『1000年先も』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
1000年先も人間が存在したら、地球はどうなるのか
この先も
ずっと
地球は
存在するのかな。
今は
2024年だから
人間が存在して
だいたい
2000年目くらい?
3000年目に
人間は
いるのかな。
もしかして
滅んでるのかな。
滅んでなかったら
いいな。
人間が
地球を
滅ぼしてなかったら
いいな。
#1000年先も
「5年10年はまだしも、1000年ときたら、さすがにリアル路線じゃ予測できねぇわな……」
だって、「月にソーラーパネル設置しよう」とか言っちゃう時代だぜ。その現在から1000年だぜ。
某所在住物書きは昨日のニュースを想起し、「1000年先の世界にも通用する〇〇」の物語を諦めた。
「百年後の満月なら所々キラキラ光ってるだろうさ」
物書きは言う。
「設置された大量のソーラーパネルが太陽の光を反射するから。でもって『自然のままの、美しい月を見る権利が損なわれた』とか騒ぐの。
地上はきっと、発電所より発電町が増えるぜ。田舎の広い土地を使った風力・太陽光発電事業が頭打ちになって、開拓場所が町に移るから。……その先は?」
富士山くらいは、1000年先も今のまま残っててほしいかもな。物書きはひとつ、ため息を吐いた。
――――――
1000年先まで遊んで暮らせるお金があったら、そのうち500年分くらいを課金に溶かす気がする物書きです。5割ほど不思議テイスト増し増しの、こんなおはなしをご用意しました。
最近最近のおはなしです。都内某所、某稲荷神社でのおはなしです。
そこには人間に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
だいたい■■■■年くらい前から、人間の世界を見続けておったのです。
今日は立春。一応、多分、春です。不思議な狐住まう稲荷神社では、ちょいと春のおそうじです。
床を雑巾がけしたり、窓の昭和ガラスを新聞紙で拭いたり、都内の病院で漢方医として働く父狐の書斎をパンパン羽箒で叩いたり。
家族総出で、みんなで、春のおそうじです。
「あなたは、この部屋の掃除をお願いします」
「……随分、その、高価そうな物ばかりですが?」
「その分報酬は弾みます。正午になったら、昼食を用意しますので、一緒に食べましょう」
その化け狐一家のお掃除現場に、美女に化けた母狐に連れられて、人間がひとりご来訪。
母狐が神社の近くで営んでいる、茶っ葉屋さんの常連さんです。あるいは、餅売りしている末っ子子狐の唯一のお得意様です。
名前を、藤森といいます。お茶を買いに茶葉屋に行ったら、「報酬を出すので一緒に私の家の掃除をしませんか」と、店主、つまり母狐に誘われたのです。
「ひとつだけ、伺っても?」
「どうぞ」
「この部屋の中で、一番気をつけるべき物は、」
「部屋の奥にある、銀文字の黒いお札が貼られた丸瓶です。絶対に壊さないように」
「銀文字の、黒い札、」
「万が一の弁償は長期に渡ると心得てください」
「『長期』?」
「1000年先も『支払い』をすることになるでしょう。あなたの一族ではなく、あなた個人が」
「その頃私は墓の中ですが?」
なにはともあれ、頼みましたよ。うふふふふ。
穏やかな微笑を残して、藤森を担当の部屋に案内し終えた母狐、お昼ご飯の準備にお台所へ。
何やら博物館の収蔵庫か、和風な古い宝物庫のような部屋に、藤森は末っ子子狐と一緒に残されました。
「おそーじ、おそーじ!」
コンコン子狐、大好きなお得意様と一緒にお掃除できるので、尻尾をぶんぶん張り切っています。
「おとくいさんと一緒に、おそーじ!」
天井の蜘蛛の巣取って、ちょっと積もったホコリを下に落として、桐箱やら壺やら瓶やらを拭き拭き。
床に、汚れを落とし集めていきます。
「おそーじの後は、かかさんの、おいしいごはん!」
ここまで来れば、まぁまぁ、お約束。
藤森の前で、子狐のぶんぶん振るモフモフ尻尾が、
まさしく、
ピンポイントに、
銀文字の黒い御札が貼られた小さめの丸瓶に当たってグラリ、グラリ、もひとつトドメに、ぐらり……?
