『こんな夢を見た』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
懐かしい夢を見た今はもう
あの頃には戻れない…
悲しいほど 優しい夢だった
変わらないと思ってた
『変わらないで…』願ってた
そんな何気無い日々が
今はもう眩し過ぎて
いつか君と眺めていた 空を見上げ
一人泣いていた
時間(とき)はただ哀しいくらいに
この体を擦り抜けてく
僕を横切る人の群れに 君を見た気がした…
あの頃僕たちは いつでも 寄り添うように
泣いて、笑いながら 生きていたよね
幼な過ぎたあの頃 君が居ればそれだけで
良かったと思えた それだけで幸せ感じた
いつか君と交した約束 君は今も覚えてますか?
いつだって大切なものばかり 失ってきたけれど
そんな僕に手を差し延べてくれた君…
変わらないもの 変わってくもの
その全てが愛しくて 戻れない日々…
切ないくらい 君を思い出すよ
流れてく日々 取り残された
僕は今も ココに居る 変われない僕が…
こんな夢を見た。
真っ暗で目の前にはピエロと逃げてる人。
良くある怖い夢を第三者視点で見てる。
そんな夢。
ピエロはランランルーと言えばの人
そういえばあの人怖いと思ってたな〜なんて、他人事のように考える。
追いかけてる方は歩きで逃げてる方は全力疾走、謎に化け物は追いかける速度ヤバいよね状態。
だけど、逃げてる人も体幹が良いのかフラフラになりながらもギリギリのところでピエロの伸ばしている手から逃れている。
おぉ、すごい、頑張れ〜。
本当に他人事だ。
ギリギリのハラハラ感が感じられて良いのだが、
今日の夢はこれだけかと夢の面白みの無さに少し呆れる。
良く、見てみるとあの人見たことがある。
誰だ?
ふと、その人を見ていると
こっちを見た。
「助けて!」
そして、私は彼女の顔を見た。
私だ。
私が追われている。
助けてと言われると助けないといけない使命感に襲われるもので、しかも、それが自分に関係がある人物だと尚更だ。
だが、どうしたらいい。
ここには何も無い。
相手は足が謎に早い化け物だ。
そう頭を回しながら化け物を見ると姿が変わっていた。
今度はボタンの目をした魔女だ。
昔、ホラー映画で見た目玉をくり抜きてくる魔女。
いや〜、トラウマが蘇る。なんて答えを導き出せなかった頭が考え出す。
ふざけている場合か。
なんて1人ノリツッコミをし、考えを出せなかった頭に代わり体が動いた。
もう、彼女はフラフラだったのだ。
一体どれぐらい逃げているのか時計のないこの場所では分からないがとても長い時間私が見ていただけでも走っていた気がする。
とりあえず、スタミナがまだ残っている私が代わりに追われようと走り出してしまったのだ。
彼女の元にたどり着いて、私が引き寄せるなんて言って
彼女と別れようとした瞬間彼女は言った。
「ありがとう。」
それはあの時の私にとってはとても心地の良いありがとう。
だけど、今の私にとっては後悔してやまなく、
とても憎いありがとう。
とても彼女にとって重い、心の底からの
「ありがとう。」
朝、母親に起こされる
寝ぼけまなこで布団からでる
テレビを見ながら用意されたご飯を食べる
今日は雨が降るらしい
歯磨きをしながら鏡に映る自分を見る
髪の毛が少し伸びてる
上着を羽織りカバンを肩にかける
靴紐を結び、傘を手に取る
ドアノブを捻ろうと手を伸ばした時……
…………アラームの音が鳴り響いた
母親は起こしに来ない
そうだ、一人暮らしを始めたんだった……
【こんな夢を見た】
覚醒
教室の夢
男女が隣り合うからここは中学校
よく隣に座りたくないって泣かされていたっけ
あ
くせげの、あなた
くらめの、あなた
えのうまい、あなた
あなたしか言わないあだ名で私を呼ぶわ
わたしはいまだにさん付けで
度胸なしなのごめんなさいね
あなたに嫌われたくないのよ
