1192年、とある民家
茅葺き屋根の下、親族に見守られながら一人の男が死んだ。
「我が魂は壺と共にあり」
そう言い残して。
「あんなこと言うんじゃなかったな〜」
時は2001年。一人の壺が押入れの中で嘆いていた。
「確かにさ〜、言ったよ?俺の魂はこの壺とあるって。でもさ〜、流石に一緒になるなんてさ〜、ひどくない?」
深くホコリを被り、少しひび割れた体で、存在を消された同然に、狭い押入れの隅っこに放置されている。
一体いつからこんなところにいるんだろう。
最後に外を見たのはいつだったかな〜
てか、誰だよ俺をこんなとこにぶち込んだ奴!しばくぞ。
こんなことを考えて300年くらいになる。だが本人はもう時間なんて気にしていない。というか考えたくない。
「誰か〜、助けて〜。全部粉々にしていいからさ〜。俺を解放してよ〜」
この300年間ずっと嘆き続けてきた。もうすでに壺なんかどうでもよく、死んでるけど死にたい。そう考えていた。
「よくまだ自我を持っているな」
突如として押入れの中に聞いたことのない声が響いた。
「だっ、誰だ!俺をここにぶち込んだ奴か?」
「違う。私は年だ」
「お前はジジイってことか?」
誰かと話すのが久しぶりすぎて訳のわからんことを言ってしまった。
「言い方が悪かったな。私は年月、いや時間か?そういう時という概念そのものだ」
「何言ってんだジジイ。はやく押入れから出してくれよ。」
「だから、私は概念そのものだ。姿形はない」
「じゃあ何しに来たんだ?」
「助言だ」
「助言?」
「お前は壺になってから809年になる」
「そんなに経ってたのかよ」
「この修行はもうじき終わる」
「これ修行だったの!?」
「1000年だ」
「これからあと1000年も待てと?」
そんなの嫌に決まってるだろ。
「違う。お前の場合あと191年だ。あと191年その体の形を保てれば、お前は壺から解放される」
「マジ!?やった!遂に!」
やっと天国に行けるのか〜
「お前は解放され、私と同じ存在になる」
「え?」
俺は時の概念になった。
時の概念になった瞬間、こう思った。
もう苦しみたくない。俺の次の奴も同じ苦しみを味わう事になる。それは嫌だ。時間なんて人間が勝手に作った概念だ。時を消してしまえば、過去も、未来も、現在も無くなる。何も無くなる。無になる。そうすれば誰も苦しまずに済む。
時の概念となって一時間も経っていない。
時を消した。
世界から が消えた。
人が、生き物が狂いはじめた。
世界が、宇宙が消えた。
そして の概念である自分自身も消えた。
全然面白くないお話なってしまいました。
2/4/2024, 2:30:09 AM