『勿忘草(わすれなぐさ)』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
#勿忘草
私を忘れないでと何度も願った恋
なのに今 その人への記憶は朧げで心許ない
その程度の恋だった筈はないのに
勿忘の咲く記憶あり胸奥で煙草の煙いまだたゆたふ
〈勿忘草(わすれなぐさ)〉
どうかわたしを忘れないでね と
君がくれたその花は
ひどく美しい青色だった
勿忘草
「勿忘草」
いつか人は記憶を失う。
私は君を愛した覚えはない。
【#34】
【勿忘草(わすれなぐさ)】
あの人が初めてくれた花は
勿忘草でした
花なんて珍しいわね、と
少しからかいながらも笑ってみると
たまにはいいだろ、と
照れくさそうに返してきて
その姿が愛おしくてたまりませんでした
それから一ヶ月後
あの人はこの世を去りました
病に侵され、余命宣告をされていたようです
私には何も伝えず逝ってしまいました
一人で痛みに耐え、一人で寂しく死んで
私は何も知らぬまま
ご家族の方に連絡を貰ったのは、一週間後のことでした
私はあの人が最期を迎える時
隣にいる資格さえもなかったのだと思い知らされました
それから十年後
勿忘草を目にすることがありました
小さな花屋にふらっと入ったのです
あの人に最後に貰った勿忘草の花言葉が気になって
勿忘草と、花言葉がたくさん載っている本を買って帰りました
勿忘草の花言葉は
私を忘れないで
真実の愛
私はあの人を忘れません
辛くて忘れようとしたこともあったけれど
結局忘れた日などありませんでした
勿忘草の花言葉を
知るのが怖かったのです
あなたが私のことをどう思って死んでいったのか
目を逸らしたくて仕方なかった
けれど時が経ち
ようやく向き合えたのです
私はようやく安堵しました
あの人はきっと
私を最期まで愛してくれていた
そして自分の存在が
私の記憶の中に
ずっと残っていてほしいと思っていた
それでも自分との最期の別れを私に経験させることは
私が辛いと分かっていた
だから一人を選んだ
そう思うのです
馬鹿な人
きっと一人で逝かせる方が辛かったのに
でも、そんなあの人の優しさは
私の中にずっと残っています
あの人との幸せな思い出とともに
「ねぇ、じゃあさ ワスレナグサって漢字で書ける?」
って急に訊いてくる 無邪気な君が大好きだったよ
題目「勿忘草(わすれなぐさ)」
きっともう、あなたと話すことも、
笑い合うことも無くて
想い出を作るのには沢山の時間が必要なのに
別れの時は一瞬。
だけど、だいじょうぶ。寂しくないよ。
君には沢山の愛情と、沢山の笑顔をもらったから。
だから、だいじょうぶ。
けれど、もし、ひとつだけわがままを言えるのであれば
どうか、
「わたしを忘れないで」。
勿忘草
「嫌い」
いつしかそれが彼女の口癖になった。
頼まれていたCDの新譜を聴いて、不意に顔をしかめる。
「このフレーズ嫌い」
イヤホンを外し、口を真一文字にしている。
なんだったのか気になって、歌詞カードを3度読み返す。
僕には何がなんやら分からない。
ただ曖昧に頷き、黙って林檎を剥く。
病室に夕陽が差し込む。
窓から影が伸び、僕の足元へと忍び寄る。
消毒液の匂いは、記憶が引きずり出される様で胸が苦しくなる。
この匂い、私嫌いだわ。
彼女が言ったのはもう半年前。
1つずつ1つずつ、彼女はこの世界に別れを告げるかの様に嫌いなものを増やしていく。
病室に寄る前、医師に言われた言葉を思い出す。
ナイフを持った手元が震える。心臓が激しく脈打つ。
僕の手の甲に、彼女は自分の掌を重ねてきた。
「私、泣いてるあなたを見るの嫌いよ」
分かってる、忘れないからさ。
声に出さず、心の中で呟く。
君のこと、君の中の君が嫌うあらゆることを。
君がいずれ別れを告げる、この愛おしき日々を。
マイ・スマイル・イズ・カバード・イン・ブラッド
私は地下鉄の最終便に乗りました
でも、家に帰るつもりはありません
時刻はもうすぐ日付が変わろうとしています
私以外、誰も車両に乗客は居ませんでした
電車は走り出しました
しばらく私は軽く目を閉じて考えます
なぜ彼らは知恵の実を食べたのかを
なぜ政府は月面に到達したなどと嘘をついたのかを
しかし、私にはどうでもいいことです
この世界は退屈なだけですから
私は仮面をつけています
笑顔が描かれた子供の落書きのような仮面です
ですが、仮面の下ではいつも泣いています
悲しいからではありません
血の涙が溢れてくるのは、きっと孤独だから
今日も涙が流れて止まりません
どうせなら泣き声をあげてみたかった
私の血にまみれた笑顔はさぞかし不気味でしょう
自殺する勇気なんか持ち合わせてやしない
でもどうせ、明日の朝には忘れています
ところで、電車はいつ止まるのでしょうか?
