『半袖』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
【半袖】
夏だ。半袖の季節だ。
俺は誰にも言ったことはないが、二の腕フェチだ。
だから、夏が好きだ。
大好きなあの子の制服の半袖から伸びる少し白い二の腕なんて目に入った日には、天にも昇る気持ちになれる。
眩しい二の腕だ。適度に筋肉と脂肪がついていて、実に触り心地が良さそうだ。
俺がもし、一昔前の漫画の登場人物だったなら、鼻血を吹いてぶっ倒れているだろう。
それだけ、あの子の二の腕は魅力的なのだ。
俺が思わず鼻をおさえると、隣にいた友人が怪訝そうな顔をして俺を見て、
「お前何してんの?」
ときいてくる。
「何でもない。心配するな、大丈夫だ」
と俺は言った。
「いや、絶対何でもなくないし大丈夫じゃないだろ。……特に頭が」
何か最後にポツリと辛辣な言葉を呟かれた気がしたが、俺は無視する。
ああ、二の腕、バンザイ!半袖の季節、ありがとう!
行き交う人々の半袖から伸びる腕。
そこから湯気がたちのぼっているように見える。
アスファルトからも、湯気。
ぐにゃり、とアスファルトが歪む。
ぐにゃぐにゃとしたアスファルト…蜃気楼のような揺らぎ…
次の瞬間、視界は真っ暗になった。全身から力が抜け、
そこで意識は途切れた。
目を覚ますと、見慣れない白い天井。
三方を囲むように引かれた、淡い緑のカーテン。病室だ。
「失礼します」
控えめな声とともに、返事を待たずにカーテンが開く。
俯き加減に入ってきたのは、マッシュヘアに大きなリュックを背負った若い男だった。
大学生くらいだろう。手には丁寧に畳まれたジャケット。
彼はこちらに目もくれず、病室の端にあった丸椅子にそれを置こうとする。
その仕草の途中で、俺は声をかけた。
「すみません、あなたは?」
驚いたように肩を跳ねさせ、男ははっと顔を上げた。
「す、すみません! 起きていらっしゃったんですね……。あの、僕、あなたが倒れたときに後ろを歩いていて……救急車を呼んだんです。このジャケットは、そのときに……救急隊の方に渡しそびれてしまって、それで、社員証が中にあったのを見てしまって……それで病室がわかって……勝手に……すみません」
萎れたように項垂れながら、早口で言う。
「そうだったんですね。救急車、呼んでくださってありがとうございます。ジャケットも……わざわざ、ありがとう」
そう言うと、彼は少し顔を赤らめて、
「あ、いえ……じゃあ、僕はこれで。お大事になさってください」と一礼し、
慌てたように病室を飛び出していった。
数日後、駅前のドラッグストアで買い物をしていると、レジに彼の姿を見つけた。
制服のポロシャツに、あの日と同じ黒いリュックを背負っている。
見た目こそ今どきの若者という感じだが、
おじさんのジャケットを律儀に届けに来るような彼に、軽薄さは感じない。
列に並びながら様子をうかがうと、彼は笑顔でハキハキと接客し、きちんとした働きぶりだった。
彼のレジが空いたので、そこへ進む。
「この前は、本当にありがとう。助かったよ」
営業用の笑みが一瞬だけ消え、訝しげな表情。
次の瞬間、思い出したようにぱっと顔を明るくする。
「あの時の!よかった、元気そうで……!」
少し照れたように笑って、レジを通す。
「お礼がしたいんだけど。今日は仕事、何時まで?」
「えっ、あ、いえ……ほんと、大丈夫です。そんな……」
彼は戸惑いながらも、レジの後ろの混雑を気にしている。
俺が引く気配を見せないと、ついに観念したように言った。
「……あと10分くらいで上がりです」
ドラッグストアの前で待っていると彼が現れた。
「まさか……」という顔をして、驚いたように小走りで寄ってくる。
黒の無地の半袖Tシャツに黒の長ズボン、やっぱり大きなリュック。
「お疲れ様。さっきは急に声をかけてごめんね」
そう言うと、彼は勢いよく首を横に振った。
「あ、いえ……その……ほんとにお礼とか、大丈夫なんですけど……」
小さな声でそう付け足す。
「でも、あの時は本当に助かった。近くに美味しい焼肉屋があるんだ。もし嫌いじゃなければ、ぜひ」
ちょっと強めに言ってみる。
彼の表情がわずかに揺れたあと、おずおずと頷いた。
テーマ:半袖
「今日は半袖なんだな、良かった」
「今日は暑いから」
いつも長袖で、ずっと日陰にいるのに今日は珍しく半袖で、きちんと人間としての感性を持っていることに少し感動した。
「暑いよな」
「うん」
気温は高い。朝っぱらから下がることのない猛暑。さすがに日陰にいるとはいえ、長袖ででは厳しいものがあるだろう。
「これ、やる」
差し出されたのは、塩分タブレット。
「タブレット…?」
「熱中症にでもなったら困るからな」