その背中を見たっきり
目が開いた
ああわたし
まだあながはすきなのね
「夢を見たんだよね。」
彼が僕の方を見ながら呟いた。
「へぇ…どんな夢…?」
放課後の教室。僕ら以外に残る生徒はいない。
夏の午後の気怠い空気の中、帰るのがなんとなく面倒で、2人でポツポツと話していた。
夢の内容に大して興味もなかったが、話しの続きを促す。別に彼の話しを遮って話したいこともない。
彼は頬杖をついたまま、僕を見つめ口を開く。
「君が、」
「僕を殺す夢。」
「この窓から僕のことを突き落とすんだ。」
彼はうっすらと笑みを浮かべながら僕を見ていた。
開いた窓から風が吹き込み、夏の生温い空気が顔に当たる。カーテンが風に膨らみバタバタと音を立てている。
「縁起でもない夢だな。」
僕は顔をしかめそう返す。
彼はまだ笑みを浮かべたまま僕を見ている。
「そうだろ。だが夢は人に話すと実現しないというだろう。だから言ってみたんだ。」
話したことで満足したのか、彼は
帰ろうぜ、と鞄を持って立ち上がり、そのまま教室を出て行こうと歩きだす。
僕も同じように鞄を持ち立ち上がる。そして彼の背中について歩きながら考える。
どうして気づかれた?
第1志望の大学に行って
中学。高校。とおもんない人生だったから
少しでも大学生活を謳歌したい。
資格の勉強をして、
自己投資して、
ボランティアもして、
色んなアルバイトして、
好きなように生きたい。
大学卒業後は一旦公務員を目指そうと思う。
特に理由は無いがまぁ安定してるからいいかなって感じ
あとはそうだなぁ。
30代行くか行かないかぐらいで
独立したい。社会の下僕みたいになりたくない。
ただただ働かされる駒になんかなってたまるか。
いつかは結婚もしたい。
よく、結婚して子供を授かったあとは
以前のように女性としてではなくてお母さん
として、見てしまうから恋愛感情というものが消える。
ってのを聞いて、妙に納得した自分がいた。
だけど俺はそんなのはごめんだね。
いつまで経ってもその人のことを好きでいたい。
恋は盲目になっているのだろうか。
むむーわからない。。 まぁ考えないでいよう。
変に考えすぎるのはかえって自分に傷をつけるだけのような気がして考えたくないのだ。
考えてしまったら余計に本当の自分が見えなくなりそうで。 素の自分を出しても好きでいてくれる人を好きになろう。まずは素を出せるようにしないとだなぁ。
こんな夢が叶うだろうか。叶って欲しいなぁ
ただ俺は
こんな夢を見てみたいだけなのかもしれない。
こんな夢を見た
僕と彼女は桜の木の下に立ってた。桜の木の下に彼女。向かいに僕。花びらが舞って、彼女の美しく整えられた髪を揺らす。
柔らかく微笑まれた唇がゆっくりと開かれたその瞬間、バチン、と世界が途切れた。
じんわりと浮上する意識に、チャイムの音が鳴り響く。『やべ』慌てて椅子を引きずる音にバタバタという複数の足音。席に座る衣擦れの音。
……この夢を見るのは、もう何回目だろう。
いつもそうだ。あの子。丁寧に切り揃えられた黒髪に目の下の泣きぼくろ。
彼女が返事をする、まさにその瞬間に夢は終わってしまう。
返事を聞く、ただそれだけなのに。
「……できないんだよなぁ」
机に突っ伏したまま呻いて、ゆっくりと身を起こした。
そうだ。
僕は彼女が好きだ。
この学校に来て初めて彼女を見た時、頭に電流が走ったような気がした。僕の中では本当にそうだったんだ。
クラスも全然違う。話したことすらない。話せる訳がない。一体どうやって話しかけろというんだ?小学校までろくに女の子と話したことすらない僕に。
授業が終わり、のろのろと緩慢な仕草で扉を開ける。
「……ね、ほんとに行っちゃうなんて……」
「信じられない……」
授業終わりにごった返す廊下、いつもは気にならない女の子達の声が妙に頭に入ってきた。彼女達の視線の先に自然と吸い寄せられる。