もう、ずうっと長いこと走り続けています
暗闇の中を
暗闇の奥へと
それは心地好く、少し不気味で不安定な、帰路
『勿忘草』
忘れない、忘れられない思いがある人は
人として 何かが宿り、光っている
私は なんでも すぐに忘れてしまう
覚えておかなきゃならないことさえも
今さっき考えていたことも、何考えていたっけと
わからなくなってしまう
人と話していても 相手は覚えているのに
私は思い出せないことがある
だから、覚えていられる人をすごく尊敬するし
羨ましいとも思う
忘れないでほしいと、人に強く思うほど、
自分自身も忘れなくなるのだろうか
自分にとって、これはとてつもなく大事なことだと
強く感じられれば、忘れないでいられるのだろうか
私は起きてるけど、今は眠ってるみたい
頭がモヤモヤしている
心もモヤモヤしている
起きていても、うっすらとした霧の中で
息しているみたい
時は光みたいに早く進んでいるのに
私の細胞はずっと止まっているみたい
でも、同時にゆっくりと枯れていってもいるみたい
勿忘草を 想い人に渡したかった青年は
霧の中にはいなかった
枯れてもいなかった
きっと燃えていた
なのに、悲劇は起きた
青年の思いは、真実の愛として
永遠の愛として、勿忘草に宿ったのだろう
勿忘草
なんて 可愛いらしい花なのだろう
なんと ひたむきな花なのだろう
見ると 心にぱっと光が灯った
止まっていた時が ゆっくりと
動き出していきそうな
そんな気さえした
霧の中に 凛とした青が咲いた
あなたの心に 少しだけ触れた気がした
まだ霧は 晴れないけれど
私も何か 忘れられない思いを持ちたいと思う
その思いを持てた時
目が醒めて、晴れた青空の下を歩ける気がする
凛とした青い心で
私はあなたを忘れない。
決して忘れたりなんかしない。
我がためは 見るかひもなし 忘れ草
わするばかりの 恋にしあらねば
(後撰集789 紀長谷雄)
忘れてしまうような恋ならば、
私はそれを恋とは呼べないのです。
【勿忘草(わすれなぐさ)】
人間は皆、広いようで狭いこの世界の歯車のひとつでしかないのだと知った。あんなに無下にしていた存在にすら、ひとたび呑まれてしまえば何の抵抗もなく事切れてしまう、小さくてか弱い歯車のひとつ。
(ああ、それでも……)
貴方にはいつまでも私を憶えていて欲しい。名前を、声を、言葉のすべてを忘れないで、心の隅でもいいから貴方の中のどこかで平穏に過ごしたい。唯そう願っていた。
だけど、記憶というものはひどく無情で。決して忘れないと誓ってくれた貴方も次第に私を忘れていく。声から始まり、表情、手癖口癖、好み──今では名前もうすらぼんやりとしている頃だと思う。
毎年、勿忘草の花を持って墓参りに来ることですらも、いつかは忘れてしまうでしょう。
それは……きっと、寂しいだろうなぁ。
未だ貴方の記憶のどこかに私が居るなら、どうか今すぐ勿忘草を一本だけ持ってお墓に来て。そして私にサヨナラを言わせて頂戴な。
▶勿忘草 #59
眠れないからと、敬愛する同じ軽音部の先輩がよく電話をかけてくるようになった。
夜型人間社不まっしぐらの私が「学校に行かなくても先輩と話せるなんて」なんて思っていたのとは裏腹に、事態は髄分と深刻だったらしい。
その事に気付いたのは私ではなかった。
「お前最近練習してる?」
ボーカルの男が言う。一瞬空気が凍った。このバンドの中で一番技があったのは間違いなく彼女で、今まで彼女の演奏が批判されたことなんて一度たりともなかったのだ。
それを最後に先輩は軽音部に来なくなった。ボーカルがなじられることはなかった。総意を彼が代弁したに過ぎない。程なくして私もサブギターの座を降りた。
――先輩が学校を辞めたと聞いたのはその一ヶ月後だった。