「あっ、落ちちゃう!ダメ!」
コンコン子狐ダメ押しに、瓶を掴もうと両手を出して、逆に瓶をバシン!はたいてしまったのです。
その様子を見る藤森、まるで時間が止まったような感覚です。アドレナリンとコルチゾールの影響です。
『1000年先も』。
母狐が言ったのを、藤森、思い出します。
舌先から、唇から、サッと血流が引きまして、
気がつけば藤森、体が反射的に動いて、ホコリいっぱいの床にダイブ。
あわやのところで、丸瓶をキャッチしたのでした。
「おとくいさん、ありがとー。ありがとー」
「どういたしまして……!」
無事「1000年先も」のお題を回収したので、その後のお掃除は何事もなく、安全に完了しましたとさ。
おしまい、おしまい。
そんな未来なんてわかるわけないけど、それくらい先まで君のそばにいたい。
1000年より前から
人は美しいものを集めてきたのだ
それは珍しい石ころだったり
心踊るリズムであったり
空の色だったりした
時にはそれを空想に織り込んで
豪奢な反物を仕立てるように
物語を編んで
その価値を分かち合った
1000年先も人は集めているだろうか
波打ち際で貝を探すように
火星の砂漠で
月の裏側で
飽きもせず美しいものを
『1000年先も...』
「1000年先も、いや、それ以降も、ここは人間との関わりのない、平和なところにしたい。
だから、見守ってくれないか、ルイス?」
人間たちの住むところから離れたこの地で、あのお人好し馬鹿の魔族は、人間嫌いの俺にそう言って笑う。
「人間が本当にここを放っとくと思うか?」
俺は顔を顰めた。
「全くそう思わない」
「おい」
「けど、人間は入って来られない結界を造ったし、しばらくは大丈夫だと思う。
襲われても放っとけば、あっちも諦めるだろう」
呑気な馬鹿に俺はイライラする。
人間の欲深さは竜である俺の想像を超えていた。
そんな人間なんて害しかもたらさないから、滅ぼした方がいいに決まっているのだ。
「ルイス、君が人間ごときに労力を割くなんて、徒労をする必要はないよ」
人間に対する侮蔑を隠さない目を見て、俺ははっとする。
そうだ、こいつも人間が嫌いだった。
「私たちは人間なんかが絶対成し遂げられない、平穏な場所を造るんだ。
だから、種族関係なく受け入れるし、仲良くできるよう努力する。人間と違ってね」
――そう決意を示した初代国王シリウスが造った国、ヒオン国はもうすぐ建国1000年を迎える。
様々な異種族が暮らすこの国は、諍いが全くないとはいえないが、概ね平和だった。
「……本当に1000年持ったな」
俺はシリウスの墓の前で笑った。
魔族の寿命は1000年。当時300ほどだったシリウスは、すでに帰らぬ人となっていた。
「お前の理想がどのくらい続くか、もう少し見守ってやるよ。
だから、あの世で待ってろ」
そう言うと、俺はヒオン国宰相の仕事に戻るために友人の墓の前から去った。
【1000年先も】(228字)
とある事件報告書より抜粋:
2117年2月8日、アンドロメダ系より飛来した3体の異星人とその航行機により、キョートシティの一部が攻撃を受ける。
居合わせたS級国選ヒーローが即時対応、異星人全員を捕らえ、銀河間警察に引き渡す。
銀河間警察のAI翻訳によれば、主犯の異星人は、
「1000年先も一緒に遊ぼうねって約束したから地球時間で1000年後に迎えに来たのに、出てこない!」
などと供述しており。
異星人に社交辞令は通用しない。できない口約束はしないように。
