私は高校生ごろから通学・通勤で音楽を聴いている。お気に入りのアイドルやアーティストの曲をCDから取り込んで、好きな曲だけに厳選し、毎日繰り返し聴いている。相棒はアイポッドタッチで、ここ二、三年でようやくブルートゥースイヤホンにも慣れてきた。
そんな私は最近出勤時にとてもイライラする。
なぜか、何も押してないのに次の曲へ勝手にどんどん進んでいくのだ。酷い時は五曲連続で歌い出す前に移り進んだ。
私は最初イヤホンの調子が悪いのかと疑った。でも家では問題なく使えている。ではサポート終了して久しいアイポッドタッチか、ギガパンパンのメモリーか。原因が不明のまま曲は次々と変わっていく。
その結論は突然降って湧いて出た。
次々と変わっていくこの現象が起きる周りの環境。
今日は風が強かった。この前はビル風に吹かれた。その前は慌てていて風を切るように走った。
そうだ、風だ。
風を強く感じる日がやたらと次へ進んでしまう。
風がイヤホンを勝手に長押しして操作してしまっていたらしい。その考えに至って、私は納得した。そう、全ては風のせいなのだ。
じゃあ何であの時、電車で揺られていたのに勝手に操作されていたのだろう。
『風のいたずら』
黒く染まったことも
赤く痛みを伴ったこともない
無垢な涙には二度と戻れない
そんな人生を歩んできました
『透明な涙』
大慌てで新幹線に飛び乗った。
外の冷気で冷え切っていると思っていたけど、空調で暖をとっても一向に手の震えが止まない。焦りと不安でとにかく落ち着かない。無理矢理目を瞑って深呼吸を繰り返す。それでも嫌な予感が頭に浮かんで目を開けてしまった。
早く。
新幹線の速度は変わらない。
早く、早く。
握り締めたスマホが手汗で滑り落ちそうになる。
早く。
何の前触れもなかった。それまで音沙汰もなかった。突然危篤だと連絡が来た。
元々物静かな人だったけど、最期までそっといなくなりそうだなんて。
じわじわ目に涙が溜まる。
まだだ。まだ何もわからない。
自分に言い聞かせる。
間に合え。
大好きな貴方の元へ向かう車中は、生きた心地がしなかった。
『そっと』『あなたのもとへ』
想像を超えてきた時
果たしてそれを文字に書き起こせるだろうか
『まだ見ぬ景色』
「なぁ、もう一度。もう一度だけでいいから」
あの大きいステージに立たないか
広いコートで試合したくないか
太陽の下を歩いてみないか
私と苦楽を共にしませんか
また物語を書かせてくれませんか?
『あの夢のつづきを』