“君の奏でる音楽”は本当に綺麗だった。
綺麗「だった」。ピアノを弾いている姿をみて、美しい、私もあのようになりたい。君と同じような時を、君の居ないどこかでも、あの音と共に過ごしたいと思った。触れたこともなかったピアノに触れて、半年かけて君が弾いてた曲を弾けるようになった。けれどやっぱり、君が弾く音には敵わなかった。
もう君に恋をしていない今からすると、君が弾く音に敵わなかった敗因は旋律的な問題ではない。「君が」弾いている、ということが大切だったのだ。当時の私には、あまりにも「君が」美しすぎたのだ。
ただ、今はそんなことを、微塵も思っていない。私の方が遥かに上達し、大好き「だった」君のおかげで、更なる高みを志し、君に惚れ直したあの日から、鍛錬を築き続けている。
8/13/2024, 5:41:13 AM