『君の奏でる音楽』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
君の奏でる音楽
君はヴァイオリンを習っている。部活終わりの静まり返った教室でたまに聞こえてくる旋律の音。君だとすぐにわかる。今日こそはとドアノブに手をかけるけれど、やっぱり勇気が出ないんだ。いつも君の奏でる音楽を聴いている。
どうしたの?
いや、まあ、今日も1日平和やったな~って。
なにそれ。
そうやって君は、ハハハと笑う。
そう言えばさっきさー、みさきがさー―
そうやって君は、僕の前で他人の話をする。
ねぇ、聞いてる?
聞いてるよ、それで?
ウ~ン、何話したっけ?
忘れちゃったの?こんな短時間で?
いま、アホや思ったでしょ?あおいはすぐに顔にでるからなー
ほら、また笑った。やっぱだめだわ。撫で上げたくなる、その少し癖っ毛な黒髪。
もう、みんな帰っちゃったねー、やっぱ人気がなくなると冷たくなるよね。
静まりかえった教室には、オレとこいつ以外誰もいない。校庭では野球部が相手校との試合で盛り上がっている。今年の夏はとにかく熱い、全国的に例年の記録を大きく上回る可能性があるらしい。こうして、教室の窓辺で涼もうとしてもかえって熱気と陽射しがからだの内側から汗で直ぐにワイシャツをダメにする。
フンフーンフフンフーン
吸収物がない分ななみの鼻歌はよく響く。僕もそのメロディーに肩を踊らす。
外には聞こえない僕らだけの秘密の音楽会。
蝉しぐれと試合の声援がちょうどいい塩梅で透明な防音室、もう何も気にしたくない。
まだ夏は始まったばかりなのに、ピークさながらのこの瞬間は、もうこれ以上これ以降に期待できないし、期待したくない。
そしてもう少しで終わってしまう、この音楽室、涼しく軽やかなメロディーが、僕のからだを内側から満たしていく。
あめのみ
君の奏でる音楽
毎週金曜日の夕方ごろ。僕の家からピアノの音が聞こえてくる。
明るく楽しい曲。暗くて寂しい曲。眠くなるようなゆるやかな曲。
いろいろ種類は違えど、君の奏でる音楽。
「あら、また来たの?」
僕は君の足元に丸くなり、音楽を聞くのもいつもの事。
「今日は猫のあなたにぴったりな曲を弾いてあげる」
毎週金曜日の夕方ごろ、僕のためだけの君の演奏会が幕を開ける。
僕は小説を投函してますが
構想にいきづまった時
必ず音楽に頼ります。
音楽から構想が生まれる事も
あります。
音楽って凄い。心を癒やし
脳みそも癒やしてくれる
天才用語だと思います。
ピアノの練習をした、と君は言っていた。
きっと、君の部屋自体にはかちり、かちり、と鍵盤を押す音だけ響き渡る。代わりに、ヘッドホンから真夏日のプールみたいな爽やかな音が流れているのだろう。
それを演奏する君は、さながら木陰を舞う光の粒のように美しく、どこか儚かったに違いない。
長いまつげは軽く伏せられ、一心に電子ピアノを見つめる瞳は真剣で、それでも射し込む西日が強く明るく君を照らしていたのであろう。細い指は柔らかく白をなぞり、黒をなぞり、リズミカルに跳ねる。まるで、魔法のようだ。
ねえ、いつかイヤホンを着けて演奏してくれないかな。君の奏でる音楽を、片耳だけでいいから聴きたいんだ。
君の奏でる音楽
雨降りの日、君は決まって家の庭で雨宿りをしている。
声をかけてもそっぽをむく君を、私はそっと抱えて家の中に入った。
濡れた体を優しく拭いてやり、温かなミルクを振る舞うと、君は少し安心したような顔をする。
何度か同じようなことを繰り返すと、君はいつの間にか毎日家の庭にやってくるようになった。
私は君を見かけたら窓を開けて、快く君を招き入れた。
君の感情表現は、まるで音楽のようで心地よい。
嬉しい時は、エンジン音のように大きな低音で喉を鳴らす。
怒っている時は、唸り声を出しながら、シャーッと威嚇する。
