『あなたに届けたい』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
あなたは何も知らない。
私があなたの前では薬を飲まないようにしている事も。
あなたの前でだけは笑って元気に振舞っている事も。
あなたの前ではどんなにお腹が痛くても「美味しいね」って食べた事も。
倒れ込みそうなほど辛い時も、泣き叫びたい時も、あなたを抱きしめて泣きたくても、そうしなかった。
あなたは私の弱い姿を見るといつも不安そうだったから。
あなたは元気なのにどうしてと言う。
あなたの前だから元気でいられただけで、目に見えるものが全てではないわ。
尽くされてるエピソードが思い付かないとあなたは言う。
そのまま何も知らないでいて。
寂しくないとあなたは言う。
私は寂しいのにね。
何故あなたは私を好きなのですか?
私はあなたが私を好きな理由が分かりません。
きっとあなたが気付く頃には、手遅れになっているでしょうか。
私がもし「辛い」と「助けて」とあなたに縋ったら、あなたは助けてくれますか?
手を掴んで離さないでいてくれますか?
背負わせたくない私と、背負いたいあなたがいるのだとしたら、きっとそれは私が勝ってしまう。
どうかあなたを好きなまま、この世を去ることが出来ますように。
考える。考える。考える。
「これを、貴方に、と」
差し出した一通の手紙を白魚のような指が宝物を扱うような手つきで受け取った。
「これ……」
差出人の名前を見た彼女は困惑の眼差しでこちらを見ている。
「私は死者専門の郵便配達員です。」
この世界の人間は、死ぬ前に一通だけ手紙を残すことが出来る。親へ、子供へ、恋人へ。誰に書くかは様々で、その最期に残す手紙を受取人の元へ確りと届けるのが、私の役目だった。
手紙を読み始めた彼女は、はらはらと涙を流して何度も何度も涙を拭っていた。
私は、その手紙に何が書かれていたのか推し量れない。差出人と彼女の関係性すら、予想がつかない。しかし、最期に手紙を書く位、彼女を大切に思っていたことは、誰の目から見ても明らかだ。
「無事に届けられましたので、私はこれで」
一礼。ありがとう、と小さな涙交じりの声を背に私は帰路についた。
私は少しだけ羨ましくなった。彼女に送られた手紙は彼女のためだけに差出人が書いた唯一無二のものだ。
考える。自分が手紙を書くとしたら。
誰へ、どんな言葉を紡ぐか。
私は、考える。
工場地帯の端、山と防波堤の間に走る道にぽつぽつと置かれた外灯が逆に薄気味悪さを演出している。
工場と道路の間にある、工業排水を流す為の凹んだ
区域は、排水処理設備の陰になっているせいか、車のライトがなければ真っ暗闇になるだろう。
ここ数日に起きた連続不審水死体事件の手がかりを掴むべく、検視官の鳶田と鑑識官の守山は、この場所に訪れた。
SNSを騒がせている『海神様』それが今回の事件の手がかりなのだが…
「ここが海神様に願いを出せるって噂になってる海。でもまあ、本当はこっち。」
探偵の目黒が山の方へ足を向けた。噂の海神様について我々をこの場所に連れてきた探偵が向かったのは、擁壁が途切れて簡単なアルミ柵を張った先の山道だった。
アルミ柵をすり抜け、人が踏みしめただけであろう山道を進むと、ぽっかりと拓けた場所に出た。
そこには、苔むした小さな小さな石祠。柱には簡素だが細工がされており、小さいとはいえ整えればきちんとした祠になりそうな代物だった。祠の中は空で、しめ縄もないが、荒れ果てた風でないのは“参拝者”がいるからだろうか。
祠のかかる石台の下には、水溜まりがあり、海水が流れ込んでいるようだった。
その水溜まりに、夥しいほどの木片が詰め込まれていた。どの板も赤黒く変色し、鉄さびの匂いに満ちている。
「海神様のおわす汀に打ち上げられた木の板に、己の血で願いを書いて黄昏時の祠に捧げる。それが海神様への正しい呪いの願い方。」
張こめた空気をゆったりと割くように目黒が呟いた。肺にこもっていた空気をぶはっと吐き出す。知らないうちに、息を詰めていたようだった。
「どうしても…届けたい想いがあったんだろうな…」
鳶田は喉を詰まらせながら、なんとかそれだけ絞り出した。