意味がわからなくて、説明してほしくて、ろくにアポも取らずに先輩の家に押しかけて、迷惑な馬鹿野郎だった。
インターホンを鳴らすと、案外すぐに扉は開いた。
お母さんでも出てくるかと思ったが、扉の向こうにいたのは先輩。
少し窶れただろうか。長く伸ばした髪が変に揺れている。
何か話さなきゃ、と義務感で口を開きかけたとき、先輩がぎこちなく口角をあげた。
「はじめまして」
ただの挨拶だった。
しかし私の呼吸は一気に詰まった。心臓が動いているか怪しかった。
彼女が間違いに気付いて私の名前を縋るように呼ぶまで、私はカラカラに乾いた砂漠の喉で笛を吹いていた。
『若年性アルツハイマー』
その病のせいで、人とコミュニケーションを取って生活できる状態にない。ギターは気力がなくなってやめてしまった。私が憧れたギターの天才は、もうこの病に殺されていると知った。
それでも私はその憧憬に縋ることしか出来なかった。
通い詰めた。何度もなんども。
最近は毎日のように私の名前を記憶から失う。
でも、今日は庭の話をしてくれた。ずっと前に埋めた勿忘草のこぼれ種が今も庭にたくさん生えていて、たとえ忘れてしまっても庭を見れば好きな花だと思う。好きだと思ったから調べて名前を知る。好きな花の名前を。
忘れないことが愛ならば、彼女は私のことを愛してなどいないだろう。
それならば、私はあのこぼれ種のように何度だって彼女の前に現れて、その愛を乞おう。
彼女が私を忘れて、また私と始めての恋をする。
忘れないでなんて言えない。だから会うたびに私について考えてほしい。私があなたにとっての何者なのか、あなたの庭に咲く勿忘草と同じように何度でも。
いつか私が、あなたにとっての勿忘草のように見れば好きだと分かるものになれれば、
それは何よりも愛だから。
【勿忘草(わすれなぐさ)】2024/02/02
勿忘草 私を忘れないで/誠の愛/汝、私について考えよ
勿忘草の花言葉知っている?
私を忘れないで…だっけ。
私の事忘れないでね。時々でいいから、私の事思い出してね。
【勿忘草】
勿忘草
黄色い密に、深く爽やかなブルー。
目に残る、美しい花。
私を忘れないで。
勿忘草を君に
隠したい
遠くで怯える一方向の、視線
どろどろ。どろどろ。
はにかむ君に、どんどん
どろどろ。どろどろ。
はなしたい
君に恋をしたのか、真か
窓に恋をしてるみたいだ。
だんだん。だんだん。
溢れる言葉は、炭酸
だんだん。だんだん。
渡したい
忘れたくても思い、出す
そういう僕は
さらさら。さらさら。
でも、忘れたいと思う気持ちなど
さらさら。さらさら
ない。
#20 勿忘草
大事な思い出は忘れたくないよね
忘れたくないてことは 戻りたいてことでもあるのかなぁ
忘れたくないから記憶が戻れる
大事な記憶だから 情景が甦る
こころの器が あるから 戻れるんだね
その頃に戻るとまた会える
もう会えないけど 記憶を戻すと また会える
ほんとは 何度も甦り思い出すことで
心を浄化させているんだって
浄化するてことは 成仏させるてことなんだね
だけど まだ そばに残ってほしいから
そのときのそのままの情景とそのままの気持ちを蘇らせ 心を置いている
いつか ちゃんと 祓えるまで 忘れないでいさせてください
「勿忘草」
濃いブルーの綺麗な花で
春の訪れを知らせてくれる
そんな勿忘草には
叶わぬ恋の物語りが存在し
その思いからか花言葉は
私を忘れないで…
と姿からは想像つかない
少し悲しい花言葉になっている
自分も人並みに恋をしてきたが
良い思い出として
私を忘れないで いてくれる人は
どれほどいるだろうか…
考えただけで少し怖い❢
勿忘草
貴方と見た花
なんの花だろうね
と君は聞いた
勿忘草だよと君に教えると
君は1つ摘んで喜んで笑った
忘れないでね、なんて呟いたけど