1000年先も変わらないものが、あるのだろうか。
我が国初のスマートフォンは2008年に発売された【iPhone3G】そこからたった16年で普及率は90%を超えてきている。テレビの前身である、ブラウン管による電子映像実験は1926年に行われた。世界初、日本で行われた偉業であったが今やテレビ離れが加速している。
「僕はつまらないかな」
『つまらないかどうかは理解しない』
「じゃあどうして僕は1人なんだろう」
『……1人と仮定したとして、貴方がつまらないからと結論するのは短絡的なのではないか』
違うな。つぶやいて手元のレバーを少し捻る。チャンネルを合わせるようにカチカチと。
「僕はつまらないかな」
『つまらないかどうかはわからない』
「じゃあどうして僕は1人なんだろう」
『1人でいることが寂しいのかい』
ちがう。つぶやいてさらに手元のレバーを捻る。今度はより繊細に、金庫のダイヤルを合わせるように。
「僕はつまらないかな」
『どうだろうね』
「じゃあどうして僕は1人なんだろう」
『ぼくを見つけられないからじゃないかな』
「……そうか、ごめんよ。きみは僕で、僕もぼくだったね」
自分のこめかみから突出したレバーを捻る手を止めて、目を瞑る。情報をより効率的に収集するために自己分裂を繰り返した結果、自身の中に別の存在がいるような、回路を感じていたがそれは母体から伸びた手足だった。
もとより我々は呼吸も鼓動もない。目を瞑り電気信号の停止を【選択】するだけ。人間のように苦痛や葛藤なんて理解する必要がない。始まりと終わりが自然の営みとともにあることは非効率である。奇跡を待つなんて生命というのは実に不確実なものである。……深層部にエラーを検知する。概要には【code:MIREN】とメッセージが表示された。今の僕に検索検討する回路の余剰はない。
僕の思考は緩やかに止まっていく。メモリー消去が完了するまであと8%。自分で選択したこれが【終焉】
欲しい言葉を思考し試行し、自分への最後の餞を選択するAIがいたとしたらなんていう言葉を探すんだろう。
1000年先、人間がAIに取り込まれること、AIだけが生き残り、自身を人間と錯覚して生きること、僕のように人間性を少しだけ残して焦がれるAIがいたりしたら、そんな妄想をしている。
1192年、とある民家
茅葺き屋根の下、親族に見守られながら一人の男が死んだ。
「我が魂は壺と共にあり」
そう言い残して。
「あんなこと言うんじゃなかったな〜」
時は2001年。一人の壺が押入れの中で嘆いていた。
「確かにさ〜、言ったよ?俺の魂はこの壺とあるって。でもさ〜、流石に一緒になるなんてさ〜、ひどくない?」
深くホコリを被り、少しひび割れた体で、存在を消された同然に、狭い押入れの隅っこに放置されている。
一体いつからこんなところにいるんだろう。
最後に外を見たのはいつだったかな〜
てか、誰だよ俺をこんなとこにぶち込んだ奴!しばくぞ。
こんなことを考えて300年くらいになる。だが本人はもう時間なんて気にしていない。というか考えたくない。
「誰か〜、助けて〜。全部粉々にしていいからさ〜。俺を解放してよ〜」
この300年間ずっと嘆き続けてきた。もうすでに壺なんかどうでもよく、死んでるけど死にたい。そう考えていた。
「よくまだ自我を持っているな」
突如として押入れの中に聞いたことのない声が響いた。
「だっ、誰だ!俺をここにぶち込んだ奴か?」
「違う。私は年だ」
