「花が咲くって、本当に美しいよね?」
「そうだけど、花が美しいんじゃなくて?」
「だってさ!花が咲いたらあとは散るだけなんだ!だから花が咲くというのは、死ぬ前の最後の輝きと言えるだろ?」
彼女はよくこんな感じのミステリアスな発見をする。それもハキハキと元気に。
「桜なんて一番の例だ。咲いてすぐに散る。昔の日本人ってすごいね!死にゆくものが一番美しいって言ってるんだよ?いい感性してるよね!」
「いいね!面白い考え方だ」
僕は彼女のこういう発言が好きだ。ちょっと何言ってるかわからない時もあるけど、ウキウキしながら喋る彼女も好きだ。
「そうだろう!今度カマキリでも半殺しにするかな」
「ぼ…、僕も見たいな…それ」
「君も見たい?興味あるの?」
「まぁ、それなりにね?」
「じゃあ週末遊びに来てよ家に!」
「わかった。もちろん行くよ」
僕でやってももいいよ…なんて、歪んでるよね。
「よう!よく来たね!」
大人びてるくせにだらしない格好でハイテンション。やっぱり好きだ。
「早くやろうよ」
「やりたいのは山々なんだけどさ…肝心のカマキリを捕まえられなくてさ…」
「じゃあまずはカマキリを捕まえるとこからだね」
「手伝ってくれるの⁈ありがと!」
ドジっ子の彼女も好き。
僕らは小学生に戻ったように、日光の照りつける中夢中でカマキリを捕獲した。一匹捕まえるのに何時間かかったやら。
彼女の家に戻ってカマキリ半殺し実験?をした。足から一本ずつちぎって、カマも切って、胴体を下半身から順に潰していった。上半身に入りそうになったところでカマキリは悶えながら息絶えた。彼女は終始笑顔でたまらなくかわいかった。
「はぁ…面白かったな〜。今度他の虫でもやろっと」
彼女の部屋のベッドに2人でもたれかかり、カマキリの結末に浸っていた。
「虫捕るのまた手伝う?」
「助かる!」
満面の笑みで彼女は答えた。その時、僕の中の花何咲いた。
僕は彼女を押し倒していた。
「ねぇ、僕さ…今花が咲いたよ?花が咲く時が一番美しいんでしょ?」
「な、何…どうした?」
「好きだよ?君のこと。一緒に死の?」
「何言ってんの…?」
僕は持ってきていたナイフで自分の首を掻っ切って、それから彼女の喉にナイフを突き刺した。彼女の喉にナイフを刺した時、僕はこれが愛なんだと思った。
う〜〜〜〜〜ん
無いわ
もうすぐ同棲中の彼女の誕生日になる。彼女の誕生日が近づくとやたらと貧乏ゆすりが多くなってしまう。なぜって?それは…
「今年もこの時期がやってきたね〜?またプレゼント選んできてね!」
と俺の顔をまっすぐ見て、ニッコニッコでふっかけてくるからである。
「も、もちろんだよ。楽しみにしてて…」
この時期はテレビを観ようが本を読もうが気の紛らわしようがない。
今年で5回目になる。過去の4回はなんだかんだ彼女の良い笑顔が見れた。それは彼女がちょっとしたヒントをくれたからで、そのヒントをもらうたびにわかってあげられない自分が嫌になる。彼女は本当は俺を弄んで嘲笑っているだけなんじゃないか?とも考えてしまったことがある。
俺は彼氏失格なんだろうか。こんなんじゃ誰1人幸せにしてあげられないだろう。恋人だからと言う理由で完璧に通じ合えるはずない。漫画やアニメのように上手くいくはずない。
