規範に縛られた軟弱根性無し

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私の目の前にあるのは鏡。私の顔が写る鏡だ。
なんて酷い顔だろう。この世の終わりとも、人格の死ともなんとも言えない感情がぐちゃぐちゃで、一周回って微笑みが浮かぶ顔。
目は口ほどにものを言うなんて言うが、私の目は完全に死んでいる。感情なんか無い。私の場合、目なんかより"黒"の方がよっぽど正直だ。

大人は嫌いだ。子供と比べたら自分の方が立場的に上だと勘違いして、自分勝手に決めつけてくる。親も教師も上司も。
私は教師に嫌われることはしていない。叱られる時はいつも周りが悪い時。要するにとばっちりだ。
いつもクソ真面目に、将来のためにもならないつまらない授業を真剣に受ける。校則は絶対遵守。側から見れば非の打ち所がない生徒。
そんなクソ真面目の心は何よりも黒い。いらぬストレスを身で受けて自暴自棄になる。自分を殴る。リスカもする。将来に絶望する。
もうどうでもいい。校則だろうが法立だろうが。知ったことでは無い。私を狂わした全てを消す。
そう強く誓って一年。私は神になった。

私はリスカを終えると切り口を舐める癖がある。切り口と切ってない皮膚とが作り出す舌触りのいい段差が好きだからだ。舐めている時は何もかも忘れて幸福に浸れた。
ある日同じように切り口を舐めていると、私の心の黒が押し寄せ、黒が、本能が私の行動の権限を奪った。
殺せ。とにかく殺せ。そう本能は言っている。
「じゃあ殺そうか」

生物を苦しめる血。それが私の体を流れている正体だった。生物に私の血を舐めさせるだけの簡単なことだ。殺すことはできないが、一生苦しませられる後遺症が残る。血を舐めた生物は顔面が膨れ上がって、人間かどうか判別できなくなるほど酷い見た目になる。それが後遺症だ。私には効かないが。
私は何人にも血を舐めさせた。非常に楽しかった。舐めた瞬間顔面が膨れ上がるのだ。滑稽としか言いようがない。勘違い人間どもはこの血の力にひれ伏していった。本当に爽快な気分になれた。
だが神の力は、生身では受け止めきれない。

ムカつく教師、親、友達を一通り終わらせて数日。私の体に変化が起きた。
髪の色が白っぽくなり、指先は獣のように鋭くなった。元々の皮膚は剥がれ硬質化した皮になった。歯も変形して鋭い牙が何本も生えている。
変わったのは見た目だけではない。私を支配していた心の黒は闇に変わった。自分を含むこの世の全てを恨み呪った。意識も朦朧とすることが多くなり、このままいけば私は害獣として見られて駆除されるだろう。
私は鏡の前で変わり果てた自分に呆れた。私に与えられた力、やったこと。全部台無しになった。
もういい。もういいよ。
私は包丁を思いっきり胸に刺した。だが、皮が硬いせいで刺さらない。何度も刺そうとと心見るがやっぱり刺さらない。頭を金槌で殴っても、皮を燃やしても、何を試しても死ねない。
私は悟った。まだ意識があるうちに銃で殺してもらおう。警察を呼んで殺してもらおう。
電話をかけて殺してくださいと言った後はもう何も覚えていない。家にきた警官にあっさり殺されたのか、はたまた逆に食い散らかしてしまったのか。私にはわからない。もしかしたら、闇に支配されたビーストとして地球を破壊したかも。
そんなことを考えながら、変で白い私しかいない空間でただ泣いた。何に対しての涙かはわからなかった。



なんと無く微妙かな
ストーリー性に欠ける
そろそろ激甘ラブコメでも書きたい気分

7/19/2024, 12:02:41 PM