『あいまいな空』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
通勤ラッシュの電車の窓から、曇ってあいまいな空と水平線の境目を探した。肩に掛けた鞄が重い。頭の上の空気も重い。重さで電車は傾いているんじゃないか。水平線はどの高さにあるのか。
あいまいな空ってどんな空なんだろうね〜
くもり?
はれてるけどくもがある?
あめ?
あめがふりそうでふらないひ?
どんな空なんだろうね〜
# 33
I like ambiguous sky.
That is because
あいまいな空
今日は会えるって言ったのに、やっぱり無理ってなんなのよ。
気分じゃないとか信じられない。
そうやって私を怒らせてばかりの君。
でも、どうしても好きだから離れられなくて。
空には灰色の雲。
曇り空さえ羨ましい。
だっていつかは晴れるから。
私の太陽はいつ見えるでしょうか。
傘のほうが必要になりそうだ。
『あいまいな空』
私、陽子は入社して二年、だいぶ慣れて仕事にも少しずつやりがいを覚えてきた頃だ。
最初は、就活中は他の仕事を考えていたので、正直ここは候補に入っていなかった。
とにかくいろいろな会社を受けてとうとう三十社を越えて落ち続けて、心が本当にボキッと折れる音が聞こえたと思った頃、偶然この会社を知り、ダメ元で受けたら、なんと受かったのだ!
嬉しかった!私を必要としてくれる所があったという事に感謝し、私を拾ってくれたこの会社の為に一生懸命働こう、と思った。
入社して最初は無我夢中だったので、気づかぬうちに季節は変わり、いつの間にか二年目になっていた。
先輩は厳しいけれど、それは私達、入社したての者が、早く仕事を覚えるためそうしてくれているのだから感謝している。
同期は女子は四人、男子は五人入社した。
それぞれ配置された課は違えど、時々集まって飲み会を定期的に開いている。
私はなんとなく、いつからか同期の村上君とつきあっている。
もちろんみんなには内緒だ。
村上君は私と同じ、地方出身で、都会に驚くことがとても似ていて、なんか話していて気が楽だな、と思ったのがきっかけだったのかもしれない。
課は違うけれど、月に休みの日は二度くらい、平日は週一くらいでデートしている。
お互い、まだまだ新人だから仕事が多くて帰りが遅い事が多いから。
みんな、二年目ともなるとだいぶ都会に慣れて垢抜けた感じだ。
でも、私と村上君は相変わらずどこか地方出身者感があって、そういう所も素朴で好きだった。
帰りにデートの約束をしていた日、スマホに通知が来て、さり気なくトイレに立った。
個室に入って読んでみると、村上君からで『仕事が終わりそうもないし、待たせるのも焦るから、今日は行かれそうになくてごめん』という内容だった。
仕事なら、当たり前だ。
だから私は『それは仕事優先だよ。私は気にしないからがんばってね』と送った。
実は、この間とても気に入った服に出会い、一目惚れで買ってしまったのだ。そして今日はそれを着て来たのだった。ちょっと残念だけど村上君は仕事で忙しいんだからしかたない。
今度のデートに来てこよう、と思った。
悪いことはとかく重なるもので、村上君から誘われた日は、今度は私が残業で今日中に報告書を作らなくてはいけなくなり、デートは流れた。
その頃、会社自体が忙しい時期で、同期のみんなも飲み会どころではなかった。
一人の夜、一人の休日。なんだか何もする気になれない。
気晴らしに出かけたくてもお給料日前なのでガマンガマン。
