『たそがれ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
ふと、気づけば
日没もだいぶ早くなったものだ。
まだ、感覚的には
明るい時間帯なのだが
外は思いのほか、黄昏れている。
今日から、10月か。
まだ、9月のままだった
カレンダーをベリベリと剥がす。
10月の、私の誕生日の日付けには
じーじーおたんじょおび!と
色鉛筆で、大きくはみ出した文字が
すぐに飛び込んできた。
ふふっと、笑いが込み上げる。
そしてなんとも言いがたい
愛おしさに包まれた。
【お題:たそがれ】
たそがれ
薄暗くなった綺麗な景色を目の前に
誰だかわからない遠くの人をぼーっと眺めて
どこかかちょっと感傷に浸っているような
雰囲気を醸し出す。
だけど実は、
そんな自分にただ自惚れているだけだったりする
まぁそんな日があってもいいじゃんね
だってその綺麗な景色を見れるのは
今日という一日を頑張って乗り越えたから。
この人生の主役は自分しかいない。
だから少しくらい感傷に浸って
かっこいい感じだったり
儚い感じだったりの雰囲気くらい
醸し出しちゃえばいいんだ!
沢山自惚れて自分が自分を愛さなきゃね。
意外と大事なことなんだよね。
#たそがれ
十五夜の夜、俺は煙草を吸いながら月を見ていた。
丸いまぁるいお月様。
月なんて、久しぶりに見たな。
普段は何か用事がない限り部屋から出ないで仕事をしてるから、空なんか一々気にしてなかったけど、こんなに綺麗だったんだな。
久しぶりに月を眺めながら吸った煙草は、随分と美味かったかもしれない。
学校が終わって、僕はいつもの土手にたどり着くと、道路の脇に自転車を停めて身体を投げ出した。
時計はみていないが、時間は18時を少し過ぎたところだろうか。
緩やかな坂の上に寝っ転がっていると、僅かな風に吹かれた雲が視界をゆっくり右へ流れていく。
夕焼けというよりはもう少し暗い。もうまもなく夜になるので帰らなくてはならないのだが、僕はここで日が暮れるまでこうして時間を潰すのが好きだ。
身体を起こす。目はいい方だが、少し遠くを歩いている人の顔は判別できない程度には暗い。犬を二匹連れた女性がやや引きずられるようにしながら川向こうを散歩していた。
ガサガサ。
ふと、物音がした。いや、外なので色々な音がして当然なのだが、その音は異質で、僕の耳に突き刺さった。
音は橋の下、橋と土手の隙間から聞こえた。橋の下より隙間の狭いそこは今の時間、先に訪れた夜のようだ。草を掻き分けるその音は、だんだん大きくなっていく。
犬ではない。不規則なその音は明らかに意思を持っている様子だ。恐らく人間だろう。こんな時間にずっとあの隙間にいたのか。僕は今より少し明るいときにその隙間を確認していなかったことを後悔した。
この付近は決して治安の悪い場所ではない。そしていつものように訪れる公共の場所だ。誰がどこにいようと構わない場所でわざわざ隈無く警戒なんてするやつはスパイにでもなればいいんだ。
ともかく周囲の警戒を怠っていたせいで、今不気味な物音に脅かされている。
少し坂を登れば自転車がある。鍵を外してチェーンをとって。ああ、こんなことを考えている暇があったら早く立ち上がらないと!
