『イブの夜』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「何これ」
彼女の言葉に、口には出さずとも同じ事を思う。
色鮮やかに彩られ、飾り立てられた藤。
毛糸。色紙。所々に見える赤い実は南天だろうか。
誰かのいたずらだとは考え難い。この村に住む者は皆、藤に惹かれ帰ってきたのだ。
花の咲かぬ藤が、いつしか再び花を咲かす日が来る事を、皆心待ちにしている。
その藤を無意味に飾り付けるなど、出来るはずが。
「おや。見られてしまったか」
聞き覚えのない声がした。
視線を向ける。幼さを残した、少年とも少女ともつかぬ美しい容姿の子供が立っていた。
その腕には、種々の木の実や落ち葉の入った籠を抱えている。
「驚かせようと思ったのだが。残念だ」
肩を竦め、ゆったりとした足取りで、子供は藤へと向かう。見知らぬ子供。だが、記憶の片隅に微かに残る面影が子供に重なる。
愛でられる事を当然とし、面倒事を嫌う。あれは誰であったか。
不意に、隣から重苦しい溜息がした。
「何をしているの。藤」
「何だ。覚えているのか」
目を瞬き彼女を見る子供に倣い、隣を見る。
僅かに顔を顰める彼女に、よく似た誰かの面影が重なり見え、消えていく。
「思い出してしまったのよ。これは一体何」
「今日は聖なる夜だと聞いたからね」
「クリスマスイブね。それがどうしたの」
親しげに話す二人に、懐かしさを感じた。
呆れながらも優しく微笑む彼女と、自由な子供。
漸く帰ってきたのだと、この地で何度も思った感情に目を細めた。
「木を飾り立て、人の子の目を楽しませる日なのだろう。まだ咲けぬ藤《私》を愛でてくれる、二人を楽しませようと思ったのさ。途中で見つかってしまったが」
「藤をクリスマスツリーにするなんて、大分可笑しな事ね。楽しむよりも呆れてしまったわよ。全て思い出してしまうくらいには」
「驚かす事が出来たのなら、準備をした甲斐があった」
「相変わらずね。藤」
くすくすと鈴の音を転がすような声音で彼女は笑う。
「変わらないでいてくれて、安心したわ。私を覚えてくれていた事には驚いたけれど」
「鈴は特別だからね。妖が人の子に生まれるなど、初めての事だ。人の子の思いの強さには驚かされるよ。なあ、宮司」
笑いこちらを見る子供に、眉を寄せる。同意を求められても、二人の会話の内容は理解出来ない事ばかりだ。
藤。妖。人。記憶。
意味が分からない、と返そうと口を開き。
だがまったく別の言葉が溢れ落ちた。
「俺はまだ宮司ではないのだが」
理解できぬそれに、違和感はない。以前もこんなやりとりをしていたと、口元に笑みが浮かんだ。
「まだ言っているのか。藤《私》の手入れをするのはお前しかいないのだから、宮司で構わんだろう」
「だが」
「相変わらず堅苦しい男だね。何度繰り返しても変わらないな」
呆れたように笑われ、どうしたものかと彼女を見る。
「いいじゃない。白杜《あきと》が宮司だって、皆思っているわ。認めていないのは白杜だけよ」
「鈴も言っているんだ。それにお前が宮司の子として生き、死んだのは何百年も前の過去の事だぞ」
そこまで言われてしまっては、肯定するしかない。
嫌ではないが落ち着かぬのは、子供の言うかつての己が宮司ではなかったからだろう。
断片ではあるが、思い出した事がある。
かつて同じように、二人と共に生きていた事があった。
神楽鈴の付喪であった彼女と、藤の化身。
藤に愛され、藤を愛し。
そして何よりも深く、彼女を愛していた。
「鈴音《すずね》」
「どうしたの」
彼女の名を呼ぶ。
しかし続く言葉を迷い。何もないと首を振る。
伝えたい言葉があった。だがそれは、今の己には意味のない言葉でもあった。
かつては妖であった彼女は今、人として隣にいる。今更、彼女に望む必要はない。
「変な白杜」
微笑んで、寄り添う彼女の肩を引き寄せる。
冷えた体を暖めるように、その華奢な身をかき抱いた。
「随分と大胆なものだね。あの時より思っていたが、お前達は本当に夫婦のようだ」
楽しげな声に、はっとして視線を向ける。
穏やかな表情をした、藤の化身である子供と目が合った。
慌てて彼女を離しかけるが、彼女は胸元に擦り寄ったまま、離れる様子はない。
彼女の視線を向ける。くすり、と笑う楽しげな彼女と目が合った。
「私は夫婦になってもよいのだけれど。白杜は何も言ってはくれないわね」
「そうなのか。早く契ってしまえばよいものを」
「今は私よりも藤の方が大切なのよ。焼けてしまうわ」
彼女の言葉に、藤の化身の咎めるような視線が刺さる。
何か言うべきではあるものの、今のこの場では何を言っても意味をもたないだろう。藤の化身の前で敢えて言葉にする彼女の心の内を察して、すまない、と謝罪の言葉が漏れた。