はやくとれ、と怒られて、それを受け取る。差し出されていたその腕が、細くて白くて、それに俺が驚いていたから反応が遅れてしまったらしい。
「さんきゅ、ありがたくもらうわ」
「もらっておけ」
それをあけて、口に放り込む。
「…しょっぱー」
「そりゃそうだろ、塩分だぞ?」
「確かに」
「いくらでもある、欲しかったら取ってけ」
布巾着を押し付けられて、その中身をみる。
たくさんの、いろんな種類の塩分タブレット。
俺が飽きないように、たまにグミとか、ガムを入れてくれてる。
「…優しいなぁ」
「…うるさい」
一見怖そうなのに、こんなに優しいのが、ギャップで好きなんだよね。
お前の半袖、なかなかに似合ってる。
『半袖』
半袖
半袖の時期になると無駄毛が気になる。
袖の長めのシャツを買うとなると、デザインも限られて種類も減ってくる。
けど、必ず袖の長めの服を買う。
私を守るために。
半袖
普段は長袖の君が、今日は珍しく半袖を着てきた。
真夏。川に行こうと誘ってくれた君は、川に足を突っ込んでバタバタさせながら
「川に来るって、普段しないでしょ?」
と言ってにっこりと笑った。
木陰の中で顔が綺麗に映っている君は、とても美しかった。
この時期は嫌だ。
あなたを呼び止める時、わたしの体温が伝わってしまうから。
———
半袖
だらだらだらしなく
ゆったりした
半袖のTシャツが好きだ。
ピタッとしたやつは
苦手である。
どういうわけか
何年かに一度
みんながみんな
ピタッとTシャツを着だすが
そんなものは無視だ。
流行りなど知らーん!!
問題は売り場が
ピタッとTシャツだらけになること。
あれ、なんとかならんもんか。
(半袖)
「おはよう」
「おはようご、ざ……」
挨拶が途切れる。聞き慣れた声に振り向いた僕の目に映ったのはいつも通りの彼女、の、肘(ひじ)。
肘、である。
特別な部位ではない。夏場は多くの人がその部分を外気に晒すだろう。だが、この人の肘は出会ってこのかた見たことがなかったのだ。だって、この人はいつも決まって長袖を─────
「え、半袖?」
最高気温38度の日でも長袖で登校するこの人が?
「なんだ、そんなに珍しいか?」
当の本人はけろっとのたまう。
「いや、だってずっと長袖着てたじゃないですか…僕てっきり何かこだわりがあるのかと」
「はは、そんなのもないさ。君の方こそ今日の天気予報を見ていないのか?最高気温40度だそうだぞ、流石の私も半袖でなければ倒れてしまうよ」
「はぁ、そうですか……」
僕の中で「頑なに半袖を着ない人」から「40度に達する日でないと半袖を着ない人」に認識が改められた。
まぁ、あまり変わったようには思えないが。
「それよりさっきの君の顔、傑作だったぞ。あんな顔初めて見たなぁ、カメラを構えていなかったのを痛烈に後悔するよ」
「んなタイミングよく構えてるカメラあります!?って、そんなことはどうでもいいんですよ!僕の顔って!?どんな顔してたんですか一体!」
「教えないよーだ」
「ちょっ!待ってくださいー!」
誰だろう。最初に半袖と言ったのは。
今世界が半袖と呼んでいるものは、何の半分なんだろう。
長袖の半分だろうか。
それなら肘にかかるくらいが丁度いい。
じゃあこれは何なんだろう。
そもそも長袖と半袖は対比になっているのだろうか。
全袖かもしれない。短袖かもしれない。
でも、半ズボンは半分だ。
じゃあ、半袖がおかしいのか。
1/3袖だろうか。
もしその呼び方が世界に広がったら、誰かはきっとこういうだろう。
誰だろう。最初に1/3袖と言ったのは。
もしも、一年中半袖を着られたらどんなに嬉しいだろう。どんらに喜ぶだろう。そのことを、長ズボンはなんと思うだろう。
半袖
夏は暑くて嫌いだけれど、まだ涼しげな服があるのが救い
いつからか、半袖を着るのをやめていた。
明確な時期は自分でも分からないけれど、たぶん、中学生になったばかりの頃だった。制服のシャツを母さんが長袖しか買わなかったのもひとつの原因だろう。どんなに暑くても、半袖は着られなかった。それどころか腕捲くりもしたくなかった。
それは、成長に対するせめてもの抵抗だろうか。少食のせいか今でも確かに躰は細いけれど、肌にはうっすらと毛が生えてきていた。いつこの美しいソプラノの声が枯れるのだろうか。僕の唯一の自慢の愛らしいこの顔が、いつか、醜くなってしまうのが怖い。僕は大人になることに怯えていた。美しい少年のままで居たい。だから隠さなきゃいけないんだ。
同じ学校の生徒やその家族や近所のおばさんが、僕を美少年だと言って持て囃す。それが僕にとっての守らなくてはならない日常だ。それが崩れたら僕は死ぬ。美しさ以外に生きている価値なんて無い。