物音は更に大きくなっていく。
橋の下の暗闇から僕までは10メートルもない。なのに草むらをこちらへと進んでくる何者かの姿は一切見えないのだ。
「ーーっ」
手だ。か細い白い手が草を掻き分けて飛び出す。この辺りを縄張りとしている浮浪者だろうか。いずれにしても関わって良いことは無さそうだ。
僕は自分でも記録的な俊敏さで自転車に戻ると鍵を開け、チェーンを外して自転車に飛び乗った。草むらから少し頭が出てきたがこの暗さのせいで、顔は見えない。恐らく相手からも僕の顔は見えないはずだ。
ペダルに力をいれるとすぐに自動感知型のライトが点灯する。もう一こぎ。自転車が軌道にのり始める。
僕は後ろを振り返ることなく土手を後にした。
【たそがれ】#62
その頃の空に
君の横顔と太陽の指輪が見えた。
それはとても君に似合って
今からですらも、贈りたいと思わせる。
金色に輝く太陽と争わず
それと調和して新たな美しさを生み出す
君の器の広さを感じた。
やはり、君は美しい。
黄昏時、学校の屋上から夕焼けに染まる街を見ていた。遠くの山に太陽が沈んでいく。もうすぐ闇夜が訪れる。
「いけないんだ。立入禁止だよ、ここ」
背後から突然声をかけられた。
この声はクラスメイトであり幼馴染のあいつだろう。
そのまま横にやって来て、並んで夕焼けを見始めた。
「綺麗だねぇ」
隣からはしゃぐ声が聞こえる。
「立入禁止だぞ」
「先にいたあんたがそれ言う〜? それに私が先に注意したんですけど!」
からかうと、一瞬で不満そうな声に切り替わった。
あぁ、やっぱりこいつといると楽しいな。一人でいたって、簡単に見つけ出してくれる。
美しい夕焼け。二人しかいない空間。
もしかしたら、今なんじゃないのか。ずっと胸に仕舞っていた気持ちを伝えるのは。
「好きだ」
前を向いたまま、俺はそう伝えた。
あいつの顔の方を向けない。だって、きっと真っ赤になっている。でもそうツッコまれたって、夕焼けのせいだって言い訳しよう。
あー心臓が今にも飛び出しそうだ。
何か言ってくれ。俺は我慢しきれなくなってあいつの方を向いた。
黄昏は誰そ彼とも書くらしい。夕暮れで人が識別できなくなる時分だと。
そして黄昏時は逢魔時とも言う。読んで字の如く魔物に逢う時分だと。
初めて聞いた時、どちらもなんだか恐ろしい言葉だなって感じたことを、急に思い出した。
夕焼けの太陽の光に目をやられ過ぎたのか、それとも夜が近くなって少しずつ薄暗くなってきたからなのか、あいつの顔が見えなかった。
『たそがれ』
たそがれどきは
諦めの時
夜の闇が来る前に
戻り道があるうちに
失くしたものを
探すことをやめる時
逢いたい
という言葉を飲み込んで
伸ばしかけた手を
引っ込めて
鳥かごに
あのひとへの想いを
閉じ込める
たそがれどきは
そんな時
# たそがれ (292)
大丈夫だよ
君の元に静かな光が舞うように
大丈夫だよ
君の元に当たり前に幸せがあるように
頑張り屋な君だから きっと言い出せなかったんだろう
自分のことを責めてるけど
きっと悪いことじゃなかったんだよ
君の元へと春が舞いますように
静かな光に包まれますように
幸せと君が思えるなら
それをどこかで知れる僕で居られますように
なにより優しい君だから きっとずっと抱えてたんだろう
ありがとう そんな君に救われた人が居るから
君の元にたくさんの花が咲きますように
そこかしこに幸せがありますように
良かったと君が思えるなら
それをどこかで知れる僕で居られますように
ふわりとした風が君を包んでいく
ゆっくりでいいんだよ
君の春の知らせを僕はいつでも願ってる
友人と遊んだ後に何時も行く場所
山に入り、開けた場所迄行く
友人と此処で見る物は
黄昏時
町が夕焼け色に包まれる
其れの景色を二人で眺める
飽きなくて、寧ろ落ち着きがある
静かな山
風の吹く音
虫の鳴き声
鳥が飛んでる姿
微かに見える人の姿
唯、其れだけの事
だけど、その黄昏時は
私と友人の大切な時間
# 139
僕たちはいつも3人だった。
しっかり者の桜とおっとりした菜花、そしてこれと言ってなんの特徴もない僕。
桜と菜花は双子で、その間に僕がいたものだからよくからかわれたなと今になって思う。
小学生の時はいつも一緒に帰っていた。調子に乗ってふざける僕に、桜が叱る。その横で、ふふっと花が咲いたように笑う菜花。
中学に入ってからは男女の距離感が掴めなくなって3人で帰る事は減り、僕と菜花で帰ることが多くなった。菜花は花が大好きで帰りにはよくその話をしてくれた。僕はとても楽しそうに話す菜花の左顔に惹かれていた。彼女はそれを知っていたのだろうか。
