『君の奏でる音楽』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
声色となんら変わりない。
声が音符になり
声ではないもので
君が話しかける。
実に君らしい。
五線譜に描かれる
君らしい音色を
君の声ではない声で
私は酔いしれる。
–君の奏でる音楽–
「ボスって、楽器経験とかあるんですか??」
「俺が器用に楽器なんか扱えるように見えるか?」
「ですよね〜、わかってました」
「そう言われると、くるものがあるな……」
「でも、ボスが楽器演奏してるところ見てみたいんだよな〜………サックスとか吹けたらかっこいいんだろうなぁ〜」
(楽器か……こんな歳だけど試すのも悪くないかも)
・1『君の奏でる音楽』
駅構内でストリートピアノを弾いている男性がいた。
かなり上手いひとなんだろう。たぶん。
道行く人が足を止めて聞いている。
ピアノのこと、というかクラシックもさっぱりな自分でも立ちどまってしまった。
【続く】
心臓から全神経を通って指先に伝わる痺れ
貴方の音楽に恋をした
「一日惚れ」をこんなにも鮮やかに歌う貴方は、どんな恋をしてきたのかしら
閉じた瞳の奥には誰が映っているのかしら
これが一目惚れなのね
嫉妬、羨望、絶望
全部、貴方の音楽に教わったの
#君の奏でる音楽
君の心臓は、ベートーベンも弾けない。
金で、顔面を整備する嬢子と、わたしが腰掛けるコンクリート道路は、ロクに“踏む”人間もない、という点から同等だ。
コンクリート道の左方は、田んぼのために落窪んである。
わたしは、その、30センチホドある窪みへ足をつっこんでいて、田んぼから発せられる生ぬるい温度と、暑くうるさいカエルの鳴き声を、浮いた足裏へ感じていた。
「あわい初恋、消えた日は……
雨がシト、シト、ふっていたぁ……」
さめざめと歌う。
カエルがほとんどかき消すし、このコンクリート道は、車が通れるほど太くなく、自転車が通るほど先になにかある訳でもない。
わたしは、田んぼの水面を見つめながら、足を揺らした。
「幼い、わたしは、胸こがし……
慕い続けた、人の、名は……」
別段、この歌に思い入れがある訳では無い。
気がつくと、頭の中に流れているのが、この曲であるというだけだ。
ふと、田んぼの水面に波紋が広がる。
タニシが跳ねたんだな、そうに違いないな。
飛び降りて、ジーンと足が響く。
その余韻に歩けずいるわたしを、自転車で追い越しながら、君は笑った。
「運動神経が悪い人だな、とか、
思われてんだろうな」
君が自転車で下って行った坂を、わたしは登る。
四方八方から飛ぶセミの鳴き声。
耳に、腕に、足にまでまとわりついて、だるい。
汗がジンジン湧いてきて、タポタポ、山道の傾斜を滑る。
滑って、すべって、山を降りて、君の自転車に踏まれて、散って、って、暑さで脳までうだってんのかな。
だんだん、フラっとしてきて、セミのやんちゃな声が遠くなっていって、フラフラして、すごーくうがうがして、次には目の前に、地面があった。
倒れる。
フカッとベッドが反発して、わたしは、シーツの底から浮いてくる。
「連絡先ゲットォ……っ!」
わたしの手には、携帯。
モゾっとベッドでもがき、枕に這い寄って、頭をのせた。
なんて送ろうかな。
『佐々木です』
「佐々木です……」
声に出して読んでみて、眉間にシワをよせた。
『今日連絡先もらった、佐々木です😀‼️』
「今日連絡先もらった佐々木です……!」
すぐに、×ボタンを押し込む。
『こんばんわ、佐々木です。よろしくね』
「こんばんわ、さ……ないな」
×ボタンを連打して、文字ボックスがクリーンになると、またわたしの頭も真っ白になる。
エアコンから出てくる冷たい空気、脳を冷やすにはまだまだぬるい。
「あ」
携帯に目を落とすと、いつのまにか、君から連絡来てた。
メッセージと、その横の既読、時間表示と、携帯の左上にある時計を見比べる……
「はずっ……っかし!」
なにを送ろうかって、試行錯誤してたのが全部バレたみたいな、顔の赤さだったと思う。
今のわたしの顔も、熱を持っていて、髪は水かぶったみたいにへばりついている。
暑くむさ苦しい顔で、涼しい恋の歌歌ってんだもんな、妖怪だな。
わたしが歌うのを止めても、カエルはやめない。