窓の向こう。桜の木。二人の人影が歩いているのが見えた。先生らしき人に連れられているのは、見慣れた黒髪。
床を蹴る。階段を一足飛びに駆け降りる。上履きがリノリウムの階段と擦れて耳障りな音を立てる。
「……あの!」
桜の木の下、彼女が振り返る。涙の跡がうっすらと頬に残っている。大きな瞳が僕を捉え、わずかに見開かれた。
「あんなこと言うと思わなかったよ」
ひとしきり笑ったあと、彼女は白い息を吐き出して、僕に微笑んだ。
「『友達になりたい』なんてさ。君が私を好きなことなんて、皆知ってたのに」
「え、嘘」
「ほんと」
彼女は悪戯っぽく笑い、脱力する僕に腕を絡ませた。
視線が交錯する。
満足気に微笑む彼女は、夢の中の彼女よりずっと綺麗だった。
「こんな夢を見た」
電車に乗った、ある人を尾行するためだ。私はスポーツ新聞を読んでいるふりをしている、相手はきずいていない。駅に着いた。その人は降りようとしている。私は電車のドアが閉まる寸前で降りた。雨がふっていた。階段を下りていた。彼はそのまま真っ直ぐいくと喫茶店へ入って行った。私も少し時間を置いてその喫茶店に入って行った。・・・ここまでだ。夢と言うものは途中で終わる確率が多い。続きはない。あなた方が見る夢はどんな物か・・・。メモノートに書いてみるといい。
アメジストを
握りしめて
目を瞑った
夢を見た
何故今自分が
こうなっているのか
分かってしまった
何処かで
安堵していたけれど
どんどん
分かってしまって
これ以上いくと
全ての意味が
分かってしまう
何故か
恐怖を覚え始めた
途端
目が覚めてしまった
心臓が高鳴っていた
そして
いつもの夢のように
忘れてしまった
何が分かったのかさえ
昔見た夢
「こんな夢を見た」
こんな夢を見た。俺様がとある帝国の王になる夢を。
こんな夢を見た。俺がある男の相棒にならずそのまま殺し屋を続けている夢を。
こんな夢を見た。拙者が泥棒としてでは無く暗殺者として百地三太夫に使われる夢を。
それはそれは、とても酷い悪夢だった。
夢はなく、全てが己の思うままの人生。信じられる人間が1人もいない色褪せた人生。13代目の名が泣く目指したものとは違う人生。
三者三様、見た夢は違えどそれは確かに存在していた未来であり、そして違えた未来である。
明朝。目が覚めた3人は示し合わすことなく顔を合わせるとホッと肩の力を抜く。夢と言いきるには生々しく、目覚めた部屋で仲間がいないかもしれないという恐怖を抱いたのも顔を合わせた3人がそうだろう。
「聞いてくれヨ、悪い夢を見ちまってよ」
「ほー、そりゃ俺も見たぜ。最悪な夢だ」
「ふむ、このような偶然もあるものだな。恥ずかしながら、拙者も夢見が悪かったでござる」
互いに顔を見合わせ、何処か怯えるように声を潜めて話す面々。
あれは悪い夢だ。あんなの現実な訳がない。そう不安を紛らわせるように口々に話す2人を見てルパンはそこのソファに座れと指示してキッチンへ消える。
大人しく座っている2人の間に甘いミルクの匂いが漂うと、2人してソファからキッチンに消えたルパンの背を探す。
「ほらよ。お待ちどうさん、俺様特製ホットミルクだ」
お盆に湯気の立つカップを3つ乗せ、2人の待つソファに戻れば順番に手渡していく。
「おいルパン、俺たちはミルクで喜ぶようなガキじゃないんだぜ」
「まーまー、文句は飲んでから言ってみろって」
「……、…これは、酒か?」
唇を尖らせ文句をつける次元と宥めようとしているルパンの耳にぽつりと五ェ門の声が聞こえる。
「俺様特製って言ったろ?2人ともまずは飲んでみろって、な?」
スンスンと猫の様に匂いを嗅いで恐る恐る口にする五ェ門と酒と聞いて飲む気になるも、熱くて中々飲めず息を吹きかけて冷まして飲む次元。
口をつけてから2人の顔がぱあっと明るくなるのは早かった。
次元のミルクにはウイスキーを。五ェ門のミルクには日本酒を入れて大人の味付けにしてある。