つい、祠を前に手を合わそうとした守山を目黒が止める。
「やめといた方がいい。何に祈りが届くかわからないから。」
空っぽの祠には、ナニが住んでるかわからないんだから…
「狂おしい程の想いは、届いちゃいけないところに届くこともあるんだ。」
これを、と手渡された小さな箱に首を傾げた。小綺麗に包装されたそれは日常的に貰うには気張りすぎているし、記念日の贈り物としては控えめに見える。何より軽い。
「開けてみて」
促されて、リボンを引っ張る。するすると解けていったリボンを楽しげに見つめて、彼女はうふうふと笑う。包装紙を剥がし、姿を表したのは白い無表情な箱だった。さあさあ、と先を急かされるままに蓋を開ける。
「何も入ってないじゃん」
「そう、まだ何も入ってない」
「まだ?」
彼女は目を細めたまま、細い、しかして柔らかな腕を首に絡めてきて、まつげが触れ合いそうなほど顔を近づけてきた。
「これから一緒に入れていくの。嬉しいことも、楽しいことも、嫌なことも。たくさんの思い出を貴女と入れていくの」
彼女はそう云ってピンクに彩った唇を少しだけ突き出した。強請られている。可愛らしいおねだりに応えてあげたいが、それよりもまず彼女の意図を正しく組み取れているかどうかを確かめなければならない。
「ねえ」と自身の上着のポケットからベルベットに包まれた箱を取り出した。「もしかしてわかってた?」
「あら、私の気持ち、ちゃんと届いていたの?」
「もちろん」
あなたに届けたい
あなたには、届いているだろうか?
私たち家族が、あなたさまのことを
いかに大事で、尊敬しているか。
大切な家族になってくれたことを
とても感謝していることを。
私を暗闇から救いだしてくれた
あなたに心からの感謝と愛を。
そして、何より幸せな時間に感謝を。
ありがとう あなた。
我が愛猫も、ごろごろと喉を鳴らし、
甘えていた。
にゃんざぶろう
「着払いで」
「えっ」
それまで丁寧に対応してくれていた店員さんが、ぎょっと私を見た。
それもそうだ。バレンタインチョコを着払いで送るやつなんかいない。私以外には。
「ち、着払いって、その」
可愛らしい店員さんは、笑顔を取り繕うも動揺は隠せないようで、swimming eyes。そういえば小学生の時にスイミングスクール通ってたな、あいつ。
「届けた相手に送料を請求する仕組みですが、それで宜しいでしょうか」
「よろしいです」
「は、はあ……」
「大丈夫ですよ。本命じゃないし、むしろ縁を切るために送るので」
私は本心からそう言ったつもりだったが、自分の喉から発せられた声は少し硬くてうわずっていて、やっぱり強がっているのかな、なんて他人事みたいに思った。
昨日あいつと通話した時も、私はこんな声になっていただろうか。
だってあいつが、好きな人できたって言うから。
店員さんは一番奥の引き出しをごそごそして、着払いの送り状を持ってきた。
お届け日、2月14日。私があいつに告白した日。3年前、お互い高校生の時に。
お届け先、東京都杉並区。一度遊びに行ったけど、見知らぬ住宅地にあるあいつのアパートは、どこか冷たくてよそよそしく見えて。でも部屋の中の雑多な感じは、あいつらしくてほっとしたけど。
棚には私が生まれて初めて贈ったバレンタインチョコの空き箱が飾ってあって、いつまで飾ってんのって笑ったけれど。
あの箱はもう片付けちゃったかな。
品名、チョコレート。あいつ、お酒飲んでみたらめちゃめちゃ弱かったって聞いたから、この店で一番アルコール強いやつ、度数500%くらいあるやつ、いやちょっと盛り過ぎた、本当は8%、でもこれでもめちゃめちゃ強いらしいんだ、これでも喰らえって、喰らって酔い潰れて新しい彼女とのデート失敗してしまえって。
「お客さま?」
優しく肩をたたかれる。顔を上げると、店員さんがこちらを見ている。
そこで私は、手元の送り状が雨漏りで濡れていることに気付いた。
「お品物、取っておきますので。少し休まれたらどうですか」
ああ。こんな風に、あいつに優しい言葉を掛けてもらえたらなあ。
「そこの向かいのジュースバー、おすすめですよ。よく行くんです。あっ」
店員さんはポケットを探り、他の店員さんの目を盗みながら、一枚の紙を差し出した。ジュースバーの100円割引クーポン。