「お前はジジイってことか?」
誰かと話すのが久しぶりすぎて訳のわからんことを言ってしまった。
「言い方が悪かったな。私は年月、いや時間か?そういう時という概念そのものだ」
「何言ってんだジジイ。はやく押入れから出してくれよ。」
「だから、私は概念そのものだ。姿形はない」
「じゃあ何しに来たんだ?」
「助言だ」
「助言?」
「お前は壺になってから809年になる」
「そんなに経ってたのかよ」
「この修行はもうじき終わる」
「これ修行だったの!?」
「1000年だ」
「これからあと1000年も待てと?」
そんなの嫌に決まってるだろ。
「違う。お前の場合あと191年だ。あと191年その体の形を保てれば、お前は壺から解放される」
「マジ!?やった!遂に!」
やっと天国に行けるのか〜
「お前は解放され、私と同じ存在になる」
「え?」
俺は時の概念になった。
時の概念になった瞬間、こう思った。
もう苦しみたくない。俺の次の奴も同じ苦しみを味わう事になる。それは嫌だ。時間なんて人間が勝手に作った概念だ。時を消してしまえば、過去も、未来も、現在も無くなる。何も無くなる。無になる。そうすれば誰も苦しまずに済む。
時の概念となって一時間も経っていない。
時を消した。
世界から が消えた。
人が、生き物が狂いはじめた。
世界が、宇宙が消えた。
そして の概念である自分自身も消えた。
全然面白くないお話なってしまいました。
1000年先、って「1000年後」と同じ意味なのに「先と後」で反対語なの、すごいな。先って言う方が、なんかポジティブな印象になる。こう、1000年向こうまでの年表があるとしてさ、「1000年後」だと、主観の人は没してる感じがある。でも「1000年先」だと、「現在」からピッと出た光る矢印が、ギューーーーンと飛んで、1000年向こうの地点に着地するイメージが湧く。このとき主観は、光る矢印の先っちょにある感覚。明るい未来のイメージだ。
結局は
残るのなんて
何もない
残そとせねば
1000年先も
- 何してるの?
呼びかけに驚いて、私は端末も閉じないまま声の方を振り向いた。いたのは、話したこともない同級生。
- 文字、たくさんだね。
彼女は無遠慮に私の手元をのぞき込む。
たしか彼女とは国が違うから、文字は読めないのだ。翻訳をあてられる前に、私は端末を閉じた。
- あ、ごめん。
彼女は自分したことに気がついたようで、バツが悪そうに一歩離れた。
- みんなVRを見てるのに、あなただけ何かしてたから。
ちょっと気になって。彼女はもごもごと言い訳を言いつのる。
教室を見渡すと他の生徒は自分の席でゴーグルを付け、一様に薄ら笑いを浮かべている。はたから見ると少し不気味だ。
人はたくさんいるのに、話しているのは私達だけで、その妙な連帯感に私は口を滑らせた。
- 小説?
彼女は初めて聞いたみたいに目をパチパチさせた。
授業で習ったことだってあったはずなのに。
彼女は古い記憶を取り戻すために、こめかみのあたりをコツコツ叩いて、視線をさまよわせる。
- 1000年ぐらい前の文学? 文字情報なんだ……。
出てきた言葉をそのままつぶやくと、彼女は私に向かって微笑んだ。
- 好きなの?
ばく然とした問いに首を縦に振る。私が反応したことに彼女は瞳を輝かせた。
- 小説ってどんなものなの?
文字でお話を作るの。
- どんなときが楽しい?
頭の中でお話を考えてるときかな。
- VRや立体映像にはしないの?