僕たち3人は同じ高校に進学した。
桜は生徒会に、菜花は華道部に入ったようだった。
僕は帰宅部と決め込んでいたのだが、桜に「やる事ないなら私と生徒会でもどう?」と強引に誘われ、見事生徒会書記になってしまった。
当然3人の下校時間は合うはずもなく、3人一緒という時間はほぼなくなってしまった。
菜花は部活で忙しく、中学の頃とは逆に桜と帰ることが多くなった。
僕の趣味や今日の出来事を話すと、優しい笑顔で相槌を打つ右顔に惹かれていた。彼女はそれを知っていたのだろうか。
そんなある日、僕は菜花に空き教室へ呼び出された。
生徒会の仕事はなかったので菜花の部活が終わるまで待っていたら窓からはとても綺麗な夕日が見られた。
「ごめんね、遅くなっちゃって。」
とドアを開けながら菜花は言う。
「いいよ、全然。コンクール近いんだろ?」
と僕は言う。
菜花は窓側の自分の席に座って荷物を置くと、僕に向き合った。そして大きく深呼吸をすると
「こんないきなりでごめんなさい。小学生の頃から大好きでした。わたしと付き合ってください。」
僕は頭の中が一瞬真っ白になった。何も考えられなかった。とても混乱している。
僕が返事に困っているのを見て、菜花は返事はいつしてくれてもいいよ。と言ってくれた。
再び彼女の方を向くと、彼女の表情は逆光で全く見ることができなかった。
翌日、生徒会の仕事をしながら昨日の事を考えているといつのまにか最終下校時刻になっていた。
のっそり歩いていたら桜に置いていかれそうになったので急いで靴を履いて昇降口を出た。
そうだ。いっそのこと菜花のことを桜に相談してみようか。彼女はいつもこういう時に的確なアドバイスをくれる。彼女のアドバイスで失敗したことはないのだ。
と思い、桜に話そうとした瞬間だった。
「あんたさ、好きな人いるの?」
ぎくりとした。あの桜が急にそんなこと言うものだから。もしかして昨日の事をすでに菜花から聞いたのだろうか。
いやいないけど。と返すと、少し安心したような声色でそっかとつぶやいた。
「驚かないで聞いて欲しい。私あんたのことが好き。返事はいつでもいいから。私、待ってるから。」
彼女はそう言うと、じゃ、と言って走って帰っていってしまった。
夕日の逆光で彼女の顔は見れなかった。
僕はどうすればいいのかわからなかった。
楽しそうに話す菜花の左側も、優しい顔で相槌を打つ桜の右顔もどちらも好きだったからだ。
こんな事最低だなと思っても答えなんていくら待っても出なかった。
情け無いことに、僕はこのあと熱を出して1週間学校を休むことになってしまった。
そんな時に事件は起きた。
菜花が下校中に何者かに刺されて亡くなってしまったと言うのだ。
僕は信じられなかった。あの菜花が。楽しそうに花の話をして明るくておっとりしていたあの菜花が。
どうしてもっと一緒にいてあげられなかったのだろう。どうしてもっと一緒に帰らなかったのだろう。
後悔しても遅い事はわかっていた。
後悔してもあの花のような笑顔が戻る事はない事はわかっていた。
菜花の葬式が終わった。
桜の目は腫れ上がって真っ赤だった。僕も人のことは言えないが。
桜は僕を気遣って、外に散歩でもしに行こうかと誘ってくれた。その日も綺麗な夕日が出ていて眩しいくらいだった。
「あんたさ、菜花に告白されてたんだって?」
桜はぽつりと呟く。どうして彼女がそのことを知っていたのだろう。
すると僕の心を読んだかのように、桜は
「......菜花の日記に書いてあったんだよ。あんた、なんで返事してあげなかったの?あんたにokされてたら、菜花はきっと、きっと...幸せのままいなくなれたのに。」
桜は僕にしがみつく。あのしっかりもので強気な桜が僕の胸でわんわん泣いている。僕は咄嗟に、
「桜が、好きだったからだ。」と口走った。
最低な人間だ。僕は自分をそう評価した。
桜は目を丸くして僕を見上げる。なぜだろう。夕日に照らされた彼女はいつもより何倍も可愛く見える。
彼女の顔がみるみる赤くなり、僕から少しだけ離れた。
そのあと花のように笑って
「わたしも、大好き」と答えた。
僕は桜を抱きしめたくなったが、彼女は少し先を歩き始めた。逆光が眩しい。
僕はひとつの違和感に気づいた。
彼女は、桜は、花のように笑わない。いつも優しい相槌を打ってくれた桜ではないように感じた。
心にヒヤリとしたものを感じながら、前を歩く彼女にこう尋ねた。
「.............お前、誰だ?」
前を歩く彼女はこちらを振り返る。
「さあ?」
