やなまか

Open App

降り立ったフィールドは真っ赤で。
まるで血の海を透かした世界のようだった。

「下がってな」
前衛を勤めるヒムは後ろの娘達に一声掛ける。
「補助を掛けます」
「油断しないでね」
現れた巨大な獣が空気を震わせる。
羽の生えた6本脚のライオンって…創造主はどんだけイカれた性能ぶっこんで来るんだよ。

メルルとレオナのバフが掛かった瞬間に跳躍して、獣の懐に飛び込んで行った。闘気を乗せ殴り掛かる。
分厚い毛皮が衝撃を吸収したのが分かった。頭などひと飲みにできそうな巨大な猛獣の顎、極太の脚から繰り出される爪から逃れてまた打ち込む。
「ヒムさん!」
「来るな!巻き込まれるぞ!」
メルルの声がして叫ぶ。
黄金の手かざしの光が通過していく。現れた雑魚に次々と当たった。
「ナイス!」
「はいっ」
神殿の空気で乱反射する太陽光に視界が狂いそうになる。
また腰を落として格闘術を叩きつけ獣の背後に回る。破断獣が怒り狂ったように唸りこちらを探していた。
傷付いても傷付いても後ろから回復が飛んでくる。自分が下がったら後ろの二人はまず助からない。
「ちっくしょう!」
殴り付けてはまた横へ跳ぶ。
また娘が前に来た。
「メルルこの馬鹿野郎!前に来るなって…!」
「伏せてヒムさん!ヒートブレス来ます!」
「あ!?」
獣の喉の奥が赤く燃えた。補助の光が身体に張り付いたのが分かる。
(やべぇ!!)
自然に娘を庇い、全力でガードをする。固いオリハルコンでもってしても熱の波が一気に押し寄せてきた。
圧力に押される。ブレスが収まるまで耐えるしかない。腕の中の娘は悲鳴すら上げない。強いな。
炎が収まる。淡い金色の光が身体を癒していた。
「メル…!」
彼女は放射熱の中、回復呪文を掛け続けていてくれたのだ。
「今です」
「おう!下がってろ!」
「はいっ」
灼熱の息を終えた獣は隙だらけだ。
黒髪の娘はすぐに後ろへ戻る。
娘の合図を受け、巨大な怪物に突撃する。守るべき人間は見事な観察眼をもち、補助と援護を続けられる最強の女達だった。








10/1/2023, 6:12:20 PM