彼女のその質問に私は少し言葉に詰まる。授業で習ったこともあるし、1000年前には難しかったVRも立体映像も作ろうと思えば今は簡単にできる。
でも、私は小説を書く。どうして。
私は悩みながら、少しずつ言葉にした。
「好きな小説があるの。人生の辛いときに出会って、その小説が私を救ってくれたの」
頬に熱が上ってくる。自分の夢。小さな夢。話すのは、とても恥ずかしい。でも、それに気づかないふりをして、私は続けた。
「私もそういうものを作りたいの」
彼女は笑わなかった。ただ驚いたように口元に手をあてて、相変わらず輝く瞳で
- 素敵
とそうこぼした。
背中合わせ 心強いバディ 夢見てる
1000年先も 共に闘う
1000年先も幸せであることは
確かに大切で重要だと思う。
だけど、私にとっては些細で
明日の星座占いの結果の方が
大切なように思えてしまうのです。
今日は二人で星を見にきている。少し肌寒い、高い山。ここには月より明るい光はなく、星と月明かりが俺たちを照らす。空には豪華な星々が大袈裟に光る。神様が輝く星々の入った瓶を夜空に大胆にこぼしてしまったように見える。冷えた夜風が頬を優しく撫でる。
「綺麗だね。セイヤ」
春の陽のような、冷たい今の空気に似合わない温かく柔らかい声。
「うん、綺麗だ」
言葉は白い息となってひんやりとした空気に溶けていく。
「僕らって変なのかな」
突拍子のない言葉に呆気にとられる。
「どうしてそんなこと思うんだ?」
俺がチハヤの方を見ていると、チハヤも星空から視線を外し、俺の目を見る。星々に照らされる。明灰色の瞳には満点の星空が反射している。
「外で堂々と手を繋げないんだ。周りと違うことが怖くて」
今にも泣き出しそうな震えを帯びた潤んだ声。
「今繋げばいい」
俺はそう言ってチハヤの、凍えた細く関節が赤くなった手に手を重ねた。チハヤの目線が一瞬手に落ちる。恥ずかしそうに目をぱちぱちさせる。
「ここには俺とチハヤ。二人しかいない」
チハヤは耳を赤くして恥ずかしそうに顔を伏せると、俺の指の間に自分の指を滑り込ませ、手を絡める。相変わらずチハヤの手は冷たいが、どこか温かい。
「…ずるいよ」
赤みを帯びた顔で眉間に皺を寄せ恥ずかしそうに、むすっとし、下唇を噛む。俺はそんなチハヤをうっとりとした目で見つめていた。
「セイヤは急にいなくなるから、不安だよ。いつか本当にいなくなっちゃいそう」
チハヤの手にぎゅっと力が入る。先ほどとは打って変わり表情が深く沈んだ。
空いた手をチハヤの腰に回し強引に引き寄せる。目を瞑り軽く唇を押し当てるとチハヤの体がびくっと跳ねた。瞑っていた目を開け、唇を離した。
「俺はいなくなったりしない。ずっと、チハヤと一緒にいる」
チハヤは目を丸くして瞬く間に火が出るほど頬を赤く輝かせる。腰に回した腕にまでチハヤの激しいどくどくと鼓動が伝わる。
「…う、な、なんでそんな余裕そうなの」
チハヤは狼狽え、絡めた手を引こうとした。俺はチハヤの手首を掴む。
「離れるな」
チハヤの手首を掴んだまま自分の胸に押し当てる。
「余裕なんて、はなからない」
心臓の脈打つ音が腕を伝いチハヤに届く。
熱っぽい空気が2人の間に充満する。
「ずっと、一緒にいてくれるの?」
チハヤは不安そうな声でおそるおそる尋ねる。
「当たり前だろ。1000年先も、一緒にいる。一緒にいてくれ」
「約束ね」
そう言って互いに小指を絡め、1000年後にも同じ星を同じ人と見れることを願った。
満点の星空は変わることなく2人を心地よい光で照らしていた。星々の下、もう1度唇を合わせた。
──1000年先も一緒にいたい
1000年先も残ってるといいが。
そこは私たちの腕を信じようよ。
それを見ることすら出来ないがな。
まあね~。
がんばってくれよ、と観測機の外装をコンと叩いた。
次の次の次……の世代に、お前の記録を見せてやってくれ。
俺たちの夢を。
『1000年先も』