はじめから、聞こえてないみたいな。
ため息つくのも億劫で、足をコンクリートに上げるのも億劫で、なにもしない自分も億劫だ。
足元を見て、脱げそうなサンダルを見つめて、それが時々ぼやけては、瞬きすると、田んぼの水に波紋がある。
どう思われてたんだろう。
君の心臓は、ベートーベンも弾けない。
だろうな。
「んへ、っフフフ……」
“君の奏でる音楽”は本当に綺麗だった。
綺麗「だった」。ピアノを弾いている姿をみて、美しい、私もあのようになりたい。君と同じような時を、君の居ないどこかでも、あの音と共に過ごしたいと思った。触れたこともなかったピアノに触れて、半年かけて君が弾いてた曲を弾けるようになった。けれどやっぱり、君が弾く音には敵わなかった。
もう君に恋をしていない今からすると、君が弾く音に敵わなかった敗因は旋律的な問題ではない。「君が」弾いている、ということが大切だったのだ。当時の私には、あまりにも「君が」美しすぎたのだ。
ただ、今はそんなことを、微塵も思っていない。私の方が遥かに上達し、大好き「だった」君のおかげで、更なる高みを志し、君に惚れ直したあの日から、鍛錬を築き続けている。
俯きながらギターを弾く姿
張ってる感じでは無くボソボソと歌う声
君の身体全てで奏でられる音楽が好き
XXXX年X月13日
霧が薄くなったため時計塔の探索に向かう。
周囲の建物より一際大きく立派な建物だ。この廃都がまだ機能していた時分から由緒ある歴史的建築物として有名で、低階層は上流階級向けの大劇場として使われていたという。人の消えた廃都にあってなお荘厳な雰囲気を漂わせる時計塔の、四方に掲げられた大時計は全て3時47分を指して止まっている。その時間に一体何が起きたのだろうか。
暫し外観を観察した後、私は内部へ足を進めた。
時計塔のエントランスはとても華やかだった。カーペット敷きの床から伸びる石造りの柱には均一な彫刻が刻まれ、その柱を追って見上げれば高い天井に緻密で美しい天井画が描かれている。
美術館を思わせる設えに圧倒されながら歩く。暫く進むと重厚な扉に辿り着いた。ここが大劇場の入り口らしい。その隣の壁にポスターが一列に掛けられていた。褪せてしまって詳細はわからないが、恐らくは当時劇場で上演されていた演目のポスターであったようだ。目を凝らすと辛うじて文章の一部が読み取れた。
『君の奏でる音楽』……演目のタイトルだろうか。
今日も聴こえてくる。優しく儚いようで強い芯のある君の奏でる音色が。
私はいつも通りの窓側の一番後ろの席でセミの声を聞きながら、隣の音楽室から漏れ聞こえる、君の奏でるピアノの音色を耳にし目を覚ました。
「あぁ、もうこんな時間か」
放課後になると聴こえてくるこの音色は、もはや、私にとって帰りの時間を知らせるチャイムになっていた。ふと、まわりを見渡してみる。静まり返った教室には私以外残っている人はもう居なかった。窓の外はもう、あたたかい黄色に染まっていた。寝ぼけ眼のまま、ゆっくり立ち上がると鞄を手にして出口へと向かい歩みを進めた。
しかし、私は歩みを止めた。
帰るには音楽室の横を通らなければならない。なるべく早く通り過ぎようと足早に昇降口へ向かった。
この日も、君の音色を耳に目を覚ました。また、一日が終わりに近づいたことは言うまでもない。そこまで急いで帰る理由も見つからなかったので珍しくはあるが、少しこの音色に包まれたこの瞬間を楽しもうと思った。
だが、今日はいつもとは少し違った。私は君が一度、ピアノ触れたらそこから三十分いや、一時間はゆうに超える時間ピアノとまるで対話するかのように弾き続けていることを知っている。それは、昔はいつも聴こえるこの音色を奏でる君に興味があった。その頃、どんな人が弾いているのか興味本位で音楽室から出るのを待ってみたりもしたからだ。
しかし、今日はほんの五分ほどで音色がぱったりと途絶えてしまったのだ。君の心地よい音色に包まれることに期待していた私は、少し残念に思いながら教室を後にした。音楽室の横を通りながら横目で君はもう居ないことがわかった。
「何か、用事でもあったのだろう」
この時は、特に気にしなかった。
それがいけなかったんだ。
あの時、おかしいと思っていれば、、、、
君の奏でる音楽
今音楽を始めるなら楽器は何を選ぶか?
