。希望でいっぱいなんだ。水をさしてはいけない。
私は、蒼さんのファンです。自分の気持ちを堪えた。蒼さんに、挨拶をしてフェイドアウトした。凛先生から、メールが来た📮
新しい新人連れて来ても🙆♀️かな〰️と(゜゜;)とりま、保留です(>_<)
ちょっと、沈んでいたら、近くの子供さんが、母が、カメが見たい〰️(>_<)と泣いていたよ〰️と、教えてくれたり、カワイイ〰️(*>∀<*)✨🎵YouTubeのお世話になっている配信の方のホラゲーで、『さっき、海の中にちょうちんあんこがいたよ〰️(o^-^o)🎵』と、言われていた🎵(*>∀<*)✨ちょっと、はりつめた気持ちが柔らかくなった(o^-^o)🎵ありがとうございます(o^-^o)🎵私の物語も頑張りますネ✨φ(..)
やっぱり、私は、お化け👻が大好きかも(*>∀<*)✨🎵です(o^-^o)🎵
そういえば今日、耳鼻科の医師が『左眼の傷キレイになったネ(o^-^o)』と。😮!忘れていた・・・。先生、私マスカラも塗れるんだヨ🎵今は、ハロウィーンのメイク💄💋✨に、ガングロメイク💄を動画で見ているの(o^-^o)🎵 あの頃は、よく夜に天月さんの『カフェラテ』☕をよく聴いていなぁ〰️🎵。
終わり
喪失感
思い出をたくさん、キャンバスに塗り広げて。
重ねて、変えて、休んで、描いて。
ずっとずっと変わり続けて、それでもずっと楽しくて。
あるのが当たり前になったキャンバスに、
ある日、穴が空いた。最初の一筆も、気に入った色も、
どんどん崩れていった。いずれ興味も無くなった。
もういらない思い出の欠片を捨てながら思う。
また同じくらい愛せるキャンバスは見つかるかな。
祖母が亡くなった。
99歳だった。
もう記憶がないからと面会はさせて
貰えなかった。
元気な頃は笑顔が可愛い祖母で
一緒に田植えもやったんだ。
あれから10年も経ったのか
まだあの家で笑っているような気がしてならなかったが
棺桶に眠る祖母を見ると
何処か別の世界に行ってしまったのだなと思え
火葬場から骨になって出てくると
途端に得も言われぬ喪失感がやってくる。
骨を壷に入れるのも、祖母が居なくなった実感が
無理矢理にでも湧いてしまう。
この儀式がお別れに必要なように
日本の慣習は出来ているのだが
少し変えることは出来るのだろうか
喪失感
あなたは目を離したら
この真っ白なシーツに溶けていってしまいそうで
私は無意識に手を握った。
だから嫌だったんだ
大切や大事を知ることから逃げていたのは
目の前にある最悪の展開を避けたかったから
卑怯な私を、愚直に包んだりなんかするから
こんな、道端の塵を愛したりなんかするから。
「...馬鹿」
「へへ、ごめんね」
支えることも、伴走することも教えてくれて
いっそう命に未練が生まれて
それならば、開き直って謳歌してやろうと
震える足をなんとか前に、出したと、いうのに。
やっとのことで、呼吸をし直したというのに。
この期に及んで斜に構えたがる脳が邪魔で
「どうせ、の予想が当たっただけだろ」
などと宣う、脳にこびりついた天邪鬼を刺し殺す。
空っぽになった脳から、ぎりぎりと痛む胸から
持て余すほどの幸福が思わず噴出する。
真っ直ぐに、迷いなく私を見つめるあなたと目が合う。
ぼろぼろと泣きながら、決して視線を逸らさない。
もう二度と逃げない。
あなたが瞬きをする。
今、私達は察した。
終わりを学ぶあなたと、今世を受け止める私は
どちらからともなく、私達らしく、不器用に告げる。
「幸せだよ、この1秒が尊いよ、来世も一緒がいいよ」
「私も。約束するよ」
時に怯えてしまうほど素直なあなたは
あまりに綺麗に微笑んで旅立っていった。
上がった己の口角に気づく。
ああ、よかった。
私も笑い返せていた。
なんだろうこの喪失感
家族はもちろん友達もいる。
恋人もいるしそれなりに愛されている。
学校での地位もあるし成績だって上の方。
なのに私は何に対して喪失感を感じているのだろう。
私ってなんだろう。
なんか私は私がよく分からないな。
9/10「喪失感」
センパイがいなくなった。
センパイの後、俺の隣にぽっかり空いた穴。
それを見て俺たちはみんな泣いた。