味が気に入ったのか、先程の躊躇は何だったのかと思う程美味しそうに飲む2人を見て、ルパンもカップに口をつける。
「あー……身体が暖まるな…」
「うむ…、誠美味である…」
飲んでいるうちに2人の頬には熱が宿り、顔を合わせた時の青白い顔では無くなったことを横目で確認して内心安心するルパン。
1人余裕そうに振舞っているが、恐らく誰よりも2人の居ない人生に怯えていたのはルパンである。
ルパン三世という人間にとって、次元大介と石川五ェ門は切っても切り離せない必要な仲間だからだ。
「拙者はこのまま起きているがお主らはどうする」
「あー、あれだけ夢見が悪けりゃ二度寝って気分にゃなれねーな…」
そんなことを大人用のホットミルクを片手に話している2人を見てルパンが声をかける。
「そんじゃあちくっと時間的には早いんだが、計画でも詰めていくか?」
起きたら見せようと思っていた計画書を、ルパンは見やすいように向きを変えて地図と共にテーブルに広げる。
「そりゃいい。気を紛らわすには最適だな」
「ああ、拙者にも異論はない」
計画書を覗き込み各々が役割を確認している姿を見て改めて計画を伝えるルパン。
微かな不安さえも潰すように目を合わせ話すルパンの姿に、僅かに残っていた無意識の懐疑心も解れて消えるだろう。
3人の会談は日が昇り、小鳥が鳴き出すまで続くのであった。
お題 こんな夢をみた/二次創作
目が覚めて身を起こすと、思わず目の端に指を置いた。
泣いている……。
内容ははっきりと覚えてはいない。けれどひどく悲しい夢を見た。きっと「身を引き裂かれる」というのはこういう感覚なのだろう。
まるで大切ななにかと離ればなれにでもなってしまったかのよう、いや、それ以上の衝撃が全身にまとわりついている。
そういえば、誰かに、必死に呼ばれていたような……。
もっと思い出そうとした瞬間、胸元がきゅうと苦しくなって咄嗟に右手で押さえてしまった。警告でもされているような気分になるのもまた、不思議でたまらない。
もう一度眠れば、また「誰か」に会える……?
会わないといけない気がした。明確な理由もなしに思うことこそが、一番の証明だった。
お題:こんな夢を見た
乗っていた船が沈没して、たった独りで小さな島に流れ着く。島には人の気配がなく、食糧があるのか検討もつかない。来るかも分からぬ救助を待つため、火を起こそうと流木に木の棒を擦り付けるが、焦る手に血が滲むばかり──
自分の荒い息で目が覚める。はっと周りを見渡すと、どうやら見慣れた寝室で、脂汗を拭って胸を撫で下ろす。酷い夢を見たようだ。リビングからは、小気味よく包丁の音が聞こえてくる。しばらく音に耳をそばだてて居ると、小さな足音が近づいて来て扉を開ける。「ぱぱ、起きた?」幼い愛娘へ手を広げると、笑みを浮かべて抱きついてくる。
ふたつに髪を結い上げた小さな頭を優しく撫で、背中へ手を回した時──愛娘は流木へ代わり、濡れた服と冷たい風が現実を叩きつけた。
【こんな夢を見た】
【こんな夢を見た】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
1/21 AM 9:20
目が醒めて、宵ちゃんとお風呂に入って、
スッキリしてリビングに戻ってきたら、
真夜(よる)くんが朝ごはんを作ってくれた。
ふわふわのフレンチトーストと
香り高いミルクティー。
至れり尽くせり感がすごい。
「~~~……っ! 相変わらず、
真夜くんの作ってくれるものは
美味し過ぎるよ~!」
「それは良かった。
体調も悪くなさそうで安心したよ」
「ううう……真夜くんの優しさが
とどまる所を知らない……。
……ありがとう。でも、本当に大丈夫。
夢の内容も、やっぱりほとんど覚えて
ないし」
「魘されるような悪夢だったとしたら、
忘れられて何よりだと思うけど」
「そうだねぇ。でも、楽しい夢だったと
しても、忘れちゃうことが多いでしょ?