ギーコギーコ
大抵の人が好きな音楽のジャンルで選ぶだろう。
キィーーー!
しかし僕は言いたい。
「練習しやすい楽器を選べよ!!」と
ワンルームのアパート、都内駅近で月3万。内装も綺麗で築5年。二階建ての角部屋に僕は住んでいる。住人は僕含め2人の寂しいアパート。しかし当然大島てるにも載っていない。空き部屋が多い理由は大家のプロモーション下手が理由だろう。
だが違う理由があったと、入居して気がついた。
二階に住む1人の住人が一日中ヴァイオリンを弾き続けるのだ。運の悪いことに隣の部屋で。夜だけはやめさせて欲しいと大家に言うも、変化の一つも見せない。
それはなぜか。
隣人は大家の姪なのだ。
つまりこのアパートはハズレ物件である。
「頼むから寝かせてくれ!」
いつもなら耳栓をして寝るのだが、今日は何だか寝付きが悪い。明日の予定に胸をざわつかせる自分が信じられない。
ただ、明日の不安が頭をよぎり胸が苦しくなる。
さらに耳栓をしても聞こえる音が胸をむかつかせ、苛立ちは頂点を迎えた。
ドンドン
強く壁を叩く。
きぃーこきぃーこ
「小さくなってもうるさいんだよ!」
声を荒げても音は止まない。
僕は布団から出るとサンダルを履いて、隣人の扉を叩く。
「夜中までやる必要はないだろ! 頼むから辞めてくれ」
刹那、夜は静けさを取り戻す。
安堵して部屋に戻ると扉が開いた。
今回みたく扉を叩くことは数回あった。しかし、そのいずれも音が止むだけで扉は開かなかった。それゆえ僕も足を止めてしまう。
開いた扉を見つめ、ふと思う。
そういえば隣人の顔を見たことがない。その姿すら見たことがなかったのだ。そのため直接文句を言う機会もなかった。
しかし、今その機会は訪れた。
だから僕は踵を返し、隣人の部屋を覗く。
目つきの悪い顔だ。染めムラのある長い栗毛はボサボサ。雑巾のようなボロ切れを着て、右手には忌まわしきヴァイオリン。左にはそれを弾く弓を持って世闇を見据えていた。
「……何」
鈴の音を転がしたような声。
「……」
「だから何」
戸惑う僕に再度問う。
「音下げてやったでしょ」
僕にその声は聞こえていなかった。
彼女の先——彼女の部屋に目を奪われていたからだ。
山のようにトロフィーが捨ててある。部屋には吸音材が貼られ、無機質な部屋。小さなアンプと楽譜立てが置いてあるのみ。
一目でわかる。
彼女はここで生活をしていない。ただ練習しているのだ。
そこで扉が閉じられた。
彼女は部屋の前にいる。
「部屋覗かないでくれる?」
「あ、ごめ——」
「で、なに?」
彼女の顔を見て更に後退りした。
「え? なに?」
「いや、何でもない——」
小首を傾げる彼女を横目に僕は自分の部屋に戻って、扉の前に座り込んだ。
気づいてしまった。
彼女は僕と同世代の天才ヴァイオリニスト、村田ひな。明日のコンクールで戦うライバルであり、常に負け続けた因縁の相手。
そんな彼女は僕の隣にいた。
そして僕は知ってしまった。
休む暇なく毎日弾き続ける彼女の姿を——
頭にそれが過ぎると背中に冷たい汗が流れる。
直ちに自分のヴァイオリンを構え、一心不乱に弾き続ける。
彼女の奏でる音楽が耳に入らないよう——汚く下品に。
ふと眩しさを感じて目を開けた。
すると昨夜閉めた筈のカーテンが既に開けられ、無作法にも窓からようようと日が差し込んできた。
朝から元気な日差しの挨拶に負け、仕方なく体を起こす。
まだ寝ぼけている体を起こそうと、大きく息を吸い込むと、空気だけでなく、香ばしい匂いが鼻孔をくすぐった。
その匂いに促され、覚醒してきた体が空腹を訴えてくる。
芳しい匂いが手招く方へと進んでいくと、心地良い一定のリズムを刻む包丁の音が聞こえてきた。