「鈴音」
「なにかしら」
名を呼べば、悪戯に笑う少女の目をして彼女が己を見る。
眉を寄せる。仕方がないと、一つ息を吐いた。
「この場で促されて言うものではないが…俺と夫婦になってくれないか」
「確かに格好はつかないな」
「そうね。でもまぁ、今夜はクリスマスイブだもの」
「聖なる夜には、奇跡とやらはつきものだな」
藤の化身と彼女が頷き合う。
仕方がないわ、と溜息を吐いて。彼女は藤の元へと歩み寄る。
くるり、と振り返り己を見る彼女は頬を染め、微笑む。
「特別に、その望みに応えてあげるわ」
それだけを告げて、彼女は藤の化身の抱えた籠の中から木の実を取り出し、藤を飾り付けていく。地に籠を置いた藤の化身も、同じように紅葉を藤の蔓に絡ませ始めた。
「何を、している」
「藤を飾り付けているの。白杜の告白は私が言わせたようで、面白くないもの。雰囲気だけでも良くしたいわ」
「そうだな。あれではさすがに鈴が可哀想だ」
「すまない」
視線を向けられる事もなく吐き出される二人の愚痴に、謝罪しか出てこない。
己の謝罪など聞こえていないかのような二人は、笑い合いながら藤を飾る。幻想的な藤なるものを目指し話す二人を見ながら、声には出さずに彼女の名を呼んだ。
彼女を愛していた。否、愛している。
鈴の音のように澄んだ声も、花開くように笑う姿も。何も言わずとも己を理解しているその聡明さも。
誰よりも、何よりも愛しい。
目を閉じる。彼女の声を聞きながら、緩く笑みを浮かべた。
「愛している、鈴音」
「その言葉は、私の目を見て言って欲しいものね」
思っていたよりも近く聞こえた彼女の声に、目を開く。
手を伸ばせば触れられるほど側に、彼女がいた。
藤の化身の姿はない。飾り立てられた藤の蔓が、風もないのにゆらりと揺れた。
「藤から伝言。次の春に、一房だけ藤の花を咲かせてくれるみたいよ」
伸ばされた彼女の腕を引き、抱きしめる。
己の名を呼ぶ彼女の鈴の音のような声を聞きながら、彼女の顎を掬い、目を合わせた。
「鈴音。愛している。藤の花が咲いたならば、誓う言葉をもう一度言わせてくれ。藤の花を見て微笑む、美しいお前に未来を誓わせてくれないか」
彼女には藤の花がよく似合う。
こうして赤や緑に飾られた目の前の藤よりも、淡く色づいた藤色が、彼女の美しさを際立たせる事だろう。
「馬鹿。本当に酷い男ね…でもそんな酷い男を愛してしまった私も、同じようなものかしら」
頬を朱に染めた彼女の手が頬に触れる。
「ねぇ、白杜。今夜はクリスマスイブよ。奇跡の他にプレゼントがほしいわ」
くすりと笑う。
それに笑みを返して、望まれるままに彼女の体を強く抱き寄せ口付けた。
20241225 『イブの夜』
クリスマスイブの今夜、あたしは準夜勤務になった。時間帯は、夕方から日付けが変わる夜中まで。
あたしと同じハズレクジを引き当ててしまった青木先輩と安達先輩との3人夜勤。
当直は外科医の浅尾先生だから、何かあっても相談しやすくてやりやすい夜勤。
それに「クリスマスに仕事だから」と浅尾先生が、準夜勤務と深夜勤務の6人のために買ってきてくれたコンビニのケーキも休憩室の冷蔵庫にある。
21時の巡視や重症者のチェックも滞りなく終えた。
青木先輩と安達先輩が休憩室から顔を覗かせる。
「宮島さん、ちょっと休憩しない?」
「あ、はい!できます!」
滅多に取れない勤務中の食事以外の休憩。
2人は「浅尾先生も呼んじゃった」とコーヒーメーカーをセットしてコーヒーを抽出していた。
ケーキがテーブルの上に並べられている。食べたいケーキを一斉に指差すと、運良く3人バラバラで、おおーっと盛り上がった。
そのタイミングで浅尾先生が「楽しそうだな」と顔を覗かせた。
先生が食べたいケーキは事前に聞いていたから、先生の前に準備して、淹れたてのコーヒーも置く。
浅尾先生のポケットマネーで購入したというコーヒーメーカーはあたしたちの団欒を豊かなものにしてくれる。
命の危機が迫った重症の入院患者はいなくて、ナースコールも鳴らない穏やかな夜。
私はコーヒーカップを両手で包み込みながら、ここに居る先輩看護師と浅尾先生が思っているだろうことを言った。
「今夜、落ち着いてて良かったですね」
「………」
なぜか3人は無言で揃ってあたしの顔を見つめた。
「え?え?あたし、何か不味いことを言っちゃいました?」
「うーん、医療従事者あるあるなんだけどね、落ち着いてるって言うと」
急にモニターのアラーム音が鳴り響く。
ナースステーションに並ぶ心電図モニターのうちの1台に頻脈が見られ、それがアラームの原因だった。
あたしの受け持ち患者さん!21時は異常なかったのに!