「飲み終わったら、また来て下さいね」
何か言ったらまた雨漏りしそうで、私は黙ってうなずいた。
べしょべしょに濡れた送り状は文字が滲んで、このままでは届きそうになかった。
【お題:あなたに届けたい】
私は自分の思ったことや感じたことを表現することが苦手だ。というよりも、曲や映画をみたり聞いたりしたところで心が動かないので、感想を求められたとしても「ギターかっこいいと思ったよ」だとか「作画綺麗だったよね」といった冷めた返答しかできない。
こんな冷めた私がこれまで人間関係のトラブルがなくやってこられたのはきっと周りの環境に恵まれていたからなのだと思う。なので、今まで出会った人たちに感謝している。
あなたに届けたい。小説向けのお題って感じだな。
届けたいと言えば最近やたらと物流やらのドライバーが不足してるってのが言われてるな。タクシーとかバスとか。
ああいう仕事って給料どれくらいなのか知らんけど危険だし大変そうだな。
まず車だから常に交通事故の可能性があるわけだ。俺は集中力ないから運動中にぼーっとして事故る確信があるわ。ああいう仕事は絶対できない。
ドライバーってのは車とか運転が好きじゃないと務まらないよな。あるいは手足のように動かすのに慣れてないと無理だろう。
んで車の運転だけでも大変なのに更に客の相手とか積み込みとかやらなきゃいけないわけだ。考えただけで吐きそうな仕事だ。
ああいうなくちゃいけない仕事の給料はもっと高くあるべきだと思う。でも現実は芸能人やらユーチューバーの方が金持ちだという現実。
まぁあれはあれで大変だろうしリスクもあるし必要な職業ではあるんだけど心情的にむぅ、となっちゃうんだよな俺は。
あなたに届けたい
俳句
君
に
降
る
六
花
全
て
を
食
べ
て
や
る
季語 六花 りっか 雪のこと
冬の季語
あなたに届けたい
あなたは私に大好きをくれたけれど…
私はまだあなたに何も返せてない…
それならば…
私は私の感じる幸せを…
あなたに届けたい
あなたに届けたい、と思ってもためらってそのままになってしまう状況として結構多いのが、街中で見かける人にちょっとした、しかし実は本人にはかなり気恥ずかしい点があった時。
例えば、スカートの腰のところにタグが出ているとか、真ん中のチャックが結構左右にずれているとか、右だけシャツが出ているとか、ズボンが開いているとか…
バッグからものが落ちそう、持っているコートの端が地面を擦っているとかは、実害があるのできちんと伝えるけど、女性にスカートずれてますよとかは、誰かが伝えなければいけないはずだけど、自分が気恥ずかしい思いをさせてしまうのかとか躊躇うと、そのままタイミングが遅れてしまう。
浅煎りの珈琲を
ハンドドリップで淹れる。
この湯気立つ香りを
届けたい。
かろやかなこの一杯に
くつろぎの気持ちを注ぐ。
題「あなたに届けたい」
récit œuvre originale
あれを君にプレゼントしたい。
どんな手を使ってでも。
あれがあればきっと君は僕に振り向いてくれる。
やっとこれを君に渡せる。
こ、これ僕からのプレゼント!
開けてみて!
そう言って僕は、君の両親をいっぱいに詰め込んだ箱を渡した。
タイトル:あなたに届けたい
#短歌
太陽が小雪の町を溶かしたら
同じ気持ちで君も目覚める
私は兄たちが大好きである。
物心ついた時の記憶でさえ
兄たちがどこかへ行く時
「にぃ、にに、いっしょ、いくぅ」
なんて兄たちに遊んでほしさにずっとついてまわってた程である。
兄たちは決して優しい訳ではなく、きっとからかい対象として扱われたのかもしれない。
「お前はお留守ばーん♡」
「いい子にしてろよ。兄ちゃん、早く行こーぜ」
兄たちは夜中まで遊んでてもお父さんもお母さんも何も言わなかった。
私も一緒に行く!なんて言ったら両親に血相を変えて怒られたっけ。そして気づけば両親は別々に暮らすことになり、私は母と、兄2人は父と暮らすことになった。
そして、灰谷と言う苗字から、在り来りな苗字へと変更を遂げたのである。
中学に上がる前に一度、兄達をテレビで観てから大好きな兄達への想いがどん底に落ちた。
暴力沙汰で逮捕…少年院…?