それに合わせてグツグツと鍋の煮込む音がビートを刻む一方で、フライパンの上で踊る食材がスタッカートを効かせながらクレッシェンドをかけてくる。
時々、調味料の柔らかなピチカートが、コンロが奏でる静かなトレモロに色を与え、盛り上がりが真骨頂の跳ねる食材たちを引き立たせていく。
食材の音色がデクレッシェンドをかけ始め、そっと舞台袖である皿の方へとよけられると、軽やかで楽しそうなシェフの鼻歌が聞こえてきた。
楽しく奏でられていたシンフォニーを指揮していた菜箸がコトリと置かれると、盛り付けられた料理らが堂々たる顔ぶれで朝食の献立を告げてきた。
「おはよう」
次の演目は、僕と彼女が指揮を取ることになりそうだ。
────【君の奏でる音楽】
君の奏でる音楽
休みの日の夕暮れ
毎日の仕事疲れで
僕は何もしたくなくて
鬱々とした感じで
ただ蹲っていた
あの日転けて泣かずに
我慢してる少年みたいに
ふと一人になった心に
君の奏でる音楽が
僕の心を埋めた
君の一生懸命さが
僕の心震わせた
君はいつも明るくて
パワーもあって
僕とは違うなって
でも君と少し話してみて
君も大変だと知った
君の明るさやパワーは
ねぇ どこから来るの?
でもある日君は
僕に呟いた
自分の価値が分からないと
君は悩んでいた
生きていてくれるだけでいいんだよ
僕はそれしか言えなかった
情けない程僕は弱くて
それしか言えなくて
でも僕はいつしか
君の支えになりたいと
思ったんだ
あの日聞いた
君の奏でる音楽が
僕には心地良かったから
貴男が時々口ずさむメロディ。
残念なことに毎回ちょっとずつ違うので、聴いたことがあるような気がするけど確信が持てなかった。
初めてその事についてきいた時、貴男は「え?」って驚いて「歌ってる?」って逆に聞き返されたっけ。
「うん、ホントに時々ね。歌詞ってあるの?」私がきくと、「あんまりよく覚えてないけど、最後が『きっと明日はいい天気』っていうんだ。」
「もしかして、『○○(曲名)』?」私には心当たりがあった。幼稚園で習った曲だ。でも貴男は「タイトルもわかんない。」って顔を曇らせた。
私がサビのところを歌うと、貴男は「あぁそれ!」と笑った。それから保育園で習ったこと、その頃音痴を自覚したことを楽しげに話してくれた。
でも今の貴男がこのメロディを口ずさむのは、つらい時やこらえなくちゃいけない時だって私は知ってる。私も同じだから。
人にきかせるのではなく、自分に言いきかせるように、小さな声で口ずさむ。
いつか2人で幸せになって、何のうれいもなく、子供の頃のように思いっきり大声で歌えたらいいね。
「きっと明日はいい天気」って。
お題「君の奏でる音楽」
君の奏でる音楽
やっと見つけた。
そう言われて、は?、何言ってんだ?この不思議な感じの人物は、と、身構えてしまった。
男か女か、若いのか年寄りなのか。このクソ暑いのに全身マントをかぶっていて姿がわからない。
やっと見つけた。共に来い。
いやいや、子供だってついて行かないだろう?
少しずつ後退りしながら逃げ場を考える。
ジリジリと間を詰めてくる。周りはなぜか違う空間のようにこの危機的状況には無関係だ。いや、見えてない。
腕を掴まれた。
イヤだ!行きたくない!
なぜだ?なぜ、自分なんだ!
フードが外された。知っている。また会おうと言ってそれきりだった君。でも、君は何者?
早く歌うのよ!私の音で!
聞き慣れた君の音だ。歌えって、この状況で?
世界を救うのよ!私の音だけでは足りない。あなたの音がいる。早く、帷が降りる。
君の奏でる音楽に合わせて歌う時、世界が終わるって言ったじゃないか!救う?
暗くなってきた。歌わないからか?