「バイタル測ってきます」
急いで血圧計を持ちに行ったあたしに、「待って」とストップをかけたのは浅尾先生。
「宮島さん、12誘導とって」
「え、」
研修で12誘導心電図を習ったけれど、実際の患者に行ったことはない。
まして、今、不整脈が出現している患者さんに、あたしが?
「大丈夫。致死的な不整脈じゃないから。落ち着いてとっていいから」
浅尾先生が安心させるように微笑む。
あたしのプリセプターの青木先輩もその言葉に同意した。
「宮島さん、12誘導やってみて。主治医の浅尾先生が当直で、点滴ルートも入っていて、落ち着いた状態でできる良い機会だから」
「わかりました。やってみます」
おぼつかない手技ながらも、なんとか12誘導をとり終える。患者さんは、頻脈以外には一般状態も安定している。
浅尾先生に12誘導の波形を確認してもらっているとき。
ドスンッ!
大きな物音がした病室へ看護師3人で走っていく。
「大丈夫ですかっ!?」
患者さんがベッドのそばに転倒している。
また私の受け持ち患者さん…
ただ落ち込んでいるわけにもいかず、ボディチェックを行いながらベッドへ誘導する。
浅尾先生が病室に顔を覗かせた。
患者さんは、床の危険察知用のセンサーマットのブザーを鳴らしたくないがために無理に足を伸ばして、足が引っかかって尻餅をつくように転倒してしまったことを報告する。
患者さんの診察をした後、先生はレントゲンをオーダーした。
「レントゲン次第かな。痛みが強くなったりしたら教えてくださいね」
あたしはレントゲン技師さんの介助をした後、ベッドから降りようとした理由を聞き出して対応する。他に考えられる諸々をお手伝いして、用事があるときはナースコールを押してもらうように依頼する。
ナースステーションへ戻ると、浅尾先生の医療用のスマホが鳴った。
え、今のレントゲンで骨折があったとか?レントゲン技師からの報告を疑って、看護師3人で顔を見合わせる。
浅尾先生が通話を切って、あたしたちに告げた。
「急患。急性アルコール中毒」
「あーー」
クリスマスイブだから、羽目を外した人が運ばれてくるのね…。
「入院はうちの病室になるから」
「わかりました。準備します」
「よろしく。若い男性らしいから、皆んな気をつけて。困るようなことがあれば、俺や、他の病棟の男性スタッフの応援を呼んで」
「ありがとうございます」
浅尾先生がテキパキと指示を飛ばしながら、電子カルテをチェックする。
「骨は大丈夫そうだけど、痛がり方や動きによっては、整形外科の紹介をするから注意して」
「はい」
「宮島さん」
浅尾先生があたしを呼んだ。
「転倒は良くないことだけど、宮島さんのせいばかりじゃないよ」
「え?」
「もともとセンサー対応するくらい、危険な行動をするかもしれないと予測できる患者だったんだ。そういう人を1人で防ぐことはまず無理だよ。幸い大きな怪我はないから、今回のことをフィードバックして次に繋げていこう」
「はい。わかりました」
先生は微笑んで、あたしの肩をポンポンと軽く叩いて、夜間外来へ足早に歩いて行った。
初めて経験する急性アルコール中毒の患者の対応はとても厄介だった。
大きな声で叫ぶ、暴れる、点滴を抜こうとする。ベッドに寝てくれない。
外来から男性技師さんが付き添ってくれて、危険のないように押さえつけてくれるけど、酔って力加減が制御できない感じで、あたし達も押さえなければいけなかった。
「治療に協力できないようなら、帰宅してもらうことになりますね」
浅尾先生が付き添いの友人に告げる。
「朝まで様子を見ようと思いましたが、これ以上スタッフに危険を及ぼすようですと、見過ごすことはできません」
毅然とした態度に、あたしが浅尾先生に気を取られた瞬間だった。
!!