もう花は街に埋もれた。
第七話 その妃、褒美を取らす
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
湯浴み後の長い黒髪を拭いながら、宦官の男はそれは大層大袈裟に溜息を吐いた。
「はあ。一時はどうなることかと。僕の寿命は確実に縮みました」
男は見せびらかす様に、片手で自身の髪の毛先をいじってみせる。そこは、少しだけ焼け焦げていた。
「結果良ければ全てよしって、よく言うじゃない」
「だからって、効果抜群に煽らなくても……」
目を走らせると、至る所には爆発の痕跡、そこら中は水浸し、大きな穴の空いた屋根には、今にも落ちてきそうなほどの満天の星――……
『……全て聞かなかったことにしておきましょう。それが御身の為故なれば』
『理由を述べよ』
『理があれば勝ち、理がなければ負ける。闘いとは、そういうものです』
『ほう。妾の話には理が全くなかったと?』
『無茶苦茶にした後は全て天に丸投げ。……それの何処に理があると? これは遊びではないのです』
『ではおぬしは、このまま愛しの妻と御子が死ぬのをただ指を咥えて見ているとよい』
『……はあ?』
思い出しただけで肌が泡立つ。
彼の者は、確実にこの首を取りにきていた。
「あれは、絶対に敵に回してはいけない類の人間ですからね。鬼となれば、都など容易に焼き払ってしまいます」
「味方になってくれたんだからいいじゃない」
「簡単に言ってくれますけどねぇ」
容易でないことは百も承知。味方にならなければそれまで。あの時、あの場で陰陽師にこの命を差し出したまでのこと。
「これだけの被害で収まったことを、僕は存分に褒めていただきたいくらいですよ」
辺りに何もなかったからこそ、男の言う通り最小限で事は済んでいる。
それでも尚、今こうしてこの首が繋がっているのは、何処かの愚か者が、爆風からその身を挺して守ったせいだ。
「御蔭様で、襤褸屋の風通しはかなり良くなったわね。御礼に今度花でも贈ろうかしら」
「そうですねえ。僕個人としては桜と藤は外せません。あとは……そうだなー」
そして、濡れ羽色の髪を解くように梳きながら、男はどこか甘えるように囁く。
「……勿忘草がいい」
「いつ誰が、あんたの好みを聞いたのかしら」
「因みにあなたは何の花がいいですか?」
まるで何かを隠すように、いつもの薄っぺらい笑みで取り繕う。
そんな、哀れな男を束の間じっと睨んでから、溜息を吐くように呟いた。
「橘花《ジュファ》」
「……はい?」
「あんたもよく覚えておきなさい。そしてよく見ていなさい。これからどれだけの人間がこの名に怯え、そして震え上がるかをねえ」
呆気に取られたのも一瞬のこと。
ハハッと年相応の表情で一頻り笑った後、宦官に成り済ましたその男は、ゆっくりと頭を垂れた。
「良《リアン》。必要があれば、その名でお呼びください」
「あら。勿忘草《ウーワンツァオ》でなくていいのかしら」
「長いですし」
「そう。でも褒美は変わらないわよ」
「……褒美ですか?」
「その胡散臭い顔に見飽きた頃だったの。丁度よかったわ」
せっかくだから、庭に植えようかしらねえ。
そう言うと男は、少し困ったように苦笑を浮かべた。
「僕の褒美だったのでは?」
「この庭をあげると言っているようなものよ? 何処に不満があるのかしら」
「……わかりました。じゃあいつ植えてくれるのですか」
「あんたの勝手にどうぞ」
「そんなことだろうと思いましたよ」
ふっと口元に弧を描いた男――リアンは静かに跪いて、それを受け取った。
『勿忘草の記憶』がいつの日か、『嫌がらせ』と言う名の笑い話に変わることも知らずに。
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