終末の音を打ち消してもまだ先があるのに。
君の音に誰かが合わせて音が増えていく。
君の奏でる音楽は生きる喜び、生きる意味、共にいたいと差し出す手。掴むよ。共に生きよう。
君の奏でる音楽
人の一人ひとりはアリアだ。
家族だと室内楽のようだし、大きな集団だとフルオケみたいだ。
だから調和して晴明に鳴り渡るとき感動が起こる。
世界はまさに鳴っている。いろいろな響きで。
どんな響きを自分の傍らに置きたいか、自分はどんなアリアをうたいたいか、みんなでどんな交響楽を鳴らしたいか、考えてみる…なんてことを世界中の一人ひとりが皆やれば、一日で世界は変わるだろう。…けど、人は皆さまざまだし、それは尊重されなければならないし、必要なことは守られなければならない。
響きはちゃんとある。足りなくなどならないし、消えたりしないから手遅れになどならない。だからこそ、君は君をうたいあげろ。自分自身の響きを深く探して見つけて、君にしか奏し得ないアリアであれ。存在の組曲が美しく顕れてくる。
『君の奏でる音楽 』
放課後の音楽室。
どこか寂しげで落ち着くピアノの音。
まるで私みたいで、いつの間にか毎日放課後に行くようになった。
誰が弾いているのかも分からなかったが、こっそり端の椅子に座り聞いていた。
君の奏でる音楽は、私の救いにいつの間にかなっていた。
憂鬱な日も晴らしてくれて、死にたいと思った日ももう少し生きようと思えた。
ありがとう。
ピアノの隙間から見えた君の顔。
大人になってもおばあちゃんになっても、決して忘れないと思う。
#12 【儚い】
あの頃、一生懸命に
世界に向かって叫んでいた
おれはここにいるぞ
おれはここにいるぞって
お前をみてるぞ
お前を忘れてないぞって
そうした日々の記録を、自分でもネット上に作ったサイトにつけていたし、影響を受けてくれた知らない誰かも、ネット上に記録してくれていた
ねぇ、あれから何年経ったかな
たくさんの記録は
ただの文字の羅列になってしまって
もうそこには何も無いんだよ
まっくろのページしかない
あんなに一生懸命、異端であることを
叫び続けて
アイデンティティにして
傷を敢えて見せつけて
そうして生きていたあの姿が
もうほとんど残っていないんだ
デジタルなんて大嫌いだって思ったよ
わたしの記憶の中の、あなたのことは今でも鮮明に覚えているのに。
君の奏でる音楽
あなたの音は心を揺さぶるものがある
と言われたのは
中学生の時
部活の尊敬する先輩から言われた
最後の一音が
消えるか消えないかで拍手された時
これが心を揺さぶるってことなのかな
と思ったのは大学生の時
最近
全然弾けていないけれど
そろそろ向き合おうかな
久々で指は動かないだろうけれど
麦わら帽子
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君の奏でる音楽は、いつも力強くて、優しくて、明るくて、温かい。まるで君を表すようで、とても好きだよ。空に響いた音を聞いて、たくさん仲間が集まって、みんなで楽しむ。そんな音楽。
私が奏でる音楽は、いつも響いて、厳しくて、暗くて、冷たい。まるで私を表すようで、とても嫌いだ。地下に響いた音を聞いて、たくさん妖魔が集まって、みんなを引きずり込む。こんな音楽。
君が引っ張ってくれる時には、私も明るい音を奏でてみんなにひかりを届けるけれど、やっぱりひとりで奏でる音は、闇の中に消えてゆく。
ひとりでいるのは寂しいよ。暗い道では苦しいよ。
また、いつか、みんなで一緒に奏でる日まで、私はひとりで闇をつくるから。
みんなはひかりで包んでね。
我が家の犬は、散歩やごはんなど、楽しいことを待つ間、明らかにダンスをする。後ろ脚2本で立ち上がり、前脚をケージの木の枠にかけ、2、3回縦にジャンプした後、左右の後ろ脚を交互に浮かせながら左右の前脚をケージの木の枠に交互に擦り付け、爪と木が触れてシャカシャカと音を立てる。トントントン、シャカシャカ、シャカシャカ、シャカシャカ、シャカシャカ、と特定のリズムを刻む。
誰かが教えたわけではないが、うちに来たときにはすでにこのダンスを踊っていた。
このダンスを踊るのは、「もうすぐ外に出られる。だけどもう少しまってなくちゃ。」というように、何か楽しいことがもうすぐありそうだけど、それはもう少し先のことのようだ」というようなシチュエーションに限られているようである。
シャカシャカと君が奏でる音楽でココロの翳り一時忘れる