「そんなに深く考えないでよ〜。君の選んだプレゼント全部気に入ってるんだからね?」
「あ…あぁ」
俺の心情を見計らってか、俺を安心させてくれる。でも正直怖い。彼女の悲しむ顔、もしくは激怒した顔なんて見たくない。いつでも隣で無邪気に笑っていて欲しい。
「今回はヒントなしだよ!頑張ってね〜」
テーブルに頬杖をついて、俺にキラキラした期待の目を向ける。俺はその目に押しつぶされそうになりながらじっくり考えた。
誕生日当日。普段よりもちょっぴりオシャレして街中でデートした。でも、俺はプレゼントのことが気が気じゃなくてちっとも楽しめなかった。
ちょっと高めのレストランでディナーをとり、薄暗い夜道をビクビクしながら家へ帰った。手を繋いでいたので、俺の震えは彼女にも伝わっていたと思う。彼女は俺になんて言葉をかけるべきか迷っていたようで、結局無言で歩いた。
ダイニングテーブルを挟んでお互い腰掛けた。
「さぁ〜!プレゼントの時間だ〜!」
俺の心情とは裏腹に、彼女はいつになくハイテンションで少し疲れを感じる。
「わかってるよ…」
「なっにかっななっにかっな〜♪」
覚悟を決めた。
「ど…どうぞ、プレゼントです」
手のひらサイズの小さなプレゼント箱を取り出し、開けて見せた。
「これは…!指輪⁈」
金色のリングに宝石がキラリと光る。アクセサリー用の指輪だ。
「どう…かな?」
鼓動が早くなって、プレゼントを持つ手が震える。明るい部屋なのに視界が暗くなっていった。
「う〜ん…惜しい!結構かすってるね〜。でも嬉しいよ?もちろん」
「そ、そっか…」
非常に微妙な反応で心底がっかりした。どうせだったらひどく拒絶して欲しいくらい。
「私が本当に欲しかったのはね〜?コレ!」
そう言うと彼女はバックからピンク色のクリアファイルを取り出した。
「…何?それ」
「えへへ…」
彼女が中身を引っ張り出した。
「じゃじゃ〜ん!コレだぁ〜!」
「それって…待って、そんな!」
「婚姻届〜!」
彼女は無邪気に笑って、首を斜めにして見つめてくる。その頬は赤く熱っていた。
「もう結構長く付き合ってるでしょ?だ、だから…その、そろそろ結婚したいな〜…なんて思っちゃって」
自然と涙が溢れ出てきた。
「うっ、ううぅ…」
「ち、ちょっと!泣かないでよもう〜」
彼女が椅子から立ち上がって側に来てくれた。そしてぎゅっとしてくれる。
「そんなに嬉しかった?」
「俺…ちゃんと愛して…もらってたんだね」
「何言ってんの?もちろんだよ〜。好きじゃなきゃこんなに長続きしないよ〜」
陽光に照らされるように心もう体もあったかくなる。これが幸せというものなんだと思う。
「ごめんっ…ごめんねぇ?」
「困った子だな〜。なんで謝ってるかわかんないけど…まぁ、大丈夫だよ?よ〜しよ〜し」
2人で存分抱き合った。気づいたら1時間以上抱き合って、俺は安心させられていた。
「さっ!早速婚姻届書こ?」
「うん!」
2人でくっついて、笑って、時折キスしちゃったりしながら書き進めた。
共依存って楽しいよね?
相手が自分の思った通りに、時には予想を越えて私を求めてくれる。
弱みって都合がいいよね?