寂しい時は、小さくニャオンと鳴いてみる。
美味しい時は、ご飯を食べながらニャムニャムと舌鼓をうつ。
これからもその小さな体で、私の耳に幸せな音色を届けておくれ。
生まれて初めて君の奏でる音楽は、トクントクンという心臓の音
その小さな音はこの上なく愛おしくて、泣きたくなるほど安心できた
「初めまして、私があなたのママよ」
おぎゃあおぎゃあと泣き続ける我が子に私の音楽が聞こえるように、胸にそっと抱き寄せた
#君の奏でる音楽
ずっと聴いていたい
心地よい音楽
君の奏でる音楽は
儚くて
寂しくて
切なくて
美しい
俺は学校が終わり図書室で時間を潰しているとどこからか音楽が聞こえてくるそこに向かうとそこには額縁に飾りたくなるような光景が広がっていた
B「こんにちわ、そこで立っててどうしましたか?」
A「あ、ごめんついいい音色で聴いてた、邪魔しちゃたかな?」
俺は、びっくりして中に入りながら返答した
B「大丈夫ですよただあまり聴かせられるようなものでは無いのでそれでは失礼しますね」
そういい女性は、そそくさとバイオリンを片付けて出ていってしまった
A「あの子はどこのクラスの人だったんだろう服装的には同じ学年ぽいけど」
これが俺とその子の話すきっかけだった
貴方の奏でる音楽はどれも素敵なものばかり
どの曲も貴方の言葉がリリックに込められている
私は貴方の音楽が大好き
ずっと聞いていたい
だから、
早く元気になって
私に貴方のリリックを聞かせて
〈君の奏でる音楽〉
夕暮れになると、決まって、
公園のベンチに一人の男が座っている。
男の齢は七、八十と言ったところ。
彼はズボンからおもむろにオルゴールを取り出した。
しわの多い指で右手に持ったネジを回す。
オルゴールの音色が公園中に響き渡る。
住人は彼のことを気味悪がっていた。
いつも誰かと会話をし、なにか自分だけ音楽が響いているかのように歌を口ずさんでいるからだ。
彼には噂があった。
曰く、男には愛を誓った一人の女がいたらしい。
曰く、その女はピアノがとても上手く、
世界中を飛び回っていたらしい。
曰く、その旅のさなか、事故に遭い、
彼女は命を落としたらしい。
曰く、その事故で女を失ったショックにより、
心神喪失し頭がおかしくなった……らしい。
真偽のほどは定かでない、
ただ一つの真実は。
オルゴールの題名が「君が奏でる音楽」ということだけ。
君の奏でる音楽が好きだ。
そりゃ、世間からすると取るに足らないものだけど。
君の指はいつだって必死に楽譜をなぞって、
感情も気持ちも入っていない。
けど、そのぎこちない音は、私に届いた。
だから今日も君の音を聞く。
いつの日か君がステージに立つのなら、
最前席でアンコールを贈ろう。
ピアノの演奏が、今日も始まった。
いつも決まった時間に音楽室から聞こえてくる。きっと有名な曲なんだと思う。素人の俺でさえどっかで聞いたことある感じの音楽だったから。でもこれが何ていう曲なのかなんてどうでも良かった。そんなことより、“誰が”弾いてるんだろう。そっちのほうが気になって仕方ない。毎日夕方6時くらいに始まるこの演奏会。下校時間です、と放送が入った後なので、周りには誰も居ない。俺以外は。
きっと清楚で髪の長い女子なんだろう。頭の中で勝手にそんなイメージを創り出していた。音楽の知識がゼロだけど、そんな俺でもなんとなく分かる。こんなふうに優しく弾くのだから、間違いなく儚い感じの女子だ。きっと人目をしのんでピアノの練習をしているんだ。もう、弾いてる音楽のことよりその子のことで頭がいっぱいになっていた。
だから今日、意を決して俺は音楽室の中に飛び込む。
時刻は夕方6時5分。いつものように演奏が始まった。俺はあらかじめ音楽準備室のほうに隠れて息を潜めていた。今日のピアノが奏でる音楽はわりとゆったりめの曲だった。数分間じっと聞いてれば眠ってしまいそうなほど。でもそんなオチにさせてたまるか。演奏開始僅か1分ほどで俺はドアを開け放った。
