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※「鳥のように」「時を告げる」はシリーズ物です。
※ 今作もそのシリーズに当たりますが、読んでいなくても楽しめるように努めております。





生きていて欲しかった。
只、普通に生きて、寿命を迎えて、死んで欲しかった。
それだけだったのに。世界は、それすらも許してくれない。
崖に連なる墓を見つめて、涙を堪えて、前を向く。
後戻り出来ないのは知っている。させてはくれないのも知っている。だから、前を向くしかない。

虚無に包まれても笑顔を絶やさない我等がヒーロー。それを貴方が、貴方達が望むのなら、幾らでも成ろう。それで救われるのなら、前を向いてくれるのなら。

…一緒に、前を向こう。それが一番良い方法なのだから。



だから捜し求めた。一緒に前を向いてくれる人を。
そして見つけた。ぶっきらぼうだけど優しい少年。
彼に好かれる事は如何やら難しかったらしいけど、寧ろその方が良いと思う時もあったから、不満なんて無い。
不満なんて無いのに。ねぇ、神様。

ある日起きた事件で昏睡状態に陥った彼。
何年もの歳月が経ち、漸く目を覚まし、一日たりとも看病を欠かさなかった自分を見て一言。

「…誰だ、手前」

がつんと、衝撃。
また、独りで前を向く。
後ろを見れば墓。山積みの墓。

___喪失感に溺れる。

9/10/2024, 4:15:14 PM