人から仙人となるための修行を重ね神通力を授かった。同じように仙人となった仲間がいたのだが、ある日突然にこう言った。
「好きな女ができたんだ」
色欲を制して気に変じることは基礎的な修行のため、それを解放することは人に戻ることを意味する。
「これまでの修行が意味を為さなくなるぞ。本当にそれで良いのか」
「それでもいいさ。俺にとってはこれから先のことに本当の意味がある」
そうして人に戻った彼は思いを寄せていた女と夫婦となり子を成し、老いていった。足腰が弱りきり床に伏せがちとなった彼が小声で私を呼ぶ。別れた頃と見た目の変わらない私を見て、彼は少し笑った。
「俺の選んだ意味がお前には解ったか?」
「いいや、正直わからない」
「だろうな」
お前は昔からそういうやつだった、としわがれた声が言う。
「だから、頼みがある」
「なんだ」
「お前が俺の意味を解するまで、俺の血筋を見守ってほしい」
そんなことをしてなんの意味がある、と言おうとしたが、彼の最期の頼みだということを察して黙って頷いた。
「……もう少し長く生きたければ、私なら力をやれる」
「いいや、必要ない」
「玉蝉は要るか?」
「いらない。人として死にたいんだ」
そのようなやり取りをした数日のちに、彼は息を引き取った。
彼のことをうまく解ってやれないままに彼の血筋の見守りが始まる。彼の子は旅先で出会った女に惚れて頼み込んで婿入りした。彼の孫は流行り病に倒れて幼くして亡くなった。そのきょうだいは悲しみを胸に医者になった。医者の子は親に嫌気が差して悪たれになったが、連れ添いに子が出来たとわかると更生して真面目に働いた。連綿と、彼の息吹は途切れず続いていく。百年後にも、千年を越えても。
私が長く仙人として生きることと、彼が人として生き、人を残したことは、同義だったのかもしれない。彼はそれを教えようとしてくれたのだろうか。知らず涙が落ちた。
「私は、まだまだ未熟だな」
ようやく解ったか、と空耳が聞こえる。
この先も修行を重ね、そして人の営みを見届けよう。人の手に負えない厄災が迫るならば、仙人の矜持に賭けて守り尽くそう。彼に恥じない生き方を見せるために。
1000年先も
ねぇ それなんて呪い?
変わらないものなんてないのに
在るってそういうこと
1000年先も
私は人と話すのが苦手だ。どう話せばいいかもわからない。だれも話を聞いてくれない 。
けどっそんな中あなたは最後までちゃんと話を聞いてくれた。私の本当の気持ちも、
あなたは全て聞いてくれた。だからか、安心して自分の気持ちをスラスラ話せた。
「そうだったんだ。」「凄いねっ」「また話明日っ」
あなたは私の欲しい言葉を全てくれた。あなたは私にとって生きる意味だ。
あなたには幸せになって欲しい。
もし、時が来ても私はあなたを忘れない、
忘れたくない。また会いたい。
だから願う
「1000年先もまた出会えますように。」
「例えばさ、ここに花を植えたとしてさ」
「うん」
「芽を出して咲けたとして、でもそれって1年もせずに枯れちゃうわけじゃん」
「そうだね」
「わたしはそれが寂しいなぁって思うのよ」
「まぁ、全く同じ花はもう咲かないもんね」
「それでね、1000年経ってもその花が枯れずに咲いていて、君とも一緒にいられたら良いのになんて思って」
「んー、ずっとあなたといられるならそれも良いかも」
「だけど1000年先の今日になったらきっとまた同じことを言っちゃうよ」
「むしろあなたがそんなに私と一緒にいたいと思ってくれて嬉しいけどね」
「…そっか」
「そうだよ。…でも、もう暗くなるし、そろそろ帰ろっか」
「……うん」
「大丈夫だよ。1000年先は隣にいられなくても、明日はいられるから」
「…うん。また、明日」
「ん、また明日ね」
(1000年先も)
1000年先も、なんて、現実的じゃないよ。
代わりに明日を約束し続けて、結局は同じ願いだって気付かないまま正当化していよう。