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2/26/2023, 3:14:59 PM

君はそろそろ家に着いた頃かい。
鈍行の車窓から見える夕焼けはどこまでも広がる自由そのものだね。私の荷物は思ったよりも少なかったから、部屋に伽藍堂はもたらさなかったよ。冷蔵庫に入っている煮物は夕飯にするといいよ。洗濯物は乾いているはずだから、畳んで上から三番目の棚に仕舞うんだよ。来月には町内会のゴミ出し当番が回ってくるからね。春になったら、カーテンは洗って、春物のカーテンにすげ替えるんだよ。蚊取り線香は、玄関の横の棚にあるからね。秋になったら、近所の小学生が落ち葉を回収に来るから、透明のビニール袋に入れてあげてね。冬は暖かくして、風邪引かないようにね。
それじゃあ、ね。


【君は今】

2/23/2023, 11:43:29 AM

朝五時の日差しで目が覚める。隣に眠る君に、はだけた毛布をそっとかける。
食パンを2切れ取り出して、フレンチトーストを仕込む。卵に付けおく間に、コーヒーを入れる。駅前の珈琲店で買ったとっておきの豆を挽いて、お揃いのコーヒーカップに注ぐ。
君に勧められた本を読みながら、今日も寝ぼけたおはようをのんびりと待つ。



【Love You】

2/8/2023, 3:30:39 AM

裏山があったら裏山に埋めていた。
だけど、裏山なんてないから、8キロ離れた小高い丘の、いちばん大きい桜の木の下に埋めた。散り積もった落ち葉をかき分けて埋めた。やがて雪に埋もれ、静かな冬が来るだろう。
春になったら、小高い丘の上には桜の花が満開になるだろう。丘の上から風に乗って春を運ぶだろう。
風の便りを聞いたら、僕はまた君に逢いに来よう。
小高い丘のいちばん大きな桜の木の下に。

【どこにも書けないこと】

2/5/2023, 10:42:54 AM

銀色の躯体に大粒の涙は

1/29/2023, 10:11:35 AM

どこまでも高い蒼空に、入道雲が浮かんでいる。助手席の、少し開いた窓からは、ジリジリと蝉の声が聞こえる。今朝ドライブスルーで購入したシトラスティーの氷はとっくに溶けて、緑の人魚のロゴマークからは大粒の水滴が滴る。
「あっつい……」呟くと、隣から「夏だね」と返ってくる。溶けかけのナッツボンを口元に持っていくと、あんぐり口をあけて、「ん、溶けてる」と口を尖らせた。ややしばらくして、「美味い」とつぶやくのが聞こえる。
1車線の直線道路はやがて2車線に変わり、広告が並ぶ道に、歩行者がちらほら見え始める。
運転席から手が伸びて「もうすぐ着くよ」と青い看板を指さした。

【街へ】

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