そうだ、と思い立ち、久しぶりにお菓子を作った。
学生時代は、趣味がお菓子作りでいろいろ作ってはみんなに配っていた。幸い材料は少しだけ買い足せば良かったので、スティックケーキを作った。ビターチョコを使っているので、男の人でも食べられるはず。
たくさん出来たので、後で紅茶と食べたらとても美味しく出来ていた。
百円ショップで袋もたくさん買ったので、そこに入れて留めて、明日みんなに配ろう、と思った。
翌日、手提げの紙袋に入れて持っていき、課の人だけでなく、近くの人みんなに配った。みんなとても喜んでくれた。もちろん同期のみんなにも配った。みんなびっくりして「え〜!凄〜い、これ陽子が作ったの?お店のみたい!」と言われて嬉しかった。村上君には特別多めに入れてこそっと渡した。「ああ、サンキュ」と言っただけなので少し拍子抜けしたが。
なんだか気分が良くて、午前中の仕事も張り切ってこなした。
お昼休みにトイレにいると、先輩や他の課の人達の話が耳に入った。
「ねえ、今朝の見た?」「見た見た!なあにあのお菓子、今時作る?」「中学生でもあるまいし、あんなの得意気に配られてもね」「おまけにカロリー高そうだし」「食べたくないよ」アハハと笑って戻って行った。
私は、トイレの中で、涙が出て止まらなかった。そんなつもりじゃなかった。ただ、喜んでもらいたくて作っただけなのに。あんなの、配らなきゃ良かった。
もう、戻らなきゃ、と涙をこらえ、ハンカチを濡らして目を冷やした。
お化粧直しで、うん、ごまかせる。
気を取り直して歩き出し、廊下の突き当りの自販機が並んでいる所を通り過ぎようとしたら、今朝配った私のお菓子を、とても美味しそうに食べてる人がいた。同じ課の男性の先輩の安藤さんだった。
あまりにも美味しそうに食べているので、つい、足を止め見入ってしまった。すると視線に気づいたのか安藤さんが私を見てゴホゴホとむせた。慌てて私は自販機でアイスコーヒーを買い、渡した。
「これ、良かったら飲んでください」というと「あ、ありがとね」というと受け取ってごくごく飲んでから、今更気づいたように「川野さん」と私の名字を呼び、「このチョコケーキ、すごく美味しいねぇ」と言ったので、思わず「へ?」と気の拔けた声を出してしまった。「俺さ、じつはチョコケーキとか大好きでさ。これ、ビターチョコなのがまたいいね!」と人懐っこい顔で本当に美味しそうに言ったので、抑えてた涙が溢れてしまった。
安藤さんがびっくりして、「俺、なんか悪いこと言った?」というので「違うんです」と言って、心がとても苦しかったので、トイレの件を、つい話してしまった。そして
「私が悪かったんです。こんな可愛くもない、流行りでもないあんなお菓子をみんなに配ったりするから」
「まぁ、女性は何かというと映え〜!だからね」と言いながら
「でも、手間かけて手作りしたのって本当に美味しいよね。俺は本当はもっと食べたいくらい、美味しかったけれどね」
と、一つで残念そうに言うので、思い切って「あの、家にまだまだあるんです。良かったら明日安藤さんに持ってきます」と言うと、安藤さんの顔がぱっと輝いて嬉しそうに
「本当に?嬉しいなあ、じゃあ、待ってるね、コーヒーもありがとうね、川野さん」と笑顔で言ってくれた。
頭を下げて仕事場に戻りながら、なんだか気持ちが晴れているのに気がついた。男の人で、あんなに美味しそうに食べる人、見たことないよ、と思ったら、なんだかくすぐったいような気持ちになった。
