小さな音がして、それが鈴の音だと分かったのはやっと寝付けた深夜だった。
さっきからずっとうるさい。
「私を望んでいたくせに」
白いカーテン越しに見た夜空は珍しく月が浮き、ぞっとするような青さだった。
「望んで…おれが?」
「そう」
夢うつつに声の主を探すと、部屋の角に居た。
声からして少年のようであったけど、重たげに布を幾重にも身体に巻いて華奢な体躯が見て取れた。ざんばらの髪に身長に見合わない長い棒のようなものを携えている。
「なんで今更」
「夢で呼んでいただろう。助けろと」
自分がけだるく起き上がると、娘は鈴を一度だけ鳴らしただけですぐに眼の前に居た。
もう終わりだ。自分など。
だが娘の黒々とした瞳には危険な光が浮かんでいる。笑っているのだ。
「連れて行ってやろう。今すぐにだ」
死神は小さな掌を見せた。
6/30/2025, 7:28:06 AM