『ママ、にぃとににが…』
パートに行く前の母親に声を掛けるとテレビを消される。
「…いい?もうお兄ちゃん達と関わらないことよ。」
そう言って家を出る母を見送ったあと、父に電話をかけた。
『パパ…あのね、テレビで…』
“…いいかい?パパとママはお前のことが大好きだ。だから、お前を危険な目に合わせたくなくて今離れ離れなんだよ。また会えるようになるから、今はもう少しだけ我慢してくれ…な?”
父は明るく装い、私に話す。
兄達のことを話す隙を与えてくれなかった。
自分から調べると、嫌な記事しか出てこなかった。
私の大好きだった兄達は、とんでもない不良になっていたのだ。
都内で灰谷兄弟の名前を知らない人間はおらず、私に被害が及ぶのを避けた両親は離婚し、私は苗字が変わった。
私の為にそこまでしてくれた両親に申し訳なさを感じるがそれ以上に両親泣かせな兄達を許せなくなった。
私はちゃんとまともになろう。喧嘩もせず、きちんと家に帰ろう。
中学に上がる年に、私は母と都心から県外の祖母の家の近くに移り住み、灰谷兄弟?なにそれ?
くらいの認知の学校で過ごした。
中高私立を通わせてくれて、何不自由なく過ごせてたはずだったが
大学受験、私立の東京の郊外の場所の推薦を貰った時、母の顔色は少し曇ったのを覚えてる。
大学の費用が家が建つ程の額なのだ。
今まで私立の中学、高校でお金が掛かったが大学はそれよりも多く費用が掛かる。
今まで祖父母からの支援も受けていたことを知っていたので、
公立の大学を受けるよ。落ちたら浪人はせず大学は行かない、推薦は蹴ると伝えると母は怒った。
父も反対した。なんとか工面するから待ってろと。
そんなある日だ。昔の灰谷の苗字と私の名前が書かれた小さな段ボールが届いた。
差出人の名前は
灰谷蘭
灰谷竜胆
私の事は周りには認知されていないはず。
母も父も徹底していたので、兄達からだと分かった。
住所は知られていないはず。なぜ分かったのか。
そんなことはどうでもいい。
今更、なんなんだ。
開けるのに戸惑った。
両親にも伝えるのを迷い、自分の部屋に保管していたが、
数日経ってようやく開ける決心をし、
念の為、家の近くの公園で開けることにした。
箱を開けると、分厚い封筒と手紙。
手紙の内容を見て、私は涙を流した。
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あなたに届けたい
ran rindの妹のお話
卍展行ってハマりました
何と書いてあったか、解釈は読者様にお任せします。
以下どうでもインフォメーション
妹ちゃんは蝶よ花よと両親に育てられ
人を疑うことを知りません
そんな妹ちゃんは陰でお兄ちゃんに見守られていますが
大学進学後、マッチングアプリにてホストに引っかかり…的なお話が書けたらいいなと思っております。
Xでも更新してるので
見つかったらよろしくお願いします。
この思い、あなたに届け
きっと伝えられないこの思いを
大好きなあなたへ届け
あなたと結ばれたいと思っていても
あなたには分からない
私の一方的な愛は届かない
でも届けたい
あなたと運命的に出会いたい
一歩踏み外せばあなたと結ばれない
でも届けたい
あなたにこの思いを届けたい
この思い、あなたに届け
■テーマ:あなたに届けたい
『あなたに届けたい』
手首から流れ落ちる赤い血を見つめながら、オレは戦いのことを思い出していた。
あの時のオレは、ドラゴンの聖衣を纏ったことで負けるはずがないと思っていた。最強の拳と盾を持つ自分はこの場にいる誰よりも強いと自惚れていた。
だが、所詮は井の中の蛙であったことを思い知らされることになった。対戦相手の星矢に、拳と盾を砕かれたばかりか、決して破られることがないと思っていた昇龍覇の隙を突かれてオレは敗れた。
傲慢の代償は己の命となるはずだったが、そんなオレを救ったのもまた星矢だった。