夜に村上君に電話した。なんだか声を聞くのもすごく久しぶり。
随分呼び出し音がなってから「もしもし」とやっと出た。
「もしもし?今日のケーキ、食べた?どうだった?」と言うと何も言わない。あれ?どうしたのかな?と思ったら「ごめん、俺さ、甘いもの苦手で、女の人にあげちゃった」
「あ、そ、そうだったんだ、ごめんね、苦手なのにたくさんあげて」「いいよ、俺こそ、せっかくもらったのにごめんね」と言う。私は何気なく、いつものように
「ねえ、今度いつデートしようか」と言うと、「分からない」「え?」
「今は仕事で疲れていて分からないんだよ!」と強く言われ、思わずびっくりする。前なら「疲れたよ〜」とか言ったのに。
いきなり怒鳴らなくても、と少しムッとしながら「疲れてたところ、ごめんね、よく休んでね、おやすみ」と言うと
「陽子」と言われ「なに?」と言うと「いや、なんか、ごめん」と言って電話が切れた。
なんとなく、歯切れが悪く、今までの彼らしくなかった。最後の、ごめん、が喉に刺さったままの魚の小骨の様に妙に気になった。
しばらくすると、会社にある噂が飛び交うようになった。
「知ってる?去年入った村上君、同じ課の山口さんとつきあってるって」
「何でも残業して残って仕事してたのを見かねて手伝ったのが始まりだって」
「山口さんって、二歳上じゃなかったっけ?」
「村上君って素朴そうで好青年じゃない!山口さん、いいところに目をつけたよね」
「村上君って、まだ彼女いないんでしょ?」
私は、なんだか他人事のように聞いていた。
山口さんは、とても優しそうで細かい気配りのできる人だった。
残業、あの、新しく買った服を見せたかった日だ、と思った。
一度だけ、誘ってくれたけれど、今度は私が仕事だったんだ。
考えたらそれからは一度も村上君から連絡がなかった。
この間、夜電話したとき、なんかごめん、と言ってたっけ。
いろんな意味のごめんだったんだ。
安藤さんには翌日、本当にいいのだろうか、と思いながら、まだうちにあったチョコケーキを三つ袋に入れて渡した。こういうのを破顔、って言うんだろうな、という顔ですごく嬉しそうに受け取ってくれた。
あの後うちで、夜にまたものすごく美味しそうに食べたのかな、と思うと、少しだけ気が紛れた。
私は、なんだか体の中の『元気のもと』がなくなってしまったような気がした。会社にいる時は、よけいなことを考えず、ひたすら仕事に没頭した。そんな私の内心を知る由もない課長は「川野さんも最近はがんばっているな」と声をかけてくれた。
「ありがとうございます」
そう言ったけれど、その声は自分の声ではないみたいだった。
そんなある日、安藤さんが「川野さん」と廊下を歩いていたら声をかけてきた。
「はい、なんでしょうか?」
なんの仕事だろう、と思っていると
「今度の日曜日、空いてるかな」というので、何も予定のない私は
「はい、空いています」と言いながら、質問の意図が分からずにいた。
「じゃあさ、」と笑いかけながら
「動物園に行かない?」は?
「ど、動物園って、あの動物がたくさんいる」と当たり前の事を言うと
「そうそう、その動物園、行かれる?」と、子供のように、にこにこ返事を待っている安藤さんを見てると断れなくて「行きます」と言った。
「じゃあ、日曜日、〇〇駅を降りたところで」と言うとタッタッタッと走って行った。
日曜日、指定された駅前で待ちながら、ひたすら考えていた。
動物園、動物園って子供を連れて家族で行ったりするところではないのか。なんで、動物園?
「やあ、おはよう、川野さん」と声がして見ると、ベージュのカッターシャツを着て帽子をかぶり探検隊の様なズボンを履いていた。
あまりにも会社でのイメージと違うのでびっくりして、そうしたら笑いがこみ上げてきて、我慢できずに「安藤さん、なんか、探検隊の人みたい」というと、「良かった!そういうイメージで着てきたんだ」と言った。
「川野さんもそんなおしゃれな服じゃなく、探検隊風に行こうよ」と言うと、私の手を取りどんどん歩き出す。手近な洋服屋に入ると、私のきれいなワンピースから、なんと私もベージュの綿混のブラウスにキュロットパンツを気がついたら着せられていた。足元もパンプスからスニーカーに。
悪夢だ。私がこんなカジュアルな服装をするなんて。
そして、帽子屋さんに入ると服装に相応しい帽子を選んで被せられてた。
でも、にこにこして「うん、いいね!似合うよ!」と安藤さんに言われると、まあいっか、と思えるから不思議だ。
バスに乗って、動物園前で降りると、ものすごく大きな動物園だった。
ぼうっとしているといつの間にか安藤さんが入場料を払ってくれた後だった。慌てて「すみません、自分の分は払います」と言うと「何言うのさ、ものすごく美味しかったチョコケーキのお礼だよ」と言って、手を取り歩き出した。
考えたら、動物園なんて子供の時来て以来だ。それにもっと小さな動物園だった。
「わあ!すごい、すごいすごい!いろんな動物がいる〜」私は入ったらすっかりテンションが上がってしまった。
大きいけれど優しい目の象や本当に背の高いキリンなど見る度に歓声を上げていた。
安藤さんも「うわ〜、すごいなあ!」とずっと笑顔のまま。
気がつくと手を繋いであちこちとマップを見ながら次々と見ていた。
足を進めようとすると「はい、休憩の時間だよ」と言ってフードショップに入った。
冷たい飲み物を頼み、飲み始めると、すごく喉が乾いていたのに初めて気がついた。
あんまりのどが渇いていて一気に飲んでしまった。
「安藤さん、ソフトクリーム食べますか?私、食べたいです。」と言うと笑顔で「うん、お願い」と言った。
落とさない様に気をつけて持ってくると一つをまず安藤さんに渡す。
「私はこのてっぺんが好きなんです」と言うと「あ〜、わかる!俺も」と言って二人で笑った。
下は私の好きなコーンだった。こぼれないよう、上を食べたり下を吸ったりしながら食べた。窓からキリンが見える。
「私、動物園ってこんなに楽しいと思わなかったです。誘ってくれてありがとうございます」と安藤さんに言うと、「ね?お洒落な所に行くのもいいけれど、こういう所って心が開放されるでしょ?」と言う。
安藤さんは、私が元気がないのを知っていて、連れてきてくれたのかもしれないな、と思った。
優しくて、いい人だなあ、と思った。
まるで今日の、この青空のような人だ、と。
でも、村上君の事を思うと心が軋む様になる。
もう、私の事は好きじゃないんだね。それは目をそらしているけれど見たくないけれど、会社に行けば、嫌でも村上君と山口さんと仕事で顔を合わせる。
それはとても気が重い。
やめやめ!せっかく安藤さんが誘ってくれて開放感に浸っていたんだから!
最初はえぇ〜っと思ったけれどこの支度、帽子は陽射しから頭を守ってくれるし、服装も汗をかいても綿混なので気持ちいい。
スニーカーは、いくら歩いても走っても、全然足が痛くならない。
なんだか、今まで私は無理なことをしてたのかな、と思った。
みんなに喜ばれようと、ケーキを配ったり、オフィスにふさわしい服装しか持たないようにしてたし。
部屋も都会っぽく、とか全然自分らしくない部屋だったし。
今度、お給料日の後、私らしい服とか部屋の模様替えを少しずつしていこう。
なんだか、天気が変わってきた。
陽射しがまるで眠りに入るようにその明るいまぶたを閉じる。
だんだん雲が増えてきたけれど、一部の空は青空が見える。
黒っぽい雲と少しの青空。
まるで今の私の心のような、はっきりしない、あいまいな空だ。
でも、黒っぽい雲は、もう嫌だ。
天気だって、時間が経てば変わるだろう。
出来れば青空がもっともっと増えて欲しい。
私の心もできたらいい方に変わりたいな。
安藤さんと同じ様な探検隊の様な服装で帽子を二人とも被って手を繋いで、空を見上げていた。
【お題・あいまいな空】
今朝の天気は雨だった。
雨音と少しの湿り気が僕の目覚ましだった。
低気圧に苦しめられ、これから学校だという憂鬱な気持ちを胸に起き上がる。
お昼の天気は曇りだった。
雨はやんだが湿り気が一層強くなっていた。
好きな子と話した。
雨上がりの不快感をよそに僕の心は舞い上がっていた。
夕方。大きく輝かしい夕日がみえた。
いつか君と一緒に見てみたいと思った。
今夜の空はまだわからない。
けど、きっと綺麗な星空が見えるんだろうな。
今日のテーマ
《あいまいな空》
重く垂れ込める濃い灰色の空からは今にも雨粒が落ちてきそう。
でもその隙間、雲の層が薄くなっている場所からはうっすら太陽の光が見えている。
「そろそろ降ってくるかな?」
「帰るくらいまでなら持ちそうじゃない?」
空を見上げながら言い交わす。
それぞれの手にはエコバッグいっぱいの食材があり、今日は揃って傘を持ってきていない。
それというのも、朝の天気予報は晴れ予想、雨が降るとしたら夜半過ぎになるだろうというお天気キャスターの言葉を信じたがゆえ。
とはいえあくまで『予想』であって、確率が100%じゃないのは織り込み済み。
「やっぱりこの時期は折り畳みくらいは持ち歩くべきだったか」
「晴雨兼用の日傘とか?」
「じゃなきゃせめて撥水性の上着とかな」
「コンパクトに折り畳めるやつね」
そんなことを口々に言い合うけど、歩くペースはいつもと変わらず。
苦笑い混じりの口調は軽く、あくまで雑談の域を出ない。
持ち歩いた方がいいのは分かっていても、結局面倒だったり忘れたりで持ち歩かないのだ。2人とも。
「降ってきたらコンビニかどこかでビニ傘でも買う?」
「それならどこかで雨宿りの方がいいな。冷凍品もないし、要冷蔵のは保冷バッグに入れてあるし」
「まあ雨の中をこの大荷物で帰るよりその方がいいか」
「途中のカフェで期間限定の美味しそうなメニューやってるんだよね」
「そっちが本命か」
指摘すれば、バレたかと悪戯っぽく舌を出す。
その笑顔はどこか得意げでもあり、こちらもつられて笑ってしまった。
もう一度空を見上げて雲の様子を窺う。
今にも降り出しそうでもあるし、もう暫くは持ちそうでもある。
梅雨の最中のこの時期らしいあいまいな空模様は、素人目には判断が難しい。
ちらりと横目に彼女を見れば、その目はどことなくワクワクと期待を帯びていて。
「仕方ない、寄ってくか」
「やった!」
「帰るまでに降ってきたら荷物抱えてダッシュだからな」
「そこは止むまで粘ろうよ」
「それは雨次第だな。何時間も止まなそうなら諦めて濡れて帰るぞ」
「うーん、その場合はしょうがないか」
どちらともなく早足になるのは雨を避けるためか、それともカフェのメニューに引かれてか。
予報通りとはいかないまでも、せめて家に帰るまでは、或いは降るなら店にいる間に止んでくれよ。
荷物を抱え直しながら、どんより曇るあいまいな空を見上げてそう天に祈るのだった。
晴れてる??いや、曇ってる??
何だかよく分からない。
神様がただ遊んでるのか、制御できてないのか
あいまいな空だな、、
別に完璧じゃなくていい
神様でさえミスしてしまうかもしれない
このあいまいな空がもし遊んでるだけだとしても
1つ言いたいことがある
遊んでもいい、不完全でもいい、自分は自分
自分なりに今を生きていこう。
そんな事をあいまいな空を見ながら、あいまいな感情を抱く自分がいる
あいまいな空
空を見上げると真っ暗だった。
「なんも見えん……」
足元は街灯の光がわずかに当たっているだけだ。絶望的だった。
「なんで月もないんじゃ……」
明日は雨らしいから、もう雲が立ち込めているのかもしれない。
「ばか晴人ー!」
「げっ」
自転車で突っ込んできたのは隣の家の光里だった。
「ほら! おばさんから預かってきた」
「おお!」
左目からコンタクトを取って、差し出されたメガネをかける。見上げると、満点の星空だった。
明け方の空は、泣き笑いともつかない曖昧な色をしていた。降りそうで降らない。晴れるかと思えば、いつ崩れてもおかしくない。苦しそうだ。吐き出したいのに吐き出せない。ギリギリの均衡を保ったまま、いつか晴れるだろうと我慢し続けている。たぶん、今の私そのものだ。
不安で眠れなかった昨日の夜。自分を見失いそうになって、明日こそはと思いながら必死に目を閉じ続けていた。だけど、いざ朝になってみればこの空模様だ。朝から元気に挨拶して、一日を頑張ろうなんて気持ちは、今や暗い雲に覆われ始めている。
この空に向かって全部叫んでしまえたらいい。何もかも、全部雨に流してしまえば、きっと少しは軽くなるなるはずだ。プライドも、外聞も、何もかも捨ててしまえばいい。
なのに、私には聞こえるのだ。どこからともなく。私を睨みつけて、降るな、降るな、と牽制する声が。
あいまいな空
今日の空模様が、このあと晴れるかもしれない、と思えた。
この時期の天気は、どうなるのか先が読めず不安になるが、
遠くの空が青く見えて、こちらに広がっているように見えた。
1時間後、その予感はまるで消えて、
曇り空になり、そのうち大雨になってしまった。
そんな曖昧な空と、私の曖昧な気持ちが重なってしまった。
明日は、雨でも傘をさして外に出よう。
あなたに逢いたい。
あいまいな空は、私の心
中々答えが出せない
このままじゃダメだって事は
わかってる
だけど、前に進めなくて
自己肯定感が低過ぎて
情けない
誰か助けてください
花火を上げると、うなばらの肌膚を玉皮が撫ぜる。
おわり、の、符丁だった。
かんばせをうかべ、Kは半身を岩礁に乗り出す。
女はべそをかく形相と繕いとを蹣跚する表情で、摺りあしのなみだが海岸へつたう。纏う衣服が柳絮のようで、かんばせに山茶花を彼方此方携えたさまが似合っていた。
「あちき、だめだったぁ」
うわずった、声音だった。
Kは自分のたなごころに視線を落とす。水滴がおちる箇所をさする、つぶす、殺す。しばらくして首肯いた。
「こなたさまだけ。こなたさまだけでござりんす。あちきが、間夫をあいしていると聴いても、わらわせん、また、非難せんで、…。こなたさまだけでやんす。ありがとうござりんした。あちき、こなたさまがおりんせんかったら、もう、…もう、。とかく。間夫とはおさればえ。」
女はKのほほをたなごころで包み、額と額とを、くっつけた。鉤爪で痛みを増悪させないよう、女を、やさしく、せいいっぱい、抱き締めた。長い尾びれと、粘液との居心地はさぞかし悪いことだろう。
腕のなかで、女が、すきでありんした、とささやく。
またがる彼女は膝上が肌蹴ており、毀瘠になってもなお、不幸にも淫靡であった。それが女の生涯であった。虚しくも動物、総排出腔のナミダが岸の凹凸をなぞる。
うなばらが粟立つ。
あちき。ーー。女がKの掻疵をなぞり、真皮と魚鱗とのあいだにゆびさきを差し込む。力をくわえて深く剥ぐ。束の間にしょう指の腫瘤目がけて穿つ。反射的に鉤爪が衣服を裂き、女はさいごに微笑した。
「虚妄でも構いやぁせん」
覚悟のある炯眼であった。
慮外なく脆弱な女の指をアと真一文字を解き喰らう。澎湃に揉まれよ飛んで火にいる夏の虫。糸にもなれない血のゆくえはいずこやら。夥しいうたかたに燃ゆる彼らの夏。
あいまいな空
美しい、と思った。
晴れてもいなかれば、雨が降っているわけでもない、曇り空にしては雲の量が少ないような、そんな空だった。
海を反射したような鮮やかな水色でもなく、夕焼けが照らす茜色でもなく、夜を思わせるような深い青でもない、何とも言えないような色んな色が混ざった空だったのだ。
ただ、それを見て、美しいと思った。些細な心の揺れ動きを残しておきたくて、空にレンズをかざす。
カシャ、と小さくシャッターが鳴って、この空を閉じ込めることができた。
きっと他の人が見たら、なぜこんな空の写真をわざわざ撮ったのか、なんて思うのかもしれないけれど、ひどくあいまいな空のことを美しく感じられたこの心を忘れたくなかったのだ。
【あいまいな空】
「空って綺麗だね」
君が言った
肌を優しく包み込むような、弛緩した風が吹いていた
それでも愛しているのに、消えてしまいそうな感じ
それ以外は特に覚えていない
彼が何か言った気がする
確か、こう言った
「忘れないでね、忘れてしまったこと」
大丈夫だよ
僕はいつだって君を思い出すから
それまで眠って待っていてね
少し落ち着いたらずっと僕と踊ればいい
茜色と、水色が混ざった空と雲の間で何かが始まった
『愛のレンタル』
単語の板書って、なんでこんなに眠いのだろうか。
英語なんて使う機会ないでしょ。
周りの大人はみんな、いつか役に立つから、なんていうけど、使ってない癖に無責任だ、と涼は思うのだ。
窓外に目をやれば、隣のクラスが体育を行っていて、ボールを追う歓声とともに流れ込んでくるのは生ぬるく湿った風。
本日は見事な曇天である。
思い起こすのは昼休み。
「涼、さっきの授業、聞いてなかったでしょ。
コバセンがため息ついてたよ。」
「寝てるよりマシでしょ。」
「ま、なんか言われるわけでもないしね。
てか、今日天気悪すぎ。傘ないんだけど。」
「あるある〜。一緒に帰る?」
「え、涼様じゃん。アイス奢るわ。」
だから、あいまいな曇天では困るのだ。
曖昧な関係をそのままにするために。
どうかどうか、雨になりますように。
空模様はいつだって曖昧で
今日だって突然雨が降ってきた
雨が止んだかと思えば、また少しずつ量を増していく
周りは相合傘や、雨宿りを友達としているのに
私は1人で雨の中
それでも、雨の日は視線を感じにくいから。
少しだけ気が楽になる。
誰かと一緒にこの道を歩ける日が来ますように
全てが嫌いになって全てがなかったことになった、真っ白な世界。その世界は今日は真っ白になりきれていない。どうしてだか、曖昧な色の空をしている。きっと彼女がおかしくなってるんだ。空の異変の原因を探していると、思いのほか簡単に見つかった。彼女は地面に座りブツブツと何かを呟いていた。
「嫌われた?嫌われたか。またか。何がいけなかった?わかんねぇ。これで何度目だ。あー覚えてないな。また言われるな。あのクソババアに、またお得意の覚えてないですか!ってな。あー面倒い。しらね。もう何も知らねーよ。どうにでもなっちまえ。」
「ストレスたまってるね。クソババアって担任の?ここに湧いたの?もう誰もいないのに?」
「…いや、いた。いなかったか?あーいたかもしれない。いや、いないのか…?」
「本当にお疲れだね。そろそろ落ち着かないと空が大変な事になってるよ」
「わーお。ほんとだ。あれは白?にしちゃあれね。汚ぇ。」
飽きた!気が向いたら書き足しマッスル!
ふと見上げた
曇り空の向こう側に
明るい青がみえて
なぜだかほっとした
ああ
今のぼくだ
きっとこの状況から
明日は抜け出せる
そう心にいいきかせて
傘を広げた
♯あいまいな空
あいまいな空
今日は曇り。
明日は晴れ。
晴れのち雨。
土砂降り。
髪の毛がうねうねするからずっと晴れててほしいなぁ。