センパイはいつも俺たちの少し前にいた。
はみ出しものと言われようと動じず、
小さな体で自分を貫き続けた孤高のひとだった。
センパイは俺たちより8つほど年上で、
この組織の立ち上げメンバーのうちのひとりだった。
立ち上げメンバーは全部で20人いたらしいが、俺は数人にしか会ったことがない。
組織が大きくなるにつれ、ひとりふたりと抜けていったそうだ。
そのうちみんな抜けてしまって、とうとうセンパイだけが残された。
抜けてしまったひとたちの後任を務めるため、俺と同期たちはやってきた。
俺たちはわれ先にと競って顔を出そうとした。
センパイはずっと変わらない姿で、俺たちを迎え続けた。
そして6年ほどかけてこの組織は完成を迎えた。
それから長い月日が流れ、この組織は非常に優秀な運営がされていた。
俺はセンパイの隣で、センパイよりも大きくなった。
センパイは隣の俺に度々こぼした。
オレみたいな古いやつがいつまでもいたってしょうがないのに、
オレもあいつらと一緒に抜けてしまいたかった、と。
だけどもう俺たちとセンパイはずっと月日を共にした。
最近大型新人を迎えた、総勢30人の仲間だ。
ずっとこのまま一緒だと思っていたのに。
センパイに異変が起きたのは繁忙期のころだった。
毎年、寒い季節の終わりになると、粘着質な取引先の大群に悩まされる時期が来る。
今年の相手は特に手強く、センパイは山を越えられなかった。
そのうちに白く輝くばかりだった姿に翳りがさし、
体の一部が働かなくなってしまった。
センパイを気遣ってか、組織には度々メンテナンスが入るようになった。
しかしその日は突然やってきた。
ある日のメンテナンス中。
何の前触れもなく、組織に激震が走った。襲撃か!?
痛みの後に、初めて感じる強い眠気が襲ってきた。
抵抗虚しく俺たちは皆一斉に意識を失った。
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
感覚が戻ってきた時、センパイはいなくなっていた。
空っぽになってしまった、センパイがいた場所。
大きな喪失感が組織を包んだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「お疲れ様でした。無事に抜けましたよ。」
「あぃあとうございぁす」
ティッシュに包まれて掌に乗せられたとても小さな歯。
虫歯になってしまって少し汚いが、今までよく頑張ってくれたものだとしみじみ見つめる。
1本だけ子供のうちに抜け切らなかった乳歯をとうとう抜いたのだ。
「持って帰りますか?」
「いらないかな…」
あ、でも、小さい時に抜けた歯、カーチャン集めてたな…
実家にまだあるかも。
「やっぱりください。昔の乳歯と一緒にしときます」
歯物語~fin~
9月10日 お題:喪失感
火をつけ煙を見る
毎年来ているけど
徐々に思い出せないことも増えた
なんとなく大切な人だったんだろう
いや、大切な人であって欲しい
私の生きがいは特にない
ただここに来る度に
自分の価値を与えられた気分になる
きっとそんな人の全てを覚えていたら
気がおかしくなっていたかもしれない
煙が消えるまでの時間
ゆっくり日向ぼっこをするように座る
あなたが聞いてるかも分からないけれど
「そろそろ迎えが来るかもしれん」
そう言って去って行くのが
毎度の挨拶だ
私の中のあなたが零になった時
また一からあなたを創ってください
《喪失感はあなたへの想い》
縋りついて咽び泣きたい衝動があったはずだった。
自分の真ん中を通る芯に穴が空いている感覚。地に足をつけて生きているはずなのに、今にも膝から崩れ落ちそうな瞬間が絶え間なく繰り返される。
前へ進むことも、立ち止まることも、振り返ることも怖かった。立つことも、座ることも、横たわることも。目を開いて、耳を澄ませて、息を吸って吐いているこの状況が許せなかった。
大きな悲しみに明け暮れていたはずだった。
何もかもがどうでもよくなった。
聞こえてくるニュースも、SNSの文字の羅列も何の情報も頭に入ってこなくなった。
自分が失ったのは、かけがえのない大切なものだけだった。