お尻を触られた。見えてないけど、絶対に!
あたしは反射的に患者から手を離し、距離を取った。
浅尾先生があたしと患者の間に立ち、あたしを先生の背後に隠した。
「あなたがしたことは立派な犯罪行為です。退院させます」
「でも先生、」
友人が困惑して何かを話そうとしたものの、先生の背中に立つあたしでさえ、先生が怒りのオーラを纏っているのがわかった。
「スタッフに危害を加えた時点であなたを患者として診ることはできません。今夜の病院の責任者は私です。退院してください」
浅尾先生に言い切られて、友人は諦めたようだった。
浅尾先生が点滴の速度を速める。
「終わったらナースコールを押してください」
友人が頷いたのを見届けて、先生はあたしに「行くよ」と小声で言って病室を出た。
廊下に出ると、先生に手を握られた。
「せんせ…」
「着いておいで」
先ほどまでとは異なり優しい声音で、あたしの歩くスピードに合わせて少しゆっくりめに歩いてくれる。
着いていくと、ロビーの自販機前だった。
「ココア飲める?」
「あ、あたし、お金…」
「良いって」
クスッと笑って、先生に椅子へ座るように促される。黙って従って先生を見上げると、先生は小銭を入れてホットココアのボタンを押した。紙コップがコトンと落ちて、ココアが抽出されるのが見える。
はい、と渡されて受け取った。温かい。水面が小刻みに揺れている。
「ごめん。怖かったね」
「……いいえ」
小さな声で否定したけれど、本当は怖かった。先生が怖かったのか、アルコール中毒の患者が怖かったのか。多分、両方とも。
今夜は色々起きすぎて、あたしのキャパオーバーだった上での、セクハラだった。
「ココア、飲んでみて。落ち着くから」
「はい」
先生が少し切ない表情をしているのに気づいた。
「さっきの患者が入院する前に、先生が気をつけてって言ってくださってたのに、あたし、気をつけられなくてごめんなさい」
「…難しいよな。患者の危険を防ぎたいし、夜中だから他の患者を騒音で起こしたくないし。さっき、転倒があったばかりだから余計に」
「はい…」
「常識が通じない患者はいるんだよ。アル中なんて、最たるものだと思うけど。
今夜、病院で起きたことの最終責任は俺だから、ああいう患者は最初から男性スタッフだけの対応すれば良かった。その判断をしなかった俺のせい」
「そんなこと、」
「宮島さんが責任を感じる必要はないよ。やられた方が責任を感じるなんておかしな事だから」
「そしたら先生も、ですね」
「確かに」
不思議。浅尾先生と会話していたら、手や足の震えがおさまってきている。忘れられない出来事にはなったけれど、でも、次は、もう少し上手く対応できる気がする。浅尾先生が、その勇気を与えてくれた。
ナースステーションに戻る途中、先生が軽口を叩いた。
「散々なイブの夜だったな。宮島さんが、今夜は落ち着いてる、なんて言うから」
「あたしのせいですか?」
「病院あるある。落ち着いてるって口に出すと、何かが起こりがちなんだよ。偶然なんだけど、昔からどこの病院でも言われててさ」
「…もう二度と口にしません」
「そうだな。それが良い」
先生がおかしそうに笑ってくれて、あたしも笑顔になる。色々、予想外のことが起きたけれど、今夜のことを教訓に頑張らなくちゃ。
ナースステーションでは、青木先輩が出迎えてくれた。
「宮島さん、大丈夫?さっき震えてたよね。ごめんね」
「いえ、大丈夫です。心配かけてすみません」
「良いよいいよ。落ち着いたなら良かった。浅尾先生もありがとうございます」
「ああ。キミたちは何もされていない?」
「私たちは大丈夫です」
「良かった。あの患者が退院したら、休憩しない?」
「良いですね。とりあえず巡視回ってきます」
「3人とも巡視行って来て。俺はカルテ入力しているから、何かあったら呼ぶよ」
「ありがとうございます」
あたしたち看護師はそれぞれの受け持ちの病室を回って異常がないか確認する。
今度こそ、何も起きないように、しっかり確認することを心がけたら、普段よりも遅くなってしまった。
そんなあたしに「お疲れさま」と声をかけてくれる先輩や浅尾先生。
保温しすぎてやや煮詰まり気味のコーヒーはほろ苦さを通り越している。さっき甘いココアを飲んだから、余計に。
青木先輩や安達先輩には、あたしのケーキの食べが良くないと心配された。あたしは夕食の量が多かったからだと答える。