彼女の表情は逆光で見ることができなかった。
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お題 たそがれ
たそがれる暇もないのはきっとトイレに行きたかったからでしょう。
黄昏時は一日のうち日没直後、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯のこと。
「たそがれ」
降り立ったフィールドは真っ赤で。
まるで血の海を透かした世界のようだった。
「下がってな」
前衛を勤めるヒムは後ろの娘達に一声掛ける。
「補助を掛けます」
「油断しないでね」
現れた巨大な獣が空気を震わせる。
羽の生えた6本脚のライオンって…創造主はどんだけイカれた性能ぶっこんで来るんだよ。
メルルとレオナのバフが掛かった瞬間に跳躍して、獣の懐に飛び込んで行った。闘気を乗せ殴り掛かる。
分厚い毛皮が衝撃を吸収したのが分かった。頭などひと飲みにできそうな巨大な猛獣の顎、極太の脚から繰り出される爪から逃れてまた打ち込む。
「ヒムさん!」
「来るな!巻き込まれるぞ!」
メルルの声がして叫ぶ。
黄金の手かざしの光が通過していく。現れた雑魚に次々と当たった。
「ナイス!」
「はいっ」
神殿の空気で乱反射する太陽光に視界が狂いそうになる。
また腰を落として格闘術を叩きつけ獣の背後に回る。破断獣が怒り狂ったように唸りこちらを探していた。
傷付いても傷付いても後ろから回復が飛んでくる。自分が下がったら後ろの二人はまず助からない。
「ちっくしょう!」
殴り付けてはまた横へ跳ぶ。
また娘が前に来た。
「メルルこの馬鹿野郎!前に来るなって…!」
「伏せてヒムさん!ヒートブレス来ます!」
「あ!?」
獣の喉の奥が赤く燃えた。補助の光が身体に張り付いたのが分かる。
(やべぇ!!)
自然に娘を庇い、全力でガードをする。固いオリハルコンでもってしても熱の波が一気に押し寄せてきた。
圧力に押される。ブレスが収まるまで耐えるしかない。腕の中の娘は悲鳴すら上げない。強いな。
炎が収まる。淡い金色の光が身体を癒していた。
「メル…!」
彼女は放射熱の中、回復呪文を掛け続けていてくれたのだ。
「今です」
「おう!下がってろ!」
「はいっ」
灼熱の息を終えた獣は隙だらけだ。
黒髪の娘はすぐに後ろへ戻る。
娘の合図を受け、巨大な怪物に突撃する。守るべき人間は見事な観察眼をもち、補助と援護を続けられる最強の女達だった。
授業の終わりを表すチャイムが静かな教室に響き渡る。
黒板の目の前に立っている教師はまだ黒板を使って音楽を奏でている。
チャイムの余韻もすっかり消えた頃、やっと黒板から聞こえてくる音楽は鳴り止んだ。
「今日はここまで、予習と復習忘れるなよ。」
と指揮者は言って騒がしくなった教室から出ていった。
ホームルームも終わり、騒がしかった教室はいつもの静かな教室に。
黒板はいつもの何も書いていない譜面に戻る。
カーテンが音楽を奏で始める。
もう夏も終わる頃、少し肌寒い季節
静まり返った教室に、氷のような冷たさの風が入り込む。
カーテンは少女の履くスカートの様にヒラヒラと舞う。
使い古されたカーテンは少し色褪せて、小汚い
放課後のこの少しの時間だけはカーテンも可憐な姿となれる。
物達にも大切な時間はある、私はそう信じている。
窓際の特等席で、たそがれながら下らない話をする
ぽつ、ぽつ1つずつ大切に、落ち着いて話す事が出来る私だけの大切な時間。
黄昏時の間はこんな私でも可憐になれるのよ。
さぁ暗くなる前に帰らなきゃ
―たそがれ―
たそがれ、誰そ彼。夕闇に埋もれるあなたはどなた?
その問いに普通に答えてしまっては少々つまらないというもの。ぜひ当ててみてくださいな。
わたしの大きさはしっぽを含めて一メートル以内、四つ足を地面に着いた状態での背丈は五十センチ程度でしょうか。そう、中型犬程度ですね。しっぽは長めでふわふわ、顔はキリリとした肉食動物顔です。口と鼻が尖っていて、両の目が正面についています。目はネコと同じく瞳孔が縦長になります。毛は黄金色が多いですかね。可愛いでしょう? 可愛いですよね? 牙も肉食動物並みのやつです。ええ、肉食です。ネズミやウサギを食べますよ。くだものや木の実も食べますがね。鳴き声は「コーン、コン」と表記されることが一般的かと。
わかりましたか? まだわからない? 「わかったけど、君はどう見たって人間じゃないか」? おやおや、今は夕方、黄昏時です。あなたの見ている景色が正しいとは限りません。よもや化かされているのでは?