こんな夢見たよ! ってはっきり言える夢、
真夜くん見たことある?」
「そうだな……。――いつだったか、3人で
朝から晩までハリー・ポッターのDVD
観賞会した日の夜は、魔法学校に通う
夢を見たよ」
「えっ、ホグワーツに?
それはすごく楽しそう!」
「……あまり普段と変わらなかったかな。
宵がいて、暁がいて、オレがいて。
3人で話したり、授業を受けたり、
ホウキで飛んだり、その程度。
大きな事件は起きなかったよ」
「ホウキで飛んだり、は
普段とは全然違うんじゃないかなぁ。
ちなみに、わたしたち、
どこの寮生だったの?」
「スリザリン」
「超意外!!」
そう言って笑ってしまったけれど、
スネイプ先生の、ハリーのお母さんへの
愛情の濃度を考えたら、
わたしたちがスリザリン寮だったことも
納得出来てしまうかもしれない。
窓から穏やかな日差しが射し込む午後ニ時半の夢の中にいた。
夢の中の自室は、現実のものとは程遠い。少しくすんだ白い壁紙。飴色の床板と家具。大きな窓の傍らに、優雅と呼ぶに相応しい椅子。部屋全体が、時間が経過すること自体に憧憬を抱いている人間の夢を反映させているのだ。
博の本来の自室は、新卒の社会人が住む典型的な1Kのアパートだ。窓こそ南向きの大きなものだが、壁紙は端の方が少し剥がれかけており、床は前の入居者がつけたと思われる家具を引き摺った黒い跡が残っている。優雅な椅子を置く場所などない。なにより、家賃八万円のアパートに時間が深まることに魅力を増していく憧れの家具を置いても不釣り合いだろう。
だから、憧れの家具は夢の中に置いている。夜、眠りに就くときはもちろん、会社の昼休みに仮眠を取っているときでも、休日にうたた寝しているときでも、博は自分の意思で憧憬が詰まったこの部屋に訪れることができる。
意識して見たい夢を見るということは難しいらしい。夢は脳が記憶や情報を整理するために発生するものだという一説がある。
博は物心ついたときから見たい夢を見ることができた。幼い頃は大好きなヒーローになって敵をやっつけて母親に褒められる夢。少し成長して、何をやっても小学校の同級生に褒められる夢。中学生のときには、好きなグラビアアイドルが水着で迫ってくる夢。そして、高校、大学、社会人となるにつれて、自力では絶対に住めることはない古ぼけているからそこ魅力的な洋室の夢となっていった。
博にとって、夢は現実の情報を整理するものではなく、現実では有り得ない物事を叶えるものだった。
言ってしまえば、夢は逃げ場なのだ。唯一の特技は逃げ場を作ること。この特技は、博自身を慰めるものではあったが、特技が逃げ場を作ることしかないが故に、現実は何ひとつ上手くいったことがない。何事も上手くいかないから夢の逃げ場を作る。夢の逃げ場を作ることにしか長けていないから、何事も上手くいかない。どちらが先なのかと考えるだけ馬鹿らしいほどの不毛さだった。
窓からは暖かな陽射し。午後ニ時半という時刻は、仕事をしているとちょうど集中力が切れる頃合い。今日の仕事の失敗を慰めるために作り出した夢だ。ここに挽きたてのコーヒー――そんなものは自分で淹れたことなどないのに――があれば最高だ。
