robi robi

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 「きみにはまだ早すぎるよ」
 私は燃え始めた森の中を走った。森が燃えるその炭の匂いが私を焦らせた。空は異様に藍色に澄んでいる。
 青いマントの彼の姿を探していた。彼はいつだって森の動物たちに囲まれているから、すぐに見つかった。ところが動物たちは火から逃げ惑うだけで、少しもその場所を教えてくれない。
 そのとき、彼の残像が目の前を通り過ぎた。私の周りを飛来して、走る私と併走した。
 やあ、といつものように短く挨拶をする。
 どうも、なんて返す余裕など私にはなかった。
 「きみはどこにいるの?」
「ここにいるじゃない」
「きみはそんなに飛び回らないだろう?」
「隠していたんだよ」
「お願いだから、どこにいるか教えて」
 私は彼の軽口には乗らずに懇願した。
 彼はやっと真面目な顔になった。
「大丈夫、僕は一番安全な場所にいるから」
「安全?」
「そう。森や動物たちが包んでくれてるから……もちろん君も」
「私が? それってどこなの?」
 彼は私の言葉を聞こうとしない。勢いよく私の目の前に滑空した。そのまま私の目を覗き込む。
「だからもう大丈夫だよ。心配しないで」
 私はその手を必死に伸ばしたが、空を切る。何かをつかむこともない。

 歳をとった今でも悔いている。自分の手を見つめてあの子のことを思う。
「神様になるのは……きみにはまだ早すぎるよ」
 そのときいいたかったことを思い出した。ただそれ以上に今、きみに伝えたいことがある。
「私の方がもっと、ずっと早すぎるよ」
 見下ろした先には青い惑星が浮かんでいる。彼の命が確かに宿っている。

1/30/2024, 11:40:58 PM