やなまか

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男女の仲とは違うのだ。

またナナはサシェゼの後ろを付いてきた。
逃げることも「貴方なんかに」と気高く振る舞うことも出来たらだろうに。なんて愚かなのか。

中肉中背の男だった。
燃えるような赤毛の隙間から覗く獰猛さを含む金の瞳は、いつも嘲るようにナナを見る。弱みを脅して、実行にまで移せる男だ。
(また殺される)
ついには現実のものとなったのも記憶に新しい。

奴の強烈な存在感にベッドの上で身が竦んだ。
扉が開く。あの男が部屋に戻ってきた。途端に空気が凍りつく。
(まるでヘビに睨まれたカエルだ…)
「なんだお前あの戦い方は」
何か飲み物を次いでいる音がする。アルコールなのかは分からない。が、機嫌はあまり良くなさそうだ。
「まだ分かっていないみたいだな。情けない戦い方しやがって。また俺に縋り付いてくるくせに」
サシェゼはグラスを音を立てて置いた。
喉仏のある首元の服を緩め、湯上がりのような素肌が見える。そのとたんナナは本能でにげだした。
だがそれよりもサシェゼのほうが早い。あっという間に伸し掛かられベッドに引き戻された。
「や…」
「へっ…いい顔」
男の掌が衣服を無理に剥がしにかかる。
「ま、待って」
「口答えできるのか?」
顎を囚われ、金の瞳が睨みつけてくる。
(ああ…カエルって)
こんな気持ちで最後を迎えるの。
大きな掌が身体を這い回る。

言いようのない虚しさと無力感に襲われながらナナはただ痛みに歯を食いしばる。キスすらもない、当たり前だ。サシェゼにも恋人がいる。これは男女のものではない。捕食だ。

11/2/2024, 12:35:40 PM