「うおっ」
聞こえた声はキャーみたいな可愛いもんじゃなかった。ドスのきいた野太い声。ピアノの前に座っていたのは女ではなかった。そして、その人物を俺は知っていた。
「お前……なんでここに」
「それは俺のセリフだっつうの!なんでここにいるんだよ」
同じクラスの男子生徒だった。ソイツはみんなから“ハカセ”と呼ばれている。名前が“ヒロシ”で、漢字が“博士”だからだ。ハカセとあうあだ名のくせにソイツはインテリ系というわけではなく、丸坊主のラグビー部の主将を担っていた。
そんな男がまさか。こんなヤツが。あんな繊細な演奏をしていたというのか。嘘だと思いたい。俺の頭の中の清楚系女子はがらがらと崩れ落ちてゆく。
「……聞くけどよ」
絞り出すように声を出した。ハカセは額に汗をかきながら俺を凝視していた。
「今までずっと、6時過ぎに聞こえてたピアノの音ってお前なのか?」
「そうだけど……つうか、なんで知ってんだよ」
「嘘だろおい……」
思わずその場に座り込んでしまった。あの演奏が、お前?ともう一度口に出してしまったほど俺は狼狽えていた。あんなに綺麗でか弱そうな音色が、このいかついマッチョ野郎だったなんて。項垂れ具合が半端ない。嘆く俺にハカセはどうしたんだよ、と近寄ってきた。だからその肉厚な手を思い切り握った。
「うお?!なんだよ」
「マジでショックだったわ」
「はあ?」
「けど、マジで毎日感動してたわ」
サンキュ、と言って無理矢理固い握手を交わした。どんなヤツが弾いてようが、俺は間違いなく感動したんだ。それだけは言える。まぁでも正直、可愛い女の子じゃなかったのはショックだったけど。でもコイツの演奏は半端なかった。魂震えた。だから礼を言うのは当然だと思う。
「……なんかよく分かんねぇけどよ。も少し聞いてくか?」
ハカセは目線を向こうにやりながらボソッと呟いた。俺は近くのパイプ椅子を引っ張ってきて真正面に座る。頼むわ、と一言言って、1番の特等席で、イカつい男の演奏会に聞き入った。
君のこえは、とても美しかったです。
君は、すごいひとでした。
わたしは、君を尊敬してます。
君の歌ううたは、とても素晴らしかったです。
君のすべては、音楽でした。
君の奏でる音楽は、わたしのすべてになりました。
君の奏でる音楽は、君のすべては、君は、
わたしが愛したひとでした。
「最後に、君にだけ聴いて欲しくて。」
そういったある人は楽譜を持って寂しげに立っていた。
あ、そうか、そうだ。
「そうだった、君、転校するんだって、ね。」
クラスによく響いてた君の笑い声がこれから聞けないのは嬉しいようで、懐かしい物となるかもしれない。
いつも本を読むと邪魔をしてくる君が居なくなる清々しさと、そのうち止められない現実に物足りなさを感じるようになる僕が容易に想像できた。
「私、いつも君が本読むの邪魔したよね。」
やっぱりタイミングを見計らってやって来てたんだな。
「あぁ、分かってるよ。」僕への嫌がらせだろう。
彼女の顔がみるみる赤くなっていった。
「な、え、!!!!なんで!?!? 誰にも言うなってあれほど!?!?」
「なんで顔が赤くなるんだよ。 赤くしたいのはこっちだ。」 わざわざ嫌われてる人に悪口を言われに来てやってんだ。それくらい欲を言っても構わないだろ。
「あそっか、恥ずかしいよね、私!!!! ぇっ、と、」
少しずつ腹が立ってきた
「あぁもう!!!! 嫌いなら早く嫌いって言ってくれないかな!? わざわざ悪口言われに来てやってるこっちの気持ちにもなれよ!!!!」 君とのゆったりした時間は、個人的に、悪くないと思っていたのに。
「えいやまって私嫌ってないよ。私嫌ってないよ!?!もはやその逆だし!?」
逆、、逆、、?