本当は、持参した夕食なんてペロッと食べちゃったけれど。
浅尾先生をチラッと見る。文句も言わずに煮詰まったコーヒーを素知らぬ顔で飲んでいる。横顔、カッコいいなぁ。
…自分の思考にビックリした。確かにとてつもなくイケメンだけど、仕事中に見惚れたことなんてなかったのに。
それに…食べられない理由を夕食のせいにしてしまった。
浅尾先生がココアを奢ってくれたことを、何故か、自分と浅尾先生の2人の秘密にしたかった。浅尾先生は何とも思っていないだろうけれど、優しかった浅尾先生を、自分だけの思い出にしたい。
「ご馳走様。帰り、皆んな気をつけて帰って」
「はい。ケーキご馳走様でした。ありがとうございました」
立ち上がってペコリとお礼する。
浅尾先生は当直室へ戻って行った。
初めて尽くしだった、看護師1年目のクリスマスイブの夜勤。
学びが多く、先輩たちの温かさや、浅尾先生の人となりを知ることができた。正義感が強く、スタッフを大切にして、毅然として、とても優しい。おまけにカッコいい。
あたしの胸の音は正直に、とくんとくんと大きく速く鳴り響く。
でも、先生は結婚しているから。
あたしは今夜だけ、先生に恋をして、そして忘れることに決めた。
イブの夜は聖なる夜。
朝にはきっと、外科医の1人になっている。
今夜だけは、嘘をつかないで、浅尾先生に恋していたい。
誰にも言わずにそっと、内に秘める恋を。
イブの夜 関連作品 終わらせないで 2024/11/28-29
泣かないで 2024/12/01-02
眠れないほど 2024/12/05-06
手を繋いで 2024/12/10
風邪 2024/12/16
寂しさ 2024/12/21
「イブの夜」
今日はクリスマスイブ……だからといってどうということはない。「ねー!」恋愛にも有効にも無縁だから、いつも通り過ごすだけだ。「ねーねー!」もうそろそろ年末か。「ねねねー!!」
「ニンゲンしゃん?!きいてよー!!」
「ニンゲンくんは独り言中なんだから!邪魔をしちゃダメだよ!」「むー!」
「それじゃ、代わりにボクが話を聞くよ!」「ありがと。」
「きょうのよる、しゃんたしゃんがくるでちょ?」「うん?」
「ぷれぜんと もらえるかなー?」「きっとね!」「わー!」
「ボク、いいこでいるからね?⬛︎⬛︎ちゃん、いっちょにいてね?だいしゅきだからね?ね!」「当たり前だろう?たとえキミが悪い子でもボクは一緒にいるからね?」「ほんと?」「ああ!」
「それがボク達だからさ!」「ありがと!」
「それじゃあ、ニンゲンくんと一緒に寝ておいで?」「んー!」
「ニンゲンしゃーん!だっこ!!」「はいはい。」
……去年はひとりだったクリスマスイブの夜。
今年は随分賑やかに過ごせた気がする。
ふたりとも、ありがとう。
メリークリスマスイブ。
イブの日って、どうしてみんな浮き立つのでしょう。
本番よりも盛大に。
取らぬ狸の皮ほど、値打ちのあるものはないかのように。
25日はきっとみんな、厳かに過ごすのね。
何事もなかったかのように。
「やっと終わりましたよー」と言いながら暖簾をくぐってきたのは、ラッピングチームのドワーフ達だ。
「やぁ、お疲れ様」「先にはじめちゃってますよー」中で待っていたドワーフたちが赤い顔をして声をかける。
ここはドワーフたちの酒呑場。
今日は納会。プレゼントを無事に作り終えたお祝いだ。
「では、みんな揃ったところで改めまして。お疲れ様でした!かんぱ〜い」みんな酒の入ったグラスを掲げる。
「今年もみんなのおかげで無事にプレゼントを送り出す事ができました。今日は思う存分、飲んで食べて発散させてください」リーダーからの陽気な掛け声と共に、ごちそうがテーブルに並んでいく。
ドワーフたちは近くの仲間たちとわいわいと話出す。
「毎年の事ではありますが、いつも注文がギリギリなんですよね。」
「全く。夏くらいから注文してくれたら、こちらも準備に時間が取れるのに」
「みんな12月に入らないと決めないんですよね」
「今年は突然の注文変更も多かったですしねぇ」
「本当に。こっちの都合も考えてほしいものですよ」
「いや、でも今年も無事に終わってよかった、よかった」
「後はサンタクロースが無事に届けてくれるのを待つばかり」
「サンタクロース、早く帰ってこないかなぁ」
「そうですね。締めのデザートは子どもたちからのおやつに限りますからね」
朝までこうして飲み明かす。それがこのドワーフたちのクリスマスイブ。
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お題:イブの夜
32イブの夜
いつもと変わらない夜
ただ昔の偉い方の誕生日だったり
1年の終わりの日がただ近いだけの日の夜
だけど疲れた体を休ませることができない
一体なんのためにあるのか分からないわ
題名→ワタシの夢 名前→春
これを読んでいる貴方はきっと1度は夢というものを見たことがあるだろう。
その中で自分にとっては最悪な夢を見たことはないだろうか。
この話は僕が見た夢の話をしよう。
夢の中
俺は目を覚めると病室にいた。
「春さん〜、あ、目が覚めたんですね。夕食はここ置いときますね」
冷たい態度を取られた。そりゃそうだ、意味もなく僕はここにいる。
「え、、、なんで僕、病院なんかにいるんだろ?」
〜1日前〜
「おはよう〜」
「あれ?、」
知らない子に声をかけられた。
「君って男の子?、女の子?」
私は髪の毛が短く、自分のことも、僕と言う。
「全然男の子じゃないよ。女の子!」
「へぇ〜、見間違えちゃった!、ごめんね!」
「ううん、大丈夫」
男の子に見間違われたのは、初めてのことだった。
「まぁ、春ちゃん女の子か男の子かで言ったら男の子に近いもんね。」
「そうかな?」
「そうだよ」
中休み
「春ちゃん!外行こ!」
友達が誘ってくれた。
「いいよ!行こ!」
階段を降りてる途中、僕は階段を踏み外して落ちてしまった。
そこからの記憶はあまりない。
「そっか、、」
「僕階段から落ちたわ」
自分が覚えている範囲で1日前のことを思い出した。
「今、なんもやることないし、ご飯食べよ!」
一人で晩ご飯を食べて、寝た。
次の日
僕は診察をして、また知らない間に寝ていた。
目を覚ますと、夕方だった。
「…学校、、」
「こういう時ってどうすればいいんだろ?、ていうか僕の家族は?」
誰かが入って来た。
僕の担任だった。
「あぁ!先生!、お久しぶりです!」
「元気そうでよかった…」
先生が悲しそうな表情でこちらを見つめる。なんでかは僕もわからない。
それから先生と色々なことを話した。
「それじゃぁ、時間だからもう帰りますね。」
「はい!、わざわざありがとうございました!」
次の日
「お母さん!」
「なかなか会えなくてごめんね」
「体は大丈夫なの?」
「うん!大丈夫!、てかなんで連絡もなんもしてくれなかったの?」
「ごめんね」
「…」
僕は何にも言えず、泣きそうだった。
「あ、あんた、すっかり変わったね」
「う、うん」
「…」
自分の性別が好きじゃなくてこの際、性別を変えた。
「ごめんね、お母さん迷惑かけて、、」
一週間後
「お、おはよう」
「!?え、、春ちゃん?」
「あはは、、可愛くないでしょ?」
「、、、そんなことないよ」
なにも言わず席につき、カバンを片付けた。
自分の性別が変わったことにはなにも思わなかった。
バカな自分だ。
それから、友達には色々からかわれたりした。
だから、僕はどんなに自分のこと嫌いでも負けたくない。
だいぶ長くなったが、僕の夢の話はこれで終わり。
この話を読んで嫌な気分になった人もいるだろう。
だが、僕はどんなに自分のことが好きになれなくても、君には強く前を向いて生きててほしい。
自分のことを、どんなに好きになれなくても。
「イブの夜」
物語思いつかなかった人です。
イブの夜
↓
訳:夜の夜
( ^◡^ )
イルミネーションのなかを足早にわたしは通り過ぎた。
人工的な幻想空間にたいした思い入れもない。
スマホのLEDの画面があちこちで白々しく光っているのに半ばうんざりしながら、夜の公園に逃げ込んだ。
あちこちで恋人たちが耳元で秘密の言葉を囁きながら、濃密な時間を過ごしている。吐く息は白かったが、何か別の空間に入り込んでしまったように寒さを感じなかった。ベンチに腰を下ろして空を見上げると、黒く染まった木々のすき間から手が届きそうになるくらいに星が降ってきた。
わたしはだれかに今この瞬間に抱きしめてほしいと切実に願った。他のどの時間でもどの場所でもなく、今この瞬間に。
イブの夜は魔性のように、静かに空間に溶けていった。
鈴の音は
貴方と聞けない
片想いの
Love Song
前日の夜に熟睡できたためしがない。
遠足の前の日。受験の前の日。修学旅行の前の日…。
僕は、イブの夜にしっかり眠れたためしがないのだ。
そうして、今年のクリスマス・イブの夜も眠れないでいる。
すでに時刻は23:00。
サンタさんはもう仕事を始めているだろう。
布団の中で寝返りを打つ。
クリスマスの予定は特にない。
ツリーもリースもない無機質な一人暮らしの部屋で、それでも僕は、イブの夜に眠れない。
変な癖だが、なぜこうなったのか理由は分かってる。
僕のキンちゃんが死んだのが、僕の誕生日のイブの日だったからだ。
夏祭りで掬って、一年半も長生きした金魚のキンちゃんが浮いていたのは、僕が誕生日に満面の笑みで起きて来たあの日だった。
僕は泣かなかったし、嘆かなかった。
だって、もうキンちゃんの世話はもっぱら母さんの仕事になっていたから。
でも、僕はその日から、何かの日の前日は、一睡もできなくなった。
だから、その年から僕の枕元にプレゼントが置かれることはなくなり、代わりに同級生の誰よりも早く、サンタの正体を知ることになった。
そして、僕は今日もイブの夜を越す。
布団の中で、目を開いたまま、一人で。
今年のクリスマス・イブの夜も明けていく。
今年も黒い夜空に、月が光っていた。
クリスマスの前日。クリスマスイブ。
子供たちがソワソワする時間。
ネットではサンタ追跡のサイトなどが現れる。
深夜。子供たちが寝ついた頃。
「これからも優しい心で育っておくれ」
白いモジャモジャした髭で赤い帽子に赤い服装をした中年くらいのおじさんが優しい声色でスースーと寝息を立てる子供たちに小さく呟いた。
ーーーーーー
イブの夜
『イブの夜』
病院の会計を済ませ二人で玄関へ向かう。売店の脇に差し掛かった時、母が一瞬足を止めた。どうしたの?と聞くと慌ててこちらに顔を向け「何でもないよ」と歩き出した。
チラッと、売店に目をやる。
棚の下段に手作りらしき雑貨が並び、中でも赤いポーチに目に留まった。母好みの色と形、母が見ていたのはきっとこれ。
母は昔から「まだ使える」と私物を買うことがほとんど無かった。病気になってからは尚更「私は通院や入院にお金が掛かるのだから」と益々物を買わなくなっていった。
袖口や膝が擦り切れた服を見かねて、新しい物を買ってこようかと声を掛けるも母はいつもそれを頑なに拒んだ。
でも、さっきポーチ見てたじゃない…。
母は本当は我慢している。だからポーチを買って渡してもいいがきっとそれでは母の中の何かが許さない気がする。
…そうだ!
私は忘れ物をしたと言って母を車に残すと急いで売店に戻り赤いポーチを買った。
これはサンタさんからの贈り物。それだったら母も素直に受け取ってくれるのではないだろうか。
イブの夜、今夜私はサンタになる。
イブの夜
昨日は家で家族だけのクリスマスパーティーをした
クリスマスの日、ピッとテレビを付けたら
名古屋や、東京、千葉など中継でカップルが沢山いた。
19歳、2019年から現実に彼氏がいない
家族、他人から見て、
お互いに幼い恋愛をしていたんだろう
今は、自分が大好きな死柄木弔、夜神月、エレンたちがいるから気にしていないけど、昨日クリパして現実に彼氏とクリスマスデートをしていないこと
現在25歳で人生の中でクリスマスデートをしていない
どんどんと涙目になってきたんだ
私は脳出血、てんかん発作をもっている
私みたいな障害者でも結婚できるのかな?
私がまだ生まれてきていないときに親戚の方2人が、
病気持ちで、赤ちゃんを産んだことが実際にあった。と、、
母側の親戚の方が赤ちゃんを産んだあとに死亡したこと
父側の親戚の方が赤ちゃんを産んで無事に出産できたこと
いろいろと頭の中がいっぱいで、
私自身が里親になって赤ちゃんを育てたい。だけど
本当は、赤ちゃんを産んでみたい。どんな痛さなのか、どんな幸せが訪れるんだろう?人生の中で、
私の血が入った赤ちゃんを産んで育てたいんだ。
だけど自分の命の危険リスクもあるから、
今後、私と結婚する彼氏さんに相談する
元彼2人が発言していた
山本美月似、韓国アイドルのツワイスのダヒョン似が良かった。と。
今まで私の頭の中に空欄だった元彼のことについて、
思い出した。ツワイスのモモじゃなくてダヒョン似が良かった。と。
男は、女性の性格じゃなくて顔の容姿なのね?
現実逃避をしては、夢の中で、死柄木弔とペアルックをしてホンデットマンションのようなハリポタ世界観のジェットコースターに乗ったり彼が私の手を握って、お互いに微笑み合いながら一緒に楽しく叫んだり、とても楽しい夢の中のデートもできて
私は芸能人たちが恋愛、結婚ニュースが出て
芸能人推しがなくなり、今は、
キャラクターという存在は私にとって欠かせない大切で尊い存在
家にある母のタロットでタロット占いもして
真面目、優しい、私のことを受け止める人
が私の彼氏になる人らしい
優しいと告げる意味があるカードを3枚引いたからだ
今年は仕事の年だったけど、来年は恋愛の年になりますように
昨夜はケーキを食べられなかった。何故ならその前日にフライングしてしまったからだ。母がスーパーでチーズケーキを買ってきたので食べてしまった。しかし今宵はクリスマス。帰りにケーキ屋さんでショートケーキでも買おうと思う。
貴方にとって何でもない日をお祝いしよう。
私にとっての神様は貴方だから。
「イブの夜」 白米おこめ
クリスマスプレゼントは貴方の好物がいいな。
《イブの夜》
保全させていただきます。
いつも読んでいいねを下さっている皆様にはいつも本当に感謝しております。
この場をお借りして、御礼を申し上げます。ありがとうございます。
このアプリ、急にクリスマスに媚び始めたな世俗者め。
夢みたいだ、と唐突に思った。
そして同時に、ああ夢なのかと悟る。
「...お、おにぃちゃん...? お兄ちゃん、だよね...?」
ちいさな呟きがやけにクリアに聴こえてきて、脳を麻痺させるかのような電流が走った。
夢の中の数年振りの弟は昔と変わらず、久しぶりに感じたあの、鏡をそのまま見ているかのような不思議な感覚。
寒いなか待っていた電車のドアが閉まる音が遠くで聴こえた。
それが乗るはずだった終電で、俺を乗せずにゆっくりと駅から離れていっていることなんて、視界にすら入ってこなかった。
「は、る...? はる...?」
「っ、おに、ちゃ...っ」
はるの目に溜めたしずくがふわりと宙を舞う。
茫然と突っ立っていた俺は飛び込んでくる衝撃を受け入れるのでせいいっぱいだった。
「あいたかった、あいたかったよぉ...っ」
ぐわぐわとした浮遊感のなか、忘れかけてしまっていた体温がいとも簡単に、凍りついた心臓を溶かしていく。
なにが起こっているのか脳が身体が理解するのには時間がかかった。ほんの数十秒だったと思われるが、それがそのときの俺には何十分何時間に、時がとまっているように、思えた。
「...おにぃ、ちゃん...?」
俺が黙っていたからだろうが、それをどう捉えたか、体温が軽く離れる。
クリスマスイブの街のあかりが目元のなみだに閉じ込められた、はるのひとみが不安げに揺れる。
「っ、...、ない、てるの...?」
躊躇いながらもそっと目元に触れてきた体温にようやく気がつく。
ああ、夢ではないのか。この夢みたいな現実は現実なのか。
離れた体温を埋めるように、砂糖菓子のように甘くて脆い一時の幸せを引き寄せる。
「...はるも、泣いてんじゃん」
「っ、ぅえ...あ、ほんとだ...」
ふにゃり、とはるがはにかむように笑う。
連れてきたのは、忘れたかったはずの絶対忘れたくない記憶だ。
頭ではだめだとわかっている。
兄としてのするべき行動だってわかっているつもりだ。
降り始めた冷たくて柔らかい雪が頬に触れて、じわりと熱が移る。
「...もうすこしだけ」
「...ん、」
言葉とは裏腹に、すこしじゃいやだ、というように抱き締めるちからが強まったのは俺もはるも。
暗い街を照らすクリスマスのあかりが遠くで光っていた。
─イブの夜─ #149
(いつの日にか書いていた双子の兄弟の話です。
...あれ、コンビニアルバイトにてピュアっピュアの物語書く予定だったんだけどな。気づいたらこっち書きなぐっていたのでとりあえずとりあえずまあまあということで(?) )
イブの夜
いつもよりちょっと早く眠る子供にMerry Christmas
イブの夜、働く人にMerry Christmas
プレゼント抱えるサンタさんにMerry Christmas
たくさん想いを運ぶトナカイにMerry Christmas
今日の夜は有明月、私も長くいたいもの
沢山の人にMerry Christmas
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