最高を得るために、博は椅子の傍らに脚の短い机を作り出し、その上に芳ばしいコーヒーが注がれた杯を置く。
ドラマやCMの影響を強く受けた部屋の中に博はいる。現実では有り得ない、まさに空想と呼ぶに相応しい穏やかな午後だ。
博は夢を現実にしようと思ったことはない。夢は初めから叶わないからこそ夢なのだ。
幼い頃に大好きだったヒーローになって褒められるどころか、ヒーローの玩具を買ってもらったこともない。ヒーローごっこをすれば母親に下らないと笑われた。
小学校ではいつも一緒に遊ぶグループの中にはいたけれど、誰の家にも遊びに行ったことがない。
中学生では好きなグラビアアイドルが表紙を飾っていた少年漫画誌をコンビニで買っているのを同級生に見られ、いつの間にか学年中に「コンビニでエロ本を買っていたらしい」と噂されるようになった。
現実を裏返すことなど不可能だ。本人の努力だけで周囲の環境を変えることはできない。
博にとって、現実を変える意志を抱くよりも、夢という逃げ場を創る意思を高めることの方が簡単だった。
だから、博を包み込むこの夢は博自身の努力の成果なのだ。
そう思わなければ堪えられなかった。唯一の特技すら失ってしまうのだから。
深く、くらい海の夢を見た。
どこか遠くの見知らぬ島で小さな村に身を寄せ合うように生きる人々がいた。
その島にいる子供はたったの五人。
村長の子である兄妹、大人しい男の子に可愛らしい女の子、彼ら四人は村の庇護の中で暮らしていた。
最後の一人は賢い少女、老爺とともにどこからともなく島に現れ村の外で暮らしていた。
子供たちは大人にないしょで島の中を駆け回り、老爺にひみつで彼の知識を身につけていった。
そんな彼らの愉快な毎日はとある新月の夜に終わりを告げた。
村に煌々と灯された篝火が海を照らす。暗くぬらりとした闇を切り裂くものなど今まで無かったというのに。
しろく波と泡を撒き散らしながら現れたのは人の身の丈を優に超える巨蟹だ。大人の胴ほどもあるハサミを振り回しては大人たちを切り刻み押しつぶす。
ていねいに、ていねいに。
恨みを晴らすがごとく、執拗に血と肉が撒き散らされる。
(未)
こんな夢をみた
最近、どんな夢をみたのかが思い出せない。
事務仕事をしていたときは、冷や汗をかく
ような後味の悪い夢ばかり。
力仕事に転職して労働の汗をかく今は、
ただただ身体が疲れていて、夢をみる間も
なく寝落ちする。
心配性の私は、どうせいい夢をみないので
寝落ちするぐらいが丁度よい。
なんなら、
夢は起きているときにみるのが丁度よい。
どこまでも続く田んぼを駆けている。
稲は刈られ、青い草が生え始めた田んぼだ。
脚の筋肉を使って、全速力で駆けていく。
勢いはついた!
サッと両腕を広げる。
ふわっ
勝手に上に上がっていく。
ぐんぐん上がって空にぶつかりそうだ。
イタ!
ほんとにぶつかった!?
どんどん高度が下がってゆく。
空を飛びたいのに!