「逆って。 どういう、、、」
バチンっ僕の両頬が大きな音とともにはたかれた。いや、挟まれたの方がいいのだろうか。
「私、、、、君の事が好きなんだけど。」
その言葉だけが、熱くなる頬と共に体をじんわりと蝕んでいった。
「、、、、は?」
君の奏でる音楽は、いつだって僕の世界を覆してしまう。 それが例え、頬を叩く音だったとしても。
『君の奏でる音楽』2023.08.12
ひとは誰だって意外な特技を持ち合わせているものである。
いや、意外ではないか。我が親愛なる義妹はミュージカル俳優だ。
この曲はなんといったか。確か、ラプソディーインブルーだったと思う。
義妹はそれに合わせて、ダンスを踊っている。
トップの彼女の隣で、その子に負けないぐらいの妖しい色気をだして、足を伸ばし腰を回し手を、伸ばす。
男役の群舞はいつ見ても美しい。これで全員女性なのだから恐ろしいことだ。
自分の隣では親友が感心したように顎を摩っている。
今回は割りと近めの席なので、滴る汗の音すら聞こえてきそうだ。
シュッ、パサッ。体を動かすたびに、そんな音が聞こえる。
乱れることなく、衣擦れの音が揃う。
身内の贔屓目もあるのかもしれない。義妹の体からは音楽が聴こえる。
音ハメなのだが、その伸びやかな表現力とピクリとも微笑まない表情筋。それでも、バチンとウインク。
ティンパニ、シンバルの音でビシッと決め、ウインクをしてペロッと舌舐めずりをする。
ヒュー、と親友が小さく声を出し、周辺の女性客が息を呑む。
なるほど。
これが、君が奏でる音楽か。
君の奏でる音楽は
誰よりも私を理解して
どんな言葉より正直
何も知らない風を君は装うけれど
君が聞かせる曲はいつでも
私のためにあるように思えてならない
その日その日の私の心の有り様に応じて
一番自然に聞き入れられる曲を選ぶんだから
【君の奏でる音楽】
ユウキはヘッドホンに両手を当てたまま、少し眉をひそめた。
最近一緒に楽曲制作をしているREONAから送られてきたギターの音源を聞いたところだ。ユウキはキーボード担当で、これに合う音を当てていく役目。
正直、REONAから送られてくるギターの旋律は毎度 攻撃的過ぎて、最初に聞くときは少し抵抗を感じる。反抗心や絶望感ばかりが伝わってきて悲しい気持ちにすらなる。それでもREONAとの楽曲制作に付き合っているのには理由があった。
ユウキはGANと書かれたアカウントを開き、REONAに返事を書いた。今はREONAとはこの名前でやりとりしていて、自分は引きこもりだと話している。REONAの方はGANの事をネット上の知り合いとしか認識していないが、実際は違った。
ユウキとREONA、もといレオナは幼馴染だ。小さい頃から家が近所で、よく一緒に遊んでいた。同じ小学校、中学校に通っているが、最近レオナは引きこもるようになって、学校にも出てこない。ユウキは何度も部屋の前まで行って話しかけたり、DMを送ってみたりしたが、全部無視されてしまった。
そんな時に、SNSでREONAというアカウントを見つけた。同級生の文句や親の愚痴などを呟いていたので、なんとなくレオナ本人だと見当がついた。それで、騙すようで心は痛んだものの、同じく引きこもりの中学生、GANとして話しかけ、仲良くなった。次第に、共通の趣味である音楽で話が盛り上がるようになり、一緒に楽曲を作るようになった。他にも、SNSで知り合った同じような年齢、境遇の仲間ができ、すでに何曲か作ってはSNSで公開している。少数ではあるが、コアなファンもいる。ついこの間には、「絶対課金したいので配信アプリに出す時はお声がけください!」なんてDMまで届いたようだ。ユウキとしては人気になることよりも、いつかまた、部屋の外に出てきてほしい、そんな想いでずっと楽曲制作に付き合っている。
小さい頃からレオナはよくギターを弾いてくれた。憧れのギタリストの話もたくさんしてくれた。でもあの頃はレオナの奏でる音楽はこんなに攻撃的ではなかった。レオナはどちらかと言うと女王様タイプの気質で、気の弱いユウキはほとんど子分のような扱いを受けていたが、彼女が根は真面目で、面倒見がいいことを、ユウキはよく知っていた。何よりも、彼女の指先がつまはじくメロディは優しく、自信に満ち溢れていて、心地よかった。
何が彼女をここまで駆り立てるんだろう。思考を巡らしながら、ユウキはもう一度REONAのギターを流し始めた。
曲の途中、聞き覚えのあるメロディが耳をかすめる。どこで聞いたんだろう。確か………。
ユウキはハッと我に返った。そうだ、これは小さい頃、二人で作ったメロディだ。懐かしい気持ちも手伝って、切ないメロディがさり気なく組み込まれた小節に一気に豊かな香りが立ち上った。そうか、これは、ただの攻撃ではない。葛藤だ。挫折、迷い、葛藤…。それでもまだ諦めていない、芯の強さ。
(やっぱり、君の奏でる音楽は、いいね)
ユウキはひとり微笑みを浮かべながら、キーボードで音を探し始めた。
君と話す時、私は音楽に包まれている気分になる。
君の声はいつも違う色
君の声はいつも違う音
灰色の私の世界を明るくしてくれた。
君の奏でる音楽はいつか誰かを救うでしょう。
私を救ってくれたように。