彗皨

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黄昏。
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私は生まれつき身体が悪い。
足は不十分だし耳も聞こえずらい。
体調だって崩しやすい
ただ、私が唯一誇れるのは「目」だった。

普通の人よりも不完全な私が唯一、最も優れていたのは「目」。
私の視界は一般の人間よりも広く、見やすく、はっきりと見える。
耳は聞こえずらいが、目はどこにいっても確かに見える。

生まれつき身体が悪い私は数々の虐めにあってきた。
皆は私の体が全て不十分だと思い、暴力や暴言をうけてきた。
それでも、私はまだ生きている。

勿論、正直に言うとこの世に未練はない。
誰かに何かを伝えたいわけでもない。
毎日病院生活で、いつ死ぬか分からないこの状況で生きたいとは思えないからだ。
薬、点滴、手術、治療 。医療の力をここまで借りても私は治ることがない。

ただ、一つ言うなら 私の優れた個性をこの窮屈で退屈な病室で楽しみたい。
だから私は今日も病室の車窓から黄昏れている。

いつか夕日が沈む頃に私の息が途絶えるのかと、
おぼろげに考えながら私は 今日も深く呼吸する。

10/1/2023, 5:41:02 PM