結局地面に近付いてしまった。
仕方がないからまた地面を蹴飛ばす。
ふわっと上がって広大な土地を見下ろした。
見えるもの全てが、自分の物のような、
そんな不思議な感覚に、私の胸は満たされた。
こんな夢を見た
片翼の悪魔が呼んでいるの
私の後ろ、ずーっと向こう
怒っているようで
とても悲しそうで
吸い込まれそうなほど深い
美しい黒に包まれて。
視界いっぱいに
白が舞い上がった
それはふわりふわりと
一本道を作るように
ゆっくり、ゆっくり、
小さな背中
その真ん中辺りに
紅色に染まる1片
透明に笑う弱さを
消さないように
離さないように
無垢なる者
死がふたりを分けようとも
何度でも来世を誓おう。
―――こんな夢を見た―――
見てない。
君に喰い殺される夢を見た。
私の言葉に彼は凍りついたように固まった。その拍子に彼が齧っていた林檎は手から滑り落ちるように落下した。そんなに衝撃的だったのだろうか。
未だに凍りついたまま動かない彼の代わりに林檎を拾い上げる。林檎は四分の三ぐらい残っていて、破棄するのは勿体無く思ってしまう。まぁ、川で洗えば良いか。
私が彼の名を呼ぼうと口を開こうとすると、彼は正面から僕に抱きついてきた。抱きついたままぎゅうぎゅうと力を入れてくるからお腹回りが痛い。
「喰わないぞ」
どこか拗ねたような姿は見た目相応の子どものようだ。頭に狼の耳が生えていなければ。
「喰わないからな」
念を押すようにそう言えば、彼は私から林檎を奪い取った。背中を向けた彼は話は終わりだと言わんばかりに距離が離れていく。
君に喰い殺される夢を見た。
そのギラギラと獣のような瞳を正面から向けられて、喰い殺されるのも悪くないと思ったと言えば彼はどんな顔をするのだろう。
子供の頃、私は獣医さんになりたかった。
物心ついた時から、ニンゲンのお友達が怖かった。
いつも、中庭にある小屋で飼われているウサギやニワトリを眺め、お話しする事が大好きだった。
家ではイヌやネコと一緒に過ごす事は出来なかったけど、カメやキンギョを飼うことは出来た。
学校から帰ってくると、親には隠れて彼ら・彼女らにその日あった事をずっと教えていた。
当然のように、私は動物のお医者さんになりたいと思った。そのためにはとてもお勉強が出来る人にならないといけなかった。
お勉強は大嫌いだったけど、誰よりも努力しようとした。
頑張って
頑張って
頑張って
画用紙に思い通りに描いた未来は、真っ黒いクレヨンで塗り潰した。
私は、大人になった。
ビルとアスファルトに挟まれて、人間が作り出した冷たい森の中で、人間に擬態して生きた。
鳥や熊や兎や魚のものだった世界を踏み潰して出来た無機質な林で、私は多くの命を消費した。
生きているだけで罪を重ねた。
私は動けなくなった。
身体中に、今まで命を奪った生き物達の手が纏わりついているみたいだ。
気がつくと、目の前に画用紙が落ちていた。
クレヨンで拙い絵が描かれている。
私は、その絵に見覚えがあった。
そして、その絵を見ると無性に腹が立ってきた。
その絵をめちゃくちゃにしてやりたかった。
私は黒いクレヨンを手にし、叫びながらその絵を塗り潰した。
もうどこにも余白が無いほどになっても、何層にも黒を塗り重ねた。
遂に、クレヨンがもてなくなるほどすり減ってしまった。
私はクレヨンの残骸と真っ黒に塗り潰された画用紙の前にへたり込み、声をあげて泣いた。
地面に突っ伏して咽び泣く私の肩を誰かが叩いた。
私は顔を上げた。
小さい頃の私が、私を見下ろしていた。
「お姉ちゃん、泣かないで」
小さい私はそう言って私の前に座った。
彼女は画用紙を見つめ、何処からともなくナイフを取りだした。
「お姉ちゃん、見てて」
彼女はそう言うなり、手にしたナイフを画用紙に突き立てた。
ナイフを画用紙の上で直線に動かし、表面を削る。
何十回、何百回、彼女は線を引き続けた。
線を引き終わると、彼女は立ち上がった。
「次はお姉ちゃんだよ」
彼女はたった一言、そう言って霧のように消えた。
私は、彼女が消えたあとの画用紙を覗き込んだ。
そこで、目が覚めた。
「−こんな夢を見た−」