ふふ、わたしの気まぐれに付き合ってくれたあなたにご褒美代わりの情報をプレゼント。
わたしのしっぽ、実は九つあるんですよ。もっふもふです、もっふもふ。良いでしょう?
黄昏。
────────────────────────
私は生まれつき身体が悪い。
足は不十分だし耳も聞こえずらい。
体調だって崩しやすい
ただ、私が唯一誇れるのは「目」だった。
普通の人よりも不完全な私が唯一、最も優れていたのは「目」。
私の視界は一般の人間よりも広く、見やすく、はっきりと見える。
耳は聞こえずらいが、目はどこにいっても確かに見える。
生まれつき身体が悪い私は数々の虐めにあってきた。
皆は私の体が全て不十分だと思い、暴力や暴言をうけてきた。
それでも、私はまだ生きている。
勿論、正直に言うとこの世に未練はない。
誰かに何かを伝えたいわけでもない。
毎日病院生活で、いつ死ぬか分からないこの状況で生きたいとは思えないからだ。
薬、点滴、手術、治療 。医療の力をここまで借りても私は治ることがない。
ただ、一つ言うなら 私の優れた個性をこの窮屈で退屈な病室で楽しみたい。
だから私は今日も病室の車窓から黄昏れている。
いつか夕日が沈む頃に私の息が途絶えるのかと、
おぼろげに考えながら私は 今日も深く呼吸する。
ふんふんと鼻歌を歌いながら、ローテーブルを窓辺に引っ張っていく君。
また何かやるのか、とキッチンの流しで米を洗いながら眺めていると、スリッパをパタパタ言わせながらリビングから出ていった。
と、思ったら直ぐに座布団を抱えて帰ってくる。
そして、またリビングを出ていった……あ、帰ってきた。
今度はトイレに飾っていた益子焼の一輪挿し、生けてある花を見て合点がいった。
ああ、十五夜か。
月日の経つのが早いこと、と米と水を入れた釜をセットして炊飯器のスイッチを押した。
さて、お月見だんご、どうしようか。
テーマ「たそがれ」
産まれてきてくれてありがとう。
恐る恐る赤ん坊を抱えると、儚げな重さだがはっきりと存在を実感する。
思わず涙がこぼれ落ちそうになり、顔を上げると窓からの景色が目に映る。
日が暮れて間もないのだろう、茜色が夜空に溶け込むようにグラデーションを織り成す。
名前は茜なんてどうかな。
でも今どきだとシワシワネームだなんていじられちゃわないか心配だ。
たそがれ
茜色が私を呼んでいる
ゆらゆらと揺れては
ビルの隙間から陽が覗く
望んでた景色とは
私は何処へ
帰ろうか
#たそがれ
私は夕陽を見ながらたそがれていた。
はぁ…
溜め息しか出ない。
毎日を無事に終える
それだけで精一杯なんよね…
そんな時は君に会いたくなる。
私は一か八か電話をかけた。
「はいはぁい!」
「今から行ってもいい…かな?」
「いいよ!おいで♪」
君は私の様子がおかしい事に
気づいていたと思うけど
何も聞かずにいつも通りに
ご飯を作ってくれて
一緒に食べてお酒も飲んだり過ごしてくれた。
するとほろ酔いになった私は
自然と君に気持ちを打ち明けていた。
すると私の頭を撫でながら…
「なぁ…一緒に暮らさないか?」
え…えぇぇぇっ!?♡///
私たち幼馴染みだし
まず付き合ってないよね?
私は数秒間フリーズした。
「あ!悪い、順番間違えた!
ずっと考えてた…俺と付き合ってほしい!」
まさかの告白された。
私は心臓が飛び出しそぉになりながらも
「よ、よよよろしくお願いしますっ♡///」
と返事をしていた。
いつも私を落ち着かせくれたのは君だよね。
一番近くに居てくれる。
君は凄く安心した顔をした。
そして優しくキスをした。
「これからもお世話になりますよろしくね。」
「なんだそりゃ(笑)」
おでこをひっつけて笑っていた。
ほんとありがとう。
私は心から君に感謝した。