「君が半袖にしてるとこ、初めて見た」
「似合うでしょ」
君の真っ白い腕が、日の光に晒された。
【半袖で隠せない箇所は】
「去年まで一年中長袖だったから、ムダ毛でも気にしてるのかと思った」
「もう少し言い方ってもんがあるでしょ。私は可愛いからムダ毛なんてないの」
「どういう理屈……?」
発言の意味は謎だが、僕に対して肌を露出することを異常に嫌っていたあの頃を思うと、夢みたいな状況だ。それだけ心を許してくれたのだと感慨深い気持ちになる。
「……ところで」
「うん?」
「半袖にしたせいで、リストバンドが見えるようになってしまって、少し目立つね」
「……」
「よければ、君が隠してくれない?」
差し出された君の左手には、リストバンド。お洒落のために着けているわけではないと一目でわかるデザイン。
「いいけど、くっついたら暑くない? せっかく半袖になったのに」
「いいの。君の体温を感じるために、半袖になったんだから」
夏に似つかわしくない厚い布の塊を、世界から覆い隠すみたいにそっと僕の手で包み込んだ。
7/26/2025, 6:44:09 AM