ときどき子供の頃の夢を見る。夢の中の自分はいつも半袖を着て、無邪気に笑っている。無駄に抗う僕を嘲笑っているのだろうか。きっとそうだろうな。だってあの頃は、大人になりたくないなんて思ってもなかった。ただ今を生きて、今が楽しくて仕方無くて、自分が美少年だともすら思わなかった。
嗤えよ。好きなだけ嗤ってくれ。外面だけは取り繕うから。
二十作目「半袖」
美少年と夏がすき
ハンガーにぶら下がった半袖のシャツが、風に揺れる。その向こうには、青く広がる夏の空。
「……楽しかったけどさ」
水遊びなんて、いつぶりだろう。何も考えずに遊ぶのはそれはとても楽しい。楽しかったんだけれども。
「ちょっと、やり過ぎたね……」
濡れたシャツは、ちょっとやそっとじゃあ到底乾かない程度にびしょびしょになっていた。
庭にはビニールプール、蝉の混声合唱はいつの間にかヒグラシの合唱に変わって。そして、私の隣で疲れ切って、けれども楽しそうに、幼い「彼女」は眠っていた。
『半袖』
君に好きと伝えたのは11月だった
君に別れたいと言われたのは6月だ
私は君の長袖の姿しか見たことないよ
半袖の時期には君との関係は終わっていたからね
冬の寒い時期が終わった途端
冷めちゃったって、笑えるねほんと
今でも君をこんなにも好きなのに
ふと目を覚ましたら、何も身につけていない状態の彼女とベッドを共にしていた。
「えっ!はっ?えぇ??」
慌てて自分の下半身を確認する。下着はしていた。汚れていない。じゃあなぜ彼女は何も着ていないんだ。覚えていないだけでなにかあったのか。
こめかみをおさえて必死に昨晩のことを思い出す。
宅飲みをして、2人でしこたま飲んで、限界点に達した彼女が布団に潜り込んだからついていって……いやなんでだよ。なんでついていってんだよ。その後の記憶がどうしたってない。致したのか、致してないのか、それすらわからない。
「ん……。」
そうこうしている間に彼女が起きた。のっそりと起きるものだから口から心臓が出るくらい驚いた。
ぼんやりとした目でこちらをじーっと見ている。
「あの……おは、よう。」
「……寒い。服欲しい。」
焦点の合わない目で言われたものだから、おずおずと衣装ケースからTシャツを取り出して渡す。のそのそとゆっくりとした動きでそれを着ると、また夢の中へと旅立っていった。
明らかに彼女にあっていない服。襟ぐりから覗く鎖骨、ぶかぶかでお尻までギリギリカバーしている。なにも着てないよりそそる。なによりそれは自分の私服なのだ。
「……まずい、風呂入ってこよ。」
ひとまず落ち着かせるために風呂に入り、現実逃避することにした。
冷たいシャワーを浴びるが、彼女の自分のTシャツを着ている姿がぐるぐると頭から離れない。
しばらく頭を冷やし続け、やっと落ち着いたと脱衣所に出た瞬間、変な悲鳴が寝室からしたのが聞こえた。
【半袖】
「君が半袖にしてるとこ、初めて見た」
「似合うでしょ」
君の真っ白い腕が、日の光に晒された。
【半袖で隠せない箇所は】
「去年まで一年中長袖だったから、ムダ毛でも気にしてるのかと思った」
「もう少し言い方ってもんがあるでしょ。私は可愛いからムダ毛なんてないの」
「どういう理屈……?」
発言の意味は謎だが、僕に対して肌を露出することを異常に嫌っていたあの頃を思うと、夢みたいな状況だ。それだけ心を許してくれたのだと感慨深い気持ちになる。
「……ところで」
「うん?」
「半袖にしたせいで、リストバンドが見えるようになってしまって、少し目立つね」
「……」
「よければ、君が隠してくれない?」
差し出された君の左手には、リストバンド。お洒落のために着けているわけではないと一目でわかるデザイン。
「いいけど、くっついたら暑くない? せっかく半袖になったのに」
「いいの。君の体温を感じるために、半袖になったんだから」
夏に似つかわしくない厚い布の塊を、世界から覆い隠すみたいにそっと僕の手で包み込んだ。
半袖
大好きな半袖のTシャツは
大好きな場所に
大好きな人とお出かけの時
楽しいこと
嬉しいことがたくさん起こりますように
というおまじないで着る半袖Tシャツ
君と出会った時心は踊った
その嬉しさを身にまとって
私は今日も半袖のTシャツを着る
半袖
いいですね~
今一番うれしい服👚ですね。
半袖でないと いられないし
ありがたいです
夏がきた 半袖着ている 涼しいよ
スイカ食べ 半袖着ている みんなだよ
コンビニで買ったスポドリを、日陰でしばしおでこに当てる。
急上昇した気温と湿度に耐えていた肌が、冷えた水滴にふわりと緩む気がした。
目を閉じて「あー」と満足の息が漏れたところで、額の冷感が奪い去られる。
目を開けると同時にキャップの開く音がした。
「おばさんくせぇな」と笑う君。
半袖が、やけに眩しい。
『半袖』
半袖
夏の特別な服装
肌の見える範囲が
長袖より圧倒的に多いから
少しときめくね(笑)