どす黒く曇った昼下がり。人がゴロゴロいる駅前で彼女を待つ。
「ひ〜ぐ〜ち〜く〜〜ん‼︎」
「うぁあ!」
勢いよく駅から出てきた彼女にバックハグされて、思わず大きな声を上げてしまった。周りからは「何やってんだ」の目を向けられる。
「そんなに驚かなくても…」
ちっこい顔、茶髪でショート、控えめのゴスロリ。全人類が癒されてる猫なんかよりも断然かわいい。そんな彼女がいてとても幸せ。今日もそんなことを考えて笑みがもれる。
「ごめんごめん。とりあえず…行こっか」
彼女は満点の笑顔で頷く。
2人でショッピングモールをぶらつく。服を見たり、オシャレな雑貨を見て同棲した時のことを妄想したり。よくある楽しいデートをした。
「こういうの玄関に置いたらオシャレじゃない?」
「そうだなぁ、僕はこっちの色が好きかな」
「確かに!そっちの方がかわいい!」
どこからともなく「ユウト!」という女性の声が聞こえた。迷子の息子を探すような声で。
声を聞いた瞬間、僕に流れる血が止まる感覚に襲われた。呼吸と鼓動が荒くなる。全身がとてつもなく重くなったように感じ、指先をピクリとも動かせなくなった。
「ひぐち君?」
記憶がフラッシュバックする。ユウトと呼ばれて怒鳴られる。ユウトと呼ばれて殴られる。洗濯機に押し込められ、暗闇で泣きわめく。階段から突き落とされ、「泣くな!」と無茶を言われる。
「ひぐち君!」
「はぁあ!」
隣を見ると、彼女が泣きそうな目で心配してくれていた。
「大丈夫?落ち着いた?」
「…あ、あぁ」
先ほどの声主は無事に息子を見つけて、安堵している。
「帰ろ?辛いでしょ?」
「だ、大丈夫。少し休めば…大丈夫だから」
「じゃあとりあえずカフェにでも入ろ?」
僕の名前は「ひぐちユウト」。ごくごく普通な男だが、子供時代は親からの暴言暴力が酷かった。なので今でも自分の名前が耳に入ると過去がフラッシュバックして先ほどのらようなことになってしまう。
人混みはずっと避けて生活してきた。自分の名前を聞く確率が低いはずだから。なので最近は症状は出なかった。だから油断した。彼女とのデートで舞い上がっていたのだ。
「ふぅ…」
カフェオレを飲みながら、彼女との楽しい思い出に浸って落ち着かせる。
「あんまり無理しないでね?やっぱりダメなら帰ってもいいよ?デートなんてまたできるしね」
「うん、ありがとう。でももう大丈夫!心配かけたね」
「なら…いいけど」
その日のデートは、結局予定よりかなり早く終わった。
こないだのデートでひぐち君が疲れてしまったので、今回は私の家に誘った。家なら2人っきりだし。何も問題ない。
ピンポーンとインターホンが鳴って、彼を迎え入れた。
「お、お邪魔…します」
「初めて来るからってそんなに緊張しなくても。ガチガチじゃん」
やっぱりひぐち君はかわいい。大好き。でも一番かわいいのは、呼吸が荒い時。可哀想なのに愛嬌を感じる。
「来てもらったばっかりで悪いんたまけどさぁ」
「な、何?」
「もう我慢できないや。ベッド来て?」
「へ?」
力強く彼を引っ張って案内し、強引にベッドに押し倒して馬乗りになる。
「ちょ、ちょっと…マキさん?」
目がぐるぐるしている彼にキスした。濃厚に、彼の口の中を私の舌と唾液で満たす様に。
「はぁ…、ふへへへ…」
「はぁ…はぁ…はぁ…」
ユウト君の顔面が燃えている。こんな程度で……かわいい。
そっと彼の耳元で囁く。
「ユウト君」
燃えていた顔が一瞬にして真っ青になった。呼吸も荒くて、大きくて速い鼓動がよく聞こえてくる。
「あははっ!かわいい!かわいいよユウト君!もっともっと!」
「あぁあ!た、たすけて…」
泣きながら、心細さを出して私を求めてくれる。
「忘れちゃえ…そんなの。私だけを考えて?」
「マ…キ、マキィ…」
「泣いちゃったね?私好きだよ?ユウト君のその顔」
涙を舐め取ってあげた。おいしい!