眼の前には、大きく破損して命が失われた聖衣がある。
命を失った聖衣を蘇らせるには、大量の血液が必要だという。それにオレの血を使うことに何の躊躇いもなかった。
本来なら、オレはとっくに死んでいたはずだったのだ。それをあいつに救われた。なれば、あいつのためにオレの命を差し出すのが道理というものだ。
一度落とした命だ。今更惜しくなどない。
星矢は、大怪我を押してこれから厳しい戦いに向かう。あいつのために、蘇った聖衣を届けてやりたい。
聖衣を蘇らせる代わりに、オレの命は失われるかもしれない。だが、例え何があろうと聖衣は必ずお前に届ける。
だから、待っていてくれ。
伝えたい
伝えちゃいけない
揺蕩う波間に
気持ちが重なって、泡のように
そのまま溶けていく
曖昧な距離で
私だけの特別
あなたとの特別
譲れない特別
君に対する俺の気持ちは大きいと思う。
仕事先で好きそうな料理屋が目に入ればいつか旅行にでも来よう、と計画を練ったり、君の好みの物があれば買ってしまう。最近では買いすぎて君から禁止令がでたばかり。渡せていないプレゼントたちで部屋が埋りそうだ。
思い過ごしではなく、やはりずば抜けていると共通の友人と話をしていて実感した。「重い」とまで言われたがまぁ、俺も自覚はある。君から指摘されたら脳内会議ものだが言われたことはない。
過ごすうちに君への気持ちは変わるどころかますます手放せない存在になって、愛情を伝える回数が前よりも多くなった。俺の中で抱えきれないくらい君への気持ちが募ってどうにかなりそうにもなる。その分を君からもらって俺も気持ちを返すんだ。
俺が『好き』と伝えるだけで君の許容量はあっという間にいっぱいになるらしい。例えるならマグカップにたっぷりの蜂蜜が注がれている、とか。
「それかジャムかも」
「トーストに塗るジャム?」
「蜂蜜も好きだけど甘く煮詰まってるところがそっくり」
「君にあわせてセーブしてるつもりなんだけどな。飽きちゃった?」
「どっちも色んな味がしておいしいよ」
俺にとってはティースプーン一杯分も君にとってはまだ多い。けれど喜んで受け取ってくれる。
こんなのは氷山の一角にもならなかった。あげた言葉に溺れかけてしまう君の初なところが好きだけど、少しだけ慣れて欲しくもある。
俺の背後に山のようにそびえる気持ちを君は知らない。
いつかこの全てを届けようとしていることも。
「きみにはまだ早すぎるよ」
私は燃え始めた森の中を走った。森が燃えるその炭の匂いが私を焦らせた。空は異様に藍色に澄んでいる。
青いマントの彼の姿を探していた。彼はいつだって森の動物たちに囲まれているから、すぐに見つかった。ところが動物たちは火から逃げ惑うだけで、少しもその場所を教えてくれない。
そのとき、彼の残像が目の前を通り過ぎた。私の周りを飛来して、走る私と併走した。
やあ、といつものように短く挨拶をする。
どうも、なんて返す余裕など私にはなかった。
「きみはどこにいるの?」
「ここにいるじゃない」
「きみはそんなに飛び回らないだろう?」
「隠していたんだよ」
「お願いだから、どこにいるか教えて」
私は彼の軽口には乗らずに懇願した。
彼はやっと真面目な顔になった。
「大丈夫、僕は一番安全な場所にいるから」
「安全?」
「そう。森や動物たちが包んでくれてるから……もちろん君も」
「私が? それってどこなの?」
彼は私の言葉を聞こうとしない。勢いよく私の目の前に滑空した。そのまま私の目を覗き込む。
「だからもう大丈夫だよ。心配しないで」
私はその手を必死に伸ばしたが、空を切る。何かをつかむこともない。
歳をとった今でも悔いている。自分の手を見つめてあの子のことを思う。
「神様になるのは……きみにはまだ早すぎるよ」
そのときいいたかったことを思い出した。ただそれ以上に今、きみに伝えたいことがある。
「私の方がもっと、ずっと早すぎるよ」
見下ろした先には青い惑星が浮かんでいる。彼の命が確かに宿っている。