縋りついて咽び泣きたい衝動があったはずだった。
自分の真ん中を通る芯に穴が空いている感覚。地に足をつけて生きているはずなのに、今にも膝から崩れ落ちそうな瞬間が絶え間なく繰り返される。
前へ進むことも、立ち止まることも、振り返ることも怖かった。立つことも、座ることも、横たわることも。目を開いて、耳を澄ませて、息を吸って吐いているこの状況が許せなかった。
大きな悲しみに明け暮れていたはずだった。
何もかもがどうでもよくなった。
聞こえてくるニュースも、SNSの文字の羅列も何の情報も頭に入ってこなくなった。
自分が失ったのは、かけがえのない大切なものだけだった。
それなのに、今の自分には何もなかった。感情も感覚も感性も。何もかも抜け落ちて、中身空っぽの人を模った物体だった。ふとした瞬間、君の影を追っては無意味だと後から気づいて、涙が頬を伝うだけの怪しい物体でしかなかった。
もう人間に戻れる気がしなかった。
『喪失感』
9/10/2024, 3:41:08 PM