「私だけを考えて?ね?できる?」
ポケットからカッターを取り出して、刃をいっぱいに出した。
「や…やだ、やめて…」
「安心して?」
自分の手のひらの真ん中をブッ刺した。血がドバドバ出てくる。
「マキ!だ、ダメ!そんな…」
「飲んで?おいしいよ?」
「マキ…マキ!」
「あぁ!口移しがいいのか!そっかぁ!」
傷口を舐めて血を絡めとる。そのまま彼の口に舌を突っ込む。
私の血と唾液と、彼の唾液が混ざり合って…はぁ、はぁ…。
「おいしいね?ユウト君?」
「はぁ…あぁぁ、はっ…あぁ」
「まだぁ…アクセントが欲しいぃ!ごめんねぇ?ユウト君」
ユウト君の上唇をちょっぴりかじった。それでも血は満足に出てくる。
「い、痛っ…マキ?」
「えへっ!へへへへ!」
極上の幸せを感じながら私の血と唾液、ユウト君の血と唾液を一心不乱に彼の口の中で混ぜ合わせる。
「ねぇ?はぁ…もっかいぃ、するねぇ?」
かわいくておいしくて、訳がわからなくなるまでいっぱいチューした。
「いまぁ…なんかいめぇ?」
よきかなよきかな。
休日はいいなぁ。いっぱい考えて書ける。
かなり好きな話かな
私の目の前にあるのは鏡。私の顔が写る鏡だ。
なんて酷い顔だろう。この世の終わりとも、人格の死ともなんとも言えない感情がぐちゃぐちゃで、一周回って微笑みが浮かぶ顔。
目は口ほどにものを言うなんて言うが、私の目は完全に死んでいる。感情なんか無い。私の場合、目なんかより"黒"の方がよっぽど正直だ。
大人は嫌いだ。子供と比べたら自分の方が立場的に上だと勘違いして、自分勝手に決めつけてくる。親も教師も上司も。
私は教師に嫌われることはしていない。叱られる時はいつも周りが悪い時。要するにとばっちりだ。
いつもクソ真面目に、将来のためにもならないつまらない授業を真剣に受ける。校則は絶対遵守。側から見れば非の打ち所がない生徒。
そんなクソ真面目の心は何よりも黒い。いらぬストレスを身で受けて自暴自棄になる。自分を殴る。リスカもする。将来に絶望する。
もうどうでもいい。校則だろうが法立だろうが。知ったことでは無い。私を狂わした全てを消す。
そう強く誓って一年。私は神になった。
私はリスカを終えると切り口を舐める癖がある。切り口と切ってない皮膚とが作り出す舌触りのいい段差が好きだからだ。舐めている時は何もかも忘れて幸福に浸れた。
ある日同じように切り口を舐めていると、私の心の黒が押し寄せ、黒が、本能が私の行動の権限を奪った。
殺せ。とにかく殺せ。そう本能は言っている。
「じゃあ殺そうか」
生物を苦しめる血。それが私の体を流れている正体だった。生物に私の血を舐めさせるだけの簡単なことだ。殺すことはできないが、一生苦しませられる後遺症が残る。血を舐めた生物は顔面が膨れ上がって、人間かどうか判別できなくなるほど酷い見た目になる。それが後遺症だ。私には効かないが。
私は何人にも血を舐めさせた。非常に楽しかった。舐めた瞬間顔面が膨れ上がるのだ。滑稽としか言いようがない。勘違い人間どもはこの血の力にひれ伏していった。本当に爽快な気分になれた。
だが神の力は、生身では受け止めきれない。
ムカつく教師、親、友達を一通り終わらせて数日。私の体に変化が起きた。
髪の色が白っぽくなり、指先は獣のように鋭くなった。元々の皮膚は剥がれ硬質化した皮になった。歯も変形して鋭い牙が何本も生えている。
変わったのは見た目だけではない。私を支配していた心の黒は闇に変わった。自分を含むこの世の全てを恨み呪った。意識も朦朧とすることが多くなり、このままいけば私は害獣として見られて駆除されるだろう。
私は鏡の前で変わり果てた自分に呆れた。私に与えられた力、やったこと。全部台無しになった。
もういい。もういいよ。
私は包丁を思いっきり胸に刺した。だが、皮が硬いせいで刺さらない。何度も刺そうとと心見るがやっぱり刺さらない。頭を金槌で殴っても、皮を燃やしても、何を試しても死ねない。
私は悟った。まだ意識があるうちに銃で殺してもらおう。警察を呼んで殺してもらおう。
電話をかけて殺してくださいと言った後はもう何も覚えていない。家にきた警官にあっさり殺されたのか、はたまた逆に食い散らかしてしまったのか。私にはわからない。もしかしたら、闇に支配されたビーストとして地球を破壊したかも。
