XXXX年X月13日
霧が薄くなったため時計塔の探索に向かう。
周囲の建物より一際大きく立派な建物だ。この廃都がまだ機能していた時分から由緒ある歴史的建築物として有名で、低階層は上流階級向けの大劇場として使われていたという。人の消えた廃都にあってなお荘厳な雰囲気を漂わせる時計塔の、四方に掲げられた大時計は全て3時47分を指して止まっている。その時間に一体何が起きたのだろうか。
暫し外観を観察した後、私は内部へ足を進めた。
時計塔のエントランスはとても華やかだった。カーペット敷きの床から伸びる石造りの柱には均一な彫刻が刻まれ、その柱を追って見上げれば高い天井に緻密で美しい天井画が描かれている。
美術館を思わせる設えに圧倒されながら歩く。暫く進むと重厚な扉に辿り着いた。ここが大劇場の入り口らしい。その隣の壁にポスターが一列に掛けられていた。褪せてしまって詳細はわからないが、恐らくは当時劇場で上演されていた演目のポスターであったようだ。目を凝らすと辛うじて文章の一部が読み取れた。
『君の奏でる音楽』……演目のタイトルだろうか。
8/13/2024, 5:40:00 AM