それなのに、今の自分には何もなかった。感情も感覚も感性も。何もかも抜け落ちて、中身空っぽの人を模った物体だった。ふとした瞬間、君の影を追っては無意味だと後から気づいて、涙が頬を伝うだけの怪しい物体でしかなかった。
もう人間に戻れる気がしなかった。
『喪失感』
隣の席に座っていた女子生徒のことを、私はよく見ていました。
意図して見ている訳でも、その生徒に何か変な特長があった訳でもないのですが、気付いたら、その生徒が視界に入っているのが、私の日常でした。
艶のある黒髪をおさげにし、眼鏡をかけた彼女は地味と言えば地味でしたが、飾り気のないその姿には、野暮ったさより雪の中に咲く一輪の花のような、そんな美しさがありました。
文学少女というあだ名が付いていた彼女は、誰とも言葉を交わすこともなく、笑顔を見せることもなく、休み時間はいつも本を読んでいました。
いつも人に興味が無さそうに、冷めた目で教室を俯瞰しているような、そんな印象を受けました。
彼女を冷淡でお高く止まっていると表現する者も居ましたが、私は、彼女のことを誰にも汚されることのない高嶺の花だと思いました。
彼女とは高校の三年間同じ教室で過ごしましたが、席が隣になったことも、話したことも、三年生の夏頃になるまで、一度もありませんでした。
彼女が積極的に人と関わろうとしなかっただけでなく、私が、眺めるだけで彼女に手を伸ばすことを躊躇っていたのもあります。
転機が訪れたのは、夏休みに入った頃でした。
たまたま近所の本屋を訪れて、興味を持った本を取ろうと手を伸ばした時、偶然、彼女の手に触れてしまったのです。
少女漫画のテンプレートをそのまま流用したような展開に、しかし私はしっかりと動揺してしまって。
別に、何かおかしなことをした訳ではないのに、彼女の手に触れてしまったことが何故か重罪のように感じて、私は慌てて言い訳をつらつらと吐きました。
明らかに挙動不審になった私を前に。
彼女はくすくすと笑いました。
今まで冬のような雰囲気を纏っていた彼女は、笑うと存外幼くて。
そこには春のような温かさがありました。それに私は、また見惚れてしまったのです。
その日から、彼女と私の交流が始まりました。
時折その本屋で会えばお互いにオススメの本を紹介し合い、学校で顔を合わせれば挨拶をするような。
連絡先を交換なんてことはなかったし、友達なんて名前の付いた関係でもありませんでしたが、それでも、私は楽しかった。
触れることはなくても、近くに寄ることは出来た。
そのことに、私は満足感を抱いていたのです。
卒業するまで、その充実した日々は続きました。
次に、会ったのは。
「新郎新婦の入場です」
マイクを通して聞こえた女性の声で、私はハッと意識を現実に戻しました。
辺りに響く拍手の音を、まだぼんやりとした頭のまま聞いて、流されるままに自らも手を叩きました。
私の拍手の音は随分と弱々しくて、きっと、周りの人間に全く聞かれていなかったでしょう。
そう、彼女から、手紙が届いたのは、二ヶ月程前のことです。
それは、結婚式の招待状でした。
誰から住所を聞いたのか。
卒業後、全く関わることのなかった彼女は、私に手紙を送ってくれたようでした。
式場には、ちらほらと学生時代に見たことのある顔が揃っていて、彼女の交遊関係は、私が思っていたより広いことを、初めて知りました。
扉が開いて。
見慣れたおさげの少女は、どこにも居ませんでした。
眼鏡を外した顔も、化粧が施されていて、まるで別人のようでした。
しかし、かつて見た時と変わらなかったのは。
あの春のような笑顔を目にして、私は。
純白のドレスに身を包んだ初恋の彼女は、とても、幸せそうでした。
『喪失感』
鏡面に手をあて
冷えていく体温を感じている
僕だけを見ている君
君だけ見つめる僕
「erase」
あなたに近づけない
あなたが見えない
あなたは…
そっと抱きしめる空間は
喪失感を与えるだけの白い地獄に変わり果てた
夏の終わりの父の郷
山々深く 田は広く
一本道は変わりなし
さみしく車はひた走る
秋の初めの父の郷
家々朽ちて 店も無く
要らぬ要らぬと哀しくも
風車ばかりが増えていた