Open App

乗っていた船が沈没して、たった独りで小さな島に流れ着く。島には人の気配がなく、食糧があるのか検討もつかない。来るかも分からぬ救助を待つため、火を起こそうと流木に木の棒を擦り付けるが、焦る手に血が滲むばかり──

自分の荒い息で目が覚める。はっと周りを見渡すと、どうやら見慣れた寝室で、脂汗を拭って胸を撫で下ろす。酷い夢を見たようだ。リビングからは、小気味よく包丁の音が聞こえてくる。しばらく音に耳をそばだてて居ると、小さな足音が近づいて来て扉を開ける。「ぱぱ、起きた?」幼い愛娘へ手を広げると、笑みを浮かべて抱きついてくる。
ふたつに髪を結い上げた小さな頭を優しく撫で、背中へ手を回した時──愛娘は流木へ代わり、濡れた服と冷たい風が現実を叩きつけた。



【こんな夢を見た】

1/23/2023, 3:59:58 PM