村人ABCが世界を救うまで

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5/22/2026, 2:27:00 PM

人々は飽きもせずクリスマス並に飾り付けをされた夜会に精を出す。
むせ返る化粧の香り、香水の香り、タバコのような香り。空気は綺麗だけど色んな匂いが混ざっていてあまり好きではない。
日本人の感覚的には、オンラインが主流になる世界線だと思ってたんだけど、一部の富豪世帯は違うみたいだね。
いわゆる社交会ってやつ。噂話に政界の話。儲け話に御子息達の嫁探し…。そして誇示と自己顕示欲―――。

奴は私を着飾って一歩後ろに歩かせる。
それであの男の気が済むなら安いものだと思う。決闘という古風な呼び名の見せ物もすぐに始まった。いわゆる自分の手駒のお披露目会。最新技術の競り合い。大きな商談も決まるらしい。
「良かったぜお前… しかし危ねぇな。後少しで殺しちまうとこだった」
言葉では心配している素振りだが、自分の連れてる商品が話題を掻っ攫ったんだもんね、まんざらでもない様子だ。
頬をなで、髪を愛しげに触れてくる。気持ちが…悪い…。髪は炎でチリチリになってしまったし肌もひりつく。まだ少し調整は必要なようだ…。

共鳴感が一気に高水準を叩き出し数値も一気に伸びたらしい。観客総立ち。クリスタルのような古代魔岩礁を召喚。遠隔攻撃をすぐさま反射。電流で陣を描き炎の追撃…。多分、想定以上。
オーナーの停止の声で一瞬で首に何十もの糸が絡まったかのような苦しさを覚えた。本当、よく止まったわ…。


跡が…残っている。あとは私はただ彼の逆鱗に触れぬように目を伏せて付く…。同じ会場にいる昔の恋人は哀れなように見てくるけど、そもそも貴方が…私の権利を二束三文で売り渡したんじゃないの。

終わった後はホテルで湯浴みをして食事もそこそこに、ベッドに突き飛ばされる。眠る間はない。激しい愛撫が始まった。二人の男がいつものように見下ろしてくる。撫で回す手も、金属の棒を内臓に突き刺してくるような行為も耐えられる。適当に演技を挟んで、気を失えばたたき起こされる。
平気…。あの人が付けた昨日の記憶で耐えられる…。

次の日に私は夜会中に、半身を吹き飛ばされた。
何週間か前に見た光景と重なる。ここだったんだ。家で待ってるかもしれないあの人に、心配掛けてないといいな…。


また明日


5/21/2026, 2:29:20 PM

男は恋愛感情が無くても抱けるんですよ。好きかどうかじゃなくて、この仕事をしていると、抱けるか抱けないか、です。
貴方が一番知ってるからとんだ皮肉ですけどね…。

貴方を力付くで抱いて、僕の色に染めることは可能です。時間をかけて甘く溶かすほど愛することも可能です。
でも、僕たちはそんな関係じゃないです…。気の毒に思ったんです。もっと。貴方の体は優しく扱われるべきなんです。痛ましくて、見ていられません…。

心は大荒れ(透明)




その数日後に、男の狂気と、懐の広さと温かさを知った。

きつく抱かれ拘束されていた。体重なんて2倍近くある。きっと加減はしている。でも厚い胸板はびくともしない。
「や…や、やめて…っ」
あっ…と、自分でも驚くほど高い声が出た。
彼は荒い吐息を吐き出しながら、私の髪をなで付け、現れたうなじに唇を這わす。背中に電流のようなものが流れて、抵抗する力ががくりと落ちる。
「行かせません。あなたに、叩き込む…どれだけ大切に思っているか。言って分からないなら仕方ない。そう言ったのは貴方ですよね」
昨日、あいつらに塗られた薬がまだ体内に残っていた。ダルくて、あちこちが敏感になっている。腰を撫でられるだけで声が上がった。
「ひっ…あっ、あっ……だめぇ…っ」
優しい触れ方で、こんなの、初めてだった。そのまま彼の指が背中をつぅとなでる。
「っっやぁ…!!」
顎を上げてあえぐ。
どうして、私の弱い所を知ってるの。
「み、耳、や、やめて…」
おかしくなりそうで懇願したら裏目に出てしまった。逃げようとする度に、引き戻されて、腕のなかに閉じ込められる。こんな彼を知らない…。
「お願い、やめて…私達、戻れなくなるよ!」
「もう遅いです、上司とか部下とか関係ない。ここまで煽っておいてひどいんじゃないですか」
汗が噴き出す彼の苦しげな顔。器用な指が衣服の奥に入り込んでくる。敵わない。その途端に、あまりの力の差に愕然として脱力した。
涙が次から次へと溢れてくる。
「好きにしたらいい…」
彼は首筋にキスをして、おやと思ったらしい。
「好きに、してよ…穴に全部…あふれるぐらい入れたら満足なんでしょ…」
膝が震えて、彼の恐ろしさで泣いてしまう。
すると乱れた服をそっと器用な指で直す彼が居た。先ほどまであちこち弄っていた指…。前髪の向こうはひどく傷ついた顔をしていた
「ごめん」