そんなことを考えながら、変で白い私しかいない空間でただ泣いた。何に対しての涙かはわからなかった。
なんと無く微妙かな
ストーリー性に欠ける
そろそろ激甘ラブコメでも書きたい気分
兄を殺した。気が楽になった。
父を殺した。爽快になった。
母を殺した。滑稽だった。
「お前は無理だ。諦めなさい」
「兄さんにもできるんだ。私だって!」
「お兄ちゃんは天才なんだ。彼こそが努力し、たくさんの人を救うべきなんだ!」
そんなの兄が望んでる訳ないのに。
昼間から父親と娘による口喧嘩が勃発している。週末になれば必ずと言っていいほどよく起こる。
「漫画家の何がダメなの?多くの人を楽しませられるんだよ?」
「あれは天才がやるべきことだ!平凡なお前にやれる資格も覚悟も機会も無い!身の程を知れ!」
「兄さんだって!医者になるだなんて、ハードルが高いよ!」
「お兄ちゃんなら全然現実的だ。賢くて、人を思う気持ちは人一倍強い」
「私だって!たくさんの人を楽しませたいって思ってるよ!」
プロの漫画家を目指すなら専門学校に通うのが手っ取り早い。でも通うためには親の許可が要る。でも…
「いいか!何度も言ったがなぁ、お前は諦めろ。お前がなんと言おうと許す気は微塵もないからな!」
父の部屋から突き飛ばされて廊下に出された。そして近所迷惑になる程でかい音でドアが閉められた。田舎だから近所なんて無いけど。
結局今日もダメだ。やっぱり許しなんてもらえない。全部兄さんだ。家族みんな私だけをハブる。否定する。父は私を全否定する。母は何もしようとしない。兄は妹にかまってられないほど勉強三昧。
かつて家出しようとも考えた。だが、家の前の監視カメラとGPSですぐにバレ、父にぶん殴られた。あの時のあざはくっきり顔面に残っている。
もう…嫌だよ。もっと前から親からの愛なんて無いことに気づいてればよかった。絵画のコンクールでいい賞をとっても、ネットでイラストがバズっても絶対に認められない。いや、認めようとしない。生まれてこなければよかったと言わんばかりに。
「みてろよぉ…」
ドアの前で吐き捨てて自室にこもった。
5日くらい学校を休んでも家族から気にもされない。そこだけはこの家庭のいいところだ。
もう我慢ならないので、やってしまおうと思います。
深夜。家が寝静まったころ。私は父の部屋の前にいた。
リビングのスピーカーを大音量にして、大地震の時になる例の音を鳴らした。それぞれの部屋からドタドタ聞こえる。こうなったらみんなリビングに出る他ない。みんな私なんかどうでもいいので、3人だけで簡単な会話を済ませる。その間に私は、開けっぱなしになったドアから父の部屋へ侵入し、クローゼットに隠れる。
しばらくして、耳障りなイビキが聞こえてきた。
いまだ。
静かにクローゼットから出て、あの口うるさい男に近づく。ネットで買った金属製の手錠で四肢をベッドに固定する。
「ふへへ…」
うっかり笑いが溢れたが、気付かれなかった。
仕上げにあいつの口を超強力なビニールテープで塞げば完璧。
「あはっ…はははは」
自室から持ってきた針と糸であいつの口をテープの上から縫い始めた。布と感触が違って、新鮮で楽しかった。針を刺すたびブチッ!ブチッ!といって面白い。痛みで目が覚めて暴れるから、綺麗に縫えなかったが満足だ。
「次は…、へへへ」
万年筆を取り出した。なんの躊躇いもなくあいつの目にブッ刺す。
唸り声など無駄なことはよして、今までの自分を悔いて欲しいものだ。
目をくり抜いて、残った片方の目の前でゆっくり潰してやった。あの恐怖に染まった、娘に裏切られ、絶望した目は最高だった。
いろいろやって満足したので、ぶっ殺しといた。
兄も同じ手口で殺した。慕ってはいたが、口封じで殺した。思いのほか楽しくて、自分を縛る存在がいなくなって安堵した。
母も殺した。手錠をつける時に目が覚めてバレそうだったが、もうこの際どうでもよかった。手錠は右足以外つけれたし。母はしゃべった。
「いつでもお前のことは大切だったよ?ね?助けて!誰にも言わないから!漫画家だってなっていいから!」
戯れ事だった。うるさいので殺しておいた。滑稽に思えた。何も思ってないくせに、一丁前の命乞いをしやがって。
「あぁ…なんていい人生のスタートだろう」
これを漫画のネタにすれば大バズり間違いなし。
自室で今日の事をメモした。
いい話だ。感動的だな。
毒親死ね。