過眠症の中で生きる

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授業の終わりを表すチャイムが静かな教室に響き渡る。
黒板の目の前に立っている教師はまだ黒板を使って音楽を奏でている。
チャイムの余韻もすっかり消えた頃、やっと黒板から聞こえてくる音楽は鳴り止んだ。
「今日はここまで、予習と復習忘れるなよ。」
と指揮者は言って騒がしくなった教室から出ていった。
ホームルームも終わり、騒がしかった教室はいつもの静かな教室に。
黒板はいつもの何も書いていない譜面に戻る。
カーテンが音楽を奏で始める。
もう夏も終わる頃、少し肌寒い季節
静まり返った教室に、氷のような冷たさの風が入り込む。
カーテンは少女の履くスカートの様にヒラヒラと舞う。
使い古されたカーテンは少し色褪せて、小汚い
放課後のこの少しの時間だけはカーテンも可憐な姿となれる。

物達にも大切な時間はある、私はそう信じている。
窓際の特等席で、たそがれながら下らない話をする

ぽつ、ぽつ1つずつ大切に、落ち着いて話す事が出来る私だけの大切な時間。

黄昏時の間はこんな私でも可憐になれるのよ。
さぁ暗くなる前に帰らなきゃ
―たそがれ―

10/1/2023, 6:01:36 PM