命令して、家を出た。
こんなの、裏切りだよね…。触れてくれてありがとう。こんな、鶏ガラみたいな身体を大切に触れてくれた。これだけで何があっても平気だ。
彼の手は優しくて、私は口で嫌だと言いながらぜんぜん抵抗なんて出来ていなかった。




5/20/2026, 6:44:19 AM

帰ってきた彼女を、半ば強引に振り向かせた。
「またあの男達に会ってきたんですか」
そうよ!と、彼女は思ってもない大声を出した。

「私1人でできることは限られているわ。だから、あいつに…下ったの。仕方なかった…。矛盾してるとでも言うの」
彼女の顔は明らかに不満がにじみ出ていた。不機嫌…よりも不信感に近い。
自分は冷酷に告げた。
「矛盾だらけですよ。あなたは『誰かの傘下に落ちるのが嫌だ』と言いながら、彼らに利用され、守られることを望まざるを得ない状況に置かれている。それが最大の歪みです」


組織の機嫌を取り、西門を支持し、父の思惑を汲む…。そんな綱渡りをしてまで守られようとしているのは、あなた自身というよりは、彼らにとって都合の良い『駒』『付加価値』なのではないか。
「そう、か。そんなにおかしいか。そんなに歪んでいるか。だって、私の力だけじゃ全てに対応できない」
彼女は銀髪を振り回して叫ぶ。彼女の息が上がるのを知っていたけど、落ち着くまで待った。

「歪んでいるのはあなたではなく、あなたをそのように追い込んだ彼らの方です。愛していたはずの相手から拒絶されれば、心が壊れそうになるのは当然のことですよ」

そう、彼女は愛しているのだ。未だに。何年も前に亡くなった人を。

あなたが彼らを敵と認められないのは、あなたもまた付加価値を見出しているからだ。とまで言うと…あまりに卑怯かもしれない。


「甘い言葉の裏には、必ずと言っていいほど毒が仕込まれているものです。特にあなたが切望している『救い』を餌にされるのは、最も卑劣な罠ですよ」

違うのよと、彼女は首を振る。声が震えている。
「貴方まで…失いたくないの…」

透明な涙がぽたりぽたりと落ちて手を濡らしていた。

5/19/2026, 7:28:23 AM

朱色の雲は天に吸い込まれ周囲の山は燃えるように染まっていた。
さざなみ立った湖は、鳥たちの羽根を揺らし夕闇の虹を彩る。
少年の香りを横顔に残したまま、彼は遠くを見つめていた。
瞳に映るのは憎しみか羨望か。
いつかは終わりにたどり着く旅だと思っていた。
どこかで慢心を抱いていたのかもしれない。


恋物語

5/17/2026, 6:52:45 PM


あの人の夢を叶えたかった。愛とかは分からない。一人で強風の前で立つあの人を支えたかった。
全てに絶望していた私を求めてくれた。
まだ生きていていいと、必要とされた。
それだけで全てを捧げる覚悟ができた。
過酷だった。昼は暴風の荒地。夜は極寒。燃料も食料も極わずか。追っ手は昼夜問わず空から地面から。生傷の絶えない気の抜けない日々。生きている実感のある日々。
私達はすり寄って暖を取った。
どうかこの人を生かして南へ。

地平線を覆う人と人以外に囲まれた時、終わりを知った。

私達は家を亡くした。
自責。後悔。絶望。絶命。
断絶。監獄。罪だと言うのか。

ならば罪を背負おう。それが貴方と繋がる。

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