あいまいな空
美しい、と思った。
晴れてもいなかれば、雨が降っているわけでもない、曇り空にしては雲の量が少ないような、そんな空だった。
海を反射したような鮮やかな水色でもなく、夕焼けが照らす茜色でもなく、夜を思わせるような深い青でもない、何とも言えないような色んな色が混ざった空だったのだ。
ただ、それを見て、美しいと思った。些細な心の揺れ動きを残しておきたくて、空にレンズをかざす。
カシャ、と小さくシャッターが鳴って、この空を閉じ込めることができた。
きっと他の人が見たら、なぜこんな空の写真をわざわざ撮ったのか、なんて思うのかもしれないけれど、ひどくあいまいな空のことを美しく感じられたこの心を忘れたくなかったのだ。
6/14/2023, 1:53:13 PM