イルミネーションのなかを足早にわたしは通り過ぎた。
人工的な幻想空間にたいした思い入れもない。
スマホのLEDの画面があちこちで白々しく光っているのに半ばうんざりしながら、夜の公園に逃げ込んだ。
あちこちで恋人たちが耳元で秘密の言葉を囁きながら、濃密な時間を過ごしている。吐く息は白かったが、何か別の空間に入り込んでしまったように寒さを感じなかった。ベンチに腰を下ろして空を見上げると、黒く染まった木々のすき間から手が届きそうになるくらいに星が降ってきた。
わたしはだれかに今この瞬間に抱きしめてほしいと切実に願った。他のどの時間でもどの場所でもなく、今この瞬間に。
イブの夜は魔性のように、静かに空間に溶けていった。
